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はんなり???!!!着付師物語 第4章❸未来その後

未来はアメリカに発つ時、家族にも彼氏にも「ちょっとアメリカに行ってくるね。」と告げただけで、どれぐらいステイするかも何も言っていなかった。
幼児の頃から、『鉄砲玉』と呼ばれていたけれど、この歳になってもそれは相変わらずで、自他ともに、「気が済んだら帰るんだろう。」と思っていた。
ニューヨークで死ぬかもしれない事件に巻き込まれたけれど無事だった未来は、通り過ぎてしまったことに恐怖も含めて何かを思うこともなく、あっけらかんとニューヨークを楽しんでいた。
そして日本を発って約1年後、未来はようやく帰国した。

帰国した未来は、母親にニューヨークで事件に巻き込まれた話をした。
「私さ、アメリカで強盗に銃を突きつけられて、監禁されたんだよね。あれはマジでやばくってさ、銃口を左脇のここんところに向けられたんだ。運よく、警察が何か起こる前に駆けつけたから事無きを得たけど、本気で死を覚悟したわ。
でさ、人間死ぬって時は、お母さんの顔しか思い出さないもんなんだね。」
「あらー、、未来ちゃん、そんな危険な目に遭ったのね。未来ちゃん、鉄砲玉だから、これからもどっかに出かけて行ったらいつ帰って来るのかも分からないし、すぐに危険なことするでしょ。警察沙汰になるようなこと、、、、だから、お母さん、未来ちゃんにすぐにしてほしいことがあるのよ。お母さん、未来ちゃんの花嫁姿が見たいの。だから、今すぐ結婚の準備をして欲しいの。これだけは、親孝行だと思ってお母さんのいうこと聞いてちょうだい!」
突拍子もないことをいきなり懇願してくる母親に未来は呆れたけれど、今まで散々お母さんの心が壊れそうなほど心配させてきたし、あの死の覚悟をした時に、「お母さんに悪いことしたな、こんなとこで一人死ぬなんて、、」と心の中で呟いたことも鮮明に覚えている。お母さんの言ってることももっともなのかもしれないと思った。
親が決めたから何かをするってことはもちろん未来の性格ではない訳で、ただこの時の母親の発言がきっかけで、自分自身もいつどこで野垂れ死ぬかもしれない自覚があるから、一回は結婚ていうものをしておきたいと思ったのだ。
未来は、決めたら早い。すぐにその時の彼氏と結婚を果たしたのだ。未来はその時22歳だった。

未来はその後、アメリカ人が経営する人材派遣会社に就職した。最初は、コールセンターでテレアポの仕事をしていたが、秘書学科を卒業していたことと英語が話せることを買ってもらって、アメリカ人ボスの秘書となった。主に、ボスの専属通訳が仕事になるのだが、やってみて分かったのは、英語は話せるけど、通訳が出来ないということだった。英語を話すときは英語脳、日本語の時は日本語脳なので、そのスイッチが苦手だということに気づいた。英語でボスの楽しい話し相手にはなれても議事録を翻訳して書いたりするのは苦手だった。
ボスには気に入られていたから、未来の使い道をボスが考えてくれた。未来は、マナー研修のトレーナーとして、人材派遣されることになった。そこで、未来の実力が発揮されたのは、誰にでも気さくで楽しい話が出来るし、人に何かを教えるのがものすごく得意で、派遣先での評判も良く、自分でどんどん仕事をとって来るのだった。
この会社は、さすがはアメリカ人が経営してるだけあって、当時には珍しいフレックスタイムを導入していたし、基本給プラス仕事をとってくればそのコミッションも、売り上げが高ければインセンティブもしっかり払ってくれていた。お勤めの割には比較的自由で給与も高かったので、未来も楽しくこのボスの元で働くことを気に入って7〜8年継続勤務した。

そんな折、思いもかけない訃報が届いた。
高校の同級生が自殺したということを、実家からの電話で知ったのだ。


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女流作家 風乃音羽

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