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【選挙ウォッチャー】 春日部市議選2018・分析レポート。

本当は、伝説のプロレスラー・大仁田厚さんが立候補する佐賀県の神埼市長選を追いかけたかったのですが、僕は「NHKから国民を守る党」の副代表で朝霞市議の大橋昌信さんから「小銭稼ぎ」と罵られるほど売れていないインディーズ野郎なので、佐賀行きの交通費を捻出できず、今週は春日部市議選を追いかけることになりました。「NHKから国民を守る党」なんていうカルト政党を追いかけるより、絶対に大仁田厚さんを追いかけた方が面白いと思うのですが、大橋昌信さんから「これで春日部にアホ面ぶら下げて私の前に現れたら大したものだ」と罵倒されたので、アホ面ぶら下げて春日部市議選を追いかけております。

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僕にまだ知名度がないせいで、朝霞市議の大橋昌信さんに知られていないのだと思いますが、僕は昨年10月から細々と「選挙ウォッチャー」を始め、全国各地を飛び回り、大阪や岐阜、沖縄などの選挙を自分の目で確かめ、レポートに書いております。めちゃくちゃ面倒臭い上に交通費がかかるので、毎度、心が折れかけるのですが、それでも現場で見て取材をするのが「選挙ウォッチャー」のスタイルです。なぜか「取材をしていない」と決めつけてくださるのですが、今回もしっかりと現場で見たものをまとめていきたいと思います。


■ 問われる「NHKから国民を守る党」の公職選挙法違反

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選挙初日、「NHKから国民を守る党」の代表・立花孝志さんは自らのYouTubeで、警察を呼び、「届け出がまだ済んでいない立候補予定者のポスターが貼られている。届け出が終わっていないのにポスターを貼ってはいけないと公職選挙法で決まっているのにポスターが貼られています」と語っていました。当日は選挙管理委員会の届け出の受理が遅れるトラブルがあったそうですが、各陣営とも届け出が遅れることは前提としておらず、ポスターを貼るスタッフも「午前8時30分から貼るように」と指示を受けていたはずで、かなり厳密に言えば公職選挙法に違反しているのかもしれませんが、こんなことで取り締まられた前例は、おそらくないと思います。選挙の時の公職選挙法は、制限速度50kmの道路のスピード違反みたいなもので、120kmで走っているような車があったら取り締まられますが、時速60kmや70kmで走っていても、よほどのことがない限りは取り締まられません。名護市長選では公民館が渡具知武豊陣営の連絡所として私的に使われていましたが、それさえ取り締まられることはありませんでした。グレーゾーンと言えば、選挙期間中に投票を呼びかけるビラを配ることはできませんが、NHKから国民を守る党は堂々とビラを配布していました。これも厳密に言えば公職選挙法違反のはずなのに、これで取り締まられることはあまりありません。一方で、うちわを配ったり、おにぎりを配ったりすることはアウトとして解釈されることが多いです。それがおにぎり1個だったとしても「有権者の買収」と考えられるものは「アウト」になる可能性が高いのです。

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そういう観点から言うと、NHKから国民を守る党のボランティアスタッフが配布していた「NHKの集金人を撃退できるシール」は、年間1万3990円の受信料を支払わなくて良くなるというもので、実質的に1万3990円の金券を配布しているに等しい行為です。もちろん、このシールに本当にそんな効果があるのかという点では非常に怪しいのですが、受け取った有権者が「嬉しい」と感じるのであれば、たとえNHKの集金人を撃退できなくても公職選挙法違反になります。他人の公選法違反にはうるさいのに、自分たちの公選法違反には甘いというのが「NHKから国民を守る党」の党の性質ですが、このような「買収」が取り締まられずにまかり通ってしまうと、今後、あらゆる選挙でシールをプレゼントして有権者を買収しても良くなってしまいます。ましてや幟に「無料配布中」と書かれているほどです。春日部市警察署がちゃんと取り締まってくれるのかという点についても、僕たちはしっかり見守っていきたいと思っています。


■ 「NHKから国民を守る党」から立候補した酒谷和秀さん

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来年の豊島区議選には注射器の闇転売で逮捕歴のある人物を、今月6月には悪名高い「ニコ生主」と名の知れぬ大学で催眠学を教えている新興宗教風味な女性を擁立する「NHKから国民を守る党」。この政党から立候補してくる人たちは、既に朝霞市議になっている大橋昌信さんをはじめ、ことごとく社会的に認められないような人たちなのですが、そうなってくると酒谷和秀さんも気になります。酒谷和秀さんのFacebookを見ると、福島第一原発事故の放射性物質に対して非常に心配しており、山本太郎さんや社民党のことを好意的に取り上げるなど、およそネトウヨをこじらせた「NHKから国民を守る党」とは異なる考え方をしている人物であることがわかりました。

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しかし、2015年にワールドメイトの事務所と思われる場所で撮影した写真をプロフィール写真として使用するなど、独特の雰囲気を醸し出した人物であることもわかります。かつては神戸市に暮らしていたようですが、最近になって春日部市に引っ越してきたようで、立花孝志さんと出会ったことで、春日部市議になって、NHKをぶっ壊す活動に参加しようという気持ちになったようです。2月7日から始まったTwitterアカウントでは、NHKから国民を守る党のことしかツイートしておらず、毎日のようにビラを配る活動を展開していることがわかります。政治家になることを決め、今はこれに集中しているということなのでしょうが、時間に余裕のある生活をしていることがよくわかります。春日部市では選挙が始まる前から地道にビラとシールを配り続けており、こうした地道な活動が選挙には有効なので、かねてからそれなりの票を取ってしまうことは心配されていました。「NHKが嫌いだから」という理由で投票する人は拡大傾向にあるため、今回の結果は十分に予想できたのです。


■ 大塚家具の本社が撤退する街

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埼玉県春日部市は、父と娘のお家騒動で有名な「大塚家具」の創業地。現在は、娘の久美子社長が経営している「大塚家具」の本社と、お父さんの勝久社長が経営する「匠大塚」が建ち並びますが、業績悪化に伴い、この選挙期間中に「大塚家具」が5月27日をもって春日部のショールームを閉店することを決めました。アベノミクスの影響もあって、庶民の暮らしがどんどん苦しくなっていく中、高級家具路線では先細るとの判断で、最大の特徴であった「会員制のマンツーマン接客」を捨て、低価格の商品を販売しようと試みました。ところが、徹底した低価格路線を突き進むニトリやイケアに比べると価格が高く、中途半端な価格になってしまったことで顧客がさらに減り、昨年の最終損益は72億円の赤字となり、109億円あった現預金はたった2年で18億円まで減少し、収益の回復に歯止めがかからない状態が続いています。
大塚家具の撤退は、春日部の経済にもインパクトを与えます。春日部商工会議所の担当者は産経新聞の取材に「地元経済にとって大打撃。会頭をはじめ、今後どうなっていくのかを心配している」と話し、動揺が広がっています。街を代表する会社が潰れたとあれば、今後、ますます春日部の経済は暗くなる一方です。本来なら議員が率先して、街の経済をどのように活性化するのかを示さなければならないのですが、大塚家具の撤退を指を咥えて見ているだけなのです。低価格ブランド店を実験的に始めるなどの安全策を踏まず、いきなり本体を低価格ブランドに傾け、業績も一緒に傾けてしまうという無能ぶりを発揮してしまった「大塚家具」にも言いたいことはたくさんあると思いますが、それ以上に、この街の市議会議員がろくすっぽ仕事をしてこなかったことが、きょうびの寂れた春日部駅前を作っていると言っても過言ではございません。春日部の経済停滞は「大塚家具」が表しています。


■ 魅力のない春日部を作っているのは議員である

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「クレヨンしんちゃん」の舞台になっていることで知られる春日部市ですが、実際に街を歩いてみて思ったことは、この街には「魅力がない」ということです。駅前の道路は整備されているものの、活気のある商店が軒を連ねるわけでもなく、遊ぶ場所もなければ、憩える場所もなく、駅前のマンションの入居率を見ると、ほとんどで30%を下回る勢いでした。コンビニの数も少ないし、わずかな飲食店がある程度で、どこに行こうか迷うレベルにもありません。唯一、人口の割に風俗店が充実していること以外に取り柄がなく、いくら東武伊勢崎線で都心に1本だとしても、わざわざ春日部に住もうと思いません。こんなにマンションの入居率が悪いということは、かなり危機的な状況にあると言えます。とても気になったので、春日部市の人口を見てみることにしました。

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日本全体の人口は少しずつ減り続けているわけですが、実は、首都圏近郊の街では、まだ人口が増えていたりします。しかし、春日部市では2000年頃から転入する人より転出する人の方が多くなり、人口も減り続けています。東京の一極集中化が進む中にあって、東京のベッドタウンという位置付けであるにもかかわらず、人口が減り続けている理由は、街に魅力がないからです。そして、周辺の自治体が子育て世代に手厚いサポートをするなどして必死に人口を増やす努力をしている中、春日部市は保育士を増やして待機児童こそ減らしているものの、子育て世代の流入については無策であり続け、駅の西口と東口をつなぐ導線が地下道しかないという致命的な街づくりが繰り広げられているため、駅前に活気が生まれず、ますます魅力のない街に拍車をかけています。それもこれも長年にわたって市議たちが無策のまま放置してきた結果なのですが、どうも候補者の顔ぶれを見る限り、春日部市のことを本気で考えている人は少なそうなので、数十年後にはどこかの街に吸収される運命にあると見ています。行政サービスをしっかり機能させるためには、僕たちがきちんとした政治家を選ばなければなりませんが、まったく仕事をしない「NHKから国民を守る党」の議員を当選させるほど見る目がないので終わっています。


■ 期待される「立憲民主党」の候補者は存在しない

今年の春日部市議選は、「NHKから国民を守る党」のようなマイナー政党が存在するのに、期待される「立憲民主党」の候補者は存在しません。民進党から1人が立候補するぐらいで、東京都ではないので都民ファーストの会の議員も存在しませんし、希望の党を掲げる候補者も存在しません。メジャー政党では公明党から6人、共産党から6人が立候補しますが、自民党公認を掲げる候補は存在しません。


■ 影武者を選挙カーに乗せる作戦

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今回、非常に奇抜な作戦を展開していた候補者がいました。「かすかべ再輝動」という会派に属する岩谷一弘さんは、選挙カーに「本人代理」というタスキをかけた影武者を乗せ、「もっと自分に似ている人だったらよかったな」と言いながら、爽やかな笑顔で手を振るように指示をしていました。候補者本人が乗っていない選挙カーはたくさん走っていると思いますが、「本人代理」を乗せた選挙カーは初めて見ました。果たして、これは有効な方法なのかと思わずにはいられません。でも、岩谷一弘さんは一人だけ圧倒的なダブルスコアで勝ちました。影武者は有効なのでしょうか。


■ 前回(2014年)の選挙結果

4年前の春日部市議選は、投票率39.88%で、定数32に対して42人が立候補し、当落のボーダーラインは1295票ということになりました。およそ1300票以上を取ることができれば、市議会議員になれるということになります。トップ当選は共産党の並木敏恵さんの3801票になりますが、得票数の上位には公明党が並んでおり、公明党から立候補した6名は全員当選を果たしています。おそらく、公明党はあと1議席は余裕で増やせるぐらいの体力があります。もしかしたら春日部市は公明党支持者の多い街と言えるかもしれませんので、あとでデータを分析します。


■ 今回(2018年)の選挙結果

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今年は定数32に対し、41人が立候補しているので、落選するのは9人です。人口に対し、議員の定数が多い街なので、もう少し削減しても良いと思うのですが、議員でウマウマしたい人たちが多いため、議員定数削減に動く人はいない模様です。それでは、「NHKから国民を守る党」は当選してしまうのか。選挙結果を見てみることにしましょう。

岩谷 一弘  52 無所属 7070票
荒木 洋美  57 公明党 3130票
並木 敏恵  57 共産党 3073票
永田 飛鳳  25 無所属 2970票
鈴木 一利  52 公明党 2940票
武 幹也   64 公明党 2909票
中川 朗   62 公明党 2721票
栄 寛美   34 無所属 2698票
小久保 博史 48 無所属 2650票
栗原 信司  59 公明党 2608票
佐藤 一   65 無所属 2331票
山崎 進   70 無所属 2288票
木村 圭一  44 公明党 2267票
松本 浩一  66 共産党 2182票
山口 剛一  49 無所属 2016票
吉田 稔   42 無所属 2000票
大野 とし子 61 共産党 1961票
酒谷 和秀  43 NHK 1961票
古沢 耕作  48 無所属 1842票
石川 友和  41 無所属 1825票
鬼丸 裕史  46 無所属 1798票
水沼 日出夫 62 無所属 1730票
金子 進   65 無所属 1643票
会田 幸一  69 無所属 1625票
今尾 泰徳  52 共産党 1510票
坂巻 勝則  61 共産党 1510票
榛野 博   47 無所属 1507票
卯月 武彦  55 共産党 1461票
滝沢 英明  64 無所属 1419票
海老原 光男 54 無所属 1368票
井上 英治  68 無所属 1354票
河井 美久  70 無所属 1300票
--------------当落ライン--------------
貝塚 順一  49 無所属 1179票
大塚 ヒロ子 66 無所属 1179票
矢島 章好  56 無所属 1125票
斎藤 義則  68 無所属 1037票
田嶋 一展  37 無所属  611票
黒沢 健児  40 無所属  209票
山本 健吉  78 無所属  142票
中塚 睦仁  43 平和党  129票
小林 靖治  42 無所属   85票

投票率は39.68%となり、約6割の有権者が選挙に行かず、「NHKから国民を守る党」の代表・立花孝志さんの読み通り、同党から立候補した候補者が当選を果たしました。これで「NHKから国民を守る党」の議員は6人になり、さっそく「アノニマスポスト」などのネトウヨ界の有名人やネトウヨアフィリエイターたちが「朗報」として当選を祝うコメントを拡散させていました。残念ながら今後も、しばらく「NHKから国民を守る党」の議員たちが誕生する傾向は続くと考えられます。

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さて、美人候補を応援してしまう僕としては、大塚家具の社長と同じ「春日部ヘア」をしている書道家の25歳・永田飛鳳さんがどれくらい票を取るのかに注目していたのですが、無事に2970票を獲得し、「NHKから国民を守る党」よりも票を取っていました。果たして、永田飛鳳さんが議員になって、ちゃんと春日部市のことを思って仕事をしてくれるのかどうかは分かりませんが、きっとNHKの集金人をイジメるだけの「NHKから国民を守る党」の議員よりは頑張ってくれることでしょう。


■ 春日部市は「公明党」の比率が高い街となっている

今回、選挙結果を受けて、春日部市の公明党得票率の高さが気になりました。参考までに、町田市議選の公明党得票率は14.2%、共産党得票率は13.6%となっていましたが、春日部市の公明党と共産党の得票率は、このようになっています。

公明党得票率 21.4%
共産党得票率 15.1%

これはあくまで仮説ですが、公明党の得票率の高いところは「NHKから国民を守る党」の当選確率が高くなる傾向にあるのではないかと考えます。というのも、そもそも特定の宗教を熱心に信じる人たちは性善説に立ちやすく、騙されやすい傾向にあるのではないかと考えられるからです。今回の春日部市議選で6人目の「NHKから国民を守る党」の議員が誕生していますが、今後、他の街についても調査してみたいと思います。


■ 選挙ウォッチャーの分析&傾向

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今回の春日部市議選は、NHKから国民を守る党の議員が誕生してしまうという結果になりました。かなり前から「NHKから国民を守る党」の党員やボランティアたちが駅前でビラを配り、「NHKが嫌い」という人たちの支持を着実に集めていたため、キャッチーな選挙公約だけで当選したわけではないということは伝えておきたいと思います。このような選挙結果になると、ますます朝霞市議の大橋昌信さんのような人が調子こいてしまうかもしれませんが、「NHKから国民を守る党」の酷さを知ってしまった方々は、まずは自分にできることをコツコツとやっていくしかないのだと思います。それはまったくお金にならないことではありますが、日本の民主主義を守るためには、僕たちが努力をしなければならないのだと思います。そして、市議会議員や区議会議員というものを、およそ社会人として通用しないポンコツどもの「ラクして稼げるチョロい就職先」にしないように、僕たちが日頃の選挙でしっかりと選択することが大事なのだと思います。
最後に、「NHKから国民を守る党」の公選法違反については、ちゃんと春日部市選挙管理委員会が仕事をして、春日部市警察署に報告しており、警察もまた公選法違反の事実については把握していることがわかっています。あとは春日部市警察署がちゃんと動いてくれるかどうかです。日本の警察を信じましょう。[了]

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