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【選挙ウォッチャー】 名護市議選2018・分析レポート。

今年2月、自民党や公明党が推す辺野古基地の建設推進派の渡具知武豊さんが市長に当選を果たしました。辺野古基地の工事を止めていた「オール沖縄」の稲嶺進さんが敗れたため、渡具知武豊さんが市長になって、辺野古基地建設工事を進めようとしているわけですが、名護市議会は「基地反対派」が多数派となっているため、議会が反対して、なかなか工事が進まないというのが現状です。なので、自民党や公明党を中心とした議員たちは「基地賛成派」で過半数を取りたいのです。そうなれば現場でどんどん工事を進めていけるようになる。だから、9月30日の沖縄県知事選を前に、名護市議選はとても重要な選挙だったのです。

名護市議選は定数26に対し、32人が立候補しました。つまり、この中から落選するのは6人ということになります。辺野古基地建設に反対する候補者は15人(うち1人は泡沫候補)が立候補しており、ほぼ全員が当選しなければ過半数になりません。一方、辺野古基地建設に賛成する候補者は17人立候補しており、仮に4人が落選しても過半数を取れる計算になります。一見、基地賛成派の方が余裕があるように思えるかもしれませんが、候補者が多いということは、その分、票が分散することになりますので、立候補者が多ければ有利というわけではありません。実際に北谷町では票が分散したため、自民党系の議員が落選し、共産党が2議席獲得するという現象が起こっています。果たして、名護市議選はどのような結果になったのでしょうか。


■ 名護市議会における与野党のバランス

これまでの名護市議会は議員定数が27で、辺野古基地建設に反対する議員が14人、辺野古基地建設に賛成する議員が13人でした。この13人の中には公明党の議員も含まれています。公明党の議員は、建前の上では辺野古基地の建設に反対だと言いながら、実質的にはまったく反対の立場ではなく、それどころか自民党と一緒に辺野古基地建設を進めるために奮闘していますので、「辺野古基地賛成」としてカウントしています。これまでの議会での振る舞いを見ても、辺野古基地を建設するために活動していることは明らかです。今年の2月までは市長が辺野古基地反対派の稲嶺進さんで、市議のバランスも基地反対派が過半数を占めていたため、国が進めようとしている辺野古基地の建設を現場レベルでかなりブレーキをかけてきました。ところが、菅義偉官房長官が市を通り越して、辺野古基地に隣接する3つの地区に直接お金をばら撒き、基地に反対する人々を次々に賛成派に寝返らせ、創価学会もフルパワーで選挙活動を行い、今年2月、辺野古基地建設を推進する渡具知武豊さんが市長になりました。しかし、市長が辺野古基地推進派になっても、議会は反対派が過半数を占めているため、すぐさま渡具知武豊さんのやりたい放題になるということはなく、議会はギリギリのところで戦っていたのです。そして、このたびの名護市議選では定数が1つ減って26となり、大城松健さんが落選したため、基地反対派の議席は1つ減る結果となりました。これで基地建設に賛成する議員と反対する議員の数が同数の13となり、どちらが議長をやるかでモメることは確実で、水面下でどのような交渉をするかがポイントとなりそうです。同数なので、すぐさまバランスが崩れることはありませんが、今まで以上に議会運営の難易度が上がったことは間違いありません。


■ 高齢の議員たちは絶対に死んではいけない

少し変な話になりますが、名護市議会はこの4年間、議席を欠かすことがあってはなりません。不祥事で辞職するようなことがあってはなりませんし、死ぬことも許されません。最高齢は大城敬人さんの77歳で、任期の4年をまっとうすると81歳です。今のところ、大城敬人さんは元気そのもので、まだまだ長生きしそうではありますが、翁長雄志さんは67歳で亡くなりましたし、大城敬人さんより若くして亡くなる方はたくさんいます。同じく基地反対派の比嘉祐一さんも74歳で、万が一のことはないと思いますが、おじいちゃん議員が死んでしまうと議席が失われ、議会のバランスが崩れることになります。ぜひとも議員の皆さんにはくれぐれも健康であっていただきたいと願わずにはいられません。

大城敬人さんは、とっても「おじいちゃん萌え」するタイプの議員です。昨今の議員たちは「基地は国が決めること」などと言って、地元の声を聞かないようにしています。しかし、国に言われる通りに従って多数の犠牲者を出したのが第二次世界大戦の沖縄の歴史です。辺野古に基地を作るのは、土建屋を儲けさせ、やがて米軍と共用にして、自衛隊が使えるようにするためですが、これだけ「お金がないから社会保障ができない」と言いながら、防衛費だけは青天井で上がっているのです。こんなことをしていたら、やがて戦争になってもおかしくありません。大城敬人さんは長らく議員として市民のために尽くしてきた大ベテランであり、こうしたベテラン議員に学ぶことは多いはずです。


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