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ピティナ特級二次予選直前!出場者インタビューを見た感想と演奏順の紹介


こんにちは。ピティナ2023特級公式レポーターの山本です。

いよいよ、今週末はピティナ特級の二次予選が開催されます!そこで今回は二次予選前の出場者インタビューを拝見した感想を少し書いてみます。感想の方はごくごく個人的な視点からになりますが、もしよろしければ読んでみてください。これから二次予選を楽しむためのヒントになりますように♪

最後に、出場者26名の演奏順もあわせて紹介しています。

インタビュー動画を見た感想

インタビューを見ると、コンテスタントの皆さんそれぞれがピティナ特級に強い思いを持って臨まれているということがよくわかりました。

「悔しい思いをしてリベンジしたい」「特級を通して憧れの音楽家に近づきたい」「音楽とは何か、なぜ弾くのか、答えを見つけたい」などの自らが抱えるさまざまな目標を教えていただき、お一人お一人が少し身近に感じられるようになった気がします。そのなかで私が個人的に心に残った方や気になったプログラムを紹介します。

佐藤 和泉さん

【プログラム】
・ベートーヴェン/ピアノソナタ第28番 イ長調 Op.101 
・ショパン/エチュード 嬰ハ短調 Op.10-4 
・サン・サーンス=リスト/死の舞踏 S.555

インタビュー動画のなかで、佐藤和泉さんは「死の舞踏」に対して「コロナの期間を通してこの曲に対する感じ方や思い入れが変わってきた」と言っています。私はこの言葉にとても興味を惹かれました。

「死の舞踏」は、中世ヨーロッパの人々がペストへの恐怖から逃れるために踊った集団舞踊に由来する芸術的モチーフです。骸骨と人間が手を取り合い輪になって踊る様子を描いた木版画が多く残っており、それらには「死からは誰も逃れられない」という意味が込められています。

死の舞踏に込められているのは佐藤さんがコロナ禍で感じたむなしさや恐怖から発する負のエネルギー。しかし、佐藤さんはベートーヴェンのピアノソナタ第28番からは、生命力にあふれる全く異なるエネルギーを感じるのだそうです。二次予選では二つのエネルギーの対比に注目してじっくり聴いてみたいと思います。

小野田 有紗さん

【プログラム】
・ハイドン/ピアノソナタ ト長調 Hob.XVI:40
・ショパン/エチュード 嬰ト短調 Op.25-6
・ショパン/舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
・ストラヴィンスキー=アゴスティ/火の鳥

小野田さんは6歳のときに鑑賞したバンクーバーシンフォニーオーケストラの野外コンサートで、言語の壁をものともせず音楽を通して周りの人たちと仲良くなったことが、人生のターニングポイントとなったのだそう。それからは「音楽で言語や国籍、文化を超えて人々をつなげられるような人になりたい」という思いが常に自分の根底にあるのだそうです。

音楽を通して社会や人々に寄り添い、心に調和をもたらすことができるような特別な時間や空間を作り出せる人になりたいという小野田さん。「なんという大きな使命感を持って音楽と向き合っているのだろう」と感銘を受けました。

小野田さんによると、「火の鳥」には「フィナーレに入る瞬間にこれまでの呪縛やしがらみから解放され朝日が昇る瞬間」があり、そこが非常に美しいのだそうです。火の鳥はもともとバレエ音楽で、邪悪な魔法使いにつかまった王女を王子が助けるというあらすじ。王子が絶体絶命のときに火の鳥が現れて王子を助け、邪悪な魔法使いを滅ぼしたのちに王子と王女が結ばれます。そんな情景を想像しながら聴いてみたいと思います。

髙尾 真菜さん

【プログラム】
・ラモー/新クラヴサン組曲集第1番(第4組曲) より 「サラバンド」
・ショパン/エチュード 嬰ハ短調 Op.10-4 
・ドビュッシー/映像 第1集 
・スクリャービン/ピアノソナタ第2番 嬰ト短調 Op.19 「幻想ソナタ」

髙尾さんのインタビュー動画によると、二次予選はラモーとドビュッシーという二人のフランス人作曲家の作品を中心として構成したのだそうです。二人には200年ほどの隔たりがありますが、ドビュッシーはラモーのことをとても尊敬していたのだそう。髙尾さんが今回演奏する映像第1集の2曲目には「ラモーを讃えて」という曲が入っています。

髙尾さんの、ラモーとドビュッシーの曲が同時に楽しめるプログラムに心惹かれます。(実は私、ドビュッシーの作品が大好きなのです!)また、ショパンのエチュード 嬰ハ短調 Op.10-4は他にも何人か弾かれる方がいらっしゃるので、お一人お一人の表現にどのような違いがあらわれるのかという点にも注目して聴いてみようと思います。

国本 奈々さん

【プログラム】
・J.S.バッハ/平均律クラヴィーア曲集第1巻 第4番 嬰ハ短調 BWV849
・ショパン/エチュード イ短調 Op.25-11 「木枯らし」
・チャイコフスキー=プレトニョフ/演奏会用組曲「くるみ割り人形」 Op.71

ピアノとバレエを同時に4歳から始めたという国本さん。幼いころはバレエ「くるみ割り人形」の中の金平糖の踊りを、きれいな衣装を着てトウシューズを履いて踊るのが夢だったのだそうです。その夢はかなわなかったものの、特級という夢の舞台で大好きな曲を弾くのは、昔からのバレエの夢も半分かなったような気持ちだとおっしゃっていました。

くるみ割り人形」は、クリスマスプレゼントにくるみ割り人形をプレゼントされたクララと、くるみ割り人形がお菓子の国を冒険し、さまざまなお菓子の精と出会って夢のような時を過ごす物語を題材にした曲。実際にバレエを習っていたという国本さんがこのロマンティックな曲をどのように表現されるのかとても楽しみです。

嘉屋 翔太さん

【プログラム】
・スカルラッティ/ソナタ ニ長調 K.119
・ショパン/エチュード 変イ長調 Op.10-10
・リスト/巡礼の年第1年「スイス」 S.160 より 「オーベルマンの谷」
・ドビュッシー/12のエチュード より 第5番「オクターヴのための」
・プロコフィエフ/ピアノソナタ第3番 イ短調 Op.28 「古い手帳から」

二次予選参加者の中で1番多い、5曲を演奏される嘉屋さん。嘉屋さんは中学生のときに初めてプロコフィエフの作品に出会い、人生のターニングポイントとなる衝撃を受けたのだそうです。今でもプロコフィエフの作品が好きで、ちょうど今年がプロコフィエフの没後70年ということもあり、プロコフィエフの作品をプログラムに入れたとおっしゃっていました。

嘉屋さんのインタビューによると、今回演奏する「ピアノソナタ第3番」はプロコフィエフの若いころの作品で、アヴァンギャルドな面がありつつも彼の作品全体に見られる「歌」が大きな意味を果たしているのだそう。メランコリックでときにピュアな歌が作品に彩を与えており、そこが魅力になっているということなので注目してみたいと思います。

また、個人的に気になったのがリストの「巡礼の年」という曲。なぜ気になったのかというと、私の大好きな村上春樹の「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」という作品にこの曲が登場するからです!(実際に作品に出てくるのは6曲目の「オーベルマンの谷」ではなく8曲目の「ル・マル・デュ・ペイ」なのですが、この2つの曲は両方とも「オーベルマン」という小説からインスピレーションを得て制作されました。)小説「オーベルマン」や「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」にも思いを馳せつつ、じっくり曲想を感じ取ってみたいです。

今回紹介させていただいていない方々について

今回ピックアップさせていただいた5名は、インタビュー内容に私の個人的な好みを加味して選ばせていただきました。

しかしながら、二次予選のプログラムを見てみるとまだまだ私の知らない曲がたくさんあるため、これからすてきな出会いが待ち受けていそうな気がしています。なので、二次予選では今回挙げた方だけでなく、お一人お一人の演奏を注意深く聴かせていただこうと思っています♪

二次予選の演奏順

ピティナ特級の二次予選は、J:COM浦安音楽ホール コンサートホールにて7月29日(土)と7月30日(日)の2日にわたって開催されます。開演時間は29日が11時(開場は10時30分)、30日が10時30分(開場は10時)です。

演奏するのは、ショパンのエチュード作品10 または作品25 からの任意の1曲を含む25 分以上35 分以内のプログラム。皆さん規定の中で長い曲や短い曲をうまく組み合わせ、目的をもって思い思いに選曲されています。長めの曲を2曲という方もいらっしゃれば、短めの曲を5曲という方もいらっしゃり、個性やお人柄が感じられます。

チケットは当日券のみで全席自由席、一般1,000円、会員・学生は800円。チケット販売開始時間は両日とも開場時間と同じです。お近くの方はぜひ足を運んで生の演奏に耳を傾けてみてくださいね。来場が難しい方のためにYouTubeでも配信が予定されています。

また、二次予選出場者のお顔やインタビュー内容はこちらの動画でも見られます。ここでは急いで知りたい方のために、ひとまず名前と出身校のみリストにしてみました。

★7月29日(土)11時~19時40分頃(予定)


1.小野寺 拓真 札幌開成中等教育学校コズモサイエンス科6年

2.塩﨑 基央 東京音楽大学ピアノ演奏家コース3年

3.藤川 天耀 桐朋学園大学音楽学部1年

4.渡辺 康太郎 東京藝術大学2年

5.西山 響貴 東京大学2年

6.島多 璃音 東京藝術大学4年

7.齋藤 陽花 東京藝術大学4年

8.生熊 茜 京都市立芸術大学大学院修了

9.吉原 佳奈 昭和音楽大学大学院1年

10.山田 ありあ 東京音楽大学大学院1年

11.安達 莉子 愛知県立芸術大学大学院1年

12.佐藤 和泉 桐朋学園大学音楽学部4年

13.小野田 有紗  ニューイングランド音楽院

14.中村 梨乃 京都市立芸術大学4年

★7月30日(日)10時30分~18時15分頃、三次予選進出者の発表は18時45分頃(予定)

15.柏 匡之輔 桐朋学園大学大学院1年

16.鈴木 愛美 東京音楽大学ピアノ演奏家コース4年

17.稲積 陽菜 桐朋学園大学音楽学部2年

18.髙尾 真菜 名古屋音楽大学大学院1年

19.加藤 亜咲美 桐朋学園大学音楽学部1年

20.三井 柚乃 昭和音楽大学ピアノ演奏家コース4年

21.国本 奈々 東京音楽大学ピアノ演奏家コース1年

22.嘉屋 翔太 東京音楽大学大学院1年

23.前川 愛実 桐朋学園大学音楽学部1年

24.橋本 崚平 東京藝術大学大学院1年

25.平間 今日志郎 パーク大学国際音楽センター 

26.神原 雅治 名古屋音楽大学ピアノ演奏家コース3年

最後に

いよいよ明日に迫るピティナ特級の二次予選。それぞれ強い思いを持って戦いに臨むコンテスタントの皆さんが、自分らしい演奏ができますよう心より願っております。私は遠方に住んでいるため会場に向かうのは難しいのですが、YouTubeを通して楽しみに拝見させていただきます♪

(写真提供:ピティナ)


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