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【アルバムレビュー】 Am7 【チクタクさん】

全曲レビューです。原曲(弾き語りver.)へのリンクも張っています。

0.夢の底
アルバムの入り口となる曲は、人々の雑踏と混じり合うように奏でられる。深いエコーとリバーブの中、「君」と深い夢の中で出会う情景が幻想的に描かれる。最後に雑踏の音が次第に大きくなり、夢から目覚めるような感覚になる。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n783b19c2399e

1.drawing
前曲「夢の底」から曲間なしで続く。夢から覚め、車に乗り込むと、アルバムの収録曲が次々とザッピングされるという憎い演出から、ギターアルペジオのイントロに入る。車の走行音や踏切音などの環境音(チクタクさんの歌詞に頻出する日常を象徴するモチーフでもある)の中で歌い上げられる「消さないで それも君でしょ」のフレーズにはいつもハッとさせられる。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n78419723c6e9

2.あなたへ
「drawing」から間髪入れずに始まる軽快なバンドアレンジに思わず体が動く。「あなたへ」真っ直ぐな想いを乗せた歌声が、あげまんじうさんのコーラスと掛け合い、「あなた」との信頼関係を思わせる。3分弱という短さながら存在感の強い曲。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/ncdcd11c4302a

3.虹彩
風が吹き荒ぶ薄暗い曇天、さすらうように独唱するチクタクさんと、叫ぶように響き渡る花介さんの歪んだエレキギターが印象的。鼓舞するかのようなベースとドラムが重なり、雲の切れ間から明るい光が差し込むようなイメージが浮かぶ。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n03806592d142

4.天使のはしご
優しいピアノとストリングスの中でチクタク節が響く。あげまんじうさんのソプラノが賛美歌のような色彩を放ち、天使の降臨を思わせる。チクタクさんも呼応するかのようにファルセットで歌い上げ、癒し効果抜群。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/nedb7498f1c75

5.ゆせん
鳥がさえずる平和な情景から始まる。ストリングスアンサンブルが映画音楽のようにエモーショナルに駆け抜け、アコースティックギターのメロディが爪弾かれ、タイトル通り終始温かな曲調。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n85edfdd0b11c

6.kingfisher
ブルージーなギターが泣き叫ぶ中、まるで語りかけるように歌うチクタクさん。「どうしょもない」乾いた日々を潤すのは、「泣いてみようか 別にいいよ」という軽妙な寛容さや、「明日の朝何食べようか」という素直さかもしれない。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/ne4e8425b5f9e

7.ビアンコネロの猫
欧州の石畳の街並みを思わせる歌詞に、ラテンの香りムンムンのソロギター、タップシューズの音を合わせるという高度な仕上げ方。情熱的に踊り出したくなるような異国情緒がアルバムのアクセントとなっている。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/nfe3460c1f4c6

8.月どろぼう
非常にシンプルな弾き語りバラード。「君」が忘れられずに一人で過ごす月夜の情景が浮かぶ。後半、チクタクさんとあげまんじうさんがユニゾンしながらの「slow dance」がとにかく美しく、聞き惚れる。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n1efcad9a6eeb

9.オール
車の通る音、信号の音響、ボートを漕ぐ音など、歌詞と呼応した環境音が豊富に取り入れられている。逆に楽器の音はほとんどなく、エモーショナルな弾き語りと環境音、コーラスだけで構成されている。一歩を踏み出すことをためらう心情が、リアリズムをもって描かれた音の中に浮かび上がる。アレンジャー花介さんの並並ならぬこだわりが読み取れる。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/ndb4b6ad80d0a

10.カタン
ディストーションの強いエレキギターが唸る、グランジロックのようなアレンジ。「俺は俺だ」と豪語する孤高の主人公が、激しい雷雨の中で「君」の声を思い出し。「少しだけ君に会いたくなったよ」と吐露する。アルバムの中でも突出してダイナミックかつドラマチックな作品。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n13cdea4c6036

11.ensemble
前曲「カタン」と対になるようなメロウなナンバー。ヒーリングミュージックの代名詞・エンヤを思わせるコーラスから、幻想的で儚い世界が紡がれていく。Radioheadの名曲、No Surprisesを思わせるアレンジ。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n429ce149ca69

12.星ひとつ
終曲に最もふさわしいのは、やはり生前のひなたさんに捧げたこの曲だと思う。少し震えた声で、しかし力強く歌うチクタクさん。ブルースハープで共演する花介さん、神秘的なコーラスで曲を彩るあげさん、3人が共にひとつの星に向かって思いを届けようとする姿に、ただ胸を打たれる。
原曲
https://note.mu/quruli1208/n/n67bfa34bd43e

これまでに100曲以上を生み出してきたチクタクさん。その世界観をより深め、広げてくれた「chiktak band」の3人の仕事ぶりに頭が下がります。アルバムに選曲された全13曲は、それぞれが絶妙のバランスで作用し合っていると思います。このうちいくつかの曲は私も編曲したことがありますが、新たな解釈で聴くことができてよかったです。
歌詞カードの最後に引用されていたアインシュタインの言葉も印象的でした。

Imagination is more important than knowledge. Knowledge is limited. Imagination encircles the world.
(空想は知識より重要である。知識には限界がある。想像力は世界を包み込む。)

そんなアルバム「Am7」noteでは20枚限定販売です。気になった方はお早めに。
https://note.mu/quruli1208/n/n8a5dd9a18c9e

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