見出し画像

とある画家が考える「いい絵を描くためのたった1つの秘訣 + なぜ絵が売れないのか」

無料で最後まで読めます。

とある画家の販売実績

にじ
931×748mm  厚紙にアクリル絵具

chickiiです。
色々と創作活動をしてますが、画家としては主に抽象画・風景画(上の画像は直近の作品)を描いております。

今回は、私の画家としての販売実績を思い切って公開します。

高校時代から本格的に絵画を始め、画業20年にして、総売上はざっと192,500円です。

月収じゃありません。
年収でもありません。
「20年間」でいただいたお金です。
つまり「年収」たったの9,625円です。

泣きたくなるような数字です。
それでも、私は絵を描いて生計を立てたいと思います。
頭おかしいのか?と思われたとしても仕方ないですね。

2019年1月現在の私がどういう状況かお話しします。

昨年精神を病んでしまい、11年半勤めた会社を辞めました。今の主な収入源は健康保険から降りる傷病手当金であり、受給期間は残り1年もありません。その後受給可能な失業保険を上乗せしたとしても、手当を受けられる期間は最大で約1年間だけです。

そんな状態から本格的に画家を目指すというのが無謀なのは確かです。
しかし、私は今絵を描くのが楽しくて仕方がありません。絵を描いているおかげで抗うつ剤を飲まなくてもかなり精神が安定しているくらいです。

私にとって、絵は健康維持の秘訣。実は、中世から現代に至るまで、長命な絵描きは多いのです。

画家としての活路

現代社会において、画家としての活路はいくつかあります。
「作品を制作すること」「展示・譲渡・販売などの形で作品を公にすること」を前提とした上で、代表的なものを以下に挙げてみました。

① 教育機関や絵画教室で教師・講師として働く
② 作家としてのネームバリューを上げるため公募展などに出展する
③ プロジェクトを企画しクラウドファンディングで資金を募る
④ パトロンサービスを利用する

①の場合、学校の教諭であれば多少の経済的安定は保証されますが、依頼されて絵画教室の講師などをやるとなると、契約社員に近い立場だと思います。

②は伝統的なアーティスト活動と言えます。画壇という超絶縦社会(偏見)の中で生き抜く覚悟が必要です。

③は現代的なアーティスト活動の一種です。プロジェクトの中身と金額の妥当性によって不特定多数のユーザーの支援を得ることと、オンラインでの情報拡散が命綱となります。

④も現代的なアーティスト活動の一種だと言えます。ここnoteで言えば「有料マガジンの定期購読」がこれに当たります。その他のパトロンサービスについて、詳しくは以下の記事をどうぞ。

いい絵を描くためのたった1つの秘訣

前置きが長くなりました。本題に入ります。

私が考えるいい絵を描くための秘訣とは、

絵の横に何か置いて描く

これだけです。

拍子抜けした方もいるかも知れませんが、具体的にお話しします。

なるべく作品のモデルやモチーフ(現物か写真)・参考資料を手元に置いて見ながら描くことが望ましいということです。または、好きな作家の作品、お気に入りのポスターやフィギュアなど、自分の気分を上げてくれる/精神状態を良い方向に導いてくれるものならなんでもいいです。デジタルで作画するなら、資料となる画像やデスクトップの背景でもいいと思います。

ちなみに冒頭の空の絵は、数年前に撮影した自前の写真を見ながら描いたものです。

作品を通して伝えたいことや描きたいもの、また自分の心境やコンディションに合わせて、臨機応変に変えていきましょう。

ごく稀に、何も見ないで極めて緻密な絵が描ける人がいますが、そういう人はギフテッドと呼ばれます。真の天才です。そうでない99.99%の人の想像力は、残念ながら知れたものです。アニメキャラなどを「見ないで描いてみよう」という遊びがありますが、よほどの訓練もなく寸分違わず描けたという絵を目にしたことは、私はほとんどありません。

見ないで(内観だけに頼って)描いた絵は、往々にして「説得力」のない作品になります。説得力とは、上手・下手の判断よりずっと直感的でスピーディーに「なんかいい」と思わせる力です。

絵を見る人は、作家が思うより少なくとも10倍はシビアに判断を下します。

「なんかいい」絵かどうかは、0.3秒で判断が降ります。

身近な例えを持ち出すなら、これは店に陳列された商品の中から「なんかいい」感じの商品を「目に留める」のと同じくらいのスピードだと言われています。

では、たとえ目に留まったとしても、手に取る確率はどのくらいでしょう。

手に取って、まじまじと見て、買い物カゴに入れる確率はどのくらいでしょう。

「見る」から「買う」に至る確率って、恐ろしく低くないですか?

生活必需品である食料や雑貨ですらそうなのです。嗜好品としての菓子や酒類なども、あらかじめ買うものが決まっておらず、商品の山の中から好きなものを選択するとしたら、なおさらです。

まして美術品とは、その価値についての理解や作者への強い憧れや愛情がない限り、あってもなくても困らない、下手したら邪魔になるものです。ほとんどの人にとっては、ない方がいいものです。

なぜ絵が売れないのか

仮定の話をさせて頂きます。

あなたのお部屋に、モナ・リザ、要りますか?

正真正銘ダ・ヴィンチの描いた本物です。世界に一つだけしかない超高級品ですが、あなたに差し上げます。

非常に胡散臭い例え話で申し訳ありません。「ダ・ヴィンチ」「モナ・リザ」を他の有名なアーティストとその作品に置き換えていただくとわかりやすいかと思います。ラッセンの絵とか。

詐欺かどうかは一旦抜きにして、多少心が揺れたとしても、あなたはいったん冷静になり、設置スペースと管理コストを考えた末、「NO」と答えるかも知れません。私の家族や友人たちに限って言わせていただくと、「YES」と答える人はおそらく誰もいないでしょう。

それでは、質問を変えます。

あなたのお部屋に、私の描いた絵、要りますか?

まあ、要らないですよね。

私はこれこそが画家としての出発地点だと考えます。

ある程度有名になれば、または相手の好みにジャストフィットすれば、欲しいと言ってくれる人を見つけやすくなるかも知れない。ただそれだけだと思います。

どんなに高名な画家でも、売れなくて苦しむことはあるはずです。作風の変化を劣化や凋落と評されることはよくあることで、インターネットがそういう現実を可視化してくれました。これは個人的にはありがたいことです。おかげで下手な幻想を抱かなくて済むからです。

「私の絵」が売れないのではありません。生計を立てるには遠く及びませんが、ありがたいことに、私の絵を買い上げくださった方は実際何人もいらっしゃいます。

「絵が売れない」という事象は、そもそもの前提であって、売れないことが罪なのではない。むしろ、自分の絵が売れることほど有難い - 有ることが難しい - ことはないのだ。私はそのように思っております。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

ここまでお読みくださり、有難うございます。

もしあなたが絵画やイラストなど描かれる時に、この記事のことを少しでも思い出していただければ幸甚です。

この記事が参加している募集

次の作品への励みになります。