生理中につき面会謝絶

私、いつか生理で死ぬと思う。

それくらい毎回、痛くて苦しくて七転八倒する。

何かを支えに無理して起き上がってもフラフラだし

うんうん唸りながら脂汗に塗れて横になってるしか

やり過ごす術がない。

初日から三日目まではそんな日が続く。

ロキソニンを食べるように飲んでも

15分もすれば切れてくる。

もちろん、学校に行けることなんてありえない。

月に何日かは人間として使い物にならないのだ。

中学三年のときに、担任のゴリラから

「甘ったれてんじゃないよ、生理くらいで。」と

舌打ちされた。

「他の女子は誰もそんな理由で休んでないだろ?」


結局、全否定された痛みで私は不登校になった。

受け入れられない場所でがんばれるほど強くなかった。

なんかおかしくないか?

女に生まれただけで意欲も希望も全否定されるって。

父は中学の教師だったが、この件では私の味方だった。

というか、どこの学校にも不登校の生徒はいて

教師の誠意や実力に疑問が噴出していた時期だった。


私は当面の敵であるゴリラを憎悪した。

学校には行かなくても毎日、塾に通って猛勉強した。

定期テストだけは参加して首位をキープすること

それだけが唯一の復讐であり生存理由だったから。


卒業までの間、教頭や校長が何度も謝罪や恫喝に来た。

このままでは卒業できても希望校への進学は難しい、と。

それなら大検で済ませるから心配ご無用、と私は答えた。



予断だけど、実際には高校も大学も大学院もすんなり通過したし

回り道したけど看護学校も卒業して現在に至る。

思春期の子どもにとって学校や教師集団は絶対的だが、

彼らにつき従ったところで未来は保証されないのだ。



その頃の私は、教師全般に不信感を募らせていて

もちろんゴリラはその筆頭だが、それを許す集団にも

ある種の断絶を感じていた。

軽い重いの差はあっても、女なら生理はあるだろうに

ゴリラに擦り寄ってそんなの問題にもならないとする

男性べったりな体質にも辟易としていた。


今になって思うには、男性不信はもちろんだけど

男性優位社会を認め、それに媚び諂い、ぶら下がろうとする

ヘテロ女性がうとましかったのだろう。

その当時は、まだ自分のセクシュアリティもわかってなかったし

同性愛者という存在も見えていなかった。


誰だってそうだと思うけれど、異性愛者を自然なものとして

それ以外の存在はできそこないか化け物のように扱われている。

文学や映画には異性愛者のドラマは数え切れないほどあるが、

同性愛者の、特に女性同士の恋愛など皆無だ。

TVにも変にシナを作ったおネエさん的男の人が出ていたりするが

色物や化け物の範疇であることは子どもでも見て取れる。


そんな中で、私は男性不信というよりは男性嫌悪を自覚した。

言葉や気持ちが通じない、人として信用できない、言動が理解できない、

存在が不愉快で気持ち悪い・・・などなど、数え上げればキリがないほどに

善意を共有し共存を画策できる存在ではないと確信した。


そんな男たちに較べれば、同性はまだマシな存在だった。

嘘つきなのもイジワルなのもいるけど、それは人間の範疇にある属性。

それよりはかわいかったりきれいだったり、優しかったりすることが

女には格段に多くある。


かくしてレズビアンでフェミニストという立ち位置の私がいる。

選んだわけでも選ばされたわけでもないが、いつのまにかそうなってた。

人類の半分が女で、その4%ほどが同性愛者だといわれているから

私のパートナーは全人類の2%いるかいないか、ということになる。

万一どころか73億分の2%に出会うことがなければ、一生一人暮らし。

そう書くと、かなり悲観的な未来しかないようだけど、

本人はまったく苦にしていない。

生きていくヨスガの中で、男の人と関わらなくていいだけでどれほど

意味不明な不条理から解放されるかと思うとついつい笑顔になる。


あえて付け加えるけれど、男の人全員が有罪だといってるわけじゃない。

肉体的に男性だからといって、心の中まで100%男性だとはいいきれない。

性犯罪者の99.7%が男性だからといって、全員が痴漢するわけでもなく

犯罪者の82%が男性だからって全員を犯罪者予備軍とはいえない。

だけど、確率的には関わりを避けたほうがより安全だというのは事実だ。

消極的な意味で組織の危機管理を考えるなら、構成員は女性であるほうが

内部の防犯効果は高くなるだろう。

昨今、警察官や教師の不祥事がこれだけ多いと、差別をする意図はなくても

男性の採用を躊躇するのには充分な必然性があるということになる。

女尊男卑だの性差別だのと大騒ぎする前に、胸に手を当てて考えてみよう。

男性が住み辛い社会にしたのは誰なの?

男性による性犯罪を減らすべく何の対策もせず、放置してきたのは誰?

女性専用列車を設置しなければ痴漢が防げない現状を追認してきたのは誰?



「女の敵は女」という男社会の常套句があるが、もうひとつ新たに

「男の敵は男」という女性社会からの指摘をつけくわえてあげよう。




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