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はんなり???!!!着付師物語 第二章ティーンネイジャー時代①エピソード1

未来にとって大変な出来事が起きたのは、小学校6年生の1月だった。
おばあちゃんが、亡くなったのだ。
未来にとって、おばあちゃんが全てで、甘える対象も、学校のことやお友達のことを報告するのも、欲しいものを訴えるのも、通知表を見せるのも、全部おばあちゃんだった。
おばあちゃんがお母さんのような存在だった。
そんなおばあちゃんはずっと未来のそばにいてくれると未来は信じて疑わなかった。
けれど時の流れは残酷にもおばあちゃんをこの世からあの世へと送り込んでしまった。

ある日、通知表をもらった未来は、うちに帰ってそれを出し「おばあちゃん、おばあちゃん、小学校最後の通知表だよ、、、あっ、、、、」
この時の未来の虚しさと言ったらなかった。

〜もう、おばあちゃんはいないんだった。わたし、、、誰に通知表見せればいいんだろう、、、これから誰にわたしの気持ちを話せばいいんだろう、、、、〜

幼い未来の小さなハートにぽっかりと穴が開いた。

中学に入学するから、新しい筆箱も、筆記用具も、ソックスだって欲しかったのに、欲しい!って、誰に言えば良いのか分からない未来だった。
隣を見ると、妹も弟もお母さんに、あれ欲しい、これ欲しいと素直な気持ちをぶつけていた。
これまで、お母さんにお願いしたり、甘えたり、頼ったりしてこなかった未来には、それが出来なかった。
未来の心の穴はますます大きくなり、悲しさと虚しさでどうしていいのか分からなかった。

未来は中学に入学した。なんだか面白くない。
「どうせ真面目に行ったって、誰にも何にも報告することもないから、もう行くのやめた!」
未来はたった1週間で、学校に行かなくなった。
ただ、家にいてもつまらないから街をぶらつくことにした。

「あれ、未来じゃん。何してんだろ?おい、未来ー!」
声をかけてきたのは、学校をサボっている、いわゆるヤンキーたちだった。

入学してすぐに未来は、ヤンキーの先輩に目をつけられて、呼び出された。
というのも、未来は生まれつき髪の色が明るく茶色かった。
だから、入学式早々、校則違反で髪染めをしている生意気な一年生に見えたのだ。
呼び出された未来は、なぜこのヤンキーな先輩たちがわざわざ自分に声をかけてきたのか分からないからきょとんとしていた。
「お前、なんで入学式早々から、イキって髪染めてんだよ?」
「あ、これ?わたし、生まれつきこの色なんだ。染めてないよ。
でも染めてたとしても、なんで先輩たちがそれを気にするの?
先輩たちだって、好きな風に髪染めたり、制服のスカート長くしたりして、おしゃれしてるんだから、私のことは気にしないで。
その制服の着方かっこいいね。
それにまだまだ肌寒いから、脚が冷えなくていいね。」

未来は、ある意味お嬢さん育ち過ぎて、世間知らずだから怖いものがなかった。
怖そうな先輩に囲まれていても、もちろん怖いとも思わず、悪びれることもなく、自分の思ってることを堂々と話し、はむかったのだ。
そんな未来からは、やはりその肝の座った感じを読み取ったのだろう。
先輩たちも大笑いした。
「ははは、、、、お前おもしろいな。私らのこと怖くないん?気に入った!また遊ぼうぜ!」
未来はヤンキーたちに気に入られたのだ。

学校に行かず街をうろついてた時に、声をかけてくれたのが、その時のヤンキーの先輩たちだったのだ。

未来は行く当てもないし、声をかけてくれた先輩たちとつるむようになった。
正確にいうと、昼夜問わず好きな時に家を出て、街を彷徨いてる時に声がかかればその先輩たちと遊んだり、たむろしている場所に一緒にいた。
中には、暴走族の一員の友だちも出来たけれど、一緒に遊ぶことはあってもどこかに属するということはせず、ある意味一匹狼で、どこへ行っても未来は未来として受け入れられていた。
そんな仲間と、刺激的で、悪いことをゲーム感覚でやっていた。

こんなことは今だから言える過去の話として聞いてもらいたいエピソードをいくつか紹介しよう。

「今だ!!走れ!!」未来の大声の指示のもと、電気屋量販店に展示されてる大きなブラウン管のテレビをリーゼントのいかにも悪そうな男数人がいきなり持ち上げてダッシュした。
「どけ!!どけ!!」大声で周りの人たちを蹴散らしながら、追いかけてくる店員や警備員も寄せ付けない勢いで走り去り、完全に撒いて、その展示品の大型テレビを持ち出し、自分たちのアジトまで持ち帰ったのだ。

「今日のチャレンジ万引きは大成功だったねー。」

「わっはっは、、、、これは万引きじゃないだろ!見えないところでこっそり盗むのが万引きで、こんなに白昼堂々と持ち帰るのは強盗だろ、、、」

「えっ!?でも誰も脅してないし拉致してないし、傷つけてないから強盗っていうんかな?
もしあそこの小さな電気屋から盗み出したら、お店やってるおじいちゃん困るだろうから、こんなことしないけど、あんな量販店の展示品だから、そんなにお店だって困らないよ。
あー、でも刺激的で面白かったね。」

ティーンネイジャーというのは、なんとも危なっかしく、善悪の判断もその年の子供の中途半端なものだ。しかも、ちょっと悪いことをするのが刺激的で面白いのだ。
けれど、未来たちの刺激的な遊びは、少し度を超えていると思う。

未来は、毎日のように楽しい日々を謳歌していた。


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