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チバユウスケのいない世界

’音楽は、音は、ずっと君に残るよ’

「EVE OF DESTRUCTION」の冒頭に記載されているチバユウスケの言葉。
この、一見あたりまえにも映る言葉が、こんなに強く胸を打つことになるなんて。

チバが死んで四十九日が過ぎ、でもいまだに悲しみが止まらない。
ミッシェルは聴くことが出来るけど、バースディはまだ悲しくて聴けない。
僕はSNSをやっていないんで、悲しみを、思いを、どこにも吐き出すことができずに今日まで過ごしてきた。
でもこのままじゃいつまで経ってもバースディが聴けない。
ありきたりな思い出ばかりかもしれないけど、いったん全部書かせて下さい。
それでまたバースディを聴く日々を取り戻したい。

2023年12月5日
昼休み、会社の席に座っていると、近くの席の同僚が「Yahoo見ました?」と話しかけてきた。
「え?」
「チバユウスケのニュース・・・」
僕は混乱したまま「どっち!?」と大声を出していた。
どっちも何もないだろう、と今なら思う。
当然、亡くなったというニュースだと誰もが分かる。
でもあの日の僕はチバと聞いた瞬間、「退院した」「復帰した」というニュースかもしれないという期待、祈りみたいなものがあった。
本当に震えながら慌ててYahooを開いて、そこからは帰宅するまでの5~6時間、抜け殻みたいな状態のままずっとネットニュースを見続けていた。

春に病気と入院の発表があったのだから、最悪の事態も覚悟できていたような気になっていた。
でも、実際はぜんぜん覚悟なんて出来ていなかった。
死ぬなんて思っていなかったんだと思う。
いつになるかは分からないけど、復帰することを疑っていなかった。

会社では泣かなかった。
家に帰って、妻に「チバが死んじゃった」と口にした瞬間、少し泣いてしまった。

チバを知ったのは、大学のたぶん1年の頃。
thee michelle gun elephantの「キャンディ・ハウス」か「リリィ」を聴いたのが最初だと思う。
「かっこいいな。すげえな」という平凡すぎる感想と、
「音楽好き界隈の中で天下取るだろうな」という感触があった。
ハイロウズ、NIRVANAと共に、自分の中で最重要バンドのひとつになった。

就職して2年目だったか、ミッシェルの解散が決まった。
ラストツアー『LAST HEAVEN TOUR』の最終日、幕張メッセでのライブがあるという。
解散ライブ。絶対見たい。是が非でも行きたい。
チケット販売当日。電話受付は12時より開始。
いつも昼を一緒に食べている会社の同期3人にお願いし、皆で電話を掛けながらの昼食。でも全然つながらない。
昼休みも終わりに近づいてきたので、あきらめて解散し、それぞれ自分の部署に戻っていった。
僕も自席に着き、なんとも残念な気持ちで座っていると、先ほど別れた同期の一人が真っ青な顔をして携帯を持って走ってきた。
「つながった!!!」
そう言って携帯を僕に渡してくれた。
自席に戻っても、電話を掛けてくれていたのだ。
今思い出しても嬉しい思い出。

解散ライブ当日の記憶は時間と共にあやふやになってきているが、
ものすごいセットリストで、悲しむ暇がないほど楽しかったこと、
最後の曲が「世界の終わり」で、どうしようもなく切なかったこと、
終焉後、ステージのモニターに
『Thank you Rockers I love you Baby』と映し出されたこと。
それらははっきりと覚えている。

ROSSOも好きだった。
ミッシェル後期の重すぎる音よりも、初期のガレージロック寄りの音が好きだった僕にとって、「シャロン」「星のメロディー」「1000のタンバリン」といったメロディアスでエモーショナルな曲たちは、僕の心に深く突き刺さった。
最後のアルバム『Emissions』は、チバのキャリアの中でも一番好きなアルバムかもしれない。

その後THE BIRTHDAYが始まったが、アレンジがどうしても好きになれず、新譜が出たら一応聴く、という程度の消極的なリスナーになった。
だがアルバム『I'M JUST A DOG』以降、またしても夢中になった。
アレンジが変わることで、メロディまでも輝きを取り戻したかのようなマジックが起きていた。
その後のアルバムはすべて名盤だと感じている。
特に直近の『VIVIAN KILLERS』『サンバースト』『CORE 4』と、ここ最近の作品は素晴らしい完成度だった。

コロナが発生し、ライブには行けない日々が続いていたが、2023年になり、やっとコロナ終息が見えてきた。
次のバースディのライブからは参戦しようと思っていた矢先、4月にチバの病気と入院の発表があった。
あれだけ酒飲んでタバコ吸って、そりゃ健康なわけないよな。
発表を見ても、そのくらいにしか受け止めていなかった気がする。
もちろん、食道がんという字を見て、不安はあった。
あったけど、でもチバが亡くなるとは、やはり思っていなかった。

入院中、ハルキのインスタがとても切なかった。
過去の作品を振り返る内容。
ハルキの気持ちを知ることができて嬉しい反面、
なんとなく「病状が思わしくないのかな」という不安も感じた。
それでも漠然と、いつかは復帰してくれると信じ込んでいた。

12月5日以降、バースディのレコードを聴くことが出来ないでいる。
ミッシェルは聴ける。きっと、もう終わったバンドだから。
悲しいけれど聴くことが出来る。
でも、バースディは悲しくて聴くことが出来ない。

毎年バースディの新譜を楽しみにしていた。
『VIVIAN KILLERS』のアナログ盤はRECORD STORE DAY限定販売だったから、早朝からレコード屋に並んで購入したんだ。
1曲目「LOVE IN THE SKY WITH DOROTHY」からして最高のロックンロールだけど、このアルバムは、これまで以上にチバが愛について歌っていたのがとても印象的だった。

”お前の未来はきっと青空だって言ってやるよ”「青空」
”コーヒーシュガーが 溶けていくように 肯定しよう この世界を”「THIRSTY BLUE HEAVEN」

チバからこんな言葉を聴く日が来るなんて。
感動した。

明日は献花の会。
とても悩んだけど、行かないことにした。
雨が降らないといいな。

もうチバの新曲が聴けないことが悲しすぎて、いまだに立ち直れない。
でも多作だったチバは、たくさんの曲を残してくれた。
これからもずっと聴き続けるよ。

キュウちゃん、フジケン、ハルキ。
彼らのことを考えるとまた悲しくなる。
俺らよりずっと深い悲しみの中にいるんだろうな。
やっぱりまた聴きたいな。
THE BIRTHDAY

まとまりはないけど、気持ちを書いたら少しすっきりした。

サンキューチバユウスケ アイラブユーベイベー

今夜、カレンダーガールでも聴いてみようかな。


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