【いちばんすきな花5】自分に正直になりたいのが言い訳だったとは
小学生のとき、私は自分が真面目で潔癖症なのが長所だと思っていた。仲の良い友達ができなかったのはそのためだったのか。
自分や相手に嘘をつかない、やれることはすべてやって後悔しない。もっともらしい綺麗事はいくらでも思いついた。しかし、どこか心の余裕がない自分も感じていた。なぜだろうか。
フジテレビ系ドラマ「いちばんすきな花」第5話を見てハッとした。4人いる主人公のひとり、紅葉がかつての同級生である篠宮(しのみや)に言われる言葉だ。
紅葉は学生時代、友達のいない篠宮を対等な立場とは考えていないが、付き合いを始めれば嘘をつかない信頼できる相手だと思っていた。他の友達のように無理にあわせる必要はなく、一緒に居て安心する存在だったのは間違いない。篠宮も、友達のいない自分に話しかけてくれる紅葉に感謝していた。なのに、篠宮が仕事を一緒にやろうと提案すると、罪悪感があったことを打ち明けずにはいられなかったのだ。見下していた相手から仕事をもらう罪悪感があったのだろう。
結論から言えば、罪悪感は持っていても、その場で口に出す必要はなかった。口に出したのは、篠宮に対する申し訳なさというよりも、正直に話して自分が解放されたかっったから。
「正直で嘘をつかないのは、いいことだ」教科書に書いてありそうな金言。しかし、そこから一歩俯瞰して、言葉を発したらどうなるだろうかと考えてみることが必要なのだろう。
そこまで清濁あわせて配慮できれば、周りからの疎外感はないのだと思う。世渡り上手と言われるかもしれないが、言葉が一人歩きする性格がある以上、口に出すときは注意すべきなのだ。正直でホッとするのは自分だけ。
幼なじみのゆくえも、紅葉に対して言い聞かせるように言う。
ああ、このことを小学生の時に知っていたら。私の人生も変わっていたに違いない。世の中のヒーローものには、正義の主人公と悪者しかいないのが単純すぎるな、とは思っていたのに、発しなくても良い言葉があるとは思いもつかなかったのだ。
さて、このドラマでは、今回の件をすべて含めて話ができる仲間がいるのが救い。紅葉に言わせれば、「おなかが痛いと言える」関係だ。私と違い紅葉は正直に気持ちを話してこなかったのだと思うが、ようやく「おなかが痛い」と言えるようになってよかったね、と伝えたい。
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