「綺麗」と言われること

大人になってよかった、と思うことが3つある。

ひとつはお酒が飲めること。これは言うまでもないですね。酒最高。
2つ目は、小さいころから憧れてきた歳上の人たちと、きちんと同じ敷居に立って話ができること。「まだ子供だから」「まだ学生だから」なんて言われないこと(本当に素敵な人は多くの場合そんなこと気にしないんですが、まあそれは別の話として)。

そして3つ目が、付き合う人を自分で選べるようになったことだ。
グループ、とかクラス、とかそういう半強制的に与えられる枠組みがなくなって、基本的には自分がいたいと思う人とだけいていいルールになったこと。
……と言うとバイトや会社の飲み会どうしてたの?と聞かれるのだけど、顔の近くでニコニコ手振りながら「わ!今日はちょっとすいません〜」みたいなことを3回くらいやってると大体誘われなくなるよね。ご参考までに。

大人になった私は、付き合う人、具体的に言うと会社帰りにお酒を飲んだり休みの日に一緒に出かける人、を選ぶことができるようになった。
(「人を選ぶ」って言い方ちょっと感じ悪いけれど、私がこれをできるようになるまでには長い道のりがあったので、それはこんど文章化します)
それで何が変わったかと言うと、いちばんは「自分に対する評価」だ。



私はずいぶん長い間、「可愛い」側の人間だった。
私に対する賛詞は、10代のころからわりとつい最近まで、一貫して「可愛い」だった。

何言ってんだこいつって思ったかもしれないけれど、「可愛い」ってすごく汎用性が高いかつインスタントな表現だ。
女子の言う「髪切ったの?かわいい!」は「=あなたが髪型を変えたことをこちらは認識しました」だし、つまりはお疲れさまです、とかフェイスブックのいいね!だ。パンダもふなっしーも近所のおばあちゃんも同様に可愛い。

もちろん有村架純や石原さとみやエマ・ストーンだって「可愛い」のでかなりグラデーションのある表現ではあるのだけど、基本的には「許容できる」もの、「敵に回らなそうな」ものにしか使わない。

そんななかで、私はずっと「可愛い」と言われてきた。女子校時代も、大学のときも、多くの場合は女の子に、「しほちゃん可愛いよね」と。
それは、私がいわゆる美人ではない、かつ、前述した「わ!今日はちょっとすいません〜(ニコニコ)」をやり続けてきたからだ。不本意だった。けれど、物事はほとんど場合、その方がうまくいったから。

そう言われ続けてると、自分のなかの自分像みたいなものも同じ位置で固定されてくる。重ねたセロファンがどんどん色を濃くしてくみたいに。
いつしか私は、「私は美人じゃないけど、愛嬌みたいなものを評価されて可愛いって言われてるんだな。どうにかこれでやっていこう」と思うようになった。



最近あまり「可愛い」と言われなくなって、それは、私が好きな人たちとしか一緒にいないからだとふと気づいた。

楽しくないときに「すごく楽しい」と言ったり、美味しくないときに笑顔で食べ物を頬張ったりすることを、やめた。……嘘、完全にはやめられていないけれど、8割5分くらいはやめた(社会性の最低ライン的に)。


こんなことを書くのは恥ずかしいのだけど、その代わり、時どき「綺麗」と言われるようになった。
もちろん、顔や姿かたちじゃない。私をそう評価してくれる人は、仕草や言葉や身につけているものを見てそう言うのだ。
それは私が付き合っている人たちが、みんな私の(先天的な)見た目ではなく、その奥にあるものを見ようとしてくれているからだ。私が、そういう人たちを選んで「友達」とか「彼氏」と呼んでいるからだ。

そんな彼/彼女たちのおかげで、私のなかの自分像はすこしだけ更新された。たぶん、いい方に。



好きな人の言う「綺麗」や「センスいい」や「好き」は、うれしい。
ていうか実は、「可愛い」だってうれしい。取り繕わない自分を見せて、それに対して本当に感じたことを返してくれたのなら、「可愛い」だって「つまんない」だって「分かんない」だっていい。

「綺麗」という言葉や、それ以上のさまざまな方法で私を(あるいは他の事象を)形容してくれる人に出会えたことは、大人になったいちばんの収穫だと思っている。

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生湯葉 シホ

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コメント6件

子どものころ、早く大人になりたいなぁと思っていました。そして、やはり大人のほうが断然楽しいと思いました。選択肢が自分にあるからですね、きっと。…それにしてもしほさんの文章がスキです。
いちばん好きなバンドのギタリストが、ラジオでずっと「10代の頃よりも大人になってからの方が楽しい」と言い続けてくれていて、それに縋るように生きていたフシがあります。笑 でも、実際に大人になってみたらそのとおりでした。私も進月さんの記事、(たくさん書かれてるのでいくつか)読ませていただいたんですが、好きだし、私ももっと書こうって思いました。嬉しかったです、ありがとうございます。
とても「綺麗」な文章に感動しました。両親を彼/彼女と表現できる感性とか、物事を深く探る視点とか、読みやすい文章構成力とか、その素敵なInput/Outputも素敵な収穫だと思いますよ。
trさん、ありがとうございます。コメントをいただいたことで久々に文章を読み直したのですが、「こんなこと書いてたのか」と自分でもすこし新鮮に思いました。お褒めいただいて、恥ずかしいですがうれしかったです。
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