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アゲハ蝶との夏


アゲハチョウのカップルの姿が撮れました。

生命の力が、地上の世界の秘密そのもののように感じられました。

今年はアゲハチョウと縁があります。

夏のはじめ、産卵しているところに出くわしました。そのときの私は、仕事や育児や色々なことで、世界に地面がなくなってしまったかのようなおもいの悩みを抱えていたのでしたが、卵を産む蝶の姿を見た時、灰色の世界に少し色がついた気がしました。


ひとり風にあおられては木に戻り、ひたすら次々と卵を産んでいく母蝶がひたむきに見えて、また、卵を生み出さずにはいられない体の重みのようなものも想像して、ああ、この蝶も女性なのだと思ったのを覚えています。

そして、庭の木に産みつけられた卵が孵って、黒い幼虫がうまれ、脱皮を繰り返して立派な緑のアオムシになるのを、每日見てすごしました。

でも、とても気に入っていた一匹が、ある日、サナギになる直前のように見えたその直後、行方不明に。見失ってしまってから、一日に何度も何十分も庭の木を探す自分がいて、でも、みつからず、気持ちを抑えました。

鳥に食べられてしまっただろうか、などとも思わないわけではないですが、どこかの葉陰でサナギになって、そして、大人の蝶になって、空を舞う日を迎えてくれたのならいいなと思います。

そして、夏の終わり。

息子の運動につきあって公園を散歩する私の目の前に、アゲハ蝶のカップルが、樹々の奥から現れたのでした。

青い空が美しい日。自然のもと、祝福された恋人同士に見えました。

なんとなく記憶しているのですが、私には、この空をとぶ美しい羽をもつアゲハ蝶になりたいとすごく憧れた時期が、子どもの頃にあります。

 ハートの形をしたふたり。

本当に綺麗で、夢のようだと思いました。

「よく昆虫を接写できるね。虫は逃げないの?」と言われることがあるのですが、実は、私の写真では、多少警戒されている図も多いです。

ただ、虫達は、緊張しながらも、私が近づいたり撮影したりすることは、わりとさせてくれる気がします。難しいのは、虫取り網をもつ子どもが多い公園などにいる虫です。彼らはやたら逃げてしまうので、近寄れず、難しいです。

この写真の蝶も、上の方の蝶が、私に対して多少身構えたので、羽がぴたっと閉じて美しい形になり、ハート型もくっきり現れたように思います。情熱的なシーンに近づいて撮ったりして、私もなかなかとんでもないのですが、でも、なんというか、あまりそこは、ふたりともあけすけで、デリケートな気分でもないようにも見えました。夏の恋人という感じで。

そして、私の空想とも言えますが、私と彼らは出会うべくして出会って、ふたりの近くにいさせてくれたとも感じたのでした。



調べてみると、成虫になったアゲハ蝶の寿命はそれほど長くないようです。そう思うと、自然の中で命の営みのままに生き抜くことについて、考えさせられます。

そして、また、新しい代の卵が。

もう秋になりますが、我が家の庭にも、また、小さな幼虫が見つかりました。



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