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【選挙ウォッチャー】 品川区長選2018・分析レポート。

連日、沖縄の選挙ばかりをお届けしていたため、沖縄に興味がない方々にとっては、かなり退屈な日々を過ごしていたのではないかと思いますが、ついに首都圏で行われる大きな選挙のレポートをお届けすることになりました。沖縄県知事選と同じ9月30日に行われた品川区長選です。世の中の関心は圧倒的に沖縄県知事選だったのですが、実は、この品川区も辺野古基地と負けず劣らずの大問題を抱えており、それが「羽田空港問題」になります。詳細はこの後にじっくりお届けしたいと思いますが、騒音や墜落、部品落下などのリスクを考えると、これだけの人口密集地の上空を旅客機が低空飛行する世の中になることを考えると、そこまでして羽田空港の発着本数を増やす必要があるでしょうか。

浜野 健  71 現 自民・公明・連合推薦
佐藤 裕彦 60 新 立憲・共産・自由・都ファ推薦
西本 貴子 57 新 自由を守る会推薦

これは住民の生活に直結する選挙であり、選挙の結果次第では、こうした政治に無関心だったことを確実に後悔することになる選挙であると言えます。田舎の空港と異なり、数分に1回のペースで爆音を轟かせることになるわけで、万が一にも墜落ということになれば、海に落ちるのと住宅密集地に落ちるのでは被害の規模が2ケタほど変わってきます。羽田空港の飛行ルートを変え、品川区の高度300メートルの上空を飛ぶことになるのかどうか。品川は東海道新幹線と羽田空港にアクセスできる「東京の顔」とも言える場所なので、あんまり目立たないけれど、とっても重要な選挙なのです。


■ 羽田空港飛行ルート問題

今、日本は国際競争力の強化を理由に、2020年までに羽田空港の発着便数を1時間あたり80機から90機にして、国際便を増便したいと考えています。現行の飛行ルートでは80便が限界で、これ以上増やすことができないため、規制をなくし、新ルートを設定して発着便数を増やそうと計画しているのです。現在は飛行機の騒音や事故の危険を極力避けるため、「海から入り、海に出る」というルールになっていて、都心の上空高さ1800メートル(6000フィート)以下は飛行させないことになっています。しかし、騒音があっても事故のリスクがあっても都心上空から着陸することができるようになれば、今より発着便数が増え、物流や観光客の量が増えるのだから、もっとホクホクになるだろうと考えたわけです。

今の日本は、誰かを犠牲にしてでも一部の企業の利益になることであれば強引に進めてしまうというやり方をしています。もし新飛行ルートが採用されれば、品川・大井町周辺は騒音が酷くなるため、こんな所に住んでいられないということになり、不動産価値は下落します。もう既に佐藤裕彦さんの知人のパイロットは新飛行ルートが現実的になった瞬間に買ったばかりのタワーマンションを手放し、武蔵小杉に引っ越してしまったというほどです。羽田空港の離着陸が増え、物流や観光客の量が増えても、品川周辺に住んでいる人たちの不動産価値は下がるので、品川区民に我慢させ、一部の人たちが得をするという構図になります。日本共産党が発表しているアンケートでは、実に82%の品川区民が新飛行ルートに反対していると言いますが、品川区議会の議員構成は「賛成23人」「反対14人」となっており、区民の声と議会の中が真逆になっています。

新飛行ルートは、午後3時から7時までの3時間で、「A滑走路到着ルート」で1時間に14回、「C滑走路到着ルート」で1時間に30回の着陸があり、大井町駅上空は高度300mとなるため、東京タワーより低い位置を旅客機が飛ぶことになります。南大井、大森、平和島などの住宅街はさらに騒音に悩まされることは確実で、羽田空港に近い場所では1時間に44回というラッシュ時の山手線よりも多くの飛行機の騒音に襲われることになります。予想される騒音は70~80デシベルだというので、セミの鳴き声や救急車のサイレンを間近で聞くぐらい、パチンコ屋の店内と同じくらいの音がひっきりなしに続くということです。なお、80デシベルということになると、30cmの距離で大きな声で話さないと会話が成立しないため、羽田空港の近くに住んでいる人たちは家族の会話も減ることでしょう。

そんな深刻なテーマを抱える品川区長選は、現職の浜野健さんは「この問題は国の専権事項」だと言って賛成の立場、元自民党の佐藤裕彦さんは反対の立場、西本貴子さんは謎という立場で戦うことになりました。なお、沖縄のキャバ嬢に「品川区長選はこうなっているんだよ」と言ったら、ほとんどの女の子が「ヤバッ!」というリアクションで「品川、大丈夫なの?」と言っていました。「いや、沖縄も品川と互角以上にヤバいことになっているんだけど!」と思いましたが、傍から見ると「ヤバい」ということは分かるようです。


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