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みぃちゃんのプードル🐩/童話〔後編〕

              (約1,100字)

「みぃちゃんは、遊園地でお菓子を買いたいの?ネジネジのアイスが食べたいの?」

カドのおばちゃんは、みぃちゃんの気持ちを聞き出そうと質問を続けた。
だいたい、ネジネジってなんだよ?
私はツッコミを入れたいのを我慢した。
おおかたバニラやチョコレート味のソフトクリームのことだろう。

「・・・ちがう。買いたいもの‥」
みぃちゃんは、語尾をにごした。

「なにか欲しいモノがあるの?」
カドのおばちゃんは、静かに聞いた。

「いくらくらいで売っているのかしら?」

みぃちゃんは、眉を寄せてから赤いハンドバッグから小さい巾着袋を出してみせた。
「これだけしか持ってないけど」
小さい手には、200円が握られていた。

「お土産屋さんに売ってる、ワンちゃんの形の風船がほしい‥‥‥」
私は、ドキリとした。

「あぁ、それなら‥」
カドのおばちゃんは、こたつの横に寄りかかった私をフワリと持ち上げて、大事そうにみぃちゃんの前に差し出した。  

1,200円なんだぞ、私は。

カドのおばちゃんは、少し張りのなくなった私の一部を口へ持っていって、ほっぺを膨らまして、ぷーっと息を吹き込んだ。

みぃちゃんは、目を大きく見開いて
「うわーっ」と声を上げた。

「カドちゃん、なんでこの子、持ってるの?」

「昨日、アキさんと遊園地🎡に行ってきたのよ。おばちゃんも欲しくなって、買ってきたの」

アキさんは、カドのおばちゃんの幼なじみだ。

「ねぇ、これで足りる?
これ(200円)で、この子、ちょうだい!  
さほちゃん、喜ぶから」

本当は1,000円足りないけれど、カドのおばちゃんは、私を みぃちゃんに差し出した。

「いいよ。これ(200円)は、遊園地に行くときのために持ってなさい。私だって、お母さんにプレゼントをあげたいのよ」

カドのおばちゃんは、100円玉をふたつ、そっと巾着袋に戻した。

タロ(お父さん)は、みぃちゃんと遊ぶときは、甘やかしているのだろう。
休みの日も返上して、みぃちゃんのために働いている。
会う時間が限られるから、みぃちゃんと同じで、タロも遊園地を心待ちにしていたはずだ。

私は、みぃちゃんの手の中で温かい午後のまどろみの中にいた。

「これはね、タロにあげるもの」
カドのおばちゃんは、赤い巾着袋にスクラッチくじの当たり券を入れた。

「コレがあれば、ネジネジのアイスが3個くらい買えるから、タロに買ってもらうのよ。
3人で遊園地に行けるといいね」

みぃちゃんは、うれしくて『ドレミの唄♪』を歌い始めた。

梅の木にはメジロがとまり、鳴き出した。

私はメジロに突かれやしないか心配しながら、みぃちゃんの手の中で二重奏を聞いていた。


            〜 おしまい 〜 



※ヘッダー画像は、桜の木にとまっています








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