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スクールカースト最上位のS君が僕にしてくれたこと

いまだによく憶えている出来事がある。

中学生の時、クラスの人気者、今風にいうとスクールカーストの最上位のS君という子がいた。背が高くてスポーツが万能でそれでいて優しいという絵に描いたような人気者だ。僕とは普段ほとんどを話したこともなかったんだけど、ある日の学校の帰り道に偶然会ったS君から遊びに誘われた。僕が住んでいたのは広島県の山奥のど田舎で、広島市内に出るまで列車で2時間半も掛かる。そんな環境の中、S君が僕に学校が休みの日に広島市内まで行って映画を観ようと誘ってきた。中学生としては大旅行レベル。「なんで僕なんだろう・・・」と疑問に思いつつ、断る理由もないので遊びに行くことにした。

当日、朝早く駅に集合して、列車に乗って大都会広島を目指した。道中何を話したかはほとんど覚えていない。昼ごはんはロッテリアに行って、リブサンドポークのサンキューセットを食べた。(今はもうないかなと思って調べたら、まだあった!)

そして観た映画は「ロッキー4/炎の友情」。別にこれをわざわざ観に来たという訳じゃなく、映画館に着いてから選んだ感じだった。大して期待もせずに観たけれど、アポロの死とロッキーとドラゴの激闘に、激烈に感動。あまりの感動に 映画を観た後、お互いしばらく話せなかったぐらいだ。そのあと、本通りという広島一の繁華街をぶらぶらして列車に乗って家に帰った。家に着いた頃にはもうあたりは暗くなっていた。

僕は30年以上も前のある一日の話を、なんでこんなに鮮明に覚えているんだろうか?

それは「クラスの人気者のS君が、理由は分からないけど僕なんかを誘ってくれた。」という“自己肯定感を最高に高める出来事”だったからだ。

いい成績を取った訳でも何か表彰された訳でもなくて、同じクラスの子から遊びに誘われたという些細なことが30年経ってもいまだに心に残っている。

「君は大切な人間なんだよ。そのままでいいんだよ。」と周りから承認されることは、何にも増して人の心に必要なことだな。これは子供でも大人になっても、ずっと一緒なんだなと。帰りの列車の車窓から見た薄暗い田んぼの景色がぼんやりと頭に浮かぶ。


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