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おじいちゃんのとっておきのエッセンス

僕は、小さい頃おじいちゃん子だった。父親がタンカーの船乗りで一年中家に居なかったこともあって、母方のおじいちゃんが父親代わりでもあった。

小学校の低学年の頃は、学校から帰るといつもおじいちゃんの車でドライブに連れてってくれた。自慢の車は四つ目の黒のセリカ。ライオンの立て髪のようなふかふかの茶色のシートに埋もれて、山の中や川沿いを軽快に走っていた。獣医さんであるおじいちゃんは、川縁にいる大きな白鷺を見つけると、車を止めて、その鳥が翼を広げるとどれぐらい大きいかを力説してくれた。身じろぎもしない白鷺を10分間以上見続けることもざらだった。戦時中は軍の獣医として馬や牛の家畜を診ていたらしい。最後のキャリアは食肉衛生検査所の所長だった。

何かをお願いするとなんだかんだ言いながら、最後には必ずやってくれる人だった。本当に自分に対しては欲のない人だった。そしてとてもご飯を美味しそうに食べる人だった。

そんなおじいちゃんから多大な影響を受けて、今の僕が出来上がっている。

本を沢山読むようになったこと。
好奇心が旺盛になったこと。
そして何よりも、
人に優しくなったこと。

もう亡くなって15年が経とうとしてるけど、広島の田舎に帰るとまだ普通に居そうな気がしている。元々東京に来てからは数年に1度ぐらいしか会ってなかったので日常はそんなに変わらない。ただ常に「心の中にいる」という感覚がある。そういう感覚はおじいちゃんが初めてだ。

1年半前に僕そっくりの息子が産まれた。もしおじいちゃんが居たらどれだけ可愛がっただろうか。この子にもおじいちゃんのとっておきのエッセンスは引き継ぎたい。一緒にいると優しい気持ちになれるような子になるように。

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