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【選挙ウォッチャー】 沖縄県民投票・現地レポート(#1)。

ついに沖縄県民投票が始まりました。うるま市や宜野湾市、沖縄市、石垣市や宮古市などが県民投票の実施に反対する決議を下し、ギリギリの調整になったのですが、どうにか県民投票が実施されることになりました。沖縄県民の皆さんがどのような判断をするのか。今日から沖縄に滞在し、沖縄県民投票を見守る短期集中連載をお届けすることにしました。沖縄では今、どのようなことが起きているのか。皆さんにしっかりとお届けしてまいります。


■ 沖縄の世論調査の結果は「反対多数」である

共同通信社が2月16日、17日に実施した世論調査によると、「県民投票に行く」と答えた人は94%にのぼり、そのうち、辺野古の埋め立てに「賛成」15.8%「どちらでもない」13.1%「反対」と答えた人は実に67.6%になりました。本当に94%の人が投票に行くかどうかはかなり微妙なところですが、沖縄県民の約3分の2は「反対」だということになりそうです。もっと面白いのは、各政党を支持している人たちの投票動向です。2月18日付の東京新聞に掲載されていたデータを元にグラフにしたものがコチラです。

支持政党のない、いわゆる無党派層の賛成は9.8%しかなく、沖縄県民で辺野古基地の埋め立てに賛成しているのは、ほとんどが自民党支持者と公明党支持者ということになります。とりわけ自民党支持者の比率は非常に高く45.6%の人たちが賛成しています。自民党を支持している人の半分近くは、積極的に辺野古基地を埋め立てるべきだと思っているということになります。興味深いのは共産党支持者です。共産党支持者の約1割は「賛成」と答えているため、改憲に断固反対のイメージのある共産党の支持者たちの約1割が、辺野古の海なんざ埋め立てた方がいいと思っているということになります。立憲民主党を支持している人は5.9%、社民党を支持している人が1.7%しか賛成している人がいないと考えると、想像以上に「高い」と言えるのではないでしょうか。逆に、辺野古基地は埋め立てるべきではないと「反対」している人たちを見ると、自民党支持者でも約3人に1人は明確に「反対」していることがわかります。平和を愛する創価学会の方々を支持母体とする公明党で反対しているのは、わずか38.3%5人に2人ほどしか海をぶっ壊して基地を作ることに反対している人はいないということになってしまいます。「本当に平和を愛しているのか?」ということは大いに疑われます。支持政党のない人たちのうち、71.9%「反対」だと言っており、思った以上に反対している人が多い印象です。そして、今回の県民投票は「3択」ということになっていますので、「どちらでもない」という項目があるのですが、最も多いのは公明党で37.4%。およそ3人に1人以上の人が「どちらでもない」という中途半端な答えをしているのです。次に多いのが自民党支持者の20.3%。支持政党のない人たちで「どちらでもない」と答えている人は13.7%しかおらず、だいたいの人は態度が固まっていると言っていいようです。


■ 沖縄県民投票もデマゴークとの戦いである

沖縄県知事選の時にもネトウヨのデマが問題になりましたが、今回の沖縄県民投票でもネトウヨによるデマが問題になっています。デマゴークたちは何一つ証拠や根拠がなくても、まるでそこに何かの陰謀が隠されているかのような話を繰り出し、それをリテラシーの低い「B層」が信じてしまうという現象が起こっています。沖縄を代表する有名なデマゴークの一人、ボギーてどこん。この男は県民投票にカラんで、このようなツイートをして、たくさんのリツイートや「いいね」をつけています。

最低でも6万6000円かかる「おくやみ欄」の広告料が、反基地勢力に加担すれば無料で掲載してもらえる可能性が高いといい、これが沖縄2紙の大きな収入源になっているというのです。この話を聞いて、150人以上のネトウヨが「なんてことだ!」とリツイートし、200人以上が「いいね」を押しているのです。しかし、よく考えてください。もし反基地勢力の人たちの広告料を無料にしてあげるのだとすると、通常6万6000円以上入ってくるはずの収入が0円になります。この状態でどうやって収入源にするのでしょうか。反基地勢力に加担している人が2倍のお金を払うというのなら大きな収入源になることでしょう。しかし、ボギーてどこんは、沖縄タイムスや琉球新報が「あなたは反基地勢力だから無料にします」とやっていて、収入が0円になってしまうのに「大きな収入源になる」と言っているのです。こんなに頭の悪いロジックがあったでしょうか。

しかし、ボギーてどこんを信じるフォロワーたちは「裏で大量の資金を出してる政党、それに準じる集団組織、国内活動家連中の素性、国外から反日・反米活動のために沖縄に来てる連中が炙り出された」と言っているのです。まず、今回の県民投票は各自治体の予算で賄われています。当初、この県民投票は石垣市や宜野湾市、沖縄市、うるま市がゴネていましたが、予算案を否決することで県民投票を実施させないという抵抗をしていたのです。そして、結局は3択にすることで合意したため、各自治体からの予算で実施されることになりました。この県民投票のために大量の資金を出している政党はありませんし、もし県民投票の広告に政党がお金を使っていると言いたいのなら、それは沖縄県知事選で佐喜眞淳さんの陣営が投入したお金に比べれば圧倒的に少ないでしょう。それに準じる組織というのが何を意味しているのか分かりませんが、県民投票を実現しようとしている市民団体にはお金がありませんので、巨額の費用を捻出するのは不可能です。国内活動家連中の素性がわかったと言いますが、先程もご覧いただきましたように、自民党や公明党を支持しているような人たちでさえ約3割は基地に反対です。この人たちも「国内活動家連中」というくくりになるのでしょうか。国外から反日・反米活動のために沖縄に来ている人がいるとのことですが、見たことがありません。だいたい国外から来ている人たちには県民投票の権利がありませんので、どれだけ呼びかけたところで、自分たちで投票することはできないのです。それ以前に、世論調査の結果は過半数が「反対」なのですから、反対しているのは外国人に違いないというのはネトウヨをこじらせた妄想に過ぎません。「NO共産主義」と書いていますが、おそらくご本人は何が共産主義なのかを説明することができないことでしょう。ネトウヨというのはそういう人たち、いわゆる「B層」なのです。


■ 沖縄県が県民投票するのは初めてではない

沖縄県が県民投票をするのは、これが初めてではありません。1996年には「米軍基地の整理縮小と日米地位協定の見直し」をテーマに住民投票が実現し、「賛成」が多数を占める結果になりました。当時の大田昌秀知事は橋本龍太郎総理大臣に県民投票の結果を手渡し、少しだけ整理縮小が進みました。とはいえ、現在も日米地位協定は見直されないまま、23年が経過しています。1997年には沖縄県名護市で住民投票が行われました。この時は「米軍普天間飛行場の返還に伴う海上ヘリポート建設」の是非が問われることになり、こちらは反対が多数となり、当時の市長は辞任しています。今回は玉城デニー知事のもとで、改めて住民投票が実施されることになり、有権者の4分の1以上を満たせば、日本政府とアメリカ政府に対して住民の意志を伝えることができるようになります。2月13日現在の有権者は115万6295人なので、その4分の1ということは、28万9074票で成立することになります。ちなみに、昨年9月30日の沖縄県知事選で玉城デニーさんが獲得したのが39万6632票、過半数を超えるとなると57万8148票が必要になります。


■ 東京の人々が思いを寄せる沖縄県民投票

今回の県民投票は「沖縄県民の意思を問うもの」であり、沖縄県外に住んでいる人たちに投票権はありません。なので、県外の人が辺野古基地に対してどのような思いを抱いていたとしても、この県民投票に参加することはできませんし、すべては沖縄県民の方々に委ねられているものです。しかし、辺野古基地の問題をぜひとも多くの人に考えてもらいたいという有志たちが集まり、2月17日は池袋や新宿などでスタンディングが行われました。ここで呼びかけたところで何かが変わるわけではないかもしれませんが、それでも東京で暮らしている人たちに少しでも沖縄のことを思ってほしいのです。

多くの人は見向きもしません。さすがは池袋や新宿とあって、アクションを起こしている人たちの前を通り過ぎる人の数はめちゃくちゃ多いのですが、多くの人は無関心です。自分の街に基地ができるとなれば少しは関心を持つのかもしれませんが、お金がないから旅行でも行かないような沖縄の、那覇から車で2時間ぐらいかかる名護市辺野古の基地ができると言われても、まったくピンと来ないのです。しかし、くら寿司のバイトがアホみたいな動画をネットにアップしたことはみんな知っているのに、沖縄県で今、何が起こっているのかを把握する人は少ないです。それどころか、ネトウヨをこじらせ、ヘイトスピーチに参加したり、ヘイトクライムをして、とうとう殺人事件まで起こしてしまうようなネトウヨが生まれる始末です。新聞も読まず、ニュースを隅々までチェックするわけでもなく、ネット上のデタラメ情報を信じ、さまざまな判断を間違えるネトウヨたち。現代を生きる日本人の知性の劣化はどこかで食い止めなければなりません。

本土で暮らす人たちの多くはいまだ無関心です。そして、この無関心がこれまでたびたび沖縄の方々を傷つけてきたかもしれません。しかし、今はそんな無関心な人たちに向かって、少しでも関心を持ってもらおうとする人たちが立ち上がるようになりました。このムーブメントにはまだまだ時間がかかるものの、静かに少しずつ広がりつつあります。まさにLGBTに対する認識を何十年もかけて変えてきたように、沖縄に対して思いを寄せる人たちが少しずつ本土の人たちを変えようとしていることは確かなのです。今すぐに無関心が変わることはないかもしれませんが、変えるための動きをする人たちは現れているのです。


■ 沖縄県民投票の現地レポートを無料提供

「チダイズム」では、2月20日~26日にかけて沖縄県内を取材する計画を立てております。現地で取材した内容は、その有益性を鑑みて、なるべく多くの方に読んでいただいた方が良いと思いますので、無料でお届けさせていただくことにしました。無料でお届けするということは、往復の交通費、宿泊費などの経費をレポートの売上で賄うことができないため、ツイキャスおよびサポートにて、皆様からのご支援をお願いしたいと思います。なるべくたくさんの方から話を聞いて、しっかりとレポートしてまいりたいと思いますので、ご協力の程、よろしくお願いいたします。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

今回の県民投票は「賛成」「反対」以外に「どちらでもない」という項目が加えられ、3択で住民投票が行われることになりました。しかし、辺野古基地を作るために海を埋め立てることを問われ、「賛成」「反対」は理解できるとして、「どちらでもない」というのは明らかにおかしな選択肢です。人というのは必ず「賛成」「反対」のどちらかに振れるものですが、「どちらでもない」というのがどんな時なのかを考えると、めちゃくちゃカオスなことになります。例えば、辺野古について勉強するつもりもないし、賛成とか反対とかも考えたくない、考えさせるっていうなら時給をくれっていう人は「どちらでもない」になるでしょうか。あるいは、質問されても答える気が起きないほど眠い人も「どちらでもない」になりそうです。「賛成ですか?反対ですか?」と聞かれて、「黙れ!そんなことより眠いんだ!」という人は、とりあえず質問どころじゃないので「どちらでもない」でしょう。腹から腸が飛び出ていて今すぐ緊急手術が必要な人も、辺野古の質問どころじゃないので「どちらでもない」でしょう。あとは、何を聞いても「私は神である」しか言わなくなってしまった人です。脳味噌が完全にバグってしまい、「今日何食べる?」って質問しても「私は神である」しか答えなくなっちゃった奴は「どちらでもない」でしょう。いずれにしても、「どちらでもない」という答えは、こんな時にしか成り立たないと思うのです。世の中にいる約10%ほどの「どちらでもない」の人たちは、どういうメンタルで「どちらでもない」を選んでいるのでしょうか。このあたりも取材してきたいと思います。

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