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【選挙ウォッチャー】 参院補選2019・埼玉県選挙区の事前レポート。

今日から参院選の補欠選挙が始まり、前埼玉県知事の上田清司さんと「NHKから国民を守る党」の立花孝志代表が立候補することになりました。NHKから国民を守る党の立花孝志代表は、参議院議員を辞職して、参議院議員になるための選挙に立候補するという奇天烈なことになるのですが、選挙に出れば話題になって、話題になったらチヤホヤされます。立花孝志代表は自己承認欲求の塊です。とにかくいろんな人から褒めてもらいたくてしょうがない。能力が高いと思われたい。だから、記者会見でも「ホリエモンから頭が良すぎてヤバいって言われた」と大喜びでホルホルしちゃうのです。誰だって他人から「頭が良いね」と褒められたら嬉しいのかもしれませんが、これはけっして「頭が良い」という話ではありません。というのも、どうして今まで誰もこんなことをしなかったのかって、みんなが思いつかなかったんじゃなくて、国会が始まって1週間も経たないうちに、己の政党の宣伝や党勢拡大のために国会議員を辞めるなんていう無責任なクソ野郎が存在しなかっただけで、そもそも戦略がどうのという話ではないからです。いくら政治家がクソだと言っても、ここまでのクソが存在しなかっただけの話であり、とうとうこのレベルのクソが議員になってしまったというだけの話です。

■ 選挙をやる前から結果が決まっている選挙

今回の参院補選は、選挙をやる前から結果が決まっていると言っても過言ではございません。というのも、前埼玉県知事である上田清司さんは、埼玉県で圧倒的な人気があり、一方でアンチもそれなりにいることはいるんですけど、2015年の埼玉県知事選では自民・公明が推薦する超エリート官僚の候補にほぼトリプルスコアで圧勝。今回の参院補選に至っては、自民・公明が勝てる候補を擁立できずに断念するほど。少なくとも政党支持率30%以上、調査によっては40%を超える自民党が上田清司さんには勝てないというのです。

自民党でも勝てないのに、NHKから国民を守る党の立花孝志が勝てる可能性は限りなく低い。いくら上田清司さんにはアンチがいるとはいえ、その人たちが脅迫容疑で書類送検、虐殺発言、発展途上国の国民は犬や猫と同じ発言、竹島は韓国領発言、私人逮捕、スラップ裁判、5000万円の株券詐欺疑惑、崎陽軒不買運動、マツコ・デラックスさんやMXテレビに対する嫌がらせなど、掘れば掘るほどブラックな話題しか出てこない立花孝志代表に投票するかどうか。どっちにも投票できずに「白票を入れた方がマシだ!」という人が続出してもおかしくないレベルです。

■ 国会議員を辞める立花孝志代表のメリット

立花孝志代表にとって、国会議員を辞めることには大きなメリットがあります。まず、これまでさんざん「国会議員としての資質が問われる」と言われてきたのですが、国会議員でなくなったら、議員としての資質を問われることがなくなります。ただし、国会議員でなくなっても「公党の代表」という立場は変わりませんので、政治家であることは変わらず、引き続き、「公党の代表としての資質が問われる」と追及していくことが大切です。国会議員ではなくなっても、議員報酬を失い、議員パスがなくなって電車や飛行機が乗り放題ではなくなるだけで、巨額の政党交付金は立花孝志代表が握り続けることになります。また、面倒臭い議会での仕事は浜田聡さんに任せて、自分は引き続き議員会館に居座り、大好きな選挙に没頭することができます。立花孝志代表がやりたいことは、あくまで「選挙」であり、「議員としての仕事」ではありません。なので、面倒臭いことはすべて浜田聡さんに押しつけ、自分は「党勢拡大だ」とか「悪名は無名に勝るなので宣伝だ」とか言って、好きなだけ選挙に立候補し、そのたびにいろんな人からチヤホヤされるのです。

一方で、デメリットも存在します。まず最大のデメリットは「NHKをぶっ壊す」という公約を掲げ、せっかく国会議員になったにもかかわらず、その公約実現のために行動することができなくなってしまったと言うことです。例えば、「かんぽ生命のNHK圧力問題」は、立花孝志代表が政治家としてNHK改革に乗り出す絶好のチャンスでした。もっとも、立花孝志代表はこの問題をよく理解しておらず、せっかく開かれた野党合同ヒアリングにも欠席。やっていたことと言えば、ホリエモンとのゴルフ、党のボウリング大会や野球大会。まさに世の中がラグビーW杯で盛り上がっている「スポーツの秋」ということで、重要なNHK問題よりもスポーツに精を出していらっしゃるあたりは、さすがはホリエモンに「頭が良すぎてヤバい」と言われただけのことはある選挙界の秋元康です。「ここでNHK問題に取り組まなくてどうする!」というところで、あえて取り組まないのが炎上スターのやり方です。ちなみに、立花孝志代表は「NHKをぶっ壊すためには議席の拡大が急務だ」と繰り返しているのですが、一体、どれくらいの議席を取ったらNHKをぶっ壊せるのでしょうか。ひょっとして、与党になるまで壊していただけないのでしょうか。

■ 豊田真由子先生は出なかった

そういえば、立花孝志代表は参院補選の埼玉県選挙区では、豊田真由子さんを擁立するつもりだと言っていました。「仲間にしたいなら、もう忘れてやれよ」という話なんですが、立花孝志代表は「このハゲー!」でお馴染みの人だという紹介を何度も繰り返し、「アプローチをしているけど、電話に出ない」などと言っていました。豊田真由子さんは、あのスキャンダルでキャリアが台無しになってしまったのですが、東京大学法学部を卒業し、厚生労働省に入り、国費でハーバード大学大学院に入学。2007年には在ジュネーブ国際機関日本政府代表部に一等書記官として赴任。2011年には厚生労働省の老健局高齢者支援課課長補佐に就任し、東日本大震災の避難先や仮設住宅における高齢者福祉政策などを担当。復興がなかなか進まないことから、当時の民主党政権に疑問を持つようになり、自民党から政治家に転身したという人物です。ゴリゴリのキャリアウーマンだったため、仕事のできない秘書にイライラするのは理解でき、狂気じみたパワハラこそやってはいけなかったものの、あんなふうになってしまったのも少しは理解ができます。そんなガチで優秀な人が、どんなに落ちぶれたとしても「NHKから国民を守る党」なんていうカルト政党から立候補するなんて、普通に考えたら絶対にありません。結局、豊田真由子さんを擁立することはできず、立花孝志代表自らが立候補するというウルトラCに出たのでした。

■ 立花孝志代表の主張は「中核派」よりも過激

最近、立花孝志代表は「NHKをぶっ壊す」から「既得権益をぶっ壊す」にシフトを始めました。「既得権益とは何か?」という話ですが、立花孝志代表の解釈では「正社員で年収1000万円とかもらっている人」であることがわかりました。働かずに利益を得ている投資家や株主ではなく、正社員が既得権益者だというのですから、その主張は中核派よりも過激です。ここで立花孝志代表のコメントを見てみましょう。

「既得権益者って何かって言ったら、もう本当にろくに仕事もせずにね、えー、なんだろうな、たくさん給料もらってる人たちです。労働組合に加入している正社員とかね、大きな会社の正社員なんて年収1000万円とかもらいながらクビになる可能性も低くてですね、有給休暇もいっぱい取れて、労働ね、残業時間も三六協定の中でとかってやってる労働組合の社員とか、もちろん政治家とかもそうです。特に市議会議員、区議会議員なんかもコレに入ってきますね。何期も何期も市議会議員してるような人たち。えー、他にもですね、既得権益者、もちろんNHKもそうですし、民放テレビ、新聞社もここに入ってきますね」

参考までに、中核派の主張は働かざる者(株主)が権利を持っているのはおかしく、労働者が権力を持ち、働く者がお金を得られるようにするべきだと主張しているわけですが、立花孝志は株主に対してではなく、労働者の中でも正社員や高所得者のことを「既得権益者」だと主張し、ぶっ壊すと言っています。これは中核派よりも過激な思想です。なんと、現場で働く者たちが「ぶっ壊し」の対象であり、正社員や年収の高い人たちは「ズルい」というわけです。どの会社にも、ろくすっぽ働かない上司の一人や二人ぐらいはいることでしょう。部下に対してガタガタ文句をつけるだけで、責任を押しつけ、手柄だけを横取りしていくような上司が、自分より高い給料をもらっていることに不満があったりもするかもしれません。しかし、全部が全部そういう会社ではありませんし、民放テレビや新聞社で働いている正社員の人たちは、かなりの難関をくぐり抜け、比較的高度な仕事をしている人です。そういう人たちを「既得権益者」とまとめて括るのは危険ですし、NHKを既得権益だというのなら、これから作られようとしているカジノなんて既得権益の塊なのだから、当然、否定しなければならないはずですが、立花孝志代表はカジノ推進派です。理由は「パチンコが好きだから」です。なんなら射幸性の高いパチンコ台を復活させようと言っているほどで、自分から積極的に既得権益を生み出そうとしています。いつものことですが、基本的に言っていることとやっていることが全然違うのです。

■ 上杉隆幹事長が語る裏話

NHKから国民を守る党の上杉隆幹事長は、YouTubeを更新し、本当は立花孝志代表に参院補選に立候補することを止めていたと言います。実際、立花孝志代表自らが立候補するのを阻止するために、その代わりとなるタマを探し、豊田真由子さん、青島健太さん、さいたまんぞうさんにも声をかけていたと言いますが、良い返事をもらうことができず、結局、立花孝志代表の議員辞職と参院補選への立候補に至ったというのです。今はそうなってしまったので腹をくくって選挙戦を戦うことにしているそうなのですが、上杉隆幹事長が止めていた理由は「ごもっとも」の内容だったので、まとめておきます。

1.国会議員になったからには通常国会(常会)の150日には出てほしい。一応は国会議員としての役割を果たしてほしかった。もし通常国会がダメでも、せめて臨時国会だけはやってほしかった。これは国会議員としての義務かなと思っていた。
2.みんなの党の渡辺喜美代表と会派を組んでいるので、まずは渡辺喜美さんと挨拶をするべきで、立花孝志代表が辞めてしまうと、せっかく会派で予算委員会、財政金融委員会を獲得し、理事には立花孝志代表が就いていた。予算委員会は取りたくても取れない委員会で、せっかくクジを引いて強運で射止めたのに、それがご破算になってしまう。
3.これまで堀江貴文さんや渡辺喜美さんなどを繋ぎ、いろいろな国会議員などにアプローチし、マッチングをして、場合によってはN国に入ってもらうために尽力してきたのだが、国会議員のバッヂを外してしまうと、会ってもらえる人の量、質、格が下がってしまう。

主にこの3点を理由に説得していたそうですが、本人の意思を尊重することになり、結果、参院補選に立候補することになったということのようです。つまり、幹事長の立場からすると、立花孝志代表の辞任と参院補選への挑戦は、あまり歓迎する話ではなかったということになります。世の中のN国信者たちは「立花孝志代表の戦略が素晴らしい!」と大絶賛していますが、その裏側ではいろいろな問題が起こっていたということです。いろいろな角度から見ていかないと、絶賛している奴はただのアホということになりかねません。

■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

立花孝志代表は、二瓶文徳区議に対する脅迫で「有罪になったら辞職する」と言いましたが、その前にパフォーマンスのために「選挙に出るから」という理由で辞職しています。この場合、「有罪が決まっても辞職しているからOKだ」ということになるのでしょうか。何から何まで無責任です。さて、今ではすっかり「N国ウォッチャー」になってしまっている僕ですが、今日から10月27日までの間、立花孝志代表が選挙に出ている関係で、また私人逮捕などの事件を起こさない限り、静かな毎日が訪れるのではないかと思っています。なので、明日は埼玉県知事選のレポートを出し、これまでお届けできなかった選挙のレポートも続々とリリースしていけるのではないかと思っています。

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