【楽曲レポート】ファンタジーの世界をマンドリンの響きで描く。F.メニケッティ/劇的序曲「魔女の谷」(呪われた谷)
僕はファンタジーの世界が大好きので「魔女」というキーワードが曲の中に出てくると高確率でテンションが上がる(だいたい魔女が出てくる物語ってファンタジー系だよね?)
ご縁あってマンドリンアンサンブルの中でコントラバスを弾くことになり出会った曲。まず「魔女」というキーワードを見て「この曲まだ聴いてないけど絶対好きだ」と思った。そして聴いたらドンピシャにハマった。
そして、曲について調べはじめたらあまり情報が出てこなかったので自分なりの解釈でまとめてみることにしました。
マンドリン界のスウェアリンジェン?
作曲者のフランソワ・メニケッティ(1894-1969 フランス)はマンドリンオーケストラの作曲家として知らており、アマチュア音楽家のための作品を多く残しているようだ。作品の特徴はシンプルなメロディと伝統的な和声法。もしかしたら、吹奏楽の世界におけるスウェアリンジェンに近い作曲家なのかもしれない。調べてみたら、メニケッティ自身も「トルコ人の歌(1929)」という吹奏楽作品を残していた。
また、ロッシーニやヴェルディといった作曲家の影響も受けているようで、この「魔女の谷」もオペラの序曲のような雰囲気を感じる。ここは弦楽器のトレモロをイメージしているのかな、この音形は金管楽器のファンファーレだろうか、そんなことを想像しながら聴くのもこの曲の楽しみの一つ。
LA VALLEE MAUDITE=魔女の谷?
メニケッティはフランスの作曲家で、楽譜にはフランス語で『LA VALLEE MAUDITE』と書かれており、意味を調べてみると『呪われた谷』となる。
なぜ、邦題が『魔女の谷』になっているかは不明だが、呪われていて魔女も出てくるということはきっと魔女がらみで谷に何かがあったんだろう。
変化に富んだ音楽が描く世界
「実は昔、この村の奥にある谷でな…」村の長老が重い腰を上げて旅人に何かを話し始めるような雰囲気で始まる音楽。中低音域のトレモロはオーケストラの弦楽器セクションを思わせる。もうここで惚れた。
この曲の始まりをオペラ劇場で聴いたら鳥肌モノだろう。
序奏部が終わるとAllegroとなり、軽快なテンポの中で提示されるテーマは勇ましくどこか懐かしい。この懐かしいと思わせる気持ちを引き出すのがマンドリンアンサンブルの響きだろう。セピア色の画面で村人が谷に住む魔女に戦いを挑む姿と回想シーンが思い浮かんだ。
場面が変わって「そんなことがあって、村人は今も谷に住む魔女に怯えながら過ごしているのじゃ」とかそんなことを話しているような雰囲気の曲調は、やがてのどかな村の情景を思わせる音楽へと変わっていく。
そして、再びAllegroで提示されたテーマが再現される。この場面は旅人たちが魔女の谷へと立ち向かうシーンが浮かんだけれど、最後に提示される悲しげなメロディはこの戦いの結末を描いたのか、果たして…
この曲は非常に変化に富んだ曲で、曲が一旦停止し聴こえてくるのは金管楽器を思わせる輝かしいファンファーレ。そして魔女を退治した旅人たちを宴で迎える村人たちの姿を思わせるエンディングシーンへと向かっていく。
きっと、旅人たちは谷に住む魔女を退治して村には平和が訪れたのだ。
勝手にめでたし。
この曲を聴いて、こんな物語が思い浮かんだ。
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