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時価総額5億円超えの起業家が生々しい「資金調達のリアル」を明かす:イベント詳細レポート

こんにちは、千葉道場ファンド ベンチャーキャピタリストの木村です。9月30日、渋谷に新しく開設した弊社のコミュニティスペースにて、シード起業家のみなさんを対象にした勉強会「時価総額5億円超えNight!!」を開催しました。この記事では、その模様をお届けします。

本イベントには、千葉道場コミュニティに参加する現役起業家2名と、彼らに投資を決めた千葉道場ファンド プリンシパルの廣田が登壇。現在、起業準備中の方々やシードステージの起業家の方を対象に、実際に起業するにあたっての悩みや課題を、それを乗り越えていった起業家から直に話してもらうことで、シリーズAやそれ以降の資金調達を成功させるためのノウハウを学んでもらうために企画したイベントです。

「資金調達のリアル」を現役起業家が生々しく語るイベントとして、大成功を収めました。その反響の大きさから、早くも第2回の開催も決定。記事最後にご案内もありますので、本イベントレポートを読んでご興味をお持ちになった起業家の方がいらっしゃいましたら、ぜひ参加をご検討ください!

ゲストスピーカー紹介

まずはゲストスピーカーの紹介から。1人目の川端一広さんが起業したコントレア株式会社が携わるのは医療分野です。もともと診療放射線技師というキャリアから、CTやMRIでは平面でしか見ることのできない人間の身体を、VRという2017~18年当時の最先端技術を使って本来の姿である立体の観点で見られるようにできないかという思いが起業の一端だったと語ります。

診療現場で実際に使ってみたところ、思ったよりニーズがないことに気付き、ピボットするかたちで現在のインフォームドコンセント(医療についての説明と同意)をよりスマートに進めるためのプロダクト「MediOS(メディオス)」を開発。プレシリーズAでは総額約1.4億円の資金調達を達成しました。

2人目の小池桃太郎さんは、日本を代表する電機メーカーでの電気回路のエンジニアからキャリアをスタート。その後、中小企業向けのコンサルタントを経験したのちに、アポを取らずにWeb上ですぐ商談ができるサービス「OPTEMO(オプテモ)」を開発し、株式会社ジェイタマズを立ち上げました。

これまではWebサイトを閲覧後に問い合わせフォームやメールを経由してアポを取り、それからようやく商談に持ち込むのが当たり前でしたが、OPTEMOを利用することで温度感の高いアクセスを感知し、すぐにそのWebサイト上でバーチャルミーティングのフォームが開いて対話することが可能です。コロナ禍もあり、インサイドセールス需要の高まるなか注目を集めるサービスのひとつとして、プレシリーズAで約1億円の資金調達を完了しています。

3人目は、千葉道場ファンド プリンシパルの廣田航輝です。新卒で入社したSBIインベストメントでベンチャーキャピタルを経験して以降、一貫して投資事業に携わってきた彼は2020年に千葉道場ファンドにジョイン。この10月よりプリンシパルに就任しています。川端さんのコントレアと、小池さんのジェイタマズへの投資を推進し、日ごろから登壇者の2人と密にコミュニケーションを取り合う担当者です。今回のイベントでは主にベンチャーキャピタル側の視点から投資先との関わり方について語ってもらいました。

もし資金調達をやりなおせるなら……?

イベントのなかで、過去の資金調達を振り返ってみて「今あの頃に戻れるならどうしたいか」という質問をする場面がありました。そこで分かったのは、ゲストお二人はそれぞれ正反対の経験をされてきましたが、振り返りの結論としては似たものとなっていたのが印象的でした。

当時、川端さんはわりとスムーズに3社のベンチャーキャピタルと面談が決まり、その内の1社から比較的早期に1000万円の資金調達に成功。これだけ聞くと、一見順調な滑り出しのように見えます。しかし、川端さんは振り返ってみてこのように語りました。

「正直最初は、お金を出してもらえるなら『あざす!』くらいの気持ちでいました(笑)。でも、1000万円を調達した瞬間、半年後にはお金が切れて死んでしまうことも見えていたんですね。そのため、切り詰めた経営で、起業から2年間は私とエンジニアの2人でした」。

「もっとベンチャーキャピタルを回って、自分の事業にどれくらいのバリュエーションがあって、どこが評価されているのか、逆に懸念点や改善などについて多方面から指摘をもらえていたら、もっと事業成長の近道ができたんじゃないかなとも思います。もし、戻れるなら、もっと大きく調達して採用や開発に回します」。

もともとスタートアップとは無縁の医療畑の出身ということもあり、ベンチャーキャピタルにもいろんなタイプがあるとは知らなかったと語る川端さん。たしかに、スタートアップ業界に初めて足を踏み入れて起業する人がバリュエーションに関する相場観があるはずもありません。結果的に投資を受けるかどうかは別として、多くのベンチャーキャピタルと会って指摘を受けてみることは大事だと川端さんは語ります。

その一方、小池さんは、最初から「泥クサく」数多くのベンチャーキャピタルと会いに行ったと言います。

「スタートアップに知り合いはいなかったので、100社以上の問い合わせフォームに連絡しまくりました。その内の30社くらいと面談して、結果的になんとかクローズまでもっていけたという、とても泥クサいアプローチをしていましたね」。

「良い・悪い両方の指摘を山ほどもらってリスト化していたんですが、このとき、あるキャピタリストから言われて実践していたのが、『投資家からのアドバイスをピッチ資料に反映してから次の投資家との面談に臨む』ということです。資料は膨大なバージョン数になりましたが、このときにたくさんの投資家に会って話を聞いたことが財産になっていて、次の投資家に会うたびに事業について話しやすくなっていきました」。

お二人とも共通して、起業初期の頃から投資を受ける受けないに関係なく、多くのVCと対話をしてフィードバックをもらい、取り入れるところは取り入れてピッチや事業プランを磨いていくことが大事だという意見であったことは印象的でした。

バリュエーションを決めるという難問

バリュエーションについてのセクションも大いに盛り上がりました。場合によってはまだプロダクトもできていない段階で、バリュエーションをどのように設定するのか。これについては決まった答えがなく、ベテランの起業家でさえ資金調達の度に頭を抱える難問です。ましてや起業したての方々には頼るべき指針もないのが実情ではないかと想像します。バリュエーションについて、川端さんは以下のように話します。

「バリュエーションってよくわからなくないですか? 最初に投資いただいたときは起業して数ヶ月でプロダクトもなく、夢しかない状況で億もの評価額をつけていただき、正直驚きながらも平静を装っていました。でも、後で同じフェーズの方々と話したときに、このバリュエーションは安かったのかもと気づいたんですね。これはもっとベンチャーキャピタルを回っておけばよかったという先ほどの話にも繋がりますが..。結果論にはなってしまいますが、もっと色んなVCと話して相場感を身につけておけばよかったかなと感じています」。

「プレAのときの提示額も、高いのかどうかよくわかりませんでした。実際、(まずは投資家に金額を)ぶつけてみたというのが正直なところです。それも手段としては2つあって、1つは少しずつ金額を高くしていって反応を見ること、もう1つは投資家に適切なバリュエーションがどれくらいか聞いてみるということ。後者はたぶん少し安くでてくるので、それを織り込み済みで調整するといった感じで行いました」。

小池さんは当時のバリュエーションがどう決まっていったのかについて、以下のように語りました。

「シードのときはもともと2億円のバリュエーションで2000万円調達するという資本政策でした。でも結果的には3億円の8000万円だったわけで、全然違うものになりました。別のオファーでは1億8000万円の3000万円でしたし、いろいろと天秤にかけた結果、採用したものが一番よかったなという結論です。なので、振り返ってみても結局バリュエーションって何なんだろうと思いますね。言ったもの勝ちなんじゃないかとも思います」。

やはりバリュエーションはよくわからないというのが結論のようです。果たして「言ったもの勝ち」と言い切ってしまうのは、ベンチャーキャピタルサイドとしてはどうなのか。投資家として語る廣田は悩みながらもこう回答しました。

「いやー、おもしろいですね。……ある意味正解がないですよね(笑)」。

しかし、その言い値にもポイントがあると重ねて語ります。

「ベンチャーキャピタルによって、ターゲットとしているバリュエーションが違うんです。例えば千葉道場ファンドの場合だと、プレAの場合は(投資金額が)3000万円〜1億円程度、レイターの場合は最大3億円程度までの投資をしています。なので投資する側のバリュエーションに対する感覚ってファンドサイズが違う以上、ぞれぞれの違って当然なんですね。バリュエーションに関する『起業家からの提案頂く企業価値』も、そのバリュエーションからズレていなければ投資できるというスタンスです」。

「例えば小池さんのジェイタマズに投資させていただいた際、他に少し安めのバリュエーションを提示する投資家の方がいたんですが、我々としては3億円でも全く問題ないと考えていたので、『それでやらせてください』と即日お伝えしました。結果的にその際は多少割高であっても、しっかりと次のラウンドに進んでいるのである程度誤差であり、素晴らしい事ですよねなので、ある程度は超えてはいけないラインがあるんですが、それを超えていなければある程度整合性があれば、起業家からバリュエーションは言い出した方がいいかなと思います」。

アーリーステージの起業家よ、渋谷に集まれ!

本イベントでは、川端さんと小池さんから、各ステージごとにどんな資本政策を行い、資金調達をどのように行ってきたのか、事業がうまくいかずにピボットした際に行ったことなど、ここでは書ききれないリアルなエピソードを包み隠さず話していただきました。

実際に投資を決めたキャピタリストの視点も合わさることで、起業家がどのようにシード期、プレA期を乗り越えていったのかが分かるイベントになったと自負しています。千葉道場ファンドでは、今後もこのようなイベントを定期的に開催していく予定です。

好評を受けまして、2022年10月28日(金)には早くも第2回のイベント開催が決定しています。登壇するのは、少数の投資家が直接引受する私募社債をWeb上で購入・発行できるプラットフォーム「Siiibo」で起業した小村和輝さんと、サービス業に特化したECプラットフォーム「MOSH」創業者の籔和弥さん、そして千葉道場ファンド側からは取締役パートナーの石井貴基が登壇します。

今回もシリーズA以降の資金調達を成功させるために必要なことを学べる、アーリーステージの起業家向けの勉強会として開催予定ですので、すでに資金調達を始めているスタートアップ経営者のみなさまに数多く参加いただけますと幸いです。参加申し込みは以下のフォームから可能です。ぜひご参加ください!!

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