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ペンディング・ライフ

この文章は、こちらに掲載されたライティングの下書きです。



白黒付けれないグレーゾーン。

かつて私は何事も「中途半端は良くない」と決め込んだ。

けれど、人生には「ただひたすら待つ」しかない。保留にしておくべき時もある。

放置するのではなく、来るべき時は必ずやってくる。そう信じて待つのも「戦略」なのだ。

だからこそ、女性は「あざとい」ほうが魅力的なのではないだろうか。

ある日ふと、テレビの電源を入れ、チャンネルを変えてすぐさま、話題ドラマのワンシーンが流れた。

友情で人の心を動かす台詞を、注目株俳優が真っ直ぐな眼差しで熱演する感動シーン。

ドラマの展開は、その一言で動き出す。自分に向けられた言葉でもないのに、目頭が熱くなった。

わたしはすっかり感情移入して「恋愛の修羅場」と言うべきシチュエーションの自分事に変換。

もし過去に戻れるなら、あの瞬間に還りたい。こんな展開にしたいという妄想を駆り立てた。

それが以下のやり取りだ。


『私たち、もう別れた方がいい』

「な?こういうことになるんだよ!俺は自己満足で過去が尊かったし、君は完璧主義から」

「ずっと一緒にやって来た。ひとりが得意とか言うな!」

「お互い傷付け合った。けど自分を責めたって、もう傷付きたくないと、逃げてるだけじゃないか?」

「この先ずっと思う。君と別れたくたかったのに、それを伝えなかったとしたら。ずっと後悔する」

「いつもそばにいてくれた。今日まで一緒にやってきた。『こうあるべき』なんて、体裁にとらわれなくていい。一緒に生きよう」

「俺を信じろ!」


人生は選択の連続。現実でも、極力「別れたくはない」という気持ちを表現してくれた相手の誠実さを決して忘れることはなかった。

自分の出した決断に後悔してはならないと、必死でもがいてきた。

そんな私はミドル世代で、パートナー犬と今だに単身、ひとり暮らしをしている。パートナー犬は2代目に突入。戻ってみたい「決断の日」は20年以上もまえのことだ。

ある日、職場でたわいもない雑談をした。

「あの頃に戻れたらって、過去があって……。戻れたとしたら、別の人生を選択したいんですよね」と言った。すると

「私なら出会えた人達に会えないのは寂しいし、同じ自分だから、また同じ選択をする」と先輩社員が続けた。

オフィス内で、明るく話しやすい雰囲気を作ってくれる。そんな信頼できる先輩社員は、最近昇進した。仕事もできる。

「今が十分幸せだから言えることで……。確かに。そう在りたいな」

と切り返した私。同世代で、キャリアに役立つ資格を若いうちから取得し、やりたい仕事をしている。

仕事にたいする姿勢が誠実な、先輩社員の言葉は心に響いた。しばらくしてふと、思い出した。

私の妄想をテーマにしたかのような『プロポーズ大作戦』というドラマを。ハマって毎週楽しみに観ていた。

主人公の男性が、あたりまえのように一緒に過ごしてきた幼馴染の花嫁の結婚式で

「ずっとたった一言が言えなかった」と、友人としてのスピーチで大胆告白。そして会場を飛び出した。

告白を受け、誠実なフィアンセに送り出される花嫁。そこに妖精が現れ

「おまえは後悔しているんじゃないか。過去に戻ってやり直したいと思っているんだろう」

「いくら過去をやり直しても、結局自分は自分でしかない」

「過去を嘆く今よりも、今を変えようとする未来への意思が一番重要だ。今からでもまにあう」

と、花嫁の背中を押す。

自分の潜在意識を呼び覚ますことができて、本当に望む幸せを叶える姿は、人に感動を与えるストーリーだった。


しかし、私に妖精は現れない。


けれど、話しを聞いてくれる友達はいる。

社会で働く人間関係に翻弄されたりもする。神経を擦り減らし、疲れ切ってのプライベート。

ネガティブな思考に陥ると、自己肯定感も下がる。かつての私がそうであったかのように。 

現実はそんなに甘くはない。

幾多の試練を乗り越えてもなお、不安や課題が解消されないでいると、キャパに限界を感じるようになってしまった。

だが、そんなに甘くないとひとり、まわり道をする未来を選んだのは紛れもなく、私自身である。

素敵な恋を経験できて、大切な仲間や友達がいるだけでも十分幸せだ。

こうして、人生を振り返る機会に恵まれている瞬間は、気持ちの整理もできる。

新しいことをはじめるきっかけになるのだ。

だからこそ過去ではなく、未来を妄想しようと思う。イメージを膨らませて何が起きようともブレずに。

期待し続けて生きていこうと思う。

動き出せる日が来るまで。

次こそ、人生が変わると、楽しみにして待つべきなのだ。











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