見出し画像

れもんらいふ的、プレゼンテーションの極意

れもんらいふデザイン塾が終わった。
コロナの影響もあり、2カ月半の中断という状況の中、リモートやソーシャルディスタンスを駆使し
一昨日、最終回がおこなわれた。
毎年最後は、特別講師による講義ではなく
50名の塾生がチームにわかれて
クライアントにプレゼンをするというワークショップが行われている。
これは、仮の課題ではなく
実際に使用する広告のアイデアをプレゼンし
実際にそれを製作し世に送り出すという
リアルプレゼンだ。
今年は、吉本さんに協力いただき
あるAmazonプライムの新番組の広告が課題になった。
(番組は、まだ言えないのです)
課題発表から約1か月間、
アートディレクターの小杉幸一さん、
お笑い芸人のグランジ(五明さん、遠山さん)
そして僕、千原徹也らが、アドバイスにあたり
最終プレゼンに持ち込む。

チームはそれぞれ10分のプレゼン時間が与えられ、
その間は何案出しても構わない。
いつも僕は、プレゼンする側の人間だが、
この時ばかりは審査する側の立場になり
プレゼンされるという体験をする。
もちろん塾生は、
広告課題のプレゼンは初めての人がほとんど
実際に使われる広告とあり、
僕自身も真剣に向き合う。

ここで、
プレゼンテーションの心得というか
まず、考えなくてはいけないことをまとめてみよう。
(あくまでも、れもんらいふ的考え方です)
とにかく、各チーム、ファーストアイデアは酷いもの笑。すいません。
プレゼンに値するものになっていない。

まず、
その課題について徹底的に調べれているか。
番宣広告なら、その出演者、似た番組、
似てない番組、過去のその時間の番組、
前後の番組、など徹底的に調べて机にならべる。
そして、囚われない事が大事。
れもんらいふがプレゼンに勝ってきたのは
囚われないという事が大きい。

たとえば、
西陣織りのロゴをつくってくださいとなると
西陣織りの歴史を徹底的に調べてネタを探すだろう。通常のデザイン会社ならそれでよいが、
れもんらいふは、徹底的に調べて、ネタにしない。
その特徴から紐解くと、それに囚われ、誰もが同じ場所にたどり着くからだ。
西陣織りの織り機、糸を巻きつける部分は六角形で出来ているのが特徴。大体の人は調べるとここにたどり着く。デザイン性の高いネタがあるとモチーフにしたくなる。六角形をロゴに取り入れる。実際にれもんらいふデザイン塾で、5年前に
この課題をやったのだが、9チーム中4チームから六角形をモチーフにしたロゴがプレゼンされた。

マークジェイコブスが、ルイビトンのデザイナーに就任した初めての年、ドキュメンタリーの中で、今までの旅行カバンやLVのモチーフや歴史にこだわらず、会議中、目の前を通り過ぎた女性を呼び止め「そのスタッズのついたカバンかわいい!これをウチでもやりましょうよ!」とルイビトンの社員に提案するが、反応悪。笑
「今、自分がいいと思っているものを提案しなくてどうする?歴史やコンセプトに囚われて、今の自分の気分を提案できなかったら意味がない」
と、インタビュアーに答えていたが、
まさに、れもんらいふはコレ。
昨日見た映画。今日のニュース。好きな音楽。友達との会話。自分らしさを取り入れて、その歴史に入れ込む。そのクライアントの歴史に混ぜること、それこそが見たことない新しい提案につながるのだ。そのクライアントを調べた中からモチーフを見つけると、優等生な作品にはなるかもしれないが、僕がやる意味はどこへ?マークジェイコブスが就任した意味はどこへ?誰がやっても同じものにしかならない。

それをベースに考えると
プレゼンは自分の個性を知ってもらう場でもある。
クライアントはその作品だけでなく、プレゼンする人がどんな人なのかも心配している。
その作品を採用した瞬間から、すくなくとも数ヶ月は、その人と仕事をしなくてはいけないからだ。
服装、話し方、知識、安心感、ユーモア、その全てが問われる。
そうプレゼンは一つではない。
作品と自分、その2つをプレゼンするのだ。
自分プレゼンは、用意する前に普段からのパーソナリティが大事なため、意外に簡単ではない。より短い時間で自分を知ってもらうというテクニックも必要になる。
たとえば僕は、プレゼンアイデアに得意な映画の知識を入れる事が多い。それは先程の作品に自分らしさをまぜるだけでなく、深く聞かれても、知識豊かに話せるからだ。相手は、知識の豊富な人だと安心する。
以前、ニューヨークで広告撮影する案をだした時、最後のページに、ディナーで行く予定のレストランやホテル、近辺の見どころまで提案したが、よりニューヨークに行きたくなり、この案にしたくなるだけでなく、ニューヨークやトレンドに対する知識もある人なんだなと思わせることにもつながる。
また、プレゼンに対する気持ちや、今の気分、時事ネタなども、プレゼンシートの「はじめに」や「おわりに」に、入れ込むようにしている。
このプレゼンに対する思いをポエティックに、エモーショナルに文章にして入れ込むことで、採用の域ではなく、感動の域に到達するのだ。

プレゼンというのは作品の提案だけではない。
自分自身の人生、毎日の総合提案なのだ。
最後にもう一つ。
プレゼンする前に
このプレゼンが必要なのかどうかまで立ち返ることが大事だと思ってます。
時に仕事は、毎日の流れのなかで
"当たり前"と思ってやっていることがたくさんあります。
たとえば、音楽アーティストなら新曲が出ると
CDとMVを作らなくてはいけないと思っているので、CDジャケットデザインとMVをつくってくださいという依頼がきますが、僕たちアートディレクターは、その業界、その会社にいないからかこそ、気付ける提案が必要で、
「なぜこの予算のなかで作るのだろう?」
「なぜ今CDなのか?なぜ今MVなのか?」
オリエンを受けた内容すら疑いを持って、依頼の枠を超えて提案できてこそ、今まで見たことない
CDジャケットとMVを提案できる気がします。
「新人なので予算がなくてすいません」という
レコード会社の当たり前の予算提示に、
「予算をかけれないぐらいの期待の新人ならデビューさせなくていい」と
プレゼンを返したことがあります。
一つ枠を上の段階にして考えましょう。
今回のれもんらいふデザイン塾のオリエン
「Amazonプライムの新番組の広告を考えてください」から
「新番組って広告いるのか?」
「ビジュアルではなく、動画がいいのでは?」など、依頼の枠を上げて考えれた時、新しいアイデアが生まれるのです。

明日、プレゼンがある人は
その3点を軸にプレゼンをもう一度考えなおしてみてはどうでしょうか?

人生にプレゼンは何度も訪れます。
人生はじめのプレゼンは、子供の頃。
親におもちゃを買って欲しい時じゃないでしょうか?
なぜ今僕にこのおもちゃが必要か、
そこを親に説得できないから買ってもらえないのです。最後は泣いて座り込む。
(僕もよくやりました)
クライアントにも最終それが一番効くかもしれませんが笑。
れもんらいふデザイン塾に通っていた京都の大学2年生が、
「はやく東京行ってスタイリストの〇〇さんの弟子になりたいんだよね」って言っていたので
「そこまで決まってるならはやく行けばいいじゃない」と言ったら
「親が大学は出とけってうるさくって」と言っていましたが、それは親に向けていいプレゼンができていないだけのこと。
スタイリストという職業においては、大学の時間は、もはや無駄でしかありません。
はやく弟子入りしてデビューする方が毎日に意味があります。
親は説得してほしいはずです。
スタイリストになりたい!が本気なのか知りたいはずです。子供から、やりたい!と言ってこないレベルでサポートしたくないし、できないので大学に行けという選択になってしまっているだけで
「人生をかけてスタイリストになりたいから残り2年の学費を東京で成功するまでの軍資金にしたい」という思いが伝われば、親はそんな嬉しいことはありません。
よろこんでサポートします。

やりたい事は、1人ではできません。
映画をつくりたい!という気持ちも
一つのプレゼンシートに込めて、みんなを説得しました。まわりに反対されたり、まわりが鼻で笑ったり、やりたい事がうまくいかない、、、
そんな事はこの先人生に何度も訪れます。
そんな時、人生の役に立つのは
"プレゼンテーション力" なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?