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初めてのベトナム旅で出会った15歳のミンくんと、ほぼ家族になった私。

当時、東京の某日本語学校で日本語教師だった私。担当がベトナム人のクラスだったことがきっかけで、学生たちのことをもっと知りたいと思い、格安航空券 (往復34000円)とAirbnb (1泊1800円) を使って1人、8日間バックパックの旅をしてきました。

それは、ちょうど3年前の2016年6月のことでした。

今回は、短期間の旅行だし、現地に知り合いもいないし、予定も特に立てていなかったので、気ままな一人旅の予定でした。ですが、思わぬ出会いで私はベトナムという国とつながりを得ることになります。

初日の朝ごはんが全ての始まりだった

今回の滞在先は、首都ハノイ。道路は割ときれいですが、まだ整備も必要なところも多々あり、若干土ぼこりが俟っています。外は、歩行者よりも、圧倒的にバイクが多い景色です。よくみると、カラフルな柄の入ったマスクを使用している人もたくさんいて、なるほど、教え子のベトナム人学生が「ベトナムは、空気が排気ガスで汚れているので、喉が痛い」と言っていたことがわかりました。

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初日の朝。早速、朝ごはんを食べようと外へ出て、特にあてもなくぷらぷら歩いてみようと、しばらく散歩をしました。すると、道ばたに小さなイスを並べ、しゃがみながら料理を作っている屋台を発見。どうやら麺のお店のようです。

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私が立ち止まると、屋台のおじさんが「おいでおいで〜」と手をふるので、まぁ、何もわからないからとりあえずここでいいかと、誘われるがままにプラスチックの小さなイスに着席。すると、おじさんが早速あつあつの麺を持ってきてくれました。

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日本ではあまり見ない雰囲気の麺料理。ひとくち食べてみると、これが、とてつもなくおいしい!

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私がそのおいしさに感激していると、周りの地元のお客さんのようなおばさん、おじさんも、「これを入れるともっとおいしくなるよ」など辛い調味料や酸っぱい調味料をわたしの丼にいれ、食べ方を教えてくれました。

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その度にわたしが喜ぶと、近くに座っていたおじさんが、私とコミュニケーションをとってくれようと自分の携帯電話に入っているお孫さんの写真を見せてくれたり、言葉は全く通じないのですが、周りのみなさんに仲良くしていただき、最後にはおじさんからサービスでお茶もいただきました。

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屋台のおじさんのバイクに乗せられて......

この屋台は朝食を専門としているようで、昼前にはお店をたたんで撤収。ベトナムは6月で33度。暑い国なので、朝食の屋台はピークが過ぎれば、もう店じまいなんですね。

それで、屋台のおじさんが色々片付け始めるので、おばさん、おじさんたちと一緒に、片付けをちょっとだけお手伝いしました。

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そして、朝食の場だったそのエリアは何もない普通の道となり、屋台のおじさんがHONDAのカブに乗り、エンジンをかけがなら、突っ立っているわたしに、「後ろに乗れ、乗れ」とスクーターの後部席をさすのです。

「えっ......!?」

判断は、3秒くらいでしたでしょうか。「乗る、乗らない、乗る、乗らない......」を脳内で5回ずつくらい巡らせました。そして、私は「(えぇい!乗ってしまえ!) 」と、おじさんの肩につかまって後部座席に乗り、周りにいたおばさん、おじさんに「(わたし、大丈夫?)」という表情で訴えましたが、おばんさんが「OK、OK」バイバイと手を振られ、おじさんも、構わずブィーンと発進。

ノーヘルで、ハノイの街中を走る私を乗せたおじさんのスクーター。おじさんの肩につかまりながら、「ん〜......。どこへ行くのだろうか。次の屋台の場所へ向かっているのだろうか。ん〜......。結構走られると、それはそれで困っちゃうな〜......。ま、でもなんとかなりそうな感じもする。」と色々めぐらせ、おそらく5分程度でしょうか。おじさんがスクーターを止め、降りました。

「けっこう、早かった。」とほっとしました。

そして、そこは細い路地。向かい合わせで家が並んでいて、その先は天井も見えないほど暗い。家の入り口付近には、人が座り込んでいたり、足元は、生活用水なのか雨水なのか、大きな水溜りがあるけど、色までわからない。避けながら、屋台道具を抱えたおじさんのあとをついて行きました。

そして、とある左側にあった戸のない家に入りました。私も続いてそろりと入ってみると、入り口すぐの椅子に、おばあさまが座っていました。

言葉が通じないし、現在地もわからない。

すると、おじさんが、おばあさまのこと指して「マンマ、マンマ」というので、このおじさんのお母さんなんだと理解し、「Xin chao (シンチャオ)」と唯一知っているベトナム語でご挨拶。

おばあさまは、ニコニコしてくれました。

それにしても、当たり前だけれど、共通の言語がない。そして、ここはいったいどこら辺......?私、ネット環境ないけど、宿に戻れるのかな。

おじさんは屋台道具を片付け、おばあさまはうちわを仰ぎながら、私に座れ座れと隣の席を勧めてくれるので、ひとまず座ってみる私。

「さて、どうしようか。言葉わからないけど。ん〜。どうしようかな。」と思っていたところに、家の入り口 (玄関と呼べるような扉はない。) から少年がひょこっと現れました。

救世主! 15歳のミン君、現る。

この少年こそ、私の今回のハノイ滞在をめちゃくちゃ助けてくれることになるミン君。おじさんの息子です。

おじさんが、その男の子に私のことを指差しながら説明しています。そして、私はだんだんと、「今、私は、とある一家のおうちに、招待されているんだな」と確信できるようになってきました。

それはそうと、通じる言葉に飢えていたわたしは、この少年に英語が話せるか聞いてみると、「Yes, I can.」とのこと。

「よかったあああ。。。」ハノイに到着してやっとほっとできた瞬間でした。なんて、長い初日の朝。

そして、ミン君から家族の紹介を改めてしてもらい、屋台のおじさんはミン君のお父さんで、おばあさまはミン君のおばあちゃんだということが正式に判明しました。

お昼もおいしい麺料理

こうして、家族全員が揃ったところで、おじさんが昼食の準備を始めました。キッチンはないのか、床にしゃがみながら、野菜を切ったり、カセットコンロで乾麺を茹でたりします。

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作ってくださったのは、牛肉と野菜がはいった塩味の焼きそばのようなもの。これもとってもおいしかったです!

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こうして私のハノイ初日は、屋台のおじさんが作ってくれた朝ごはんで始まり、そのおじさんの家族とお昼ごはんも共にし、さらには、ミン君がハノイの町を案内してくれるということで、午後はプライベート・ハノイ・ツアーに出かけることになりました。

ミン君の住まいは、ハノイでも有名なホアンキエム湖 (Ho Hoan) の近く。ガイドブックもスマホもない私に丁寧に案内してくれます。優しさにたっぷり包まれた時間で、とても嬉しかったです。

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ミン君は、実は日本語をちょっとだけ勉強しているみたいで、わたしに片言の日本語の単語を言ってみては、恥ずかしそうに微笑みます。すごく可愛い。

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ミン君に色々なところへ連れて行ってもらい、そろそろ日が暮れ始めるとミン君が、「夕食もうちで食べようよ」と言ってくれ、私がベトナム料理で一番好きなサンドイッチ「バインミー」の材料であるバケットとポークのパテを買って、一緒に帰宅しました。ベトナム人の国民性がだんだんわかってきたような気がします。とにかく、人懐こくて、優しいんです。

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夕食は、ミン君お手製のバインミー

そして、今度はおじさんではなく、ミン君がバインミーを作ってくれました。

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ベトナムで食べられているスタンダードなバインミーはなんと焼き卵とポークパテが具だそうです。そして、私が食べ終わりそうになると、すぐに新しいバインミーを作って、食べ終わると同時に、はいっ、といっておかわりバインミーを渡してくれるミン君。これもミン君だけではなく、隣に座っているおじさんも、おばあさまも、「はいっ」と、まるでわんこ蕎麦のようにバインミーをくれます。ベトナムは、もてなすのが文化なんだと改めて思いました。

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バインミーを食べ終わった後は、ミン君が近所に大好きなデザート屋さんがあるからと言って、連れて行ってくれました。

これは、「Che (チェー)」というデザートで、フルーツ、煮豆、ココナッツミルク、ヨーグルト、コンデンスミルク、ゼリー、など好きな具材を選んで最後に細かく砕いた氷を混ぜて食べるもっともポピュラーなデザート。

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恥ずかしがり屋のミン君は、カメラを撮ろうとすると顔を隠しますが、いつもニコニコしていて、とてもキュートな子です。

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なんて素敵なベトナム旅行の初日。ベトナムの人の国民性に思い切り触れることができ、日本にいる教え子のベトナムのみんなにすぐに伝えたいほどでした。

「約束だよ。」

日中、ミン君がハノイの街を案内してくれているときに、話してくれたことがありました。

2年前に、今回の私と同じように、ミン君はフランス人旅行者の男性に出会いハノイの街を案内してあげたことがあったそうです。とても楽しい時間だったそうで、「また会いに来てね。」とそのフランス人の男性と約束をしたらしいのですが、彼はベトナムを去った後、連絡が来なくなってしまったそうなのです。幼いミン君にとっては、約束を守ってくれなかったことに寂しさを感じたのかもしれません。そして今回の私との出会い。

ミン君は、私に「Chiekoは、また会いにきてくれるって約束してね。日本に帰ってもずっと友達でいてね。」と同じように言いました。

ミン君には、お母さんがいない

実は、ミン君、お母さんがいないようなのです。何歳の時からお母さんがいないのかは聞くことはしませんでしたが、どうやら出て行ってしまったようなのです。家には、ミン君のお姉さんの結婚式の写真がありました。そこには、家族全員が写っていておじさんの横にとても綺麗なミン君のお母さんであろう人も写っていました。ミン君は、それ以来お父さんとおばあちゃんと3人暮らし。学校以外の時間は、お父さんの朝食の屋台の仕込みの手伝いをしているそうで、休みは日曜日だけ。そして、来年は高校生になるミン君。ご家族や普段の生活の様子から、ミン君がそこそこ複雑な家庭にいるのは想像の範囲でした。

ハノイの街を案内してくれたり、バインミーを作ってくれたり、チェーのお店に連れて行ってくれたり。ずっと優しくしてくれたミン君でしたが、私はミン君に何かしてあげられていたのかな。お母さんの代わりになっていたかな?......だといいな、と思いました。

デザートを食べた後、ミン君は、私の宿まで送ってくれました。朝ごはんを食べようと宿を出て、12時間。まさかこんな日になるとは思いもしませんでしたが、驚いたのは、ミン君の家から私の宿まで徒歩で15分くらいの距離だったということ......!

ラッキーというか、面白いというか。こうして、私の初めてのベトナム旅は、初日から最終日まで素敵な出会いとベトナムの人たちの優しさで癒される旅となるのです。

愛たっぷりのミン君一家での送別会

滞在中、ミン君とは何回かお出かけをしました。そして、出発を翌日の朝に控えた最終日の夜。

ミン君から連絡があり、「おばあちゃんが、最後の夜だからみんなで夕食を食べないかと言ってるけど、来れる?来て!」とのこと。

もちろん、私はミン君一家と最後の夜を過ごしたいと思っていたので、気にかけてお誘いしてくれたことに、感謝でいっぱいになりました。

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そして、約束の時間にミン君の家に到着。すると、おじさんが鏡の前で櫛を使って髪型を整えておめかししていること、おばあさまが私がこのベトナムの旅で大好きになった名物「Bun Cha (ブンチャー)」をテーブルいっっぱいに作ってくれていたこと、そしてミン君が可愛い笑顔で迎えてくれたこと。その光景に、もう感極まって心臓がとても熱くなり、涙が出そうになりました。なんて、なんて、なんて愛しい人たち。

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最後には、お土産も用意してくださって。それは、ベトナム人学生からもおおすすめで聞いていた「Keo Lac(ケオラック)」というピーナッツのお菓子。おばあさまが、この暑い中買い物に行ってくださった光景を思い浮かべると、本当に胸がいっぱいになって、たまりませんでした。

おじさんが私をバイクに乗せた理由

屋台で出会ったおじさん。バイクに乗っちゃったけれど、まさかこんな出会いが待っていたとは思いませんでした。おじさんが私をバイクに乗せたのは、おそらくミン君のことを思ってのことだったのかもしれません。以前に出会ったフランス人のように、ミン君に色々な人との出会いをと思って私を家に招待してくれたおじさん。でも、どさくさに紛れて「結婚しよう」と雑な求婚をしてくるおじさん。

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温かい3人のおかげで、私はいうまでもなく、ベトナムという国、文化、人が大好きになりましたし、また会いに行きたい人たちに出会え、一度きりではない、続けて訪れたい国の一つになりました。

初日にミン君と結んだ約束。最終日には、私からも「また、会いにくるね。」とはっきりいうことができました。ミン君がこれからも幸せに育ち、幸せな暮らしと人生を送ってほしい。そのために私にできることがあれば今度は私が力になりたいと思うようになりました。もう、私のベトナムにいる家族のような存在です。

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日本にいるベトナム人留学生のことをもっと知りたいと思ったのがきっかけだった今回の旅。学生たちにたくさんのお土産話ができるのが楽しみです。

再会は、2年後の2018年。

それから、2年後の2018年5月。17才になった高校生のミン君とおじさんとおばあさまとの再会を果たしますので、そのお話はまた今度。

これまで訪れたところ
<アジア>
台湾(台北2回、高雄)、タイ(バンコク、チェンマイ)、韓国 (ソウル2回)、シンガポール、マレーシア、香港2回、パキスタン (イスラマバード、ラホール)、中国 (北京)、ベトナム (ハノイ2回、ハロン湾)
<北米>
カナダ (トロント)、アメリカ (ニューヨーク7回、ワシントンDC、ボストン、コネチカット、フィラデルフィア、オーランド、マイアミ、サンフランシスコ3回、ロサンゼルス2回、サンディエゴ、ハワイ2回、サイパン2回、グアム2回)
<ヨーロッパ>
フランス(パリ)、デンマーク、イタリア(フィレンチェ、ローマ、ミラノ)、イギリス(ロンドン、バース)、スコットランド(エジンバラ)
<オセアニア>
オーストラリア(ブリスベン、ゴールドコースト、パース、サバンテス、モンキーマイア)

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