自分を好きになる話
(約800字)
気休めかもしれないけれど、効用の話。
結構、昔のこと
当時、好きになった人がいて。
だけど、私はその自覚がなかったから
近しい関係の人たちに「その人」の話をするとき、うまく説明しようと必死だった
「なんだか嬉しそうね」って言われて、続けて
「かわいい顔になってるよ」と茶化された
「どうしてその人の良いところを上手に説明したいんだろう」
と私は考えた
周りの人たちは笑顔で私を見ていた
笑顔の人たちに「その人」を認めてもらいたかった
「その人」が体調を崩したとき、初めて(他人のために)薬局に走った
運動音痴な私を走らせることがあるなんて。
「あなたでも誰かのために走ることがあるのね、信じられない」という驚嘆の声
説明をし終わったとき「恋だな」と笑われた
耳まで蒸気した
「違う、すごく変わった人なんだよ。好きとかじゃないよ」
私は焦るほど、声が上ずってしまった
「その人に認めてもらいたいでしょ」
友達のひとりが言った
「質問攻めでしょう」
私の行動まで当てられた。
うーん、そうかも‥‥不器用な人だったけれど、人のために面倒も背負ってしまう人柄だった
「嫌いな人の話だと、めっちゃ可愛くないけど、好きな人とか好きな存在の話だと、やたらいい顔になるんだよ。分かりやすい」
新しいおもちゃを見ているみたいに、私はいじられていた
「やめた、話すの」
私は不貞腐れたように面白くない、って態度に出した
「いいよ、いいよ、オモロイ。話してみ」
友達は完全に私のまどろっこしい話に付き合ってくれた
「はい、可愛い、可愛い。がんばんな」
一度、褒められたことがあった
そうかー私はあの人に認めてもらって嬉しかったのか
たぶん、好きな人を思うときはいい表情をしていて、口汚い言葉を吐いているときには醜い顔になる
それを思い出すと、ひとを悪く言うと自分が嫌いになるような気がした
ひとの悪口を書いているとき、鏡を見るといいです
自分を好きになるには、誰かの幸せを考えるのが手っ取り早い
そのとき、いい表情をしている
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