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【イベントレポート】清原惟監督 短編集

千葉県初上映の作品、特に若手映画監督の作品を中心に上映するちば映画祭。監督をより身近に、作品をもっと気軽にかつ深く楽しんでいただきたいという実行委員会の思いから、一人の監督にスポットをあてた短編映画メインの上映とゲストトークを行うイベント「映画とお話とブレイクタイム vol.1」が2019年8月25日(日)にcafeSTANDさん(JR西千葉駅徒歩1分)にて開催されました。

本イベントの記念すべき第1回目は、第10回ちば映画祭で特集上映した清原惟(きよはら ゆい)監督と、俳優で映画監督の菊沢将憲(きくざわ まさのり)さんが登壇。清原監督の短編4作品の上映と、ゲストお二人のトークが行われました。

本記事ではイベント当日の様子をレポートしているわけですが、レポーターの私、映画に関しては素人でして、いわゆる大衆向けの娯楽映画を時々観に行く程度。
そんな私でしたが、今年の春に開催された第10回ちば映画祭で初めて若手映画監督たちの作品に触れて、その自由さ、面白さ、熱量に魅了されてしまいました。
今回のイベントでは、今注目の若手監督の一人である清原監督が「映画を撮る」ということをどう捉えて作品づくりに向き合っているか、大変興味深いお話を聞くことができました。

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ゲストの清原惟監督と菊沢将憲さん

清原監督の短編映画4作品

イベント前半の作品上映会では、清原監督の短編作品4作が上映されました。上映後のトークでは、作品一つ一つについて清原監督から解説と菊沢さんからの質問や補足説明がありました。

『波』2017年(上映時間5分)
監督/脚本:清原惟
出演:青木悠里、福地脩平

波

無音の中、海辺を逃げる女と、淡々と追う男。
女優さんの衣装が印象的だなと思っていたら、監督の私物だそう。

清原監督
「屋久島に卒業旅行で遊びに行きつつ撮った自主制作的な作品です。小道具と衣装だけ適当に持っていって、現場で即興的に作りました。風が強すぎて音声が使えなかったから、いっそサイレントにしようと。」

『火星の日』2017年(上映時間11分)
監督/脚本:清原惟
出演:青木悠里

火星の日

明日には火星に旅立つという青木さん。
彼女のアパートには友人たちが次々に現れ、別れの挨拶をします。
電話口で青木さんが「お母さん、明日はもう火星です」というシーンが印象的でした。

清原監督
「武蔵野美術大学3年生の時の完全自主制作です。作中、青木さんがかけたレコードはベートーベン交響曲6番田園。音楽ありきの作品で、ピンポンが鳴るタイミングも曲の4楽章の区切りに合わせて、人が来るたびにムードが変わるようになっています」


『網目をとおる すんでいる』 2018 年 (上映時間15分) 
監督:清原惟
脚本と物語:青木悠里、清原惟、坂藤加菜、中島あかね、よだまりえ
出演:坂藤加菜、よだまりえ

網目をとおるすんでいる

昨年撮られた最新作。
河原で見つけた蚊帳にすんでいる「誰か」のことを想像する二人の女性。

清原監督
「映像のグループ展で発表した作品です。展覧会のテーマが『ものかたりのまえとあと』だったので、フィクションを語ること、物語とは何だ、ということを考えて、物語の立ち上げ方を変えたいと思って作りました。
 最初に物語の状況(セット)だけ作って、制作メンバー5人で実際にそこで過ごした経験を文章にして、物語をみんなで立ち上げていきました。
 長編映画『わたしたちの家』(第10回ちば映画祭で上映)の次に撮った作品で、人が住むモノについて、家とか建物とかのあやふやさを考えていました」

『音日記』 2016年(上映時間30分)
監督:清原惟
脚本:峰尾賢人、加藤法子、清原惟
出演:横田光亮、守谷周人、堀夏子

音日記

いつもカセットレコーダーを持ち歩き、日々の音を録音しているマル。
マルとつるんでいるリュウの様子が最近どうもおかしくて…

清原監督
「東京藝術大学大学院在学中に、脚本や演出、カメラなど専門に勉強している大勢の人と分業制で作った作品です。犯罪ものはやったことがなかったので、やってみようと。
(本作や『わたしたちの家』に登場する謎の組織について)ミステリアスな、隠されたもに興味があって。誰でも秘密を持っていると思うので、街ですれ違った人や電車の中にいる知らない人が抱えている秘密を想像してしまうんです」

テーマは「世界というものの認識」

後半のトークでは、参加者の皆さんからの質疑応答が予定時間をオーバーするほど盛り上がりました。

・美術・音楽・文学のどこに力を入れて映画作りをしていますか?
清原監督
「音楽です。憧れているジャンルなので」

・憧れの映画、好きな映画はありますか?
清原監督「ジャック・リヴェットがずっと好き。『セリーヌとジュリーは舟でゆく』を初めて見て衝撃を受けました」
菊沢さん
「ハーモニー・コリンの『ミスター・ロンリー』。エンターテイメントとやりたい放題のバランスが取れていると思います」

物語の形式にこだわるようになったきっかけは?
清原監督
「子供の頃から漫画や本のフィクションが好きで、子供の頃は、フィクションの世界は自分とは切り離された世界なんだと思っていました。大人になって自分で映画を作るようになって、現実に役者(友人とか)がいて、現実の場所で、フィクションを撮る。こちら側(現実)とあちら側(フィクションの世界)が離れているわけじゃないんだなとだんだん思うようになって。二つの物語が同時に進行する『わたしたちの家』では、フィクションに対してそれまでと違ったアプローチがしたかったんです」

・これから作品を作る上でどのようなことを表現していきたいと思っていますか?
清原監督
「”世界というものの認識”をテーマにしていきたいと思います。『わたしたちの家』では一つの家の中に二つの世界がありました。映画を作るとき、”自分の人生とこの世界と映画をつなげる”ということをしている感覚があります」

参加者からの質問で、より監督や俳優さんについて知ることができ、楽しい時間となりました。

今までの世界が揺さぶられ、これからの世界が広がる

小説にしろ映画にしろ、「登場人物に感情移入して物語に入り込んでいく」タイプの私は、人物(キャラクター)ではなく物語の世界そのものに焦点を当てた清原監督の作品に、初めは戸惑いました。しかし、今回のイベントで清原監督がどのようなことを表現しようとしているのかがわかり、清原監督の作品に対する理解が深まったように思います。
清原監督の作品に”この世界”の認識を揺さぶられたことで、自分が今まで映画に対して偏った楽しみ方しかできていなかったのかもしれないなぁと気づかされました。

若々しい感性と、冷静に世界を見る目の両方を持つ清原監督。
私たちの“世界”にどのように揺さぶりをかけてきてくれるか、今後の活躍を期待しつつ見守りたいですね。

今回のイベントでは、とても近い距離で監督や俳優さんからご本人の言葉で作品の解説や映画づくりに対する思いを聞き、映画に対して親近感を持つことができました。
次回の映画祭が待ち遠しいなぁ。。。
と、思っていたら12月に「映画とお話とブレイクタイム vol.2」が同じくcafeSTANDさんを会場に開催されるとのこと。
次はどんな作品や監督さんと出会えるのでしょう。

イベントレポート
橘高あや(アートエバンジェリスト)

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