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蜂の内見現場に出くわした女の話


始まりは8:30am、もちろん予告なし

それは昨日の朝。

「ブーン」という羽音で目覚めた私は
「あ、昨日サッシを閉め忘れたのかな」と窓に目をやるもしっかり施錠。
「?」

羽音はエアコン内部から聞こえている様子。
ブーン (沈黙) ブーン (沈黙)
「はて…?」

窓の外に目をやると、エアコンのダクトあたりで屯(たむろ)している蜂が数匹おりました。
「え、うちのエアコンから中に入ろうと思ってんの?」

エアコン目掛けて殺虫剤を撒くも反応なし。
再度室内に目をやると、エアコンと壁の隙間から蜂が「失礼致します」という低姿勢で入ってきました。それはあたかも茶室の躙口(にじりぐち)から入る客人たち。
そのまま同行蜂が続々と同じルートで入室し、レースカーテンが珍しいのかみんなでキャイキャイと楽しそうにカーテンをよじ登っています。
「私の寝室は、これから養蜂場になるのだろうか…いやこれはSDGs的にはありなのかも」などいらぬ考えをしばらく巡らせ、下した決断は
「私は虫フレンドリーではないので、ご退室いただく」でした。


思い出した「虫マター」

元々、虫が好きではないのです。子供の頃にクワガタに指を思いっきり挟まれたことが原因かもしれませんが、羽音が聞こえると心拍数が爆上がりします。
タンパク質が多いとか言われても、自然界で役割がちゃんとあるんだよ、といくら言われても、仮にきっといい心の持ち主だとしても。
ふと去来したのは、大学を出て初めて引っ越したアパートでの出来事でした。
広々とした空間が好きで8年ほど住んだのですが、ある日のリラックスタイムの最中に突然室内が羽虫の巣窟となり、その後慌てて退室したのでした。
あぁ、あれは怖かった。小さいものが集団でいらっしゃるのを見るのは鳥肌案件です。

活動の場所にいるのはやむなし、でもプライベート空間にはいないでくれ。


とりあえず知恵を絞る

大家さんに慌てて連絡。返信には
「スズメバチなら業者を呼んでください」
…大家さん、蜂によってはこれから事故部屋になるのかもしれないのですよ。。
管理会社さんは開店前で留守電メッセージ。
それなら、と契約時に加入した損保会社に事故センターにかけるも水や鍵のトラブルのみ対応とのこと。

むむむ。なす術なしか。
とはいえ、私はこれから仕事なんだよね。
レースカーテンで遊ぶ蜂達を横目にメイク道具と今日の衣類、アクセサリーをそっとキッチンに運び出す。
なんだろう、この居候感。めっちゃ肩身狭いんだけど。

まずは無傷で家を出ろ

次のミッションを遂行すべく、キッチンで出かける準備を一旦終わらせました。
正直、眉毛は描いた気がしなかった(描いたかどうか、職場で再度確認した)。

残すはお客さんの対応のみです。目視できる蜂さん御一行は4匹。
窓を開けたくともレースカーテンにまだステイされているので、それは叶わず。
意を決して殺虫剤をカーテンの隙間からそっと噴霧(殺虫剤って、実はアリ向けのフ○キラーとかが、ノズルがあって狙いやすいって知ってましたか)。

あぁ、まるで私はスパイ。

「SOS」を出す

もう自力では解決しない、これは。
仕事とリハーサルを終えて帰宅して、イナバ物置みたいに蜂が100匹でカーテンみたいにぶら下がって待っていたら、多分もうこの部屋には住む気は起きない。

もうだめだ。

一番頼れる友人に連絡しました。
ごめんね今日は仕事だよね、でもかくかくしかじか。
「夕方に行くよ。それまで蜂髭おじさんスタイルで待ってて」
(一瞬白目)
でも緊張の糸が切れて、普段の自分の感覚を取り戻し、家を後にしました。
なんてありがたいの。


いざ、蜂さんご退室

帰宅すると、出勤前に噴霧したスプレーが効いたのか、蜂さん御一行(6匹に増えてた)は永遠にお休みの様子でした。とはいえ、明日また来るかもしれぬ。

その後、夕方に友人夫妻が来てくれました。
その姿はアベンジャーズと被りました(ごめん盛った)。
旦那さんの手にはハチ用スプレーと白い石膏のパテ。最高の武器です。
そのままハチ用スプレーをエアコン内に噴霧し、侵入経路を確認し、その間女性陣はキッチンで人生初の蜂談義。

旦那さんによると、
どうやら巣はまだないが、巣作り候補物件の内見に来ていたようで。
蜂の巣作り物件探しって、ちゃんと業者とお客さんのセット(ゆえに団体様)で行動しているらしく、梅雨前のこの時期に多いんだそうです。
そしてたまたまエアコンダクトを通すパイプと壁材とを埋めるパテが劣化し、隙間ができていた私の家が候補に上がったようです。

ひとまず侵入経路をパテで塞いでもらい、エアコン内部も無事そうなので、今回はもう大丈夫でしょう、とのことで一件落着しました。
アベンジャー夫妻が帰り際
「このまま行ったら養蜂系シンガーになれるチャンスだったのにね!『部屋とハチミツと私』って曲書いといたら?」と言われて大爆笑したのでした。

緊張を解いてくれる存在って、すんごくありがたい。
友よ、心から感謝しています。



ということで、教訓は以下。
・梅雨前のこの時期、窓の外に蜂さんが屯(たむろ)していたら要注意
・蜂さんの内見現場に立ち会ったら、ひとまずその場を離れましょう
・蜂さんのご退室業務は1人で行わない


ここから後日談
翌日、翌々日と偵察と思われる蜂1匹が我が家のベランダにフラリ。
「あれ、内見隊送ったのに戻ってこないなー。」
みたいな、まさにそんな動きで蜂社会の構造の素晴らしさにいたく感動(ごめん退治しちゃったけど)。




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