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リード獲得の手法は「コロナ前」には戻らないーージェイタマズ・小池氏が見通す未来

こんにちは、千葉道場ファンドです。

2022年7月、千葉道場ファンドは、アポイントなしで商談を始められるWeb接客ツール「OPTEMO」の開発・運営を行なう株式会社ジェイタマズに対し、プレAラウンドで追加出資しました。本ラウンドにより、同社の累計調達額は約2億円(22年11月現在)となりました。

OPTEMOは、サイト訪問者の閲覧ページをリアルタイムに可視化し、サポートすべき顧客を検知して最適なタイミングでインサイドセールス担当者に通知。サイト上でそのまま音声コミュニュケーションをはじめられるプロダクトです。

前編では、製造業のエンジニア・コンサルタントの経歴を持つジェイタマズ代表の小池桃太郎さんがインサイドセールスの課題解決に取り組んだ理由、そしてマーケとインサイドセールスの溝を埋めるOPTEMOの機能について説明していただきました。

後編となる今回は、千葉道場ファンドキャピタリストの木村拓哉が、小池さんにインサイドセールスの未来について聞きます。千葉道場ファンドからはジェイタマズの担当を務めるキャピタリスト廣田航輝も参加。キャピタリストの目から見たOPTEMOの可能性に迫ります。

「もう元には戻らない」インサイドセールスの重要性はアフターコロナでも

木村:現在、ジェイタマズはどういった企業にセールスをかけているんですか?

小池:特にコアなターゲットにしているのが、SaaSを提供している企業です。言い換えると、The Model型で営業フローを組み立てているような企業ですね。

というのも、The Model型を導入している場合、インサイドセールスのレベルが高く、マーケティング部門もWebサイトをきちんと整理している傾向があるんです。オウンドメディアでしっかり流入数を増やそう、といったような中長期的な視点で戦略を持っている企業が多い。そういった企業であればニーズも顕在化しやすいですし、OPTEMOというプロダクトが適応しやすい感覚があります。

木村:OPTEMOは、小池さんが船井総研で中小企業に対するコンサルティングをするなかでアイデアが生まれたプロダクトですよね。一方、ジェイタマズの顧客実績の中には大企業も含まれています。大企業に限って見た時に、OPTEMOというプロダクトが評価されるポイントはどこなんでしょう?

小池:大企業は「DXの取り組みとして何か新しいことはできないか?」という視点から、我々のプロダクトを評価していると感じます。

リモートワークが普及してWebサイトでのセールスに注目が集まるなかで、前編で指摘したようにチャットボットが上手く機能しない例も多い。そのような時に、次の施策として「Web上でそのまま会話できる」OPTEMOは評価されやすいのだと思います。

木村:とはいえ、新型コロナが落ち着きつつあるなか、リモートワークを元に戻す企業も出始めました。今後フェーズが変わっていく中で、リモートワークや購買行動はどのように変化していくと思いますか? そこに対して、ジェイタマズはどのようにアプローチしていくんでしょう?

小池:リモートワークについては、しばらく「揺り戻し」が起きると想像しています。リモートワークを継続する企業、出社に戻す企業、あるいは週2回出社であとはリモートできる企業など、働き方のトレンドがどんどん入れ替わるイメージです。

ただ、いずれにしろ共通するのは「自分の顧客が出社しているかどうか分からない」という点です。例えば従来のアウトバウンド方式は、オフィスには誰かがいるから代表番号にかければ出てくれる、という前提があった。でも、今後はそうとは限りませんよね。

そうなるとリードの獲得や営業の方法は変わらざるを得なくなる。つまりWebを経由したコミュニケーションの重要性が増してくるわけです。

一方で、Webサイトへの訪問は、商品・サービスの購入や取引先の選定だけが目的とは限らず、ただ情報を収集しているだけ、ということも多い。自社に興味があるユーザーに対していかに的確にアプローチできる仕組みを構築できるのか、という点は我々のOPTEMOにとっても非常に重要なポイントになってくると思います。

インサイドセールスの勝ち筋はAIが見つける時代へ。東北大と取り組む共同研究

木村:ジェイタマズは、東北大学のデータ駆動科学・AI教育研究センターの鈴木潤教授とAIの共同研究に取り組んでいますよね。AIはOPTEMOにどう関わるんですか?

小池:AIが実装されることで、ユーザーの行動に関するデータを、OPTEMOが自動的に蓄積していくようになります。つまり長期で使えば使うだけ、Webサイトに適した分析ができるようになり、より解像度が高まっていくんです。

例えば、とある日にパソコンからのコンバージョンが発生したとします。するとOPTEMOで、何曜日の何時にどのページを見た後にその人がコンバージョンしたのかを自動で分析し、データとして蓄積します。すると別の日の同じ曜日に同様の動きをする人が現れたら、その人はコンバージョンをする可能性が高いと判断して通知します。ざっくりと言うと、こんな仕組みです。

木村:AIの活用を考えて、さらに大学との共同研究に辿り着くまでの経緯というのは?

小池:AIの共同研究の着想は、船井総研時代のできごとがきっかけのひとつですね。製造業の企業のWebサイトを見ていた時に、特定のスペック表を見ている時間が長い人のコンバージョン率がとても高いことを発見したんです。

その時は、たまたま私がそれに気付いて、仮説検証して確かめることができましたけど、一方で「これはなかなか見つけるのが難しいぞ」と思ったんです。こういう、見つけるのが難しい仮説を見つけ出すことこそ、AIが真価を発揮できる領域だなと。そこで私自身の出身大学でもある東北大学に共同研究を持ちかけました。

自分でもいろいろ論文を読みこんで、特に自然言語処理の領域に取り組まれている鈴木先生は、複雑なパラメータの処理をされているとお見受けして。そこで、TwitterのDMからラブコールを送らせていただくという、少々荒ワザも駆使して実現にこぎつけました。

木村:ものすごくアグレッシブなアプローチですね。AIを用いたプロダクトの開発に関しては、今後どのようなタイムラインで実装を検討されているんでしょう?

小池:AIに関しては2023年の3月頃までにアルファ版を作っていきたいと思っています。ただ、あくまでアルファ版ですので、実務で使えるのはそこからさらに1年後というイメージです。今後、東北大学との共同研究も含め積極的に技術研究や開発を推し進めて、より信頼されるプロダクトを作り上げていきたいと思っています。

キャピタリストが語る「ジェイタマズにピンときたワケ」

木村:AIの実装でOPTEMOが実務をどう変えてくれるのか楽しみです。一回視点を変えて、担当キャピタリストの廣田さんにお聞きします。ジェイタマズのどんなところが出資の決め手になったんでしょうか?

廣田:まず、出資したいと思ったタイミングからご説明すると。最初のミーティングで「出資します」とお伝えした記憶があります。

木村:ファーストインプレッションがかなり良かったんですね。OPTEMOというプロダクト自体には、どんな印象を?

廣田:個人的には、ジェイタマズが描こうとしているストーリーに、とても共感した部分があります。

目指すプロダクトの実現という面では、かなり難しい領域だとは思っています。でも、SaaS領域におけるインサイドセールスやカスタマーサクセスの課題感については納得できましたし、それに対するOPTEMOでのアプローチを聞いて「これは絶対あった方がいい!」と感じたんです。

ユーザーや投資家がOPTEMOを評価しようとすると「あった方が良いな」と思う人もいれば、そうではない人もいるなと思ってはいます。Webサイト閲覧中にポンと通話できるのが楽な人もいれば、そういうアプローチを煩わしく思う人もいる。でも僕自身は、問い合わせフォームを記入して資料請求するような従来のやり方は面倒だと思いますし、まず通話して、興味があるなら商談を進めるか断るかを判断すれば良いと本音で思っています。

特にOPTEMOのようなマーケティング領域のプロダクトに投資する際には、私はCEOの「誠実さ」が重要だと思っています。こういったプロダクトは企業側の視点からだけ見てしまうと、とにかくユーザー獲得する「お金儲け的な側面」のためだけに運用しようと思えば、いくらでもそうできてしまうと思います。逆に、お客様側の声を拾ってばかりいると、それはそれでプロダクトの軸がブレてしまう危険性もある。

要はバランスが重要だと思っていまして、OPTEMOのプロダクトはユーザーと企業側双方がハッピーになるはずのプロダクトだと思うんです。

だからこそプロダクトを売る会社側と、買う顧客側の双方にとっての最適解を見つけることが大事なんです。その点で、小池さんはプロダクトについてきちんと哲学を持っていらっしゃる。だから小池さんなら最適解を見つけられると思ったわけです。

信頼関係があるからリアルな知見が集まる。千葉道場の凄み

木村:小池さんには先日、千葉道場ファンド出資先の起業家が集まるコミュニティ・千葉道場の合宿にご参加いただきました。参加前の期待値は、率直にどの程度でしたか?

小池:参加前は、良い面も悪い面も含めて、先輩たちのリアルな経験知やノウハウ、共有知に触れられるんじゃないかと期待はしていました。とは言っても「実際のところはどうなんだ?」みたいな疑念も、正直言ってありました。

ところが先日、初めて合宿に参加してみたら、本当に衝撃的な、リアルな声をたくさん聞くことができて。あんなに勉強になる一日はこれまでに無かったと思うほど、良い意味で期待を裏切られました。コミュニティのみなさんが合宿を楽しみにされている理由をよく理解できました。ただ、この衝撃はなかなか文章では伝えるのは難しいと思います(笑)

廣田:そうですね、こうして記事にするなど頑張ってはいるのですが……。コミュニティ内で話されたことは口外しない、いわゆる「血判状」の約束があるので。なかなか難しいですね(笑)

小池:本当にみなさんの間で「口に出した話をコミュニティの外には出さない」という信頼関係が成り立っているからこそ、千葉道場コミュニティならではの知見が積み重なっていることを感じます。本当に勉強になります。

新たなWeb体験で既存の商習慣をひっくり返す

木村:ありがとうございます。最後に、小池さんが思い描く未来像について教えてください。

小池:OPTEMOを始めてからずっと掲げている目標が「日本の商習慣を変える」ということです。既存の商習慣をひっくり返して、新たなWeb体験というのを社会に実装していきたい。OPTEMOの実現する世界観が、Webサイトの当たり前の体験の一つになっている状態を作っていきたいと考えています。

そのために我々は邁進していくべきですし、いつか「この商習慣は昔は全然違うものだったんだよ」と言えるような未来を作っていきたいと思っています。その過程で、千葉道場コミュニティで知見を得ることができるのは心強いですね。

文:小石原 誠
編集:西田 哲郎


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