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【選挙ウォッチャー】 北海道胆振東部地震のブラックアウトとハッタリの数々。

9月6日午前3時8分頃、北海道胆振地方を震源とするマグニチュード6.7の地震があり、厚真町では震度7を記録しました。北海道で震度7を記録したのは観測史上初となります。今回の地震の特徴は、震度7という揺れの大きさに加え、北海道のほぼ全世帯で停電に陥ってしまう大規模な「ブラックアウト」が起こったことです。もし泊原発が稼働中だったら、まったく予断を許さない状態に陥っていたことは間違いありません。


■ どうして「ブラックアウト」が起こってしまったのか

北海道電力は、そもそも脆弱な送電システムを持っていました。というのも、電力を苫東厚真火力発電所に集約させて送電する仕組みになっているため、苫東厚真火力発電所が停止してしまうと電力のバランスが崩れ、ブラックアウトする設計になっているのです。これは火力発電所が悪いのではなく、送電網の設計が悪いという話なので、泊原発が動いていようが、風力発電や太陽光発電が発展しようが、今後も苫東厚真火力発電所が止まるようなことがあれば、北海道全域でブラックアウトが起こるのです。解決するには送電網の仕組みを変える以外にありませんが、北海道電力がどこまで改善してくれるかは分からないので、自家発電装置を置く、あるいは1週間分のスマホの充電池を持つなど、自分たちでできる対策を取ることが大切なのかもしれません。


■ 「泊原発を動かした方がいい」はアホアホ理論

この深刻な地震被害に乗じて「泊原発を動かすべきだ」と言い出す人たちが現れました。今回のブラックアウトの原因が「送電網」にあることが分かっていない人たちが多いので、苫東厚真火力発電所が停止した瞬間に泊原発も動かなくなってしまい、冷却に必要な電源が失われてしまうので、福島第一原発事故のように、極めて危機的な状況になってしまうということを教えてあげないといけません。原発を動かすためには「原発を動かすための電気」が必要であり、それには外部電源が必要です。簡単に言うと、泊原発は苫東厚真火力発電所が動いていないと動かせないということです。それどころか、苫東厚真火力発電所から電力を得られない場合、燃料棒を冷却するための電源が取れなくなってしまうので、そうなった時には非常用ディーゼルを稼働させ、その場をしのぐことになるのですが、その非常用ディーゼルも燃料プールの冷却だけで1週間ほどしか持たないので、高温の原子炉を冷却するとなると、タイムリミットはさらに短くなってしまいます。忘れてしまった方も多いかもしれませんが、福島第一原発は外部から電力を取ることができなくなってしまったために起こりました。非常用ディーゼルが津波で壊れて使い物にならなくなってしまったことも原因ではありますが、外部から電力を供給できれば非常用ディーゼルがなくても事故は起こりませんでした。外部から電力を供給できない上に非常用ディーゼルが使えなくなってしまったため、あれだけの事故が起こってしまったのです。あの事故処理にかかるお金があったら、今頃、日本全国の子どもたちの医療費を全額無料にしたところで、まだお釣りが来ただろうという話です。今回は幸いにも泊原発が停止していたため、非常用ディーゼルが稼働し、冷温管理している燃料プールを冷やすだけだったので実質的に2週間ほどの余裕がありました。電源が喪失して2週間持つのと2日しか持たないのでは緊迫感が全然違います。福島第一原発事故だけでもキツいのに、これで北海道まで終わった日には日本の終わりを意味します。堀江貴文さんが「泊原発を動かすべきだ」とツイートし、ネトウヨが喜んでいましたが、ロケットを打ち上げようという人が分かっていないとは思えないので、これは最悪の事態を利用した原発プロパガンダです。しかも、原発は動かそうと思って翌日に動かせるものではありません。燃料棒を入れるところから始めるなら、最短でも2週間以上かかるので、その頃には停電も終わっているという話です。結局、送電網の設計が悪いので、他の火力発電所はもちろん、太陽光発電や風力発電で作られる電気も止められることになったのですが、ネトウヨがTwitterで「太陽光発電も風力発電も役に立たない、原発を動かすべきだ」と言い出してトレンドに乗りました。しかし、先程も書いたとおり、苫東厚真火力発電所が止まった時点で泊原発も動かせなくなるシステムなので、太陽光発電や風力発電ばかりを悪者にしていますが、泊原発に至っては停止して使えないばかりか、事故を起こすリスクが増えるばかりです。また深刻な原発事故を起こせば、今度という今度は、北海道どころか日本経済が完全に終わるので、つい7年前に起こした原発事故の反省もなく同じ事故を起こすほど無能なことはありません。太陽光発電や風力発電が役に立たないかのようなツイートが目立ちますが、本当に役に立たないのは北海道電力のリスク分散ができていない送電網なので、太陽光発電や風力発電が悪いのではありません。このようなツイートを広めるのは、世の中にアホを広めることになります。これだからネトウヨは害悪なのです。


■ 地震の1分後に対策室、2分後に指示を出す極端な対応スピード

確かに震災対応は早ければ早いほど良いのですが、ここまで早すぎるのは絶対に嘘です。いくら西日本豪雨災害の時に対応が遅すぎて批判されたからって、地震の1分後に官邸対策室が立ち上がり、2分後には指示を出しているなんて、どうしてこんなに極端なのでしょうか。この人たちにリアルはないのでしょうか。誰がどう頑張っても1分後に対策室を立ち上げ、2分後に指示を出すなんて不可能です。これほど不可能なスピードを堂々と言ってのけるようになると、これはもう対策室を立ち上げた時刻も、指示を出したことも「嘘」にしか思えません。この国にはちょうどいいヤツはいないのでしょうか。いくら早ければ文句を言われないだろうって言っても、100mを3秒で走るぐらいの話をされると、「それはさすがにない!」という話です。

だいたい、これが本当だとすると、北海道に住んでいるわけでもない安倍晋三総理が驚異的な直感で地震を探知し、NHKの速報が出る前に官邸対策室を立ち上げるように指示を出し、その指示と同時ぐらいで「政府一体となって被災者の救命・救助等の災害応急対策に全力で取り組め!」と言い出したことになります。北海道で暮らしている人でさえ、直後に停電が起こって状況を把握するのにラジオを探している頃に、東京にいる安倍晋三総理が既に指示を出している計算です。こんな超人的な話があったでしょうか。その割には5時49分に記者会見に応じている顔は全力で寝起き感がありましたが、3時10分に指示を出して5時過ぎまで二度寝していたということでしょうか。首相官邸の公式ツイートで、絶対にあり得ない嘘をつくのは良くありません。地震が起こった直後に秘書官が首相を起こし、ちょっと寝ぼけながらも話を聞いてその場で指示を出すにしても、少なくとも5分以上はかかるはずです。「その5分を2分に縮めろ!」なんてことを言い出す人がいるでしょうか。僕たちの願いは本当のことをリアルに伝えてほしいということです。いくら忖度するにしても、嘘をつくんじゃないって話です。状況もよく分からない段階で2分後に指示を出すなんて不可能なので、こんなふうに堂々と嘘をつくようになったら、この国も終わりなのです。


■ 民間企業の奮闘を自分のお手柄にする発言

こういう批判を書くと、ネトウヨはすぐに「アベガー」と言ってくるのですが、べつに安倍晋三総理のことが嫌いなわけではありません。もし今度の自民党総裁選の結果、石破茂さんが総裁に選ばれ、総理大臣が変わることがあったとしても、同じことをしていれば石破茂さんを批判することになるでしょうし、それは政権交代が起こったとしても変わりません。良いものは良いし、悪いものは悪いのです。しかし、最近はあまりにもネトウヨが多すぎて、安倍晋三総理を批判しようものなら「パヨク」と呼ばれるのです。

安倍晋三総理がまったく仕事をしていないかと言うと、そんなことはありません。自衛隊に指示を出す権限はシビリアンコントロールの観点から総理大臣や防衛大臣にあるわけですが、安倍晋三総理が自衛隊に指示を出して人員を増強し、復旧や復興を迅速に行うというのは安倍晋三総理の仕事であり、まさか人員を増やしたことを批判する人はいないことでしょう。人によっては「もっと増やせないのか」みたいな話をする人もいるかもしれませんが、状況に応じてさらに増やすことも検討していると言うのですから、仕事をしているか仕事をしていないかで言えば仕事をしています。あまりにも当然すぎる仕事なので褒めるほどの話ではないにしろ、その仕事っぷりを認めていないわけではありません。

しかし、安倍総理をはじめ、お仲間の閣僚たちは、本当はまったく自分たちのお手柄ではないものを、まるで自分のお手柄のように語る傾向があることを知っておくべきです。例えば、夜を徹して作業を進め、明朝までに全体の3分の1にあたる100万世帯を超える皆さんに電力を供給できるように頑張るのは、北海道電力の仕事であり、安倍晋三総理ができることは「頑張れ!」と応援するぐらいのものです。まるで指示を出したかのように言っていますが、こんなものはいちいち指示を出されなくても対応する話です。世耕弘成経済産業大臣も記者会見で「北海道電力に対して数時間以内に復旧の目処を立てるように指示を出した」とドヤ顔で言っていましたが、そんなものは「指示」みたいな偉そうなものではありません。本当は民間企業に対するお願いなのに、やたら上から目線で「指示」と言っているだけです。それでも視聴者は「安倍さんのおかげ」とか「世耕さんのおかげ」と思ってしまうのですから、もう少し距離を置いて現実を見ていかなければなりません。


■ 災害などに備えて用意している予備費

日本政府は、今回の北海道胆振東部地震で616億円を拠出し、ライフラインの復旧や被災者の食料、衣類の提供などに使うことを閣議決定します。これは災害などに備え、いざとなった時に使うための「予備費」からの支出で、今年は3500億円を用意していました。これまで西日本豪雨災害などで1090億円を支出しており、今回の地震で616億円を使うとなると、残りは1794億円ということになります。まだ西日本豪雨災害の問題が解決していない段階で、北海道にお金がかかることになったため、これでは足りない可能性が出ています。これ以上の災害が起こらないことを願うばかりです。


■ 東海地方の台風21号が原因の停電はまだ解消されていない

北海道のほぼ全域で起こっている大規模な停電ばかりが注目されていますが、実は、9月4日の夕方に中部・関西地方を襲った台風21号が原因の停電が、まだ解消されていません。9月6日午後6時現在で、岐阜県内では1万5260戸の停電が続いており、愛知県200戸、三重県970戸で停電となったままです。北海道ばかり大変だと思っていますが、あまり報道されていないだけで、他のエリアもまだまだ大変だということを忘れてはいけません。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

北海道胆振東部地震の影響で、自民党総裁選のプロモーションが自粛されることになりました。石破茂さんはそもそも総裁選の時期をずらすべきではないかと言っていますが、安倍晋三陣営は予定通り実施するという姿勢を崩していません。西日本豪雨災害、台風21号の災害、そして今回の北海道胆振東部地震。日本中のあちこちが酷い災害に見舞われ、困っている人がたくさんいるのに、石破茂さんを完膚なきまでに封じ込め、安倍晋三総理の独裁状態を高めることを最優先する。本来は政治家として、もっと全力を尽くさなければならないことがたくさんあるだろうに、自民党総裁選、沖縄県知事選と負けられない選挙が続くため、国民の救済よりも選挙が優先されるというのが、今の日本の姿なのです。しかも、そこには国民を納得させるための嘘やハッタリがたくさんあって、国民のリテラシーが試される事態になっている現実。どうやら僕たちは、なかなかハードコアな時代に生きてしまっているようです。もっと政治に関心を持って、僕たちが投票した議員がちゃんと仕事をしているのかどうかを見極めていかなければなりません。[了]

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