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【選挙ウォッチャー】 石垣市議選2018・分析レポート。

今回、さまざまな自治体の選挙を巡ってまいりましたが、9月9日に行われる沖縄県知事選の中で最もカオスな自治体は、間違いなく「石垣市」だと思います。本当は取材する予定がなかったのですが、横川圭希さんと一緒にやっている「confess」のプロジェクトにたくさんのご支援をいただき、どうにか飛行機代を捻出することができたため、石垣市議選を追いかけることができました。冷戦が終わり、北海道を中心に配備されていた日本の自衛隊を南西諸島に配備し直す計画が進んでいるため、日本屈指のリゾート地である石垣島が「自衛隊の街」に変わり、観光産業にマイナスの影響を及ぼす可能性が出ています。それもまた「島の方々の選択」ということになりますが、とても切ないものがあります。

今年の石垣市議選は定数22に対し、30人が立候補する選挙となりましたので、9月9日に行われる統一地方選の中では「激戦」ということになります。前回も29人が立候補しており、なかなかの激戦が繰り広げられていたのですが、この島で繰り広げられている「ネトウヨ化」「カルト化」の流れは、非常に心配です。このあたりの話をじっくりとお伝えしてまいります。


■ 大きな争点の一つである「ミサイル基地配備」は止められない

石垣島の繁華街のすぐそばに、自衛隊のミサイル基地を配備することになりました。配備されるミサイルは可動式となっているため、いざとなった時には美しい海やマングローブが残る島の北部に持って行くことも可能で、有事の際には島全体がターゲットになりかねませんが、自衛隊は配備されても、本当に戦闘になったらどうするのかというガチのシナリオまでは進んでいません。あくまで進んでいるのは「建前」の部分だけです。ミサイルを配備するための土地は既に埋め立て工事済で、今から止めたところで広大な土地が残るだけという環境になっています。自衛隊を配備する本当の狙いは「中国からの脅威」と言っているのはネトウヨで、実際のところは、自衛隊を利用して島の活性化を図るためです。現職の我喜屋隆次さんの話によれば、迎え入れる自衛隊員の数は約600名程度。その家族や子どもを含めても1000人弱ではないかということでした。自衛隊員は当然ながら無職ではないため、迎え入れる人たちの就職先の心配をする必要はありません。また、公務員としての安定した収入を得ているため、それなりにお金を使うであろうことも見込めるため、経済効果は大きいと見られています。つまり、自衛隊を歓迎する最大の理由は「街の経済効果」ということになります。

しかし、自衛隊を迎え入れることの経済効果は、実際には限定的です。迎え入れる前と迎え入れた後では島で流通するお金が多くなることは間違いありませんが、それでも右肩上がりで上昇していくわけではなく、たった一度の大きな上昇に過ぎません。永続的に島で流通するお金を増やし続けるという観点で考えるのであれば、もっともっと観光経済を伸ばしていかなければならないので、本来であれば観光整備にどれだけ投資できるかを考えるべきなのです。

しかし、この島では珍しいことに「自衛隊配備推進」と書かれた旗を掲げる人たちもいます。日の丸をバックにしてしまうセンスなので、国旗に対する敬意に欠けている部分が非常にネトウヨですが、自衛隊を積極的に迎え入れるべきだと言う人もいるのです。これが経済的な観点から言っているのだとすれば理解できなくもないのですが、思想的な観点から言っているのだとすると、それはもう「ネトウヨ」です。どのような理屈でこのような旗を掲げているのかが分かりませんが、この島の人たちは自衛隊を積極的に迎え入れたい人たちもたくさんいるし、ミサイルの配備を歓迎する人たちも多いです。どうしてこのようなことが起こるのか。それはやはり「八重山日報」の存在が非常に大きいと思うのです。


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