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映画『バジーノイズ』が刺さりすぎた

原作は1話だけ試し読みで読んだ。以降未読。

この物語には色んな立場で音楽に関わる人が登場して全部の想いがすごく刺さった。

清澄は他人と上手くいかなかった過去があって人と関わったり自分の音楽が評価されるのが怖かった。だから一人で自分の為だけに音楽をやっていた。
でも潮や陸たちと出会って誰かに聴いてもらったり好きだと言ってもらえる喜びや他の誰かと一緒にやることの面白さに目覚める。

陸は売れたい気持ちで好きではない音楽を続けていたけれど清澄と再会してもう一度彼と一緒に好きな音楽をやりたいと思った。

音楽をビジネスと割り切る人。その板挟みで揺れ動く人。
もう先はないとわかっていてもずっと応援してくれる人の為に続けると言う人。

潮は初めて自分の意思で清澄の音楽を好きになって応援したいと思うようになるけれど、清澄や清澄の音楽が変わっていくことが辛くなって皆の前から姿を消してしまった。
他人の手が加わり清澄の音楽がどんどん形を変えていく。
好きだった音が変わってしまう。
自分じゃない人と楽しそうにしている。
自分は邪魔者なんじゃないだろうか。
自分なんていなくてもいいんじゃないだろうか。
わかりすぎて辛い。

ずっと側にいてくれた潮を失ってしまった清澄はまた一人の世界に逆戻りしてしまう。
ただ音楽だけがある場所。
一人でいい。ただ頭の中に流れる音を形にできればそれでいい。
かつて望んでいた完璧な世界。

それでもまた皆と一緒にやりたい、潮に聴いて欲しいという気持ちで皆のところに戻ってきた。
あの時潮は清澄の部屋の壁を破って外へ連れ出してくれた。
今度は清澄が自分で部屋の鍵を開けた。

敵役っぽく出てきたギョーカイの人だってビジネスに徹しつつ、本気で清澄を潰すようなことはしたくないと思ってたんじゃないだろうか。
陸たちが清澄を取り戻しに来た時も本気で止めなかったし、部屋を出ていく時の穏やかな表情が印象的だった。
デビューをすっぽかされた3人組は気の毒だけど。

登場人物で好きなのは航太郎。
AZURを応援したい気持ちと自分の立場との板挟みの微妙な立ち位置で、ヘコヘコ謝って回ってるかと思ったら(元)上司を一喝してみたり。
思い切りよく辞表を出した割にはあっさり受理されて動揺したり。
大胆なくせに後悔してジタバタしてたり愉快で愛おしい。

何が正解とは言えない。
音楽の形って色々あって、方法や目的も人それぞれで。
でも、楽しい、好きなことでもそれを続けるとなると楽じゃない。
否応なく色んな思惑や事情に巻き込まれて全てが思い通りにいくとは限らない。

音楽に限らずだけど、好きということ、楽しいということ、それで生きていくということ、自分の為なのか、他の誰かの為なのか、そういうのでグルグルすることって多々あるけど、多分正解なんてないよなぁ……
ただ、それでもやっぱり好きなことを楽しくやれるのが幸せなんだろうなぁ。

というようなことを考えながらこの映画を見てた。

そしてこの映画は本当に音楽が良い。
清澄やAZURの音楽が単純に好みだし、バンドが昔から大好きなので清澄の音に陸のベースの生音が乗った時のブワッと音に広がりが出る感じは鳥肌が立った。
AZURが実在して欲しかった。ファンになりたい。
映像の質感もすごく好き。

ドラマティックな展開があるわけでもなく割と淡々と日々が進んでいくような物語だから少し盛り上がりに欠けるのかもしれないけど私はとても好きです。

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