台湾慰安婦像乱暴事件についてー民主派の見方

日本の極右活動家藤井実彦が、台湾の慰安婦像に乱暴した事件について、一部極右は「国民党によるプロパガンダ」と主張しています。そこで、国民党に批判的な台湾の民主活動家の若者に、この問題について聞いてみました。この問題は台湾の独裁と民主の戦後史を踏まえてみる必要があります。(()内は私が補足した部分)


台湾における従軍慰安婦問題は、戦後、台湾人日本兵と同じく、長い間に放置されてきた。考えられるその理由は以下である。
①1987年までの戒厳体制で言論自由がなかったため、本人が声が上げられなかった(戒厳令により台湾を統治していたのは、今回慰安婦像を設置した国民党である)。
②従軍慰安婦に対して社会的な差別が酷くて、本人が声をあげられなかった。
③日本政府がすでに他国国民になったから、もう責任はないと主張したから。また(1972年に)外交関係が断絶して以降はますます交渉する気がなかったから。
④国民党政府は、ある意味で「敵」であった台湾人慰安婦と日本兵の権利ために、戦後ずっと盟友だった日本と交渉する気はなかった。
⑤台湾における日本人と日本政府の財産が、戦後、中華民国によりすべて接収され、多くは後に国有財産から国民党の党有財産になった。そこには法的な問題があり、現在、「不当党産特別条例」が成立し、独立機関による清算がなされている最中である。国民党は日本政府が戦後財産の清算問題を提起する恐れがあると考えて、台湾人への戦後賠償問題を放置し続けてきた。
⑥一般の台湾人にとって、教科書でもメディアでも、アジア太平洋戦争といえば国民党史観の「抗日戦争」という位置付けしか許されてこなかった。従軍慰安婦も含め、植民地台湾の歴史を提起するだけで、「台湾独立」唱えているとみなされ、思想犯罪で検挙される恐れがあった。
⑦民進党政権になっても、日本が大事な盟友だということが変わっていない。また、日本の保守派または極右翼のコネに依存し続けて、歴史問題に関して異論があっても主張しにくい状況がある。


このように台湾における従軍慰安婦問題は、ずっと放置されてきた。とはいえ、動きが一切なかったわけではない。民主化以降、市民社会レベルで様々な動きがあって、運動組織の連帯がつくりあげられている。また、AWF(慰安婦問題アジア助成基金)の活動については賛否両論があったが、私見としてはある程度評価すべきだと考える。デジタル記念館に台湾華語がないことは残念だが。


従軍慰安婦問題が、常に国内外政治と絡んでることは留意すべきである。国民党は(戦後の慰安婦問題への対応の)責任があるにもかかわらず、いつも従軍慰安婦を口実にして、民進党政府および立場が違う学者や論者に「日本の犬」、「皇民」というレッテルを貼る。このような行為は明らかな政治操作であり、支持することはできない。今度の件は日本の民間人がやったことであるから、民進党政府と日本政府に責任を求める(という国民党のやり方)は道理に合わないと考える。


しかし、国民党に賛成しなくても、日本の極右翼と同調しているわけではない。台湾人慰安婦問題は解決が待たれており、その解決に日本政府は責任がある。今度の件は従軍慰安婦に対する悪質な侮辱に他ならない。ちなみに、国民党はそもそも一民間組織であり、自分の土地で何を建てるのかは表現の自由がある。日本政府が世界中に慰安婦に取り組んでいる民間組織や自治体に対して、常に抗議していて、政府に撤去を求めることも、道理に合わないと考える。


今度の件については、国民党も藤井氏も、慰安婦問題に関する対話より、自分の支持者への猛アピールしか見えない。まさにこのようなことが戦後ずっと続けてられてきたから、慰安婦問題が今までも解決できていないのである。あまりにも悲しいことであり、心が痛い。解決を向けて、各自国内の政治立場を前面に出して、相手が敵か味方か決めつけて話すのではなく、対話の場を作って、様々な意見を交わし向き合うことが大事だと考る。

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こたつぬこ

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