Sweet all night long④

この1年、いろんなことがあった。女としての悦びをぎゅうぎゅうに詰め込んだ1年。悲しいこともあった。けれど彼の存在、彼の言葉に何度となく救われた。きめ細やかに私が秘めていた望みをすくい取って教えてくれた。初めてのセラピストが彼で良かった。心からそう思う。

だから正直リスクの高い撮影にも応じられた。信頼関係ができていなければ受けられない。この動画の取り扱いについては彼のプロ意識を信じての口約束。実際撮られたものは顔も映っていないしあるとすれば声と私の体だけ。これも私に会ったことのある人が見れば絶対わかってしまう気もするけれど。編集されたものはいただけるということなのでそれを楽しみに待っている。

これを綴った日の朝、私は女風学園(架空)を休学宣言した。
卒業ではない。無期限の休学。

彼からは「いつでも戻っておいで」とDMが来た。
先月も、この前も、迷いの中にいた私を気遣いつつ、決心がついたことへの祝ぎと、その時はいつでも声をかけてほしい、と。

彼は先日の私の別れの言葉に気づいただろうか。でも気づかないでいてほしいとは思っている。

貴方以上の人に出会うことは今後ないだろうということ。そんな貴方を一度手放して見つめ直す覚悟ができたこと。
お泊りの覚悟とは、結果論ではあるけれど私にとってはそういうことだった。
もちろんプレイで壊される覚悟も必要だったけど、ここは完全に壊れきる前に現世にとどめてくれると思っていたし、実際きっちり引き戻してくれた。
しばらく真っ当な人間にはなれなかったけど。

ところで…。
セラピストと客という関係において、愛おしい、という感情は強すぎると毒になる。と思っている。
今回は無心に眠る彼を見て、このまま時が止まればよいのにと思った。
このまま惰性で会い続けるときっといつか私は言ってはならない一線を越えてしまう。

普段の貴方を、もっと知りたい。
できることなら、ずっと一緒にいたい。
それはお互いのために言ってはいけないこと。それを私は元推しくんとのトラブルで学んだ。

同じ轍を彼で踏みたくはない。
だから自分を見つめ直して、純粋にプレイを楽しめるライトなユーザーになれるなら復学、そうじゃないなら本当に卒業としよう。
そう決めた。

大好きだから、大好きなうちに離れる。
地下鉄に揺られながら私はそう決意していた。

甘く、長く、でもあっという間に過ぎ去った一夜を振り返ってみると、1年前には知らなかった喜びで満たされた時間だったと改めて思う。計12回の逢瀬。ひと月に1度会っていることになる。
この間に自覚していた性癖はより深く、自覚していなかった快楽のスイッチをたくさん教えられ、心の奥底に秘めていた願いをさらけ出すようになるとは思ってもいなかった。知らない世界を見てみたい、そんな興味本位で入った世界のなんて甘美なことか。

だからこそ、一度リセットしてその先にある世界を知りたい。ひとりでは味わえない快楽を知った今、女風を利用せずに日常を過ごす世界観はどんなものなのかは休まないとわからない。体から彼の痕跡が消えても、私は私でいられるのか。

未知の日常が、幕を開けた。

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