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はんなり???!!!着付師物語 第二章❸父親との約束

未来は、3日は警察署にお世話になるだろうと思っていたら、珍しく父親が、翌日すぐに迎えにきた。
その時の父親の様子が、怒っているわけでもなく、静かに冷静だった。
未来にとっては、その方が怖かった。

警察署から、父親の車で家に向かっている途中、父親が静かに話し出した。

「未来、、俺は、お前が学校に行かなくても、勉強しなくても、不良仲間と昼も夜も遊んでいても、お前の人生だから、お前がそうすると決めたことなら、別に好きにすればいいと本気で思ってるから、何も言ってこなかったし、これからも言うつもりはない。
けどな、お前が昨日ボコボコにした奴らは、病院に搬送されて、、、、
俺は、菓子折りを持って見舞いに行った。
親御さんが付き添われていて、激怒されてた。
そりゃ、お前だって、やらなきゃやられてたのも分かるから、お互い様だって俺は分かってるけど、やっぱり、倒され負けた方が、この場合勝ちだ。
集団対集団の喧嘩で倒れた奴が数名いたって、それは、誰か一人のせいにならない。
でもな、今回みたいに1対1に近けりゃ、怪我がひどい方が被害者で、そうじゃない方が加害者なんだ。だから、勝った方が悪になる。理由はどうあれ。
俺は、どんなに罵られようと頭下げ続けるしかないし、慰謝料要求されれば払うしかない。
なんでか分かるか?」

「えっ?だって、あいつらだってケンジのこと集団でボコボコにして病院送りにしたんだよ。なんでお父さんが謝りに行って、責任取らされなきゃいけないの?
全然わからない!!」

「お前がまだ子どもだからだ!!
お前は責任追及されない未成年で、代わりに親が責任追及される年齢なんだよ!
お前のやった悪事は、俺やお母さんの悪事なんだ!分かるか?
お前は、自分で責任すら取れない年齢なんだ!
だから、頼むから、お父さんたちに迷惑をかけるな!
お母さんは、警察から電話を受けて、その場で腰を抜かしてへたり込んで、起き上がれなくなった。今日もベッドから出てこれていない。
お前のせいで鬱病寸前だ。」

「、、、、、、、、、、」未来は黙っていた。

「お前が正当だと思える理由で人を殴り怪我をさせたと言うなら、そのことで俺に謝る必要はない。けどな、未来、お母さんにショックを与えてしまったことは認めて、お母さんに謝れ。
そして、これだけは約束しろ!二度と、お母さんと俺に迷惑をかけるようなことはするな!
自分の責任の範囲で、好きに生きろ!
分かるな?!人を巻き込み、自分で責任の取れないようなことは、どんな状況でも選択するな!!約束出来るな!」

ティーンネイジャーの未来には、納得がいかない思いもあったけど、父母に迷惑がかかったことは事実だし、父親は言ったことは絶対に撤回しない性格なのは、自分がそっくりだから知っていた。
ここは、約束すると言うしかないことは分かっていたから、黙って頷くしか無かった。
「よし。約束だぞ。これは、お父さんとの約束だけれど、同時に、未来、お前自身への宣言だ。そして、俺は、約束を破るやつを絶対に許さないのをお前は知ってるな。」

翌日から、未来はケロッとして、遊んでいた。
ひょっとして未来が倒した奴らの仲間が仕返しに来るかもしれないと、覚悟していたけれど、そんなこともないまま日々が過ぎていった。

ある日、未来は先輩と一緒にゲームセンターで遊んでいた。先輩と同い年に見える数名のヤンキーがガヤガヤと話している。

「お前、聞いたか?うちの学校の番長とその舎弟が、女に木っ端微塵にやらたらしいぞ、、、」
「ああ、知ってる。とんでもなくバカ力の大女らしいな。男2人を病院送りにする大女って、想像するだけでも恐ろしいな。しかも番長がやられたんだから、相当強いだろ。絶対会いたくねー。」

先輩が大笑いしながら、未来をゲームセンターから連れ出した。
「どうしたの?」未来はきょとんとしている。
「ワハハハハハ、、、、、さっきの噂話、、、ヒー、笑える、、あれお前のことだ。あいつら、この前ケンジをリンチした奴らの学校のやつだ。制服がそう、、、、お前のこと、馬鹿力の大女だって、、、ははは、、笑うな。
噂って本当に尾ひれがつくんだな。
それにしても、お前が病院送りにしたあの2人のうち1人が番長って、、、それも笑える。女の未来にやられるって、、ヒー、、腹いてえ、やっぱお前がいう通り1人じゃ何にも出来ない大したことない奴なんだよ。それが番長って、、
こんなチビの女にやられて、恥ずかしいから、自分で嘘の噂流したんかなあ、、、、」

先輩は、ヒーヒー言いながらお腹を抱えて笑っている。
「ひどっ!チビって!!まだ成長途中なだけじゃん。それに私が強いのは、本当の話だかんね。」

プーっと膨れて見せる少女が、まさかその噂の張本人とは、一見見ただけでは、誰も思わないだろう。

でも、未来のその圧倒的な存在は、知る人ぞ知る存在として世間に知られ、未来とその仲間たちに面倒な喧嘩を仕掛けてくることが、無くなってきた。

だから未来も父親との約束を破らずに済むと、少し安心した。

けれど、まさかの事件がこの後起こり、そうもいかなくなるのだけれど、、、、









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