見出し画像

小澤征爾さんと、音楽について話をするを読んで

中高六年間吹奏楽部だったのだが、高1か高2の時、後輩部員のご縁で、長野県松本市で開催されているサイトウキネンオーケストラを聞きに行くことができた。

確か94年だったか。演目はチャイコフスキーの交響曲第4番だったのは鮮明に覚えている。

今思えば、大変に貴重な機会を頂けたのだとわかるが、当時は、とりあえずすごいフェスがあるから行くぞ的なノリで、先輩について行った記憶がある。後押ししてくれた先輩に感謝。

帰りは夜行電車(あずさだったか)に乗り、早朝について、そのまま学校に行き、ほぼ寝ずに、音羽パレードという、文京区の大塚警察が主催するパレードに参加したのも良い思い出。

僕にとって小澤征爾さんは、高校の時のあの深夜で帰ってきた夜行電車と、チャイコフスキーの4番と、寝ずにパレードに出た記憶が一瞬に呼び起こされる存在である。サイトウキネンと言えば弦楽セレナーデも有名だが、この曲を聴いても当時に一瞬で戻れる。音楽と場面は確かに紐づいている。


前年の吹奏楽コンクールでは、オルフの「カルミナ・ブラーナ」を演奏したこともあり、(残念ながら銅賞だったが、それもいい思い出)ベルリンフィル小澤さん指揮のカルミナ・ブラーナの演奏をミュージックビデオを買って、何回も見ていた。


タイトルの「小澤征爾さんと、音楽について話をする」を読んでいると、少し小澤征爾さんに触れていたからか、ところどころ、つたない知識の自分でも「あーあのときそうだったのか}と、わかる場面が描かれている。


村上春樹さんとのセッションのような対話は、音楽の事がわからなくても、そのすごさが伝わってくると思う。ジャズのセッションをしてるかのように話が進んでいく。村上さんの音楽に対する知識がなせる業だとは思うが。



話は変わるが、この本を読み進めようと思った前日、私の妻の千葉の田舎からいただいたお土産の中に、誰が書いたかもわからない謎のエッセイが印刷された紙が入っていた。妻が「おじさん(お母さんの兄)のことが書いてる!!」なんていうので、読んでみた。子のエッセイを書いた人は相当博識の方だと思うが、ぐっとくるフレーズがあったので引用する。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーおじさんの言葉
「ただ一点、どうすればお客によろこんでいただけるか、これだけを考えてやれば、必ず道は拓ける」 略 そして今、○○さん(おじさんのこと)が、これと同じ子をと、地震言葉として、自身の内からあふれ出てくる信念として語ったのである。
作為的ではなく、つまり、どこからの借り物ではなく、ただ、ご自身が思うところをそのままに語ったのだ。
かろやかに生きる、とは、こういうことではなかろうか。
司馬遼太郎がいうところの 「風霜に堪え、世俗に堪え、老いに堪え、しかも自分のなかのわらべをまるまると桃色に肥らせてる人がいる。芸術の仕事は、その体中の少年がやるのである。」 とあるのは、くだらぬことに一切とらわれることなく、ただ一筋に、自身が思うところ、自身のなかにあるわらべの心に従って生きる、生きがいのある日々を生きる、ということなのだろう。
芸術の仕事は、その体中の少年がやるのである、とあるが、ゴッホが絵筆を手にとってキャンパスに向かうとき、あるいは、モーツァルトが曲想を得て作曲するとき、これでいくら稼げるか、などと考えるであろうか。あり得ない!
ただ自身のうちから湧き上がってくるものを、キャンパスにぶつけ、楽譜にぶつけるだけなのだ。
今を去る二千年もの昔、イエスは、 「幼子の如くならずは、神の国に入ること能わず」と語った。そうだ、幼子の如くに、なのだ。また、イエスは、弟子たちに向かって、 「汝ら、地の塩となれ」とも、言った。塩は、人が生きていく上で、欠かせないものである。 右の言葉はいずれも、俗念を捨て、自我を捨て、心かろやかに生きよ、と、言っている。



ちょっと長かったが、グっと来たの引用した。芸術の仕事は体中の少年がやる。芸術でなくても、仕事に夢中になってるとき、誰しももこの境地なのではないだろうか。と思った。
そして話は戻り、本を読み進めると出だし(はじめに)から、似たようなことが書いてあった。

村上さん曰く、小澤さんとの共通点として、「生き方の傾向として、共感を抱けるところがある」ということだ。 まずひとつは、我々のどちらもが、仕事をすることにどこまでも純粋な喜びを感じているらしいということだ。(以下続く 二つめは、今でも若いころと同じハングリーな心を持ち続けていることだ。(以下続く 三つめは・・・・頑固なことだ。

と。


これより先はぜひ本を手に取って読んでもらいたいが。

この三つの共通点を意識して読んでいると、対談の中で出てくる、カラヤンと小澤さんの対話、レニー(レナード・バーンスタイン)と小澤さんの対話、様々なオーケストラの楽団員と各識者との対話など、さまざまエピソードが出てくるが、字面だけでは読み取れない背景や生きざまも見出すことができるかもしれないと思った。

音楽好きだけではなく、人とかかわるすべてのビジネスパーソンが読んでも何かの知恵になると思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?