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【かつて奴隷を運んだ風が、平和メッセージを運んでくれる】~カナリア諸島・ラム酒・大航海時代と奴隷貿易・アフリカから見つめる世界~

昨日突然マサヤから、「明日出発でケープタウンに向かう。突然舞い込んだ仕事、船の上で演奏しながらカナリア諸島に向かう」というメッセージが届いた。

それを聞いて、ドゥルマの伝統儀式、早速効果が!と私はひそかに思ったのだった(笑)。本人からすると、「そんなの全然関係ないよ。たまたま偶然」と言うだろうけど、この「たまたま」というのが巡って来るか来ないかは大きい。

ちなみに、大西マサヤが2024年3月に受けた3種類のドゥルマ伝統儀式についてのレポートはこちら⇒

で、カナリア諸島というと、世間の人にはリゾート地で有名だろうけど、私がすぐ連想するのは、大航海時代とそれに続く奴隷貿易の重要拠点だったことだ。コロンブスも、1492年にアメリカ大陸を「発見」する際の航海で、燃料や食料の補給や、船の点検などで立ち寄ったとのことだ。

私にはここのところどうもずっと、自分の中に奴隷貿易や大航海時代の風が吹いていて、つい数日前にはブラジル在住の松くんと朝っぱらから奴隷貿易について熱くチャットしていた。(ブラジルでは夜中だったのだろうか?)
カポエイラの名手である松くんは、様々なことを私に教えてくれた。まずは松くんの投稿に、アフリカからブラジルに渡った奴隷たちが到着した港、サルバドールの写真が上がっていた。そこから話が発展したのだった。

私はアフリカに住んでいると、アフリカ側の奴隷貿易港や奴隷市場跡に立ち寄ることが多々あったけど、その「受け」側の港を見るのは衝撃だった。カポエイラのルーツも奴隷貿易と深く関わりがあるのだそうだ。私がケニアのモンバサにある「奴隷解放の鐘」の写真をシェアしたら、松くんは、「ビリンバウ(カポエイラで使われる楽器)もその鐘と同じような役割を果たすことがあったそうだ」と教えてくれた。歌の中にも、直訳するとなかなか意味がわからないけれども、そんな意味の内容が含まれていることがあると聞いて、アフリカから連れ去られ蹂躙されてきたかつての奴隷たちの人生に想いを馳せた。

モンバサのケンゲレー二に今も立つ「奴隷解放の鐘」

大西マサヤくんの伝統儀式に参加するためにわざわざジャマイカから来てくれたたみちゃんは、本場ジャマイカのラム酒を土産に持ってきてくれたのだけど、このラム酒も実は、奴隷貿易が背景にある。「コロンブスがカナリア諸島産のさとうきびをカリブ海のエスパニョーラ島へ持ち込んだ」のだそう。

たみちゃんが持ってきてくれたジャマイカのラム酒

★陽気なだけじゃないラム酒の裏側にある奴隷貿易の記憶

はじめてアフリカからヨーロッパへ連れていかれた奴隷は、カナリア諸島の住民だったらしい。
「1430 年代にスペインとポルトガルは捕虜にしたカナリア諸島住民を奴隷として使い始め、アゾレス諸島やマデイラ諸島でヨーロッパ人の囚人を使って砂糖栽培を始めた。その後、1441 年に最初のアフリカ人奴隷が黄金とともにリスボンに連れて行かれ、1444 年にアフリカ本土で 235 人を捕獲し、母国で売った。」
「奴隷貿易~ファニーとジェインの口の端にのぼるとき~」武井暁子
https://www.seijo.ac.jp/graduate/gslit/orig/journal/english/pdf/seng-43-12.pdf

私と大西マサヤくん一家は、伝統儀式の前に、タンザニアのザンジバル島に行ったのだけど、ザンジバル島には奴隷市場あとがあり、アフリカ大陸で捕えられここに連れてこられた人々は、背も立たないとても狭い石造りの牢屋に何日間もぎゅうぎゅう詰めに閉じ込められ、食事も水も与えられず、窒息や病気や飢餓に苦しみ、多くの人々が命を落としたという。死んだ人たちは大きな穴の中に捨てられ、生き残った人たちは競りにかけられ売られた。

ザンジバルの奴隷市場跡
間の溝は、海が満ちるとき海水が流れ込んでくるようになっていた。周りの部分が奴隷がぎゅうぎゅう詰めにいれられいたスペース。

その穴のあった場所には、その後、奴隷解放を訴えて人々を解放しにきたアングリカンチャーチの人たちが美しい教会を建てた。今もその教会は使われていて、私たちが訪れた日にはちょうどイースター前の礼拝が行われていた。
その礼拝に参加してみたら、多くの人々が祈り、エネルギッシュなアフリカのゴスペルの歌声、命の光がその場にあふれていた。

私は常々、「アフリカから世界を見ると、より深く世界が知れる、そして人間とは何かということが見えてくる」と言っているけれど、それと同時に、このような奴隷貿易について語るときには「これは悪者探しの話ではありません。これは人類がやったことの本当のお話で、自分もその人間のひとり。だから、当事者目線で聞いて欲しい」と話をする。
だって、知れば知るほど、人間の歴史は、侵略の繰り返し、奪い奪われの繰り返しなのだった。だけどつくづく思うのは、そんな愚かな人類の過去の癖やあやまちを私たちは乗り越えて、新しい未来を作ることができるはずだ、ということだ。

大西マサヤくんとベノワさんは、5月にバランゴマのツアーを控えているのにも関わらず、声がかかればさっと飛行機に乗り、アフリカ大陸に飛んで、船の中での演奏をするという。彼らが航海するこのルート、ケープタウンからカナリア諸島までは、のちのアフリカ侵略の足掛かりを得るために探検家たちが大航海時代にたどった航路を逆行するもの。そしてそののち、アフリカ大陸から大量の奴隷たちが連れ去られた海だ。

太平洋に吹く風、そしてインド洋に吹く風は、かつて、多くの奴隷たちを運んだ風だ。私は、アフリカの様々な国で海を目の前にするとき、必ずそれを思う。だけどこの風は、今の時代には、平和のメッセージを運ぶ風になりうる。
マサヤとべーちゃんが演奏し歌う歌には、平和メッセージがたくさんこもっている。
彼らはたくさんのメッセージを多くの人々に届けて、日本に帰って来たら各地でライブをするツアーが始まるそうなので、是非皆さん足を運んでみてください。

そして、大西マサヤと早川千晶のポレポレキャラバンも間もなくはじまります。是非各地でお会いできるのを楽しみにしています。


私が妄想していることがあるのだけど、ブラジル在住のカポエイラマスター松くんと一緒に、アフリカとブラジルを繋げるイベントがしたい!!私が根掘り葉掘り話を聞いていくトークショー、どうでしょうか。そしてもちろん音楽も。各地でそんなイベントを企画したい人教えてください。

奴隷の運ばれた海を越えて、平和の想いでつながる仲間たちが世界中で繋がり、いろんなメッセージをいろんな形で伝えていく。いまどんどん繋がりが広がっていっているのを実感する今日この頃。より良い世界を作ろう。本当の世界平和を作ろう。





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