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【選挙ウォッチャー】 安倍晋三総理の施政方針演説・全文検証(#1)。

安倍晋三総理が1月28日に国会で「施政方針演説」を行ったのですが、どう考えても片っ端からツッコんで欲しいと思っているようにしか思えなかったので、このデタラメ演説を後世に残すべく、ここに書き記したいと思います。悲しいことに、現代のニッポンで生きる人たちの多くは、この演説を見て「やっぱり日本の総理大臣は安倍さんしかいないんだ!」と思うのかもしれませんが、間違いなく数十年後に振り返った時に、これほど最悪な総理大臣はいなかったことに気付くはずです。なにしろ、うまく行っているというデータがすべて改竄されていて、日本はもう正確なデータをもとに判断することができなくなっているからです。これはやりたいことができれば、その結果が悪かったとしても「良さそうに見せられれば良い」ということになります。本当は、今、こうしている間にも気付いてほしいのですが、残念ながら気付かないのでしょう。だから、これは数十年後の日本人のために、当時の安倍晋三総理がどのような施政方針演説をして、多くの国民が騙されていたのかをまとめます。


■ 施政方針演説:はじめに

安倍晋三総理の施政方針演説は、まず天皇陛下の御退位の話から始まりました。まず天皇陛下の話を最初にするのは、べつにネトウヨをこじらせているわけではなく、日本国民にとって大きなトピックスであること、天皇陛下に対する一般的な敬愛の念から考えても、何ら不思議なことではありません。ただ、途中で読まれた短歌に関しては、とてもカルトであると言っていいと思います。いくら安倍晋三総理に忖度した官僚が書いたからといって、こんなにカルトな短歌を普通に入れ込んでくること自体、どんな神経をしているのかがわかりません。

平成最後の施政方針演説を、ここに申し述べます。本年4月30日、天皇陛下が御退位され、皇太子殿下が翌5月1日に御即位されます。国民こぞってことほぐことができるよう、万全の準備を進めてまいります。「内平らかに外成る、地平らかに天成る」。大きな自然災害が相次いだ平成の時代。被災地の現場には必ず、天皇、皇后両陛下のお姿がありました。阪神・淡路大震災で全焼した神戸市長田の商店街では、皇后陛下が焼け跡に献花された水仙が、復興のシンボルとして、今なお、地域の人々の記憶に刻まれています。商店街の皆さんは、復興への強い決意と共に、震災後すぐに仮設店舗で営業を再開。全国から集まった延べ200万人を超えるボランティアも復興の大きな力となりました。かつて水仙が置かれた場所は今、公園に生まれ変わり、子どもたちの笑顔であふれています。東日本大震災の直後、仙台市の避難所を訪れた皇后陛下に、一人の女性が花束を手渡しました。津波によって大きな被害を受けた自宅の庭で、たくましく咲いていた水仙を手に、その女性はこう語ったそうです。「この水仙のように、私たちも頑張ります」。東北の被災地でも、地元の皆さんの情熱によって、復興は一歩一歩着実に進んでいます。平成は、日本人の底力と、人々の絆がどれほどまでにパワーを持つか、そのことを示した時代でもありました。「しきしまの 大和心のをゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」。明治、大正、昭和、平成。日本人は幾度となく大きな困難に直面した。しかし、そのたびに、大きな底力を発揮し、人々が助け合い、力を合わせることで乗り越えてきました。急速に進む少子高齢化、激動する国際情勢。今を生きる私たちもまた、立ち向かわなければならない。私たちの子や孫の世代に、輝かしい日本を引き渡すため、共に力を合わせなければなりません。平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を、皆さん、共に、切り拓いていこうではありませんか。

この演説からも分かるように、安倍晋三総理は、とても「精神論」を重んじる人物です。復興の決意、日本人の底力、人々の絆・・・。平成の時代に日本人が幾度となく迎えた試練は、行政サービスや国による保障ではなく、精神論で乗り切ってきました。そして、安倍晋三総理はどうやらこれからも日本人に「精神論」を求めているようです。国民の暮らしを豊かにするのは、どんな逆境をも乗り越え、不幸な目に遭っても「自分たちは不幸ではない」と思うだけの精神力。たとえ豊かでなくても「自分たちは素晴らしい日本に生まれただけで豊かなのだ!」と思えたら、それはもう豊かであるということなのです。そして、気になるのは途中で読まれた「しきしまの 大和心の をゝしさは ことある時ぞ あらはれにける」という短歌。「しきしまの」は日本に対する枕詞で、「たらちねの母」みたいなやつです。大和心は「ヤマト魂」とでも言いましょうか。「をゝしさ」「雄々しさ」と書くことができ、男らしさ、たくましさ、勇ましさ。「ことある時ぞ あらはれにける」「いざという時に表れる」です。つまり、この短歌は「普段は穏やかに過ごしている日本人だが、日本人の持つヤマト魂の勇ましさというのは、ここぞという時に表れるものだ」という意味で、これは日露戦争開戦時、当時の明治天皇が国民の戦意を高揚させるために詠んだ歌。つい先日、プーチン大統領と北方領土の返還交渉をしていたはずの安倍晋三総理なのですが、ロシアに対する配慮もなく、突然、平成最後の施政方針演説の中で狂ったように明治天皇が詠んだ「ここぞという時にヤマト魂を見せつけて敵国ロシアを撃破しようぜ!」の短歌を詠み始めたわけですから、「北方領土を返してもらうつもりのないサイコパスかいな!」という話です。そして、この短歌の意味を最もよく知るのが、二度と戦争を繰り返してはいけないという気持ちが強い共産党でした。普通の人には何を言っているのかさっぱりわからないけれど、この短歌が出てきた瞬間に「むむむっ、日露戦争じゃないか!」と怒ったのが共産党の志位和夫委員長でした。共産党が安倍晋三総理を批判した瞬間に脊髄反射で「共産党は反日!」と騒いでしまう「重度のネトウヨ病」を患っている皆さんは「この短歌に戦争という文字は入っていない。共産党が考え過ぎているだけだ!」と言っていましたが、戦争の士気を高めるための短歌をわざわざ引用してくるカルト性が批判されているわけで、こんなことをしていたら、ますます北方領土を返してもらえなくなってしまいます。ここまで来ると、安倍晋三総理が「愛国者」ではなく、愛国カルトが止まらないヤバい奴でしかありません。忖度して原稿を書いたスピーチライターの官僚も合わせてヤバいと言っておきましょう。


■ 施政方針演説:全世代型社会保障への転換(成長と分配の好循環)

安倍晋三総理は、息を吐くように嘘をつきます。毎度驚かされるのは、安倍晋三総理はデータを使ってアベノミクスが成功しているかのような話をしてくるのですが、そのデータがことごとく怪しいのです。まるで成功しているように言ってくるのですが、騙されてはいけません。なんだかスゴそうに聞こえるけれど、中身を検証することが大切なのです。

この6年間、3本の矢を放ち、経済は10%以上成長しました。国・地方合わせた税収は28兆円増加し、来年度予算における国の税収は過去最高、62兆円を超えています。そして、この成長の果実を、新3本の矢によって、子育て支援をはじめ現役世代へと大胆に振り向けてきました。児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は24%から42%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、大幅に改善しました。平成5年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、政権交代後、8万世帯、減少いたしました。5年間で53万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年、待機児童は6000人減少し、10年ぶりに2万人を下回りました。子育て世代の女性就業率は7ポイント上昇し、新たに200万人の女性が就業しました。成長の果実をしっかりと分配に回すことで、次なる成長につながっていく。「成長と分配の好循環」によって、アベノミクスは今なお、進化を続けています。

ツッコミどころが多すぎて、何から手をつけたらいいのか分からなくなりますが、まず「経済が10%以上成長した」という話は、「んなアホな!」の一言です。一般的に「経済成長率」と言ったら、実質GDPの前年度比を見ると思うのですが、内閣府が出している「最新の四半期別GDP速報・主な時系列データ」を見る限り、ちっとも成長していないことは明らかです。では、安倍晋三総理が言っている「経済が10%以上成長した」というのは何なのでしょうか。

安倍晋三総理は、どうやら「名目GDP」の総額を指して「10%以上の成長」と言っているようです。GDPの総額が増えれば、それだけ日本が何かを生産してお金を生み出しているということになるので、確かに成長していると言えなくもありません。人間で言うならば、「子供が成長している」という場合には「身長」で測るのが一般的ですが、安倍晋三総理は「体重」で測っているのです。身長が増えれば体重も増えることになるので、「成長している」と言えなくもありませんが、身長がほとんど伸びていないのに体重がたくさん増えていた場合、それを「成長」と呼んでいいのかどうかは微妙です。おそらく多くの人が「ただの肥満じゃねぇか!」とツッコむことでしょう。ネトウヨになると「赤ちゃんは体重で成長を見るぞ!」なんて屁理屈を言うのでしょうけれど。安倍政権になってからというもの、これだけありとあらゆるデータが誤魔化されているのです。実は、安倍政権になってから「GDP算出の計算式」が変更されました。表に見えているところでは、これまでカウントされていなかった「研究開発費」が計算に入れられるようになり、さまざまな投資もGDPに反映されるようになりました。景気が良くなった以前に、ルールが変わったことでGDPに含まれる金額が大きくなっているのです。そして、裏に隠されて見えなくなっているところでは、計算に組み込まれる「その他」という項目があるのですが、その「その他」が何なのかを政府は日銀にさえ非公表にしているのです。つまり、このGDPの金額が本当に正しいのかどうかは、誰にも検証することができない仕様になっているということです。ごまかしのニオイがプンプンするものを根拠に、安倍晋三総理は「10%以上成長した」と言っているのです。これは体重を量る時にたくさん服を来て、手首や足首にたくさん重りを付けている可能性があるということです。

国と地方を合わせた税収は28兆円増加したと言っていますが、その内訳は国の税収が約18兆円増、地方の税収が約10兆円増で、合わせて28兆円増と言っています。上のグラフは、財務省が出している「一般会計税収の推移」です。地方は一旦置いといて、国の税収を見た時に、2019年度の予算は過去最高の62兆円の税収だと言うのは本当です。ただし、どうして税収が増えたのかと言えば、それは国民の収入が増え、生活水準が上がったから納める税金が多くなったのではなく、単純に「増税をしたから」です。消費税が上がり、住民税が上がり、わけのわからない新しい税金がいっぱい導入された結果、法人税を下げても税収が増えるようになった。これは実績ではなく、「それだけ国民に負担をかけている証」でしかありません。先程のGDPが意図的に操作された疑惑がある中で、増税をしてドヤをしているのですから救いようがありません。これはもう僕たちがたくさん税金を取られて生活が苦しくなっているデータでしかないのです。

安倍晋三総理は、「ひとり親家庭の大学進学率が24%から42%に上昇した」と話しました。そのエビデンスになっていると思われるのが、内閣府が出した「平成29年度子供の貧困の状況及び子供の貧困対策の実施状況」というデータ(※上図)です。これを見ると「大綱掲載時」というのは平成23年なので、2011年。そして、この直近値というのは、平成28年なので2016年のデータであることがわかります。2011年が23.9%なのに対し、2016年が41.9%。たった5年間で約18%も上昇したことになります。本当にこんなことが起こるのでしょうか。この特別集計とやらは不定期で公表されているようで、内閣府が出している「子供の貧困に関する指標の推移」というデータ(※下図)を見ると、平成18年(2006年)は26.2%、平成15年(2003年)は24.6%となっており、ここから一気に18%も上がるというのはミラクルすぎるのです。

実は、生活保護世帯や児童養護施設の子どもたちは、毎年集計が取られていて、特に大きな変化はありません。給付型奨学金のおかげで大学に通いやすくなったというのであれば、それは「ひとり親家庭」の子供に限った話ではなく、生活保護世帯で育った子供や児童養護施設で育った子供だって同じはずです。でも、こうした子供たちの大学進学率には大きな変化はなく、ひとり親家庭の子供だけが猛烈に大学に進学したことになっている不思議。上のデータに筆者が手を加え、ひとり親家庭の子供の大学進学率をグラフにすると、このようになります。

本当にこんなふうになるのでしょうか。大綱掲載時が「全国母子家庭世帯等調査」という名前だったことから母子家庭のみを計算しているのかと思いましたが、どうやらこの時から父子家庭もカウントしている様子です。この明らかに不自然な伸びを見せている大学進学率の高さは、一体、何が原因なのでしょうか。あらゆるデータに改竄や捏造が発覚している安倍ジャパンなので、さてはこいつも怪しいんじゃないかと疑心暗鬼になってしまいます。このデータは正確に取れているのでしょうか。もはや数字がまったくアテになりません。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

最初は「前編」「後編」ぐらいで終わるかなと思っていたのですが、とんでもありません。まだ始まったばかりなのに、引っかかるポイントがあまりにも多すぎて、この有様です。誰にも検証できないデータばかりを見せられて、あげくに次々と捏造や改竄が発覚しているのに、「ほーら、これがアベノミクスの3本の矢の効果だよ!」と言われているので、僕たちはよく調べなければなりません。どのあたりがどう疑わしいのかを示すことで、ここから先は国会議員や専門家の皆さんにも追及していただきたいと思っているところでございます。


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