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【選挙ウォッチャー】 大阪府議選2019・北区レポート。

今日も大阪維新の会の動向をまとめる意味でも、大阪府議選の北区のレポートをまとめたいと思います。今回の大阪ダブル選挙、大阪府議選、大阪市議選の圧勝により、再び大阪都構想の住民投票に向け、大阪維新の会が動き出したと言っても過言ではありません。このレポートでは、北区の選挙結果をお伝えするとともに、大阪維新の会がどんな政治をしているのかをお伝えしたいと思います。

久谷 眞敬 47 現 大阪維新の会
茂原 英仁 50 新 自民党

北区の定数は1で、ここは前回も久谷眞敬さんが勝っているところです。無投票当選というわけにはいきませんので、自民党は茂原英仁さんを擁立してきましたが、勝負になるでしょうか。ついでに新自由主義とは一体、何なのかを考えてみます。


■ 閉鎖された「あいりん総合センター」

日雇い労働者たちの居場所になっていた「あいりん総合センター」が、耐震性の問題で建て替えられることになり、6年間にわたって閉鎖されることになりました。6年後と言えば大阪万博が行われる年になるわけですが、どのような意図があって、どうしてその時期なのかは不明です。大阪万博の開催期間中にホームレスが人目に触れないようにするのでしょうか。本来であれば、新しい施設が完成した後に取り壊すべきだと思いますが、これから近くに星野リゾートなどの高級ホテルが次々に建ち並ぶ計画で、「日雇い労働者の街」として知られた「西成」「あいりん」といった地域が再開発されていき、日雇い労働者のオッサンたちはどんどん人目に触れないところに追いやられていくことになるのでしょう。

ちなみに、この「あいりん総合センター」ですが、日雇い労働者たちは必死の抵抗を見せ、どうにか閉鎖しないでほしいとお願いしていたわけですが、中にオッチャンたちの荷物があるにもかかわらず、強引に建物を閉鎖し、さらには溶接をして入れないようにしてしまうなどの措置が取られました。こんな非人道的なことが行われていることさえ多くの人は知りません。こうした凶行は、当時の松井一郎府知事や吉村洋文市長が容認しているからです。自民党だったら、こんなに酷いことをしていないのかと言ったら、それもどうなっているかは分からないのですが、日雇い労働者のオッチャンを苦しめている背景には、やはり高級ホテル建設などの再開発問題がカラんでいることは間違いありません。西成区はけっして治安が良いわけではないので、それなりに地価が安いわけですが、これが上がるとなれば、これまた大阪維新の会のお手柄ということになるわけです。明日にも日雇い労働者が野たれ死ぬかもしれないけれど、土地の値段を上げた方が、選挙の時に市民や府民に喜ばれてしまうという現実もあるわけです。

取材した日は大雨が降っていたのですが、もし「あいりん総合センター」の建物が開いていたら、ここで寝ているオッチャンたちは雨露を凌ぐことができたでしょう。雨の日もあれば、暑い日もあるわけで、少なくとも僕たちより栄養が行き届いているとは言い難いオッチャンたちの体力の消耗は著しいことでしょう。実際、5月25日にはここで寝ていたホームレスが熱中症で死亡しました。人をナイフで刺して殺せば「殺人罪」で問われますが、政治の力でホームレスが死んでも、それが結果的に数十人になったとしても、何かを問われることはないのです。ホームレスの生活より高級ホテルの再開発が重要で、見栄えを確保するために6年間かけて人を殺していく。口では言いませんが、実質的にはそんな計画が水面下で進められていると言っても過言ではありません。生きる場所を失い、「ここに来れば何とかなるかもしれない」と一縷の希望を持って身を寄せ合うように集まってきた人たちに、政治は「高級ホテルの邪魔だ」というのです。

この日も新今宮駅前の建設現場では2021年の開業に向けて工事が進められていました。大阪は今、外国人観光客が増えています。京都に近く、日本のカルチャーも楽しめる大阪は、東京よりも楽しいと外国人観光客にも人気です。大阪にも高級ホテルはありますが、通天閣に近く、大阪の文化を味わえる新今宮駅に「星野リゾート」がオープンし、新たな観光の拠点にする計画なのです。せっかくセレブ様が宿泊するのに、ジャージに小便のシミがついた小汚いホームレスがウロウロしているなんて感じが悪い。「あいりん総合センター」の上は病院になっているわけですが、その病院はまだやっています。病院が営業しているなら、わざわざホームレスの居場所を奪う必要はないだろうに、それをわざわざ先行して奪っているのは「勝手に野たれ死ぬ分には責任を問われないから」です。

普段、僕たちはホームレスの生活なんて考えません。街でホームレスを見かけることがあっても「ホームレスにお金をあげるのは甘やかすことになり、余計に働かなくなるからお金をあげちゃダメだ」と言われ、通り過ぎるのが基本です。しかし、戦争するわけでもないのに戦闘機を買ったり、べつに困っているわけでもないのに外国の政府にお金をばら撒いたり、そんなことをするお金があるなら、もっと困っている日本人のためにお金を使うべきでしょう。ところが、そんなことをやっても有権者は評価しないのです。なぜなら、日本人の基本的なメンタルが「金のない奴は自業自得」だからです。ホームレスになってしまった環境的要因を考えることなく、「そいつの努力不足」の一言で切って捨て、高級ホテルにご宿泊なさるセレブ様からお恵みをいただけるようなビジネスを考えた奴の方が偉いのです。

これだけたくさんの人がいれば、社会からこぼれる人がいても不思議ではありません。心を壊した人もいれば、人が気付きにくい障害を持った人たちもいることでしょう。そういう人たちを受け入れるような会社があったらいいけれど、「精神病なんです」と言って雇い入れる会社がそう滅多にあるわけがなく、こうした人たちがホームレスになってしまうことは珍しくありません。政治の役割は、こうした社会からこぼれてしまった人たちにセーフティーネットを敷くことであり、間違っても殺すことではありません。社会には勝ち組と呼ばれるお金持ちがいる一方、負け組と言われる貧乏な人たちもいます。しかし、死ぬほど負ける社会は間違えているのです。貧乏でも生きていける最低ラインをキープすることが政治の役割であり、勝ち組の人たちが勝ち組であり続けるために加担することが政治ではないのです。どうやら大阪維新の会は、新自由主義を追及するあまり、本当の政治の役割というものを見失っているような気がしてなりません。それは自民党や公明党、もっと言えば国民民主党や一部の立憲民主党も同じなのです。結局、弱者に優しくない政治家を選んでいるのは僕たちなので、この傾向は変わらないわけですが、それは僕たちの生活を苦しめていると言えます。


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