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【選挙ウォッチャー】 茨城県議選2018・見どころ解説。

12月9日に茨城県議選が行われるのですが、かなり熱い戦いになっている選挙区があり、茨城県だけの話かと思いきや、意外と県外で暮らしている僕たちの生活にも大きく関わってくる選挙になっていますので、勝負の行方がとっても気になります。「茨城県議選の結果が県外で暮らしている僕たちの生活に影響を及ぼすなんて大袈裟じゃないのか」と思う人もいるかもしれないのですが、大阪維新の会の知事や市長が勝手に決めてきた「大阪万博」の設営にかかるお金を僕たちが税金で負担しなければならないように、茨城県で決まったことが僕たちの生活に影響を及ぼすことはたくさんあるのです。なので、茨城県議選の見どころを皆さんに解説したいと思います。


■ 東海第二原発の再稼働問題を左右する東海村選挙区

東海村は、1999年のJCO臨界事故をはじめ、たびたび原子力災害に見舞われてきた、まさに「原子力ムラ」です。東海村には日本原子力研究開発機構や日本原燃など、原子力産業に関わる企業が集結し、使い捨ての作業員たちを生活させる監獄のような住宅も点在しています。そんな東海村の定数は1で、ギリギリまで無投票当選が決まるかと思われていましたが、急遽、2名の新人が立候補し、激しい戦いが繰り広げられることになりました。現職の下路健次郎さんはゴリゴリの原発推進派。「福島第一原発事故が起こってしまったために冷静な議論ができなくなってしまったので、冷静な議論ができるような環境を整えたい」と話しており、原発の再稼働中止を求める声が「感情論」だと思っているようです。非現実的な避難計画しかできておらず、しっかりとしたロジックを基に反対しているのに、これを「感情論」としか思っていないなんて、よっぽど何も考えていないのだと思います。ゴリゴリに自民党の支持を得て再選を狙う下路健次郎さんですが、これに立ちはだかったのが橋本重郎さんです。実は、橋本重郎さんも原発推進派です。しかし、下路健次郎さんよりはマイルドで「しっかり避難計画を策定する」ということを公約に掲げています。もし本当に避難計画を策定するとなると、放射能がモリモリしているところをバスの運転手さんに何度もピストン輸送してもらうことになり、自衛隊でもない、そこらへんのバスの運転手のオッサンが被曝しまくって住民を助けることになるため、茨城県のバス協会の皆さんは「バスの提供はできない」とキッパリと言っています。なので、どうすれば住民を速やかに避難させられるのか、その現実的な避難計画をまとめている間に20年かかりそうです。唯一、東海第二原発の再稼働に反対している候補もいるのですが、川崎篤子さんは共産党です。保守王国と言われる茨城県では「共産党」と言うだけで放射能のように嫌われてしまう悲しい現実があり、東海第二原発の再稼働反対でどこまで票を伸ばせるのかが注目です。一応の下馬評では下路健次郎さんが優勢だと思いますが、実は、橋本重郎さんは地元ではなかなか有名なファミリーだそうで、県民のために立ち上がると言い出したことに応援する声が大きく、街頭演説を聞きに来る人の数はむしろ橋本重郎さんの方が多く、激戦が予想されています。


■ 社民党から立憲民主党に移籍して狙う水戸市・城里町選挙区

4年前とまったく同じ顔ぶれで戦うことになったのが茨城県の県庁所在地である水戸市のある選挙区です。その顔ぶれは、自民党3人、公明党1人、共産党1人、民主党(現・国民民主党)1人の現職に、立憲民主党の新人が加わった7名。4年前と変わったことは、それぞれの年齢が4歳上になったこと、民主党の現職は実質的には国民民主党ですが、国民民主党という名前では勝てなそうなので「茨城県民フォーラム」という名前に変えていること、4年前は社民党だった玉造順一さんが社民党を離党して立憲民主党に移籍したことです。玉造順一さんは東海第二原発の再稼働反対を掲げ、人権の問題にも取り組んできた人物で、これまで社民党だったために票を伸ばしきれないところがありましたが、今回は立憲民主党に移籍し、枝野幸男さんや菅直人さんが水戸に入って応援しています。ただし、立憲民主党の頼みの綱である「連合茨城」は、今回は茨城県民フォーラムと言いながらも実質的には国民民主党の佐藤光雄さんを支持する形になっているようで、大きな組織票が期待できない状態にあります。また、この選挙を機に茨城県でも立憲民主党の支部が立ち上げられたのですが、かなり手弁当感のある選挙を繰り広げていて、立憲民主党の風を吹かせられるのかに注目です。対する自民党は保守層を石破茂さん、主婦層を今井絵理子さんが応援に駆けつけるなどして盤石の状態。4年前と選挙の結果は変わるでしょうか。


■ 東日本入国管理センターの人権問題が問われる取手市選挙区

今年から定数が3から2に減り、さらなる激戦が確実となった取手市選挙区は、日本の人権問題を大きく左右する選挙区であると言えます。共産党の上野高志さんは、牛久にある東日本入国管理センターの人権問題を熱心に取り組んできた人物です。取手市選出ですが、「茨城県議」なので、茨城県全体の問題を取り組む立場です。茨城県内にある「東日本入国管理センター」の人権問題に積極的に取り組んでおり、もし上野孝志さんが落選するようなことがあると、今、入管法改正案で話題になっている外国人労働者の人権の問題は改善が遅れることになるかもしれません。本当は自民党などから人権問題に取り組む人が出てほしいのですが、利権のためには働くけれど、人権のために働く自民党の議員はいません。本当は人権こそ最も守らなければならない大切なことなのですが、お金にならないことには取り組まない議員ばかりなので、この問題はいつまでも放置されたままになっているのです。保守王国と言われる茨城県において、共産党が議席を獲得するのは極めて難しいと言えますが、議席を死守することができるでしょうか。

上野高志さんの応援には、共産党の小池晃さん、元公明党副委員長の二見伸明さんが駆け付けていました。保守系の候補が3人立候補する中で、共産党の上野高志さんに勝つ隙があるでしょうか。


■ 混戦を極める「つくば市」と「龍ケ崎市」

無投票当選が決まる選挙区も多い中、つくば市と龍ケ崎市は大激戦が繰り広げられています。つくば市は定数5に対して9人が立候補しており、保守系は地盤としているエリアがカブっているので、票が分散する可能性があり、そこに今回から立憲民主党が入り込む形となり、かなりの大激戦になりました。つくばエクスプレス沿線に新興住宅街があり、ここを制する者が選挙を制するのではないかと考えられており、従来の地盤に加えて新規開拓がカギを握っていると言えます。ここでは国民民主党と立憲民主党が戦うことにはなっておらず、立憲民主党の野口修さんは「つくば・市民ネットワーク」の支援も受けています。東海第二原発の再稼働中止を訴えているのは立憲民主党と共産党だけ。つくば市は共産党に現職がいるエリアなので、立憲民主党に押し出されるようなことにならないかと共産党が戦々恐々としています。

龍ケ崎市は、これまで定数1のエリアで、前回は無投票当選で決まった選挙区です。ところが、今年から利根町が龍ケ崎市と一緒になり、定数が2に増えたことにより、6人が立候補する大激戦になりました。新しく加わった利根町を票田としている人たちが龍ケ崎市で勝負をできるのか。そして、ここでも国民民主党は「茨城県民フォーラム」に名前を変え、連合茨城の支援を受けて立候補をしています。先日の松戸市議選では立憲民主党の候補が4人中4人当選する中、1人しか立候補していなかった国民民主党の候補が落選するという力の無さを証明し、「松戸ショック」などと呼ばれていますが、龍ケ崎市では名前を変えた国民民主党が組織票を武器に勝負できるのかどうかが注目です。


■ 日本第一党が立候補している那珂市議補選にも注目

茨城県議選と同日に行われる那珂市議補選も無視できない選挙になっています。欠員が4となり、ここに6人が立候補することになったのですが、なんと、「日本第一党」から44歳の女性が立候補してきます。日本第一党は、在特会のリーダーだった桜井誠さんが代表をしている「ヘイト政党」で、特定の外国人に対する酷い差別発言を連日にわたって繰り返しています。一般人が騒いでいる分には「そんな人もいるかもしれない」ということでスルーできたかもしれませんが、今度は議会でヘイトが展開されるようになるという話です。

原田陽子さんは、水戸駅前で行われた日本第一党のヘイトスピーチに参加していた中心的な人物で、日本第一党の茨城県本部長という肩書きです。しかし、ポスターは日の丸っぽい背景になっているものの、「日本第一党」の身分は隠していて、あくまで「無所属」ということになっています。そして、不幸にも他の候補から猛烈なポンコツ感が漂う中で、彼女の素性を知らない人が選挙公報を見ると、なんだかとっても良いことを言っているような印象を受ける仕組みになっています。つまり、原田陽子さんの「本当の姿」を見極めるのは、そこらへんの田舎のじいさん&ばあさんには難易度が高くなっているというわけです。僕が原田陽子さんを日本第一党であること、日頃からヘイトスピーチを繰り返している人間だということを知っているのは、僕が「選挙ウォッチャー」という特殊な仕事をしていて、なおかつ、ネトウヨ問題に高い関心を持っていて、今回の選挙を機に「原田陽子」という名前で検索をかけたからです。普通は候補者を1人ずつ調べて、この人は大丈夫でこの人は大丈夫じゃないということはしないので、なんとなく駅前で「よろしくお願いします」と声をかけられた人に投票したりするものです。そもそもオジサンばっかりが立候補している中で、紅一点で頑張っている女性候補となると、ますますポイントが高くなりそうですし、4人も当選できるという環境もあって、かなりの確率で「ヘイトおばさん」が当選してしまうということを危機感を持ってお伝えしたいと思います。

ちなみに、茨城県議選の那珂市選挙区の定数は1なのですが、まさかの4人が立候補するという大激戦になっています。しかも、国民民主党が推薦する元職と自民党系の新人2名が立候補し、そこに日本維新の会から武藤博光さんが立候補することになったのですが、自民党も国民民主党も東海第二原発の再稼働には賛成しているということで、なんと、日本維新の会が「東海第二原発の再稼働反対」「消費税10%反対」を掲げて立候補しているのです。日本維新の会のくせに、共産党と丸かぶりの公約を掲げて立候補しているという節操のない感じになっています。現職が市長選に立候補したため、空いた椅子を4人で奪い合うのですが、誰が勝つのかは分かりません。


■ 選挙ウォッチャーの分析&考察

茨城県議選なんて、茨城県民でさえ興味がないという話かもしれませんが、こうやって見ると、どれもこれも見逃せない選挙になっています。特に、東海第二原発の再稼働については、自治体の約8割が「反対」を決議しているのに、茨城県議は自民党と公明党が圧倒的多数を占めるため、約8割が「賛成」という「ねじれ」が生じています。東日本大震災の時には東海第二原発も大きなダメージを喰らい、とても再稼働できない状態に陥っていたはずですが、福島第一原発事故を経験し、その前にはJCO臨界事故を経験し、それでもなお再稼働を目指そうなんて、よっぽど頭がおかしいと思います。本当は大きな争点のある選挙となっていますが、県民の過半数が「興味がないから誰に投票すればいいのか分からない」という状態に陥っています。そんなことだとポンコツが当選し、茨城県の未来は真っ暗です。ぜひ選挙に行って、自分なりの最善の選択をしていただきたいと思わずにはいられません。毎日、現地の様子をツイキャスで生配信中ですので、ぜひチェックしてみてください。[了]

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