見出し画像

ロシアの価値観と西洋の価値観


【2つの新世界秩序】


6月12日はロシアの日といって、ロシア連邦が1990年に独立主権国家になった記念日なのだそうだけれど、その日にアラブ首長国連邦の首都ドバイの世界一高いビル、ブルジュ・ハリファがロシア国旗の色にライトアップされ、ロシア国歌が流されていた。その動画は世界中で拡散されて、西側諸国の外では、ロシアが支持されているという事実を世界中に示していた。

それがちょうど、マヤ暦の真ん中の日だったのも、時代の分かれ目を示しているように思えた。日本も含め、西側諸国では、政府もメディアもウクライナの戦争に関して、ロシアを一方的に悪者扱いしている。だから、ロシアの日のことも、独裁者プーチンの国粋主義イベントか何かみたいに報道されていた。しかし、その外の世界では、ロシアに対して祝福の意を示すイベントが堂々と行われていたのだ。

ウクライナの戦争について、西側の主流メディアは、まるきり事実と違うことを報道し続けていた。それはまるで、2つの次元を異にする世界が並立しているかのようだった。現実にウクライナで行われている戦闘の世界と、西側メディアが映像で作り出している虚構の世界との、2つのまったく正反対の世界が同時に存在していて、どのメディアを信じるかで、どちらの世界に生きるかが分かれていた。バフムトが陥落して、ウクライナ側の負けがはっきりした頃から、その2つの世界の違いがあまりに大きくなり、もはやシュール・リアルの世界のようにさえ思えている。

アメリカの伝説的なジャーナリスト、シーモア・ハーシュは、ウクライナの戦争についてロシアを支持する国は、世界全体では非常に多く、人口から言ったら、すでに過半数を超えただろうと言っていた。西側諸国のメディアは、ロシアが一方的にウクライナに侵攻したので、ロシアが絶対的に悪いと言い続けているから、それを信じたら、ロシアを支持するなんてあり得ないことのように思える。しかし、それ以外の国では、これがロシアの侵略戦争などではないことをちゃんと知っているのだ。

3年前に始まったパンデミックでわかったことだけれど、6年くらい前から、西側の主流メディアは、アメリカの裏政府を成しているグローバル金融資本家たちがほとんど買収して取り込んでいた。その頃から、メディアはゲイツ財団の腐敗についても、ウクライナのナチ化についても、まったく報道しなくなっていた。買い占められた西側メディアは、事実とはまったく違うヴァーチャルな世界をこしらえ始めたのだ。そのヴァーチャル世界に生きている人たちは、ウィルスの脅威やらロシアの脅威やらを信じて、巨額の税金をグローバル企業に流し、人命さえも犠牲にすることに同意しているといった状況だ。

アラブの石油産出国は、これまで石油利権をめぐって、アメリカのグローバル金融資本家たちに支配されてきた。それに抵抗して、油田を国営化しようとしたり、石油取引を米ドルではなく自国の通貨でしようとしたりしたら、独裁国家扱いされて、経済制裁をかけられたり、NATOに攻撃されたりして、ボロボロに破壊されるような事態になっていたのだ。そうしたことは、西側諸国では表に出てきていなかったけれど、ウクライナの戦争が始まってから、これまでアメリカのグローバリストたちが、どのような手を使って世界を支配してきたのかが、見えてくるようになった。ジョージ・ソロスなどが動かしているNGOが、民主主義のためにと称して、反政府運動をでっち上げさせ、武器を持たせて抗議活動を行わせていたのだ。それで、政府が警察隊や軍隊を出動させたら、民衆を弾圧したと大きく報道して、独裁国家として批判し、経済制裁やNATOの空爆を正当化してきた。だから、アラブの石油産出国は、アメリカの言うなりになる腐敗政治家しか政権を取ることができない状態になっていたわけなのだ。

ところが、去年の2月にロシアがウクライナのドンバスでの内戦に軍事介入を始めてから、様子が変わってきた。西側グローバリストたちは、サウジアラビアに石油産出量を増やすように要請したのに、サウジアラビアはそれを拒否した。そればかりか、石油を中国元で取引し始めたのだ。あの当時はそれが何を意味するのかわかっていなかったけれど、あとになってだんだんとわかってきた。アメリカのグローバリストたちは、石油産出量を上げ下げすることによって、原油の価格を操作していたのだ。サウジアラビアはそれまでずっとその片棒を担いできた。石油産出量を増やすことで、原油の価格を下げ、ロシアが石油で利益を得られなくしようとしていたところへ、サウジアラビアが協力を拒否した。それはつまり、アメリカではなくロシアを支持することを公にしたようなものだった。

西側諸国はロシアを経済的に孤立させようとして、経済制裁を課すことを世界中に要請したけれど、実際に経済制裁をかけたのは、西側諸国とアメリカに支配されている国々だけだった。アフリカもアラブもアジアの多くの国々も、ロシアと経済取引を続けていたのだ。ロシアは経済封鎖をかけられたので、西側諸国に売っていたものを、そうした国々に割引価格で売り始めた。それで結果的に、アメリカに従わない国々が豊かになることになった。

昨年の4月頃に、ロシア外務大臣ラブロフは、一極支配はもう崩壊した、と言っていたけれど、あれはそのことを言っていたのだ。アメリカはロシアを経済的に封鎖することに失敗した。その結果、経済制裁をかければかけるほど、アメリカに従っている国々は貧しくなり、ロシアと協力している国々は豊かになるということになったのだ。

だから、アラブ石油産出国にとっては、ロシアは極悪非道どころか、解放者でさえあることになる。それまで腐敗させられて、アメリカの言うなりになるしかなかったのが、米ドルの搾取システムから離れて、豊かになっていくことができるようになったのだ。それ以来、敵対していたサウジとイラン、シリアも友好を結び、多くの国がBRICSに加盟を希望している。アラブやアフリカの多くの国々は、ロシアのウクライナへの軍事介入によって、アメリカの支配から離れていくことができるようになったのだ。

ウクライナの戦争が始まってから、プーチンもまたクラウス・シュワブの新世界秩序を目指しているのだという話が語られていたけれど、あれから一年以上経って、ロシアはそれとは真逆の方向へ進んでいっていたことがはっきりとわかる。あのとき、プーチンもまたシュワブの仲間だという説の根拠として、ダヴォスの経済フォーラムでシュワブとプーチンが握手している画像が拡散されていたけれど、ロシアの大統領として経済フォーラムに参加していたからといって、シュワブの仲間だと言うのは、短絡的すぎるように思える。プーチンは、ダヴォスの軍事版であるミュンヘン会議に行って、西側の一極支配のあり方を批判する有名なスピーチを行っていたのだ。彼にとっては、ダヴォスもまた、ロシアの国際関係を調整するための場だったのだと思う。

ところで、プーチンもまた、「新しい世界秩序」が必要だということを言ってはいた。だから、プーチンも新世界秩序へ向かっている、というのは、その意味では間違ってはいなかったとも言える。しかし、プーチンが目指している新世界秩序とは、西側のグローバリストたちが目指している、一極化の管理社会とは真逆なものだった。それまでアメリカのグローバル金融資本家たちが、お金で世界を支配してきたのに対して、ロシアはそれぞれの国が独立して、対等に公正な関係を持つような世界秩序を目指していたのだ。そのことはラブロフ外相が「一極支配の世界は崩壊し、多極化の世界が生まれた」と言ってから一年経って、はっきりと見えてきた。

6月14日から、ロシアのサンクトペテルブルクで国際経済フォーラムが開催されているけれど、参加国は120国以上に昇るそうだ。これはダヴォスの世界経済フォーラムの参加国を遥かに超えている。ダヴォスのフォーラムが、グローバル金融資本家のアジェンダに従うと取り立ててもらえる、みたいな独裁支配の構造なのに対して、ロシアの経済フォーラムの方は、多極的で公正な世界秩序を目指して、協力関係を作るためのものなのだ。参加国の姿勢も、ダヴォスの依存関係的なものとはまったく違う。

アメリカの軍事関係や外交関係を事実上決定しているのは、政府ではなくて、シンクタンクのランド研究所なのだそうだ。このシンクタンクは、どの国とどうやって戦争するべきかといったことを主に提言していて、そのほとんどは政府によって実現されている。この研究所は、つまるところ資金を出している企業が動かしているわけなのだけれど、その主流の部分は、軍事産業なのだそうだ。

第二次世界大戦後、アメリカは世界中で戦争し続けているわけなのだけれど、その理由はそこにあった。アメリカの政治は、事実上ランド研究所を通して、軍事産業が動かしている。戦争を始める立派な口実さえできれば、巨額の税金が軍事産業に流れ込むしかけなのだ。どっちが勝とうが、どれだけの人が犠牲になろうが、そんなことは軍事産業にとってはどうでもいい。とにかくお金のかかる戦争が絶えず行われているようにしさえすれば、お金は流れ続け、そのお金で政治家を買収し、メディアを買収し、裁判官も腐敗させることができるわけなのだ。

ウクライナの戦争は、アメリカの大統領選挙でバイデンがあり得ない勝ち方をして大統領になってから、起こったわけなのだけれど、この戦争はすでに2014年以前からオバマ政権下の副大統領バイデンと国務長官ヒラリー・クリントンによって用意されてきていた。それがトランプが大統領になることによって、4年間も実現を待たされてきたといったかっこうだったのだ。グローバリストたちが、何とかしてトランプを落とそうとして、あらゆる手を使っていたのは、まさにそのためだった。トランプは、自分が大統領だったら、ウクライナの戦争はそもそも起こっていなかったと言っているけれど、それは本当のことらしい。実際、ロシアが軍事介入することになった経緯を見ていくと、アメリカ政府が積極的に挑発するようなことをしていなかったら、ロシアは軍を出すようなことにはなっていなかったことがわかる。そして、NATOが軍事援助するのをやめたら、ウクライナの戦争はすぐにでも終わるのだ。

ウクライナの戦闘の現場からのレポートを追っていると、この巨額の軍事費については、奇妙なことがたくさんある。西側諸国からウクライナに送られる援助金は、多くが支出が明らかでなく、どこへともなく消えているというのだ。送られてくる武器の多くも、戦場に送られる代わりに、ブラックマーケットで転売されていたりするらしい。事実、世界中のいろいろなところでテロ組織が所持している武器が、ウクライナに送られた西側諸国の武器だったといったことがよくあったらしい。ウクライナ政府は、ロシアに侵攻されたから武器が要ると世界中に訴えて、それを転売したり着服したりして、私腹を肥やすことに中毒状態になっているというのだ。2014年のマイダン革命以降のウクライナ政府は、アメリカが据えた政治家たちで成り立っていて、アメリカの二重国籍を持つ人がほとんどだったりする。つまり、もともとアメリカの裏政府が送り込んだ工作員たちなのだ。彼らはお金で動かされていて、アメリカの裏政府の言うなりに戦争をする一方、その報酬としてウクライナに送られてくる軍事費をせっせと着服しているということらしい。

西側諸国から大量の武器が送られている一方で、ろくな訓練もなく前線に駆り出されたウクライナ兵たちが、武器も食糧の供給もないまま見放された状態で、ロシア軍に降伏するという事態が少なくない。また、大量の武器を残したまま退却していて、ロシア軍が手つかずの武器庫を発見して持っていったということも何度もあった。そうかと思えば、一発撃つのに10万ドルもするというハイマースミサイルを、たった一人のジャーナリストを狙い撃ちするのに使っていたりする。6月初めに始まった反転攻勢では、空軍の援護なしに高価なレオパード戦車やアブラム戦車を繰り出して、前線に到着する前に片端からロシア軍に空爆されていた。それを見ても、ウクライナ軍の司令部は、武器を消費して、アメリカの軍事産業に儲けさせることしか考えていないように思える。NATO諸国の腐敗した政治家たちはアメリカの言うなりに、アメリカの武器を法外な値段で買って、ウクライナに送り、ウクライナの腐敗した政治家たちは、それを消費して、NATO諸国にさらに武器を要求しているということらしい。

ダヴォスの世界経済フォーラムが計画している新世界秩序は、このように虚構の現実をメディアで作り出して、世界中の税金がアメリカのグローバルエリートのところに大量に流れるようなシステムを、高度に管理化された社会を作って確保することを目的としている。そのために、主権が持てないようなシステムを作ろうとしているのだ。3年前に始まったパンデミックによって、このシステムが西側諸国ではほぼ完璧に機能していることがわかってしまった。しかし、昨年2月にロシアがウクライナの内戦に軍事介入し始めてから、NATO諸国以外の国で、ダヴォスの世界経済フォーラムのアジェンダよりも、ロシアの多極的な新しい世界秩序に加わろうとする動きが起こり始めたのだ。そして、15ヶ月ほどが経った今、アメリカよりもロシアを支持する国が人口から言って世界の過半数を超え、ロシアの国際経済フォーラムに参加する国の数が、ダヴォスの世界経済フォーラムの参加国数を超えた。これは、アメリカの軍事産業が操る新世界秩序が、ロシアが主導する多極的な世界秩序に破れたということを示しているようだ。


6月12日に報告されたクロップ・サークル。世界が2つに分かれたことを示しているように見える。

2023年6月15日



【ロシアからデクラスが始まる】


昨年2月にウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、情報戦ではロシアは完全に負けていた。負けていたというよりも、まったく何もしていなかった。「そんなことはロシアにとってはどうでもいいのです」とアメリカの軍事専門家のスコット・リッターは言っていた。オリバー・ストーンのインタビューで、ロシア大統領のプーチンは、「アメリカの嘘にはもう慣れたよ」と例のおっとりした口調で言っていたけれど、ロシアにとっては、西側メディアがロシアについて嘘をつきまくるのは、いつものことだったのだ。チェチェン紛争でも、シリア内戦でも、クリミア紛争でも、ロシアが軍を出すと、西側メディアはロシアが悪者になるような報道の仕方しかしなかった。だから、ウクライナへの軍事介入のことで、西側メディアがまったくの嘘を報道し始めたのも、別に新しいことでも何でもなかったのだろう。

それが、昨年の8月頃から、様子が変わってきた。ロシアの政治家たちの発言に、西側に対する遠慮がなくなっていると、ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーが言っていた。ヨーロッパの政治家は、ワシントンの指示通りに動いているだけなのだから、話をしても意味がないと言い、西側諸国を「アメリカの属国」と呼び始めていた。

そういう言い方は、ロシアはそれまでしてこなかった。それは、ヨーロッパ諸国と主権国同士として話し合えるという希望を持っていたからでもあるし、ロシアは他の国の内政には干渉しないという方針を貫いていたからだった。それが、昨年8月頃から変わってきた。ロシアの政治家たちが、徐々に西側諸国の支配構造の闇を暴露し始めたのだ。

その背景には、ロシアが西側以外の国々の間で支持を集め始めていたということがある。昨年4月頃に、「一極支配は崩壊し、多極化の世界が生まれた」とラブロフ外相が言っていたけれど、それからロシアは、アメリカの一極支配の構造を解体し続けていたのだ。ロシアがというより、西側諸国が、何とかロシアを弱体化しようとして、あの手この手で攻撃すると、それが結果的に一極支配構造を崩壊させるようなことになっていた。

世界中のほとんどの国は、多かれ少なかれアメリカ裏政府にさまざまな脅しをかけられていて、ウクライナの戦争のことでも、公にロシアを支持することはできないでいた。だけど、それが少しずつ変わっていったのだ。多くの国は、表向きはロシアを批判しつつ、経済制裁には協力しないで、ロシアと取引をし続けていた。しかし、昨年8月頃から、ロシアは公に西側のシステムを批判し始めていた。それは、その頃すでに十分に多極化が進んでいたということなのだろう。

この頃、外務大臣報道官のマリア・ザハロワは、トーマス・レーパーとのインタビューで、ウクライナとヨーロッパが関わっている幼児売買のことまで語っていた。これについてはトーマス・レーパーも知らなかったらしく、懐疑的だった彼に、マリア・ザハロワは根拠になる資料をあとで送ってきたそうだ。先日の記者会見でも、マリア・ザハロワは、ウクライナで公然と行われている臓器売買や幼児売買のことについて話していた。ウクライナ軍が退却する際に、その地域の子どもたちを連行していっているというのだ。親も子どもたちがどこにいるのかわからない。そうしたケースは一件や二件ではなく、いたるところで聞くような話だという。そうした子どもたちは、ヨーロッパに運ばれて売買されているらしく、ドイツで発見されたりもしているそうだ。公式の記者会見では、彼女は、ウクライナで法律が改正されて、臓器提供について本人や遺族の承認なしに主任医師が決めることができるようになったという話をしていた。これで事実上、臓器売買が公然とできるような状態になったわけで、事実、巨額の闇のお金が動く闇市場がウクライナにできているのだという。

こうした情報は、西側諸国では陰謀論扱いされていて、まともな人間が信じるべきことではないかのように思い込まされている。あるいは、ロシアのプロパガンダだと言われている。陰謀論という言葉は、まさに真実から人々の意識を逸らすために作られた言葉なのだ。ちょっと調べてみたら、いくらでも証拠が出てくるようなことでも、そういうことを考えるべきではないと思い込まされ、意識を向けないように仕向けられている。

それが今や、ロシアの外務省が公にしているのだ。こうしたことは、西側主流メディアでは絶対に報道されないだろうけれど、西側以外の国では、トップ記事になっていたりするらしい。西側主流メディアが作り出している虚構の世界の外では、もはや秘密でも何でもなく、誰でも知っているようなことになりつつある。

アメリカの外交を支配しているのは、政府ではなくて、シンクタンクのランド研究所なのだということを、トーマス・レーパーは言っていた。ランド研究所の報告は、ネットで公開されていて、誰でも見ることができる。軍事的な政策の提言を行っているのだけれど、そのほとんどが実行に移されているそうだ。ランド研究所に出資しているのは、軍事産業やロックフェラー財団などだ。第二次世界大戦後、アメリカは世界中で戦争をし続けてきたわけなのだけれど、それはすべてランド研究所を通して、このオリガルヒたちが決めていたことだった。

戦後の東西冷戦というのも、実のところランド研究所の提言によって、世界中を軍備競争に駆り立てるために捏造された話だったのだ。ロシアや中国が共産国だから脅威だという話をでっち上げて、周囲の国々にアメリカと軍事協定を結ばせ、米軍を配備させ、武器を買わせていたわけだ。それで、ロシアや中国はアメリカの軍事同盟に対抗できるように軍備に投資しなければならなくなり、経済的に疲弊させることができるということだった。そのために、アメリカ中央情報局(CIA)は、ソ連や中国の政府が反政府派や少数民族を弾圧しているというような話を捏造する政府機関を作って、反政府運動を組織し、お金を出して反対運動を起こさせたり、武装させてテロ組織化させたりもしていたのだ。

アメリカ政府は、軍事同盟を結ばせた国々を、事実上、属国支配していた。アメリカ政府の言うなりにならない国は、反政府組織を作られて、テロを起こされたりする。それで、政府が軍隊や警察隊を出動させてテロを鎮圧しようとしたら、民主化運動を弾圧する独裁国家だということにされ、経済制裁をかけられたり、NATOに首都を空爆されたりすることになる。

アメリカのオリガルヒたちが世界を支配しているさまを、「学校で番を張っている不良グループのようなもの」だと、トーマス・レーパーは昨年8月頃に書いていた。逆らうと恐喝されたり暴力ふるわれたりするので、皆黙って従っているけれど、それに対抗できる人物が現れると、少しずつ味方につく人が増えていく。それは次第に加速していって、あるとき学校を支配していた不良グループは、自分たちが少数派になってしまっていて、もはや支配できなくなっていることに気づく。昨年2月にロシアがウクライナの内戦に軍事介入を始めたとき、それが起こり始めて、昨年8月頃には、すでにアメリカのオリガルヒ支配に対抗して反撃に出られるほどになってきていたということなのだ。

プーチン政権もまた世界統一支配に向かうオリガルヒの仲間なんじゃないかという話があって、あの頃はまだどちらなのか定かでない感もあった。しかし、自然界でも、一つの生き物が異常繁殖して全体のバランスを壊していたら、必ずそれを喰う生き物が殖えてきて、再びバランスが取れるようになっている。これがつまり免疫反応というもので、これは微生物レベルから生態系全体まで、あらゆるレベルで機能している自然法則なのだ。

同じ原理は、当然人間社会にも作用する。いくら巧妙なやり方で脅したり騙したりしていても、必ずそれに対する抗体のようなものができてくる。つまり、返し技を心得る人間が現れて、増えてくるということになる。そうした力が働かないと考える方が、私には不自然だと思えるし、あれから一年近くが経った今、世界を支配していたアメリカのオリガルヒたちが、多くの国でもはや支配力を持っていないことが見えてきている。米ドルから離れようとする国が次々と出ているし、公然とロシアを支持する国が増えている。

6月14日からサンクトペテルブルクで国際経済フォーラムが開催されていて、参加国は120カ国以上に昇り、そこで交わされた経済取引は何十億ルーブルになるということだった。プーチン大統領は、このフォーラムで17日にスピーチを行い、記者会見を行った。ジャーナリストたちの質問に答えて、彼は西側諸国の政治の腐敗ぶりについても公然と語っていた。プーチンは、他の国の内政についてはこれまで口にしてこなかったから、これも新しい展開だった。

西側諸国の政治家についてどう思うかと聞かれて、プーチンはかつてのフランス大統領ジャック・シラクと交わした会話のことを語った。アメリカの政治家たちは、どうしてあんなに攻撃的で近視眼的なのだろう、と言うと、シラクは「それは彼らが教養が低いからだよ」と答えたそうだ。そして、「西側諸国では、ろくな高等教育も受けていない人物が政治家になるという特殊なシステムがある」とプーチンは言っていた。

当時のアメリカ大統領は、ブッシュ・ジュニアだった。彼はアルコール依存症で、公に語るときには、プロンプターの文字を読んでいるだけだというのは有名な話だった。ブッシュ・ジュニアが大統領になったのも、明らかに選挙の不正操作によるものだったし、大統領に就任するや、911が起き、アフガン侵攻、イラク戦争とアメリカの偽旗戦争が始まったのだ。その流れは、バイデンが大統領になったなりゆきとも実によく似ている。今、西側諸国の首脳を勤めているのは、ほとんどが「若くして抜擢された」ヤンググローバルリーダーたちであり、彼らはろくな学歴も経歴もなく、ブッシュ・ジュニアと同様、言われた通りのことを言うことができるだけのマリオネットたちだ。そのことをプーチンは、「西側諸国では、ろくな高等教育も受けていない人物が政治家になるという特殊なシステムがある」と言っていたのだ。

まさにそれこそは、西側諸国が支配されている闇の構造なのだけれど、それがもはや世界中で秘密ではなくなりつつある。ダヴォスの世界経済フォーラム以上の参加国が集まった場所で、そうしたやり取りが公然となされていたのだ。西側諸国の主流メディアが、ロシアは独裁的で危険な国だという虚構を作り出し続けている一方で、その外の世界では、独裁的で危険なのはアメリカとその属国である西側諸国の方だということが知れ渡っていっている。闇の支配構造が見えてくるごとに、いったいいつになったらこの虚偽が公になって、裁かれるときが来るのかと世界中の多くの人が思っていたけれど、それが今、ロシアから始まっているのだ。西側のオリガルヒたちは、何とか支配力を保とうとして、おかしな裁判を起こしたり、おかしな言いがかりをつけたりしているけれど、そんなことをすればするほど、その腐敗の姿があらわになっていっている状態だと思う。

***

サンクトペテルブルクの国際経済フォーラムでスピーチするプーチン大統領


2023年6月19日



【内乱なのか、見せかけなのか?】


先週の土曜日6月24日に、ロシアの傭兵部隊ワグネルの隊長プリゴジンが、ロシア防衛省に抗議するために、武装した部隊を率いてモスクワに向かっているというので、さまざまな情報が飛び交っていた。

最初は、プリゴジンが出している動画メッセージも、フェイクではないのかと言われたりしていた。ロシアのことについては、西側メディアではありとあるフェイク情報が流されてきたわけなので、これも捏造された動画ではないかと疑うのも無理はない。しかしその後、プリゴジンがワグネルの部隊とともにロシアの街ロストフに現れ、フェイクではないことが判明した。

プリゴジンがロシア防衛大臣のショイグをいつも批判しているのは有名な話で、バフムトが陥落する数日前にも、プリゴジンは武器が足りないと言って、ショイグを罵倒する動画メッセージを出していた。ロシアはすぐにでもキエフを占領することができる戦力があるのに、戦闘をドンバスでの防衛に留めて、西側の武器を消尽させようとするロシア司令部のやり方を、批判している部隊の人たちは少なくない。だから、荒くれ男のプリゴジンが、ショイグを罵倒したりしていても、不思議はないと思う。

しかし、だからといって、戦闘が続いているドンバスを離れて、武装した部隊でモスクワに押しかけるほどのことだとは思いにくい。プリゴジンは、ショイグがロシア空軍にワグネルの拠点を攻撃させようとしていると言っていて、ワグネルの兵士たちもそれを信じて来たらしいのだけれど、そういう事実があるのかどうかが未だにはっきりしていないということは、おそらく真実ではないのだろう。それはただ、ワグネルの兵士たちを納得させるために言っていたことのように思える。

それで、プリゴジンは西側に買収されて、プーチン政権を混乱に陥れるために利用されているのではないかという説も出ていた。実際、反政府組織をでっち上げて、武装させて内乱を起こさせるというのが、アメリカ中央情報局(CIA)の得意なやり方で、2014年のウクライナの政権交代も、そのようにして行われた。反政府グループを送り込み、紛争を組織して、暴力的に政府を乗っ取ってしまい、アメリカの言うなりになる工作員たちを政府に据えるのだ。アメリカの裏政府は、そうやってこれまでも属国のように言うなりになる政府をあちこちに作ってきた。だから、もしプリゴジンを買収してプーチン政権に反乱を起こさせることができるなら、それが一番簡単な方法だと言える。

西側主流メディアは、プリゴジンがプーチン政権に対して反乱を起こしたといって、突然プリゴジンを英雄扱いしていたりもした。それまでは、犯罪者を刑務所から出して戦場でありとある残虐行為をやらせているというようなことを言っていて、金のためには何でもやる極悪非道の悪人みたいに扱っていたのに、急に正義の味方みたいに言い始めた。ウクライナ大統領のゼレンスキーまで、プリゴジンを褒めていたので、ロシアではプリゴジンの評価は急落した。ワグネル部隊を率いて、自ら前線に出てともに戦っているプリゴジンは、ロシアではとても人気があって、ワグネル部隊に志願する人も多い。だけど、敵が喜ぶようなことをしているとなったら、話は別だ。それまでは、プリゴジンとともに防衛大臣のやり方を批判していた人たちも、一斉にプリゴジンを批判し始めた。

プーチン大統領は、24日の朝にライブ配信で、この事態についてスピーチした。これは裏切り行為だから、厳しく処罰されるべきだと言った。仲間割れして互いに戦うなどということが起これば、それこそ敵の思う壺で、ウクライナ軍はワグネルが抜けて防備が薄くなったところを取り返しに来るだろうし、そうなったら、これまで大きな犠牲を払って獲得した成果を無駄にすることになる、と。そして、ワグネルの人たちに、今からでも引き返すようにと呼びかけた。

その時点でロストフにいたプリゴジンは、ロシア政府に交渉する気がないのなら、これからモスクワに向かうと言って、部隊の一部はモスクワへ向かっていった。その近辺で、オイルタンクが燃えているとか、ワグネルが市内で発砲したとか、ロシア軍のヘリコプターがワグネルを攻撃しようとしたとか、空軍の戦闘機をワグネルが撃ち落としたとか、いろいろな情報が断片的にSNSに流されていたけれど、事実なのかどうかははっきりしなかった。しかしそれで、ワグネルがロシア政府に対して反乱を起こすなんてあり得ないと思っていた人たちも、だんだんと本当に反乱が起こっているのだと思い始めていた。

24日は一日中、世界中がどうなることかとロシアからの情報に注目していた。プリゴジンは、ロストフで防衛省の誰かと交渉しているということだったけれど、どこで誰と話しているのかわからなかった。ロストフのワグネル部隊は、街を封鎖していたけれど、それ以外は別に何もしていないようだった。普通にお店に入って、食べ物を買って食べたりしている画像が拡散されていた。何かのデモンストレーションをするわけでもなかった。

そして、その日の夕方になって、とつぜんベラルーシの大統領ルカシェンコが、プリゴジンと交渉がついたと言って出てきたのだ。とにかくロシア国内で流血騒ぎになるのを防ぐべきだということで納得して、ワグネル部隊はドンバスに引き返すことになったと。ワグネルもプリゴジンも、訴追を受けないという条件で、引き返すことに同意したということだった。プーチン大統領は、朝のスピーチのあとで、いろいろな人と電話会談していたという情報が出ていたけれど、そこでルカシェンコがプーチンに代わって、プリゴジンと交渉することになったというのだ。それも、ルカシェンコはプリゴジンの20年来のつきあいだからということだった。

それで、ロシアの人たちはホッとして、やはりプーチン政権の統率力はすばらしいと感じたようだった。一方、ウクライナや西側諸国のメディアは、とたんにまたプリゴジンを悪党扱いし始めた。さっきまでは正義の味方みたいに言っていたのに、やっぱりプリゴジンはお金に取り憑かれた悪党だということなった。

ところでそれから、プリゴジンはドンバスに戻るのではなく、ベラルーシに行くことになったという情報が出てきた。ロストフからモスクワへ向かう高速道路上にいたワグネル部隊は、ドンバスに戻るということだったけれど、翌日もまだそこにいたらしい。それから、ワグネル部隊は、ロシア軍に入るか、民間人になるか、あるいはベラルーシに行くかのどれかをそれぞれ選ぶということになった。それで結局、モスクワに向かっていたワグネル部隊は、全員ベラルーシに行ったらしいのだ。

この反乱騒ぎが、実はすべて示し合わせて行われたショーではないのかという説も、ずいぶん出ていた。それというのも、プリゴジンがモスクワに向かって出発した23日の夜から、ウクライナでのロシア軍の攻撃が激しくなっていたようなのだ。キエフなど都市部の軍事拠点が爆撃されたりしていた。ワグネルがドンバスを離れたというので、バフムトが手薄になっていると見て、ウクライナ軍がバフムトを攻撃しようとしていた。しかし、どこにも手薄な箇所はなく、ウクライナ軍はさんざんに叩かれることになったそうだ。そのことからして、これが実は敵を油断させて、バフムトを取り返すチャンスだと思わせ、おびき寄せる策だったというのは、かなりあり得るような気がする。

それだけではなく、この反乱騒ぎは、実はワグネル部隊をベラルーシに配置する戦略を、カモフラージュするためのものだったんじゃないかという話もある。実際、起こったことは、ワグネル部隊がプリゴジンとともにドンバスからベラルーシに移動したということなのだ。そして、その移動の最中に、ロシアが反乱騒ぎで弱くなったと世界中が思い込み、ロシアはプーチン政権に対する信頼が高まった。

ベラルーシといったら、ロシアはNATOの核攻撃に備えて、戦略核兵器をベラルーシに配備したことを発表したところだった。ベラルーシはポーランドと国境を接していて、NATO諸国に近い。西側諸国は、ロシアが核兵器で脅していると最初から言い続けていたけれど、NATOが東に向かって拡大し続けた結果、ロシアはまわり中から核ミサイルを向けられているような状態になっていたのだ。バフムトが陥落して、ウクライナ軍ももうボロ負けの状態で、核兵器でも何でも使いそうな様子になっている。ウクライナのザポリージャ原発も、ロシアの軍事介入が始まったときから、ずっとロシアが管理しているけれど、ウクライナ軍はザポリージャ原発を攻撃し続けているのだ。それを、ロシア軍が攻撃していると言っている。ザポリージャ原発が爆発したら、核兵器以上にウクライナの国土が汚染されることになるけれど、この戦争をウクライナにやらせているのは、アメリカの裏政府であって、ウクライナではないのだ。ウクライナ政府は、アメリカの裏政府の工作員にすぎないから、ウクライナなどどうなってもいいのだろう。

それで今、ベラルーシにロシアが核兵器を配備したところで、ワグネル部隊がベラルーシに行くことになったのだ。すると、とたんにNATOはポーランドの国境に何千人だかの軍を配備するということになった。メディアがプーチン政権は弱くなったと騒いでいる一方で、軍隊はごく現実的に状況を見ている。ベラルーシにワグネル部隊が来るとなると、ポーランドからの武器の搬送が危なくなるし、ウクライナ西部の軍事拠点が攻撃される可能性が高くなる。

私は、プリゴジンが24日にロストフから動画メッセージを送っていたのを見たときから、これは示し合わせた演技じゃないかと思っていた。それというのも、プリゴジンの話す様子が、反乱を起こしに来た人のような感じではなかったからだ。この三年半くらいで、やらせ画像をあまりにもたくさん見てきたので、演技なのか本気なのかが、見ただけで何となくわかるようになっていた。人のリーディングとかチャネリングとかができる人なら、人が口で言っている言葉とその人の心とが一致していないときには、それとわかると思う。そうでなくても、やらせでやっている人は、口調や態度が少し大げさだったり、どこかしら不自然だったりする。

プリゴジンが話す様子は、まるで休暇に来ているのかと思うくらい、何だか緩んでいた。戦場から離反して、反乱を起こしに来た人の顔のようにはとても思えなかった。怒ったような口調でものを言っていたけれど、その目は愛に満ちているようにしか見えなかった。

そして、24日の朝にスピーチしたプーチン大統領も、プリゴジンに対して怒ったような表情をして、厳しく非難していたけれど、いつものプーチンならば、こんな風に怒りを表しはしないし、何だか不自然な感じがした。これがもし本当の反乱なのだとしたら、彼は内心ひどく失望しているはずだ。失望しながらも、事態を何とか治めようとするときの彼は、実に肚の据わった表情になる。しかし、プリゴジンのことでスピーチするプーチンは、そういう肚のある表情ではなかった。プリゴジンを一方的に批判するようなものの言い方もプーチンらしくないし、怒りを態度に表すのも、プーチンらしくない。

それならば、これはプーチンとプリゴジンとルカシェンコが示し合わせて行った大芝居だったのだろうか? ロシアが内乱で弱みを見せたと思わせつつ、世間がどうなることかと情報に気を取られているうちに、ちゃっかりとベラルーシにワグネル部隊を移動させて、キエフ政権の喉元に剣を突きつけてしまったのだ。

ウクライナのことでは、ロシアはNATOに騙され続けてきた。2014年にも、ウクライナ軍をドンバスから撤退させるという約束で、ドンバスから軍を引き揚げたのに、その約束は一度も果たされなかった。のちに、それは単にロシア軍を撤退させるための嘘で、そもそも約束を守るつもりなどなかったことがわかった。そして、2022年3月にトルコでの停戦交渉が成立して、それに従ってロシア軍がキエフ近郊から撤退したら、あとからやってきたウクライナ軍が市民虐殺を演出して、ロシア軍がやったと言い、停戦交渉を一方的に破棄してしまった。そもそも東西ドイツが統合するときに、NATOを東に拡大させないという約束で、ロシアは東ブロックからすべての軍を引き揚げたのに、その約束は守られず、NATOは東に拡大し続けた。ロシアはお人好しそのものといった風で、NATO側はそれを利用し続けてきたのだ。

しかし、ロシアはこのところ返し技をかけてくるようになった。情報戦でも、西側諸国の腐敗ぶりをどんどん暴露するようになった。ロシアも騙されているばかりではなく、西側が得意なやらせ情報の技も使うようになったのかもしれない。だとしたら、これは実に鮮やかな返し技だ。西側のやらせは、裏でお金が動いているのが透けて見えるようだけれど、ロシアのやらせには、そういう汚らしさがまったくない。誰もお金などでは動いておらず、国を守るための大芝居を皆で演じていたわけだ。プーチンの顔もプリゴジンの顔も、怒ったような表層の奥には、深い愛と信頼があるようにしか思えなかった。

ロストフから動画メッセージを送るプリゴジン

2023年6月30日



【人の未来を操作する法】


イスラエルの歴史家ユヴァル・ノア・ハラリは、人類の未来について、「ハッキングできる動物」と言ったことで有名だけれど、この人はまるでそうした人類の未来を、歴史的事実であるかのように語っている。オランダのジャーナリスト、ジャネット・オサバードのドキュメンタリー・シリーズ「カバルの崩壊」の最新巻では、世界経済フォーラムの世界支配について扱っていて、その中で世界経済フォーラムの顧問であるユヴァル・ハラリの発言を集めた映像が出てきていた。

この人は、ディジタル・テクノロジーの専門家でもなければ、心理学者や脳科学者でもなく、何と歴史学者だったのだ。そして、人類の歴史はこうだったから、未来はこうなるのだと語っている。それが歴史的必然であるかのように、だ。

「ハッキングできる動物」というのは、ディジタル・テクノロジーが発達した結果、人間はチップを皮下に埋め込むことで、医学的な情報ばかりでなく、意識や思考、感情などもディジタル情報として読み取ることができるようになり、だからコンピュータと同様に、外からハッキングして情報を読み取ることもできれば、操作することもできるようになる、ということを言っている。だから、自由意志というものは、もうなくなるのだということまで言っている。

この人は、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダーから出てきた人だというのだけれど、このヤンググローバルリーダーというのは、つまりは金融グローバルエリートが望むように世界を支配するための工作員たちだということが、もうわかっている。ヤンググローバルリーダーたちは、若くて学歴も経歴もろくにないような人たちがほとんどなのだけれど、「見出された若い才能」ということで、グローバルエリートたちの後押しで、各国の政府や経済界のトップに据えられるのだ。そして、世界のグローバル支配を推し進める駒として、言われた通りに動き、世界のグローバル支配が必然的な人類の未来であるかのように、まことしやかに発言する。西側主流メディアも世界経済フォーラムが支配しているので、そうした発言がすばらしい画期的なものであるかのように取り上げられ、スター的な存在に仕立て上げられていく。

ユヴァル・ノア・ハラリも、おそらくはそうした人なのだろう。若いのに、まるで学術界の重鎮であるかのような扱われ方をしている。そのような扱われ方をしている人が、いかにももっともらしくものを言うと、多くの人は、歴史的な深い考察からして、そのような結論が出るのだろうから、この人の言うことが正しいのだろうと思ってしまうのだ。

このことは、ロックフェラー家が、20世紀の初めに、石油から作る製薬業を始めたときに、歴史家を雇って、医学の歴史を書き換えさせたという話を思い出させる。それまでは、西洋では薬草学がそれなりに発達していた。薬草の使い方にくわしい人がどこにでもいて、人々の病気やケガを治療していた。石油で財をなしたロックフェラー家は、世界中の人々が薬草などではなくて、石油から作る製薬を使うように仕向けるために、薬草学の歴史を書き換えさせたのだ。そして、石油製薬ができる前は、人々は薬草しかなかったので、病気が治せなかったという風な話をこしらえてしまった。薬草などは効果がないし、害があることもあり、薬草師たちは迷信のようなものを信じているいかさま師だというような話にしてしまったのだ。そして、石油製薬こそは、人類の医学の未来であるとした。

それによって、世界中の多くの人々は、それまで効果を挙げていた薬草から離れて、効果の定かでない石油製薬に飛びついてしまった。そして、明らかに効果よりも害が多いのにもかかわらず、石油製薬の方が優れていると信じ込んでしまったのだ。

また、1960年代には、未来学というものがあって、人類の未来がどうなっていくのかということをまことしやかに発言する人たちがいた。未来などというものは、実にさまざまな可能性があり、多様性もあるはずなのに、未来学で語られていた未来とは、人間がテクノロジーに依存しているような未来ばかりだった。機械が発達して、ありとあることを人間の代わりに機械がやってくれるというのだ。思考することさえも、コンピュータが代わりにやってくれて、人間はコンピュータが出す答えに従うというような未来が描かれていった。これはまた、暗黒の管理社会の未来を描くSF小説になったりもした。

学者みたいな人たちが、「人類の未来はこうなる」などというと、多くの人は、本当にそうなるのだろうと思ってしまうのだ。しかし、それはごく一部の支配者たちが望んでいる未来にすぎない。だいたい未来などというものは、人々がそのような世界を受け入れなければ、その通りになるものではないのだ。彼らはそのことを知っているからこそ、何とか人々に彼らが望むような未来を受け入れさせようとする。そして、歴史学者などを雇って、まるでそれが歴史の必然であるかのように、「人類の未来はこうなる」ということをまことしやかに言わせるのだ。

ところで、誰かに「未来はこうなる」ということを固く信じ込ませたら、その人は自分からその通りの未来を引き寄せ始めてしまう。これは、引き寄せの法則などで、望みを実現させる手法として使われているけれど、まったく同様に悪いことでも使うことができるのだ。たとえ本人にとって不幸なことであって、その人が「自分の未来はこうなる」と固く信じてしまったら、その通りの未来を自分から作り出してしまう。

呪いというのは、実はこの原理を使っている。黒魔術師と言われる人たちは、誰かを不幸にする仕事を、請け負いでやる人たちなのだけれど、彼らがやっているのは、実のところ、不幸にするべき相手に、「未来はこうなる」ということを信じ込ませることなのだ。攻撃的な念を飛ばすようなこともするけれど、これは恐怖を持っていない人には効かない。呪いの念というものも、相手に何かしら共振するような素地がないと、害を加えることはできないのだ。それで、黒魔術師は相手を何とか恐がらせようとして、いろいろなことをする。不気味な姿で現れて、呪いをかけたことを相手に知らせたり、不吉な徴になるようなものを、相手の目に入るところに置いておいたりする。それで、相手が呪いをかけられたと思って、恐怖に取り憑かれたら、あとは何もしなくても、その人が自分でその通りの現実を引き寄せ始める。事業が失敗したり、会社をクビになったり、あるいは事故に遭ったりもする。

歴史家のユヴァル・ノア・ハラリが、テクノロジーが発達した結果、人類が「ハッキングできる動物 hackable animal」になるとか、自由意志はもうなくなるとか、あるいは人類の多くが必要がない無駄飯食い(useless eater)になるとか、そういうことをまことしやかに話しているのも、どうも黒魔術師たちがやっていることと、同じなような気がする。あの世界経済フォーラムのグローバルエリートたちは、まさにその事態をこそ望んでいるのだ。世界中の多くの人々が、自分からテクノロジーに支配されてしまうような人間になることをだ。

実際、自分からテクノロジーに支配され、自分で考えて判断することもしないで、たとえそれが自分を不幸にするようなことであっても、外から言われたことに従ってしまう人があまりにもたくさんいることは、この三年半ほどでよくわかった。それも、グローバルエリートたちが、何十年もかけて呪いをかけ続けた成果なのだろう。未来はこうなるのだから、社会はこういう方向で動いているのだから、こういう方向へ向かっていくのだから、と言われて、多くの人々は、それならばと、自分からその方向へ先取りして向かっていこうとする。新しいものがいいのだと思い込んで、自分が望んでいないようなことでも、自分から入っていってしまうのだ。そのようにして、グローバルエリートたちは、人々にどう考えて、どう行動し、何を消費すべきなのかを、思うように操作してきた。

しかしその一方で、世界全体は、グローバルエリートたちが望んだのとは、逆の方向に向かっていっているようだ。それは、人に呪いをかければ、必ずしっぺ返しが来るということを証明しているようでもある。人にしたことは、必ず自分に還ってくるということがある。呪いをかけて人を支配しようとすれば、自分も支配されることになる。

グローバルエリートたちは、世界全体を統一支配しようとした結果、世界の大半の国から反発を受けることになった。人間は、自分を不幸にするような支配の下には長いこと留まってはいないので、いつかはしっぺ返しが来ることになる。それは、害虫が繁殖して作物が食い荒らされたら、今度はその害虫を餌にする天敵が殖えるというのとも似ている。宇宙はそのように、必ずバランスを取り戻すようにできている。それは微生物レベルでも、自然の生態系でもそうだし、社会的な関係でもそうなのだ。少数のグループが、大勢の人々を残虐に支配していたら、いつかはその少数のグループに対抗できる人物が現れて、それが加速度的に大きなグループになっていって、しまいには少数のグループを圧倒することになる。

この三年半ほどは、その臨界点を超えていく長いプロセスだったとも言える。多くの人々が、言われるままに自分から支配されていく一方で、踏み留まって、支配に対抗しようとする人もまた急速に増えていった。国として、グローバルエリートの支配に長年苦しめられてきた国々は、ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めて、西側グローバリストの総攻撃にさらされたとき、ロシアと団結して、グローバルエリートと戦い始めた。その結果、グローバルエリートの資金源である米ドルは、国際市場での価値を失って、その腐敗ぶりが表に出るようになった。

つまるところ、「未来がこうなる」というのは、人それぞれの意識の中にあるようなことなので、たった一つの真実があるというようなものではない。だから、ユヴァル・ノア・ハラリが言うように、人間がハッキングできる動物になると信じる人は、皮下にチップを埋め込ませる以前にもう、メディアや政府が言う通りに考え、行動していて、そのような未来に向かっていっているのだと思う。しかし、そんな「未来」は、ごく一部のグローバルエリートが望んでいるものにすぎない。私たち人類には、もっとずっと幅広い未来のヴァリエーションがすでに存在していることに、私たちは今、気づくべきなのだと思う。

阿蘇の龍を解放したあとで、出てきた龍雲


「カバルの崩壊 パート27 ホモ・サピエンスの終焉」。CCボタンをクリックすると、日本語字幕が出てきます。


2023年7月2日



【ロシアの価値観】


ロシアでは、6月は卒業パーティのシーズンで、あちこちで高校生たちが歌い踊るイベントが開催されていたそうだ。もともとはサンクトペテルブルクで始まったイベントで、屋外ステージで一日中コンサートがあったあと、暗くなったところで、赤い帆を張った帆船がライトアップされて、ネヴァ川にかかる跳ね橋を通っていくのを、卒業生たちが川岸で眺めながら、歌い踊るというものだった。それがあちこちの都市でも同様のイベントが開催されるようになった。今年は、新しくロシアになったドンバスのマリウポリでも行われて、マリウポリの港を赤い帆を張ったヨットが進んでいったそうだ。

その卒業イベントで、高校生たちが「私はロシア人」という歌を歌って、踊りまくっている動画が、世界中で拡散されていた。この曲が今ロシアでは大ヒットしているというのだ。Shamanという芸名のロック歌手が歌っていて、字幕つきの動画を見ると、メインの部分はこんな風だ。

「俺は俺だ。誰も打ちのめすことなんかできない。何故って、俺はロシア人だから。俺はとことん進んでいく。俺はロシア人だ。父から受け継いだロシアの血が流れている。俺はロシア人で、幸せだ。この世界すべてが何だろうと、俺はロシア人だ」

この曲は、昨年7月に出たということだから、ウクライナの戦争で、激戦地マリウポリが解放されたあとのことだ。ロシアはドンバスをウクライナ軍の攻撃から防衛するために戦っているのに、西側世界はロシアがドンバスで市街を爆撃しているかのように報道して、西側諸国ではロシア人が差別されていた。しかし、ロシア人の多くはプーチン政権の決定を支持していて、ロシアが80年後に再び現れたナチ政権と戦っているということに誇りを感じている人も多い。

第二次世界大戦のとき、ソ連はナチス・ドイツに侵略されて、参戦することになった。ソ連にとっては、第二次世界大戦はナチから国を解放するための戦いだったのだ。そのために、ソ連は最も大きな犠牲を払うことになったけれど、最後にベルリンを陥落させて、第二次世界大戦を終わりにしたのは、ソ連だった。だから、今でも多くのロシア人は、そのときに戦った祖父や曽祖父の血が自分に流れていることを誇りに思っているのだという。

そして今、ロシアの高校生たちが、「私はロシア人」という歌を歌って、熱狂しているのだ。その動画がまた世界中で拡散され、称賛を受けている。それというのも、この高校生たちの姿が、アメリカン・ポップに熱狂している若い子たちとは違って、実に健全だからなのだ。アメリカのポップ音楽は、アメリカ中央情報局(CIA)に操作されていて、人々を思考停止状態にして、短絡的な目標を追いかけるようにするために作られていることは、すでによく知られている。だから、アメリカのポップ音楽に熱狂している人たちの姿は、どこかしら歪んでいる感じがするのだ。本当には望んでいないものを、かっこいいからと追いかけさせられ、目先の競争意識とか欲望とか敵対意識とかいうものにかき立てられている。だから、反抗的だったり、攻撃的だったり、性的に倒錯していたり、何かに依存症的だったり、そういうどこかしら歪んだ状態にされている。

そういうポップ音楽が当たり前だと私たちは思ってきたのだけれど、今ロシアから出てくる音楽は、そういうものとはまったく違う。音楽のスタイルは同じだけれど、西側のポップ音楽にあるような歪んだところがないのだ。それは、アメリカ中央情報局の心理操作が入っていないからというのが、まず大きいのだろう。この歌手も、アメリカのポップ音楽に憧れて、音楽を始めたのだろうけれど、歪められていないありのままの自分の感覚を音楽に表現すると、まったく違う表現ができてしまうのだ。

ロシアは、ソ連が崩壊したあと、西側資本に買い荒らされたような状態で、腐敗がひどく、経済も崩壊し、公共施設もほとんど機能していない状態だったそうだ。その後、プーチン政権が誕生し、腐敗を一掃して、経済を建て直した。ロシアは共産国だったから、自由も民主主義もなく、経済的にも貧しいという風に西側諸国では思われていて、ロシア人たちも、西側諸国に比べてロシアは遅れていると思っていたのかもしれない。しかし今では、それが逆転してきている。ヨーロッパはEUになってから、国の主権はなくなったも同じで、いろんなことが不透明になり、裏で税金がどこへ流れているのかわからなくなっていった。それが三年半前から、どこの国も正体のあやしいパンデミックで経済も健康も破壊するような規制に従わされ、明らかに言論の自由も民主主義も消えてなくなったような状態だ。今や、ロシアの方がよほど自由も民主主義も守られていて、経済的にも豊かになっている。

プーチンは、西側諸国が「西側の価値観」として誇りにしている自由や民主主義や人権といったものが、実はちっとも守られていないということを、2007年のミュンヘン安全保障会議のスピーチでも言っている。アメリカに事実上支配されている西側諸国は、西側に属さない国々と西側諸国とで、違う基準で批判したり称賛したりしている。その結果、西側に属さない国は独裁的で民主的でないからと介入することが正当化され、西側諸国は同じことをやっていてもいいことになっている。それで少なくとも2007年の時点では、すでに西側諸国よりもロシアの方が、よほどフェアで民主的な国になっていたわけなのだ。

昨年2月にロシアがウクライナの内戦に軍事介入を始めてから、ロシアはもはや西側の欺瞞につきあっているのをやめてしまった。それで、世界中から叩かれることになったけれど、これはロシアにとっては、国の主権を賭けた戦いだったのだから、他にどうしようもない。しかしその結果、ロシアはアメリカのグローバリストの支配を受けない経済圏を確立してしまい、西側グローバリストの腐敗と搾取からの解放区をこしらえてしまったのだ。

第二次世界大戦のときには、ロシアはナチス・ドイツと戦っていたわけだけれど、今度はウクライナのナチだけではなく、西側グローバリストの支配そのものとロシアは戦うようなことになっている。それで今、ロシアは情報戦でも反撃に入っていて、西側の腐敗ぶりをどんどん暴露し始めている。バイデン親子の腐敗のことも、ウクライナで行われている幼児売買や臓器売買のことも、トランプ起訴をめぐるアメリカの司法の腐敗ぶりのことも、ロシアの政治家たちは、口を濁さずに表に出すようになった。

それを見て、西側諸国の人たちも、よくぞ言ってくれたと拍手喝采した人が少なくなかったわけなのだけれど、何よりも長年の溜飲が下がる思いをしているのは、西側にさんざん悪口を言われ続けてきたロシアの人たちだったのかもしれない。最近ロシアで、西側を批判するロシアの政治家たちをパロディ化した音楽ヴィデオが作られて、世界中で拡散されていたのだけれど、そこでは歌手たちが外務大臣報道官のマリア・ザハロワや、テレグラムに辛口のメッセージを書くことで有名な元大統領メドヴェージェフや、アメリカの政治家の腐敗を罵倒するチェチェン共和国のカディロフ大統領などを演じている。マリア・ザハロワ役の歌手は、「西側のエリートたち、脳みそあるの? コオロギ食べて、ジェンダーは100種類以上」と歌っているのだけれど、それは実際にザハロワがこの頃の記者会見で言っているようなことだ。

ロシアの人たちも、西側グローバリストたちに、独裁的だの民主主義がないだの、遅れているだの野暮ったいだのと言われてきて、そんなものが実はすべて西側グローバリスト自身の姿の投影に他ならなかったことを、堂々と表に出すことができるようになったのだ。そして、西側諸国に対しても、ようやくロシア人であることを誇りに思うことができるようになったわけだ。

そうした背景があって、今、高校卒業生たちが、「私はロシア人」を歌って熱狂している姿が世界中で拡散されているのを見ると、ついに「西側の価値」の欺瞞が引っくり返って、本物が表に出てきたという感がある。虚偽の姿というのは、いくら叩いても、また同じようなものが次々と出てくるけれど、本物が現れたときには、たちまち嘘くささが一目瞭然になって、シュルシュルとしぼんでしまうものなのだ。ロシアの歪んでいない高校生たちの姿を見たら、西側のロック・コンサートに熱狂する子たちの不健康さと中身のなさは、あえて言わなくてもくっきりと見えてしまう。


ロシアの卒業イベントで「私はロシア人」を歌う卒業生たちの動画シェアにつけられたコメント。「ロシアは美しい。ロシアでは女性は女性で、入れ墨もピアスもトランスヴェスタイトもレインボーカラーの旗を掲げたレズビアンも露出狂も性転換も肥満もない」

*****

ロシアのロック歌手Shamanの「私はロシア人」。英語字幕つき。
https://youtu.be/0LKhA40V0Ew

2023年7月3日


***

【規則に基づいた世界秩序と、国際法に基づいた世界秩序】



7月4日に上海協力機構の会議が行われて、イランが新たに加わったということだった。これは、西側の主流メディアではほとんど報道されていないけれど、世界の構造を変えるような大きなできごとだったんじゃないかと思う。

上海協力機構(SCO)というのは、NATOのBRICS版とでもいうようなもので、初めは中国、ロシア、タジキスタン、カザフスタン、キルギス共和国の5カ国で結成された軍事同盟で、その後ウズベキスパン、インド、パキスタンが加わって、今回イランが加わった。これで、ユーラシアの60%に当たる領域を占め、世界人口の40%に当たり、世界最大の国際同盟になるそうだ。そして今、上海協力機構へ加盟を希望している国は、急増しているらしい。

上海協力機構は、北大西洋条約機構(NATO)に対立するもののように受け取られているのだと思うけれど、実はコンセプトからして、まったく違うものだ。北大西洋条約機構(NATO)が、中国やロシアを最初から仮想敵国と想定して、それに対する防衛態勢を作ろうとしているのに対して、上海協力機構は、こういうブロックを作って防衛することをそもそも否定している。国連憲章に準じた国際法に基づいた世界秩序を保つことを目的としたネットワークなのだ。

国際法に基づいた世界秩序など、そんなことはNATOだって大前提にしていなければいけないはずなのだけれど、実のところ、これをまったく守っていないのが、NATOという組織だったのだ。NATOの主要部分を成す西側諸国は、「規則に基づいた世界秩序」を口にするけれど、この規則というのは、国連憲章でも国際法でもない。そもそも一定の規則というものがあるわけではない。このことは、プーチン大統領の2005年のミュンヘン安全保障会議での有名なスピーチでも言っている。西側諸国がいう「規則」なるものを誰も見たことがないし、そのときそのときで規則が変わっていると。簡単にいうと、アメリカや他のNATO諸国がやっていたら、それは規則に基づいていて、同じことをNATO以外の国がやっていたら、それは戦争犯罪だということになるというのだ。

昨年2月にロシアがウクライナの内戦に軍事介入したら、侵略だといって犯罪扱いしていたけれど、アメリカはイラクでもアフガニスタンでもセルビアでも軍事介入して、その戦争犯罪についてはまるきり裁かれていない。つまるところ、アメリカはやりたい放題に軍隊を出して、他の国を攻撃し、政権を入れ換えることができ、それが規則に基づいているということになっている。まさにそうしたやり方を保とうとするのが、NATOの「規則に基づいた世界秩序」だということになる。

上海協力機構は、そうしたNATOのやり方にしてやられないために、協力して国を守ろうということらしい。国際法に基づいた世界秩序を目指すといっているのは、NATOこそは国際法を犯してやりたい放題をやっているからなのだ。

上海協力機構は、米ドルによるアメリカと西側の支配を拒否していて、米ドルから離れる方針を出している。また、カラー革命を西側が主導しているクーデタであるとして批判している。米ドル優位の金融システムと、民主化という口実で正当化されるカラー革命こそは、アメリカ政府が世界の国々を都合のいいように支配するための手段だ。つまり、上海協力機構とは、そうした暴力的な支配から世界の国々を守るための国際組織であると言える。

昨年2月に、ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、それまでアメリカが関わってきた戦争では、国際法がまったく守られていなかったということがよくわかった。それというのも、ロシア軍は完全に国際法を守っていたからなのだ。こんな戦争の仕方は、第二次世界大戦でもそのあとでも、見たことがなかった。それで、私たちが普通に、「戦争とはこういうものだ」と思っていたようなことは、ほとんどすべて国際法違反の戦争犯罪だったことがわかったのだ。

NATOやアメリカ軍は、イラクでもアフガンでもセルビアでも、まずは首都を空爆して、市街地のインフラを破壊し、市民を犠牲にした。これはすべて、国際法違反だったのだ。戦争をするにしても、市民を巻き添えにしないようにすることが、国際法で決まっており、街の住民はもちろん、電力や通信ネットなどのインフラを破壊することも禁じられていた。

ロシアが軍事介入を始めてから、西側メディアは、キエフが空爆されているかのように報道していたけれど、現実にはロシア軍はキエフなど攻撃してはいなかった。ドンバスを攻撃しているウクライナ軍の拠点を攻撃していたのだ。武器庫や軍事基地、軍事用の通信施設を破壊していた。キエフの地下シェルターだという画像が出回ったりしていたけれど、最近になって、地下シェルターの建設についてキエフ市長が建設費を横領していたことが暴露され、そもそも作られてさえいなかったことが判明した。キエフでは空爆などなく、人々は電力も水道も、インターネットも使えていたのだ。

それでも、西側政府も西側メディアもロシアが市街を爆撃しているとか、市民を犠牲にしているとか非難して、これは戦争犯罪だと言っていた。市街を爆撃するのは、NATOはイラクでもアフガンでもセルビアでもやっていたけれど、そのときには戦争犯罪だなどと言われなかったのにだ。ロシアがやったということであれば、急に戦争犯罪であり、残虐行為であり、国際的に非難すべきだということになったのだ。

今、アメリカ政府がウクライナに送るといって騒ぎになっているクラスター弾も、西側政府は、去年ロシア軍がドンバスで使ったと言って、残虐な戦争犯罪だと非難していた。このクラスター弾というのは、小型の爆弾や地雷が無数に入っていて、地域一帯にばらまくようにできている。そのうち多くが爆発しないまま地上に残ることになるので、紛争が終わったあとも、広範囲に渡って土地が使えなくなってしまう。これまでも、そういう場所で遊んでいた子供たちが犠牲になって、大きな問題になっていた。それで、クラスター弾を使用禁止にしている国も多い。そのクラスター弾を、アメリカ政府がウクライナに送るということになったら、これは戦争犯罪ではなく、規則に基づいている決定だということになったのだ。

しかし、昨年ドンバスでクラスター弾を使っていたのは、ロシア軍ではなくウクライナ軍だった。ドンバスの市街で、何千という小型の地雷が、クラスター弾によってばらまかれたのだ。これは緑色をしていて、芝生の上に落ちたら、ほとんど見分けがつかない。ロシア軍は、路上にまかれた地雷を戦車で爆発させて、無効化していた。

こうした例は無数にある。このように、一方では犯罪だけれど、自分たちがやれば正当な行為だということになるというのが、NATO側のいう「規則に基づいた世界秩序」だということなのだ。それに対して、すべての国が同じ資格で同じ基準に従うようにするべきだというのが、上海協力機構だ。東側だとか西側だという軍事ブロックではない。すべての国が公正に扱われるような秩序を作ることを目指している。

国際法は、英語ではinternational law だけれど、ドイツ語ではVölkerrecht フォルカーレヒトといって、民族の権利という意味だ。憲法は国民の人権を定めるものだけれど、国際法は民族の権利を定めるものだということになる。どの民族も、同等の権利を持つということを公に定めたものが国際法だということになる。それぞれの民族には、固有の生活スタイルがあり、習俗があり、信仰や世界観がある。どれが民主的だとかそうでないとか、いいとか悪いとかを、ある一つの民族が決めて、従わせることができるというのではないのだ。どの民族もそれぞれのやり方を守る権利がある。それを定めたものが、国際法だ。

西側が民主化と称して、いろいろな国で行っていることは、まさにこの民族の生活スタイルを壊して、グローバリズムに取り込んでしまおうというものだ。それぞれの民族には、自立した生活様式というものがあるのだけれど、これを民主的でないとか子供は学校に行くべきだとか非難して、それでグローバル産業に依存した生活様式に変えさせてしまう。上海協力機構は、西側のこのやり方に抵抗して、それぞれの民族のあり方を守ろうとしている。

この100年ほど、英米の金融グローバルエリートが世界を支配しようとして、世界中でそれぞれに自立して生きていた民族を、近代化とか民主化とかいって、土着の生活様式から切り離して、お金に依存させていった。植民地は手放したけれど、やっていることは植民地化と同じことだった。この構造を軍事的に支えていたのが、NATOだったわけなのだ。

ところで、BRICSが登場してきたことによって、金融での植民地支配ができなくなってきたのと同様に、上海協力機構によって、NATOの一極支配が破れ、軍事的にも多極的な世界秩序ができていく方向に傾いたらしい。ちょうどアメリカ独立記念日である7月4日に、イランが正式に上海協力機構に加わって、この方向は確かなものになったという感がある。


2023年7月9日


【自由の音】



7月4日のアメリカ独立記念日に、アメリカの幼児売買の実態を描いた映画が劇場公開されて大ヒットになるとは、何という象徴だろう? アメリカ独立記念日といったら、1776年にイギリスに属国支配されていたアメリカが、大英帝国からの独立を宣言した日だ。その後、アメリカは長い独立戦争を経て、独立国になるのだけれど、結局のところ大英帝国を裏で支配していたハザール・ユダヤ系金融資本家たちに、お金で支配されてしまうことになる。

ハザール・ユダヤ系金融資本家たちは、国に戦争させて軍資金を貸し付けることで、富を成してきた。それで、しまいには国が通貨発行権を売り渡してしまうように仕向けて、裏から国を丸ごと支配してしまうのだ。だから、アメリカは独立国になりはしたものの、実はあいかわらずイギリス王家の属国のようなものだった。正確には、イギリス王家を裏で支配しているハザール・ユダヤ系金融資本家に、だ。そして、その裏支配を保つために使われてきたのが、幼児売買だったのだ。

世界中からきれいな子どもたちを誘拐してきて、大金持ちの小児性愛趣味者たちに売る商売は、今や石油よりも儲かると言われているくらいだという。それでお金を作るだけでなく、小児性愛の証拠を握ることで、相手を脅しが利く人間にしてしまうことができる。子供を誘拐してきて強姦するなどということは、重大な犯罪であるだけでなく、人間として最も軽蔑されるべきことだからだ。そんなことが表に出るのは、政治家としては国民の信頼を一気に失って失脚することを意味する。だから、政治家を脅しで何でも言うことを聞くようにしてしまうために、彼らは誘拐してきた子供たちを使って、政治家たちを誘惑させる。そうやって、小児性愛に依存させてしまい、巨額のお金を流させながら、自在に支配するのだ。

幼児売買の問題は、ずいぶん前からあったようなのだけれど、これまではほとんど誰も本気にしていなかった。そんなことは、あまりにおぞましすぎて、なかなか信じられるものではないからだ。そんな現実があるとは思いたくないという人間の心理も手伝って、長いこと表に出てこなかった。それが、2020年のアメリカ大統領選挙で、どう見ても人気があると思えなかったバイデンが史上最高の得票数で当選し、選挙不正の審理を裁判所が拒否するという事態になって、その背景にあるアメリカの闇の構造が徐々に表に出ていった。ジャネット・オセバートのドキュメンタリー・シリーズ「カバルの崩壊」がネットに出て、SNSで世界中に拡散され、多くの言語に翻訳されたりもした。ワシントンDCのピザ屋が、幼児売春の拠点になっていたことが表に出て、ピザ・ゲートという言葉を多くの人が知るようにもなった。そうして、アメリカ政府を裏から支配している闇の構造に、幼児売買がどのように関わっているのかを知る人が増えていったのだ。

そして今、幼児売買の問題を扱った実話ものの映画Sound of Freedom (自由の音)が、大っぴらに劇場公開になったのだ。この映画が撮影されたのは2018年のことだったのだけれど、その後、この映画を配給する予定だった20世紀フォックスがディズニー社に買い取られ、ディズニーはこの映画を公開させないようにした。それで、この映画はエンジェル・スタジオが配給することになり、クラウドファンディングで資金を集めて、5年遅れて公開されることになった。

ハリウッドもディズニーも、幼児売買に関わっていることが知られている。だから、こんな映画が製作され、公開されるのは、よほどのことだったわけだ。それが今、あれこれの妨害を乗り越えながらも、ようやく劇場公開され、ついにインディー・ジョーンズを追い越すヒットになったというのだから、この3年ほどで、世界はずいぶん変わったものだと思う。

原題がSound of Freedom (自由の音)というこの映画は、ティム・バラードという実在の幼児売買捜査官の話だ。ホンジュラスから誘拐された二人の子供を探すために、おとり捜査でコロンビアの闇世界に乗り込んでいくという話で、ジェームズ・ボンド風のハードボイルドな映画なのだけれど、ジェームズ・ボンドとかインディー・ジョーンズみたいなハリウッド映画と違って、まったくリアルな現実の話なのだ。この映画が大ヒットしているというのは、多くの人々が、ハリウッド映画の虚構の世界にもう飽き飽きしているからなのかもしれない。ハリウッド映画の映像には、現実の世界の持つリアルな手応えというものがどんどんなくなってきていて、恐怖心とか欠如意識とかを掻き立てるばかりのものになっている。ところが、「サウンド・オブ・フリーダム」の映像は、スリルもサスペンスもありながら、どうしようもないほどに現実なのだ。その悲しいほどの手触りは、ハリウッド映画の作り出す虚構に麻痺させられていた私たちの感性を、生命に目覚めさせてくれるかのようだ。

コロンビアの女性モデルが、子役タレントのスカウトを装って、ホンジュラスのきれいな子供たちに声をかけ、オーディションの写真撮影のためだといって、子供たちを集めておいて、そのままコンテナに乗せて、コロンビアの幼児売買の組織に売り渡してしまう。子供たちが奪われたことに気づいた父親が、捜索願を出し、カリフォルニアの捜査官であるティム・バラードが捜査に乗り出す。撮影された写真がインターネットのあるサイトに出て、取引されるので、ネットから足がかりを見つけるのだ。

誘拐された男の子は、メキシコとアメリカの国境で、男が車でアメリカに連れて行こうとしていたところで、見つかって解放された。2016年の大統領選挙で、トランプはメキシコの国境に塀を作って入国管理すると公約して、そのために人種差別主義者だとさんざんメディアで叩かれたのだ。しかし、この映画を見ると、一体何のための塀だったのかが、よくわかる。アメリカは幼児売春の最大の買い手なので、中南米からメキシコの国境を越えて、大勢の子供たちが送り込まれているのだ。塀も何もないところでは、ノーチェックでいくらでも子供たちを送り込むことができてしまう。トランプがともかくも塀を作ったおかげで、誘拐されアメリカに送り込まれようとしている子供たちを、国境のチェックポイントで救出することが可能になったのだ。

ジョー・バイデンが不可解な勝ち方をして、トランプがホワイトハウスを去り、バイデンが大統領になったとき、一番初めにやったことが、メキシコの国境を解放することだった。その後、親の付き添いのない未成年者が大勢メキシコからアメリカに入ってきた。この子たちは、国境のところで保護されたわけだけれど、大半はその後ゆくえが知れないままだという。バイデンは、息子ともども小児性愛の趣味があることで知られているけれど、ウクライナの戦争のことだけではなく、幼児売買を大っぴらに行えるようにするために大統領に据えられたのだろうということは、想像がつく。アメリカという国は、そんな人物が大統領になっているような国なのだ。戦争と子供の売買とは、もっとも大きなお金が動くものであり、アメリカ政府はその2つを行えるようにするために、グローバル金融資本家たちに操作されているということが、このことからしてもよくわかる。

アメリカの国境で見つかった男の子は、ホンジュラスで誘拐されてから、コンテナでコロンビアの港に送られ、そこで売人に買い取られて、メキシコに送られ、ある女性のところで何ヶ月も囚われていた。それからアメリカに転売されるべく、車で国境まで来たところで、見つかったのだ。それまでずっと外にも出してもらえなかったのか、男の子は今が何月なのかも知らなかった。

もう一人の誘拐された女の子の方は、コロンビアの犯罪組織の元にいるらしいということがわかって、ティム・バラードはコロンビアに行き、小児性愛趣味者を装って、ある島で行われる乱痴気パーティに出かけて行く。そこは犯罪の巣窟で、コロンビアでも最も危険な場所だ。囚われた子供たちが、モーターボートに乗せられて島に到着したところで、待ち構えていた警察隊がモーターボートでやってきて、武器を構えながら上陸し、人々を一斉検挙して、子供たちを解放する。そのときに、解放された中南米の子供たちが、テーブルを太鼓代わりに叩きながら、歌を歌うのを見て、「あれが自由の音(sound of freedom)だよ」と言うのが、この映画のタイトルになっている。

しかし、ホンジュラスで誘拐された女の子は、そこにはいなかった。コロンビアの紛争地域のジャングルの中のコカイン栽培所にいるらしいということがわかって、ティム・バラードは仲間とともに海外援助活動の医者のふりをして、乗り込んでいく。そこはもう警察も軍隊も入れないような場所だ。それで、チップを入れて、行方が追跡できるようにしておいて、敵地に乗り込んでいったのだ。小舟で川を上っていくと、銃を持った人たちに捕まって、ジャングルの中に連れて行かれる。そこではコカインを栽培していて、子供たちが働かされている一方で、性的に虐待を受けていた。その中に、ホンジュラスで誘拐された女の子がいたのだ。見つかったら殺されるような危機一髪の危険を乗り越えていっての救出劇があり、女の子は無事にホンジュラスの親のもとに帰される。

紛争地域は、警察も軍隊も入り込めないがゆえに、犯罪の巣窟なのだ。そのことは、2014年から内戦状態になっているウクライナが、幼児売買と臓器売買の世界的な拠点になっているということを思い出させる。国際NGOの医療援助機関は、人道援助ということで紛争地域に自由に出入りすることができるために、そうした機関が、麻薬取引や幼児売買の隠れ蓑になっていたりもする。

紛争地域というものも、実は政治を牛耳るために、グローバリストたちがテロリストを組織して内乱を起こさせていたりする。反政府派を組織して、武器を与え、お金を与えて、暴動を起こさせるのだ。それによって、政権をアメリカ政府の傀儡にすげ替えさせたりするのだけれど、警察が入り込めない無法地帯を作ることで、あらゆる犯罪がやりたい放題の状態にすることもまた、目的の一つなのかも知れない。現に、そうした地域で麻薬の栽培や幼児売買、臓器売買が大っぴらに行われていて、巨額のお金になっているのだ。

昨年2月にロシアがウクライナの内戦に軍事介入したとき、ウクライナの紛争地域を隠れ蓑にして行われている幼児売買や臓器売買の拠点を捜査して、誘拐された子供たちを救出することも、また目的の一つだったと言われている。それについては、あまり表立っては言われていなかったけれど、今年に入ってから、ロシア外務省も公にウクライナと西側諸国を非難するようになった。ロシアやウクライナの子供たちが誘拐されてウクライナに連れてこられ、そこからヨーロッパに売られていっているというのだ。

長い間隠されてきた幼児売買の闇も、ついにここまで表に出てきたのだ。これがまさに、グローバル金融資本家たちの世界の一極支配の根幹になっていたのだから、これが表に出てくるということは、この支配構造も、ついにここまで崩れたということなのだろう。この映画がアメリカ独立記念日に公開されたということは、これまで長いこと事実上グローバリストに属国支配されていたアメリカも、ついに本当に独立を宣言したということなのかもしれない。


幼児売買捜査官ティム・バラードを演じるジム・カヴィーゼル


ティム・バラードを演じたジム・カヴィーゼルが、二年前に行われた映画の公開を支援するイベントで、幼児売買について語っている動画。ティム・バラードの動画メッセージも出てきます。

https://youtu.be/tTqXiJzojCY

***

ティム・バラード自身が出てくる17分ほどのドキュメンタリー。日本語字幕付きです。

https://rumble.com/v2uj07m-172207570.html?fbclid=IwAR3rhNah11D3Vn7TzaiVjoo16IBCOsnJ4uuTBhglpGBPKlleFcMJ3vEATrs


海賊版フルムービー。テレグラムから見られます。

この映画の配給をやっているエンジェル・スタジオは、Pay it forward というシステムを提供していて、この映画を多くの人に見てもらえるよう、お金がない人に無料チケットをプレゼントできるようになっています。

以下のサイトから、サウンド・オブ・フリーダムのPay it forward を選んで、何人分かをクリックすると、ペイパルなどでその金額を支払います。タダで見たい人が、その無料チケットをもらって、映画を見ることができる仕組みです。

私は7人分105ドルのPay it forward買って、ペイパルで支払いました。制作会社にお金が入れば、それだけ日本語版が早く出たりすることになるんじゃないかと思うし、この映画のために何かしたいという人は、ぜひどうぞ。

↓↓


https://www.angel.com/watch/sound-of-freedom

***



これは日本語字幕付きのトレイラー。

https://www.youtube.com/watch?v=zJDM06Ifyio


2023年7月16日


【性転換を勧める国と禁止する国】



7月4日のアメリカ独立記念日に、幼児売買の実態を描いた映画「サウンド・オブ・フリーダム」がアメリカで劇場公開になったあとで、7月14日のフランス革命記念日には、ロシアで性転換を禁止する法律が満場一致で可決されたそうだ。

ダヴォスの世界経済フォーラムから政治家が送り込まれている西側諸国では、ジェンダーの自由化を政治的に進める方向に誘導されていっていて、ミス・コンテストでトランスジェンダーの男性がミスに選ばれたりもしていた。何を美しいと考えるかは、個人の好みで大きく違うわけなので、誰がミスに選ばれるかは、客観的に誰が一番美しいのかということよりも、その社会の女性たちに、どういう女性を目指させたいのかということで決まっているのだと思う。どういう服装、どういう体型、どういう振る舞いがかっこいいと思わせたいのかということをだ。そうしたことは、服飾品や化粧品、美容術などの商売と結びついているし、人々をそうしたことでお金に依存させる目的というのも、もちろんあると思う。

それが今、トランスジェンダーを持ち上げて、多くの男性たちに女性になることを憧れさせようということらしい。アメリカでは、このようにしてトランスジェンダーが持ち上げられるようになった結果、この10年で性転換手術は50倍にも増えたそうだ。それは、それだけのお金が動いたことも意味するし、生殖能力を失った人がそれだけ増えたということでもある。

その一方で、ロシアは性転換手術を禁止する法律案が5月に出され、7月14日に議会で満場一致で可決した。ロシアでは法案が満場一致で可決されるなどということは、ほとんどないのだそうだけれど、この法律に関しては、文句なく満場一致だったというのだ。

西側諸国の主流メディアは、ロシアが時代に逆行しているというので、一斉に批判していた。ロシアで禁止されることになったのは、ジェンダーを変えたいという理由での医学的な性転換術だけで、男性が女装して男性と恋愛するとかは何の規制もないのだけれど、ロシアではすべて制限されるかのような書き方をして、ジェンダーの自由を侵害するとか、マイノリティに対する差別だとか書いていた。

マイノリティに対する差別をなくすべきだというのは、いかにももっともなように聞こえるのだけれど、それはカナダで貧困のために自殺する人が増えたときに、自殺志願者を支援するために自殺幇助に補助金を出すことになったという話と似ているように思える。持って生まれた性に満足できない人々が増えたことは、まず社会問題として扱うべきことであって、政府として自由を保証するべきだというのは違うんじゃないかと私は思うのだ。

もちろん、性転換術には、健康上の問題もある。生殖器を切り取ってしまったら、ホルモンバランスが崩れるわけなので、そのあとの健康状態がどう悪化するかわからない。そうしたことについては言わないで、性転換の自由ばかり言うのは、どうもおかしな話なのだ。しかも西側諸国では、子供たちに性転換の可能性があることを知らせて、選ばせるべきだとさえ言っている。それは、子供が作れない身体になる人を増やして、しかもその人たちを生涯医療に依存させようとしているようでもある。

ロシアが医学的な性転換術を禁止したのは、子供たちをこの危険から守ろうということなのだと思う。自分の性に満足できない子供たちが増えているなら、どの性でも自由に生きられるような社会にすることを考えるべきだと思うし、実際ロシアはそういう社会を作ってきたようだ。2000年に入ってからのこの20年ほどで、ロシアの自殺率は大きく減り続けている。その逆に、アメリカではこの20年で自殺率は増加し続けている。それは、プーチン政権になってから、ロシアでは暮らしやすい社会を作ることに努めてきたのに対して、アメリカではお金を回すことばかりを進めてきたからなのだと思う。

ジェンダーとはそもそも、生物学的な性別ではなくて、男性と女性のそれぞれの役割分担としての性別のことを言っている。それぞれの社会によって、これは男の仕事、これは女の仕事、というのが違っていて、男は何をすべきだとか、女は何をすべきではないとか、そういう決まりがある。そのことをジェンダーと言っているのだ。

だから、ジェンダーのあり方は、社会によって違う。社会によって、女性が生きにくい社会、男性が生きにくい社会というのがあるわけだ。女性になりたがる男性が多いとしたら、それはその社会が男性として生きにくいところがあるからなのだろう。それを問題にしないで、性転換をする自由を認めるべきだというのは、どうも倒錯しているようだ。トランスジェンダーが性的に倒錯しているというよりも、社会そのものが倒錯している徴のようだ。

西側諸国は、お金をまわすことにばかり集中して、お金に依存した社会を作り上げてきた。その結果、主としてお金を稼がされる男性としては、生きにくい世の中になっていったのかもしれない。女性たちが、流行の服や化粧品やスタイリストやエステサロンにますますお金がかかるようになった一方で、男たちはそうしたお金を稼ぎ出すことを期待されてきたのだ。グローバル化が進んで、男たちは家業を営む主人ではいられなくなり、多くが大企業の雇われ人になっていった。そんな社会に生まれ育っていたら、自分が女性になって、お洒落を楽しんで生きたいと思う男の子たちが増えても、無理はないように思う。

その一方で、ロシアはプーチン政権下で人々の生活を安定させることに努めてきた。収入は西側諸国よりもずっと少ないけれど、公共料金が安くて、光熱費も安いので、生活にお金がかからず、若い夫婦でも家を買うことができる。そういう社会で男として生きるのは、西側諸国でよりも、よほど楽で、満足感があるものじゃないかと思う。

ロシア大統領プーチンは、西側が目指すジェンダーの自由化について語っていたときに、「ロシアはそうしたことをすでに経験しています」と言っていた。ソ連ができた初期の頃に、伝統的な男の役割、女の役割というのをやめて、男も女も平等に性のない存在のように扱うというのをやっていたというのだ。それで、お父さんお母さんではなくて、「親その1」「親その2」というのもすでにあったのだと。ソ連とは、本当はロシア民衆の社会主義革命によってできた国ではなくて、西側グローバルエリートたちがしかけたカラー革命によって作られたグレートリセットの国だったということが、この頃わかってきた。「ジェンダーの自由化」と言って、今、西側諸国が性のない管理社会へと誘導されている一方で、ロシアはすでにそれを卒業していたということだったらしい。それでロシアは、西側諸国の動きと逆行するかのように、男と女の伝統的なあり方を大事にする方向へ向かっている。しかし、男女の機会均等もロシアではかなり進んでいて、働きたい女性が働ける環境も整っているのだそうだ。それは、ロシアで働いている女性たちの余裕のある生き生きした姿を見れば、それはプロパガンダなどではなくて、実際そうなのだろうと思う。

結局のところ、ジェンダーの自由化によって一番割りを食っているのは、持って生まれた性を生きようとしている女性ではないかと思う。トランスジェンダーの男性が、女子選手として出場することが許可されたために、本当の女性はもともと男性だったトランスジェンダーの「女子選手」に勝ち目がなくなってしまった。プロスポーツの世界が、どこの国も黒人選手で占められているように、女子スポーツがトランスジェンダーに大部分を占められるようになるのも、時間の問題かもしれない。一体何のための女子スポーツなんだかわからない。そして今や、ミス・コンテストも、トランスジェンダーが優先的に選ばれるようになったらしい。さらには、温泉やトイレにもトランスジェンダーが女性として入ってくるのに、苦情を言うことができなくなった。そして、自分が産んだ息子たちに、男として女性を愛するように教えることも、トランスジェンダーに対するマイノリティ差別だということになったのだ。

男が男であり、女が女であり、それぞれのジェンダーを生きることは、それぞれの民族が作り上げてきた生活文化だと言える。そこにこそ、民族の誇りがあり、それを生きることに自分のアイデンティティがある。それを今、ジェンダーのマイノリティ差別だみたいなことで、壊そうとしているのは、民族が自立して生きていくあり方そのものを壊そうとしているように見える。性的なアイデンティティもなくなり、民族としての誇りもなくなったら、お金とディジタルデータだけが管理する世界に容易に移行してしまうだろう。

ジェンダーを自分で決める権利があるとか何とかいう前に、男であること女であることを、社会が押しつけた役割やイメージなどではなくて、持って生まれた生命の力として、まずは生きてみるべきなんじゃないかと思うのだ。そして、それができるような自由な社会を作ることを考えるべきだ。それをしないで、女になりたいという男の子たちの、選択の自由を認めるべきだというのは、人間として生きるというごく基本的なところを、捨ててしまうようなことに思える。


今年のミス・オランダに選ばれたトランスジェンダーのリッキー・コレ


2023年7月18日

*****


【男性性と女性性を取り戻す】



危機とは、忘れられていた価値を思い出す機会でもある。
三年半前に奇妙なパンデミックが始まってから、私たちは免疫システムや自然医療に意識を向けるようになった。医療の闇の構造について、多くの情報が入ってくるようになったし、世界中の専門家たちが、免疫システムと病原ウィルスの関係について、集中して発言するようになった。それで、それまでは普通に西洋医学とつきあっていたのに、それ以来、病院に行くのを一切やめてしまった人も少なくない。20世紀初めに始まった現代医療は、まさに免疫システムについての知識や自然医療を弾圧することで、世界を支配していたということが、パンデミックをきっかけに見えてきてしまったのだ。

ウクライナの紛争は、やはりそれまで人々の目から隠されてきた、ロシアの多極化の方向に、人々の意識を向けることになった。それまでロシアについて何の関心もなかった人たちも、ロシアがいかに西側諸国から誤解されているか、あるいは意図的に虚偽の印象を与えられているかを知ることになった。そして、現実のロシアは言われているような国ではなく、グローバリストに腐敗させられている西側諸国が己の姿を投影しているだけだということもわかっていった。ロシアは、多極的な世界の構造を作ろうとしていて、まさにそのために西側グローバリストから叩かれているということもだ。

そして今、ジェンダーの自由化をグローバリストたちが各国政府に押しつけてくるという事態になって、自然の男性性女性性というものが、危機にさらされていることに気づかされている。

そもそも、ジェンダーの自由化などということが問題になる以前に、ジェンダーというものが、自然の男性性女性性から人々を切り離すために使われてきたということがある。ジェンダーというものは、生物学的な性差ではなく、社会的にこれが男の仕事、これが女のすること、というような役割分担のことで、それは伝統的な生活の中でバランスを取るようにできていた。かつては家族単位、地域単位で自給自足的な生活が成り立っていたわけなので、男も女もその中で共同で働いていて、それぞれに役割分担があったのだ。田畑は男が仕切って、台所は女がまかなう、というようにだ。だから、どちらが優位だとかいうこともなかった。それぞれに仕切る分野が違って、相手の領域には口を出さない、ということがあっただけだ。

ところが、これが資本主義経済になると、家族単位で自立してまかなっていた生活が消えていき、人々は労働者として、企業の言うなりに仕事をして、賃金をもらって生活するように変わっていった。そこで、ジェンダーというものが、労働者を都合よく働かせるためのものに組み換えられていったのだ。男の役割は、お金を稼いでくることであり、女の役割は、そのお金で物を買って、衣食住をまかなうことだということになった。男らしさとか女らしさというものが、グローバリストたちによって、新たに作り出されていったのだ。

ごく簡単に言ってしまえば、つまりは女らしさとは、物を消費して、男にお金を稼がせる能力であり、男らしさとは、お金を稼いで、女に消費させる能力だということになる。それで、どういう服装、どういうふるまい、どういう言葉使いが男らしいとか女らしいとかいうことを、テレビドラマだとか女性雑誌、男性雑誌みたいなもので、絶えず吹き込まれることになったのだ。

ジェンダーというものが、自然な日常生活の伝統の中でできていったものから、人工的に作られたものに変わっていったのだ。だから、その頃から、与えられたジェンダーに自分がしっくりとはまらないという感覚を持つ人が増えていったのも無理はない。それはむしろ、健康的な反応だと言えるかもしれないくらいだ。

女性らしくあることが、自己主張せずに従うことと同義のようになっていた頃は、女性解放運動がさかんになって、男のようにふるまう女性たちが増えた。そして、男らしくあることが、会社に従ってお金を稼ぐことと同義になったとき、男をやめて女になろうとする男性が増えていったのも、無理はない。

だけど、結局のところ、作られたジェンダーのどちらかを行ったり来たりしていても、本当の解決にはならない。重要なのは、このジェンダーというものが、実は支配者に都合よく作られたものにすぎないということに気づいて、本当の女性性、本当の男性性を取り戻すことだと思う。

私たちは、女は女性的であるべきで、男は男性的であるべきだと思っているけれど、実のところ、男にも女にも男性性と女性性の両方がある。そして、この2つのバランスが取れているときに、本当の女性性、本当の男性性が生きられるのだ。伝統的なジェンダーが機能していたのは、実はその点にあると私は思う。

保守的な社会では、女が虐げられていたとか、そういうことがよく言われるのだけれど、しかし、そういう社会ではジェンダーを拒否する人はほとんどいない。そのことから考えるに、虐げられていたとかいうのも、グローバル化を進めたい人たちが作り出した話なのかもしれない。実際、自由で平等であるはずの資本主義経済の国の方が、ジェンダーに違和感を感じて、ジェンダーから外れていこうとする人が多いのだ。それは、資本主義経済の国では、ジェンダーというものが自然に調和するようなものではないからなのだと思う。

私自身、自分が女性であることを受け入れられるようになったのは、40代も半ばをすぎてからのことだった。子供の頃から、外で自由に遊びたいのに、女の子だからということで禁じられてきた。私にとっては女性であることは、木登りとか冒険旅行がさせてもらえないということを意味していた。だから、男に生まれたかったとずっと思っていて、思春期の頃まで男の子みたいなかっこうをして、男の子みたいな言葉使いをしていた。そのあとも、女の友達とは感覚が合わなくて、男の友達とばかりつきあっていた。

私は40代半ばになって、とつぜん意識の領域が開けるという体験をしたのだけれど、そのときからそれが変わっていった。意識の領域では、女性性男性性というものは、男女ともに存在しているし、社会が押しつけてくるジェンダーみたいな窮屈なものではない。女性性とは、大地のような海のような大きさ広さを持ったものだし、男性性とは太陽のような嵐のような力と威厳とを持ったものだ。それは、意識の中で大天使ガブリエルと大天使ミカエルという姿で出てきていた。その二人の存在と関わることで、私は男性性と女性性の本当の大きさを知っていった。

陶芸で人物像を作ることはその前からやっていたのだけれど、そのとき初めて女性トルソを製作するようになった。それまで私が作っていた人体は、どれも中性的で頭が大きかった。それは、私自身の意識を投影していたわけだ。性がなく、頭だけが大きい存在。ガブリエルとして現れていた存在に出会って、その姿を形にしようとしたときに、私は頭のない女性トルソをこしらえた。頭ではなく肚で思考する存在。子宮の中に全世界を含み込んで、浄化し、産み出す存在。それが私にとってのガブリエルであり、女性性そのものだった。そして、その像を作りながら、私は初めて、自分自身の女性の身体を受け入れ、自分の中の女性性を知ったのだ。

そのとき、それまで押しつけられてきた女性性とは、まったく支配者に都合よく作られた、薄っぺらいものでしかなかったことに気がついた。だから、そんなものをその歳まで受け入れられなかったとしても、引け目に感じることはまったくなかったのだと思った。いや、こんな社会に生きながら、その歳で納得できる女性性を発見したこと自体が、貴重なことでさえあると思った。

女性性といったら、性的な存在としての女性性や母性としての女性性ばかりが強調されるのだけれど、霊的な存在としての女性性がそこには欠けている。日本でもヨーロッパでも、古代には、女性には自然に霊的な意識と繋がることができる能力があることが重要視されていて、縄文時代には神女のような女性祭祀が霊的な力で共同体を守る役割を果たしていた。そうした女性性が出てこないと、女性性は男性性とバランスが取れなくなるのだ。産業社会の中で生産し、お金を動かす能力ばかりが重視される世の中になって、女性性とは性の対象であり、母性であり、生産する男に奉仕するだけの存在になってしまったわけだ。

そしてまた、生産し、お金を稼ぐ能力としての男性性では、やはり重要なものが抜け落ちている。自立した生活を築いていく力、現実を切り拓いていく力こそは、男性性の力で最も重要なものだ。この地上で、己の人生を築いていく力だ。そして、男女ともに、女性性と男性性の両方を生きてこそ、本当の意味で女性は女性らしく、男性は男性らしくあることができる。

ジェンダーの自由化とは、まさにそうした男性性も女性性も抜け落ちたところで語られている。服装だとか、身体の形だとか、ごく表面的なことでしかない。本当の男性性、本当の女性性を解放するならば、そもそもジェンダーの自由化などということを求める必要もないことがわかってしまう。そうした男性性や女性性は、男にも女にも両方が備わっているもので、それを生きるのに、生物学的な身体を変える必要などまったくないからだ。


当時製作していた陶芸作品「ガブリエラ」


当時製作していた陶芸作品「ガブリエラ」

2023年7月21日

***

【崩壊のステージ】



アメリカ政府は、轟々の非難を浴びながら、ウクライナにクラスター弾を送ってしまったけれど、それでこの頃、ウクライナではクラスター弾で民間人が死んでいるという情報が入ってきている。クラスター弾は、広範囲に小型の爆弾を散らしてしまうので、民間人が巻き添えになる確率が高い上、大半がすぐに爆発しないので、紛争後も数キロに渡って危険地帯として残ってしまう。去年の夏に、ロシア軍がドンバスでそういう爆弾を使ったと報道していたときは、これは事実ではなく、実際にはウクライナ軍が使っていたのだけれど、ジェノサイドだとか残虐だとか大騒ぎしていた。だけど、アメリカが送るとなったら、何の問題もないかのように言っている。西側諸国の「ルールに基づいた世界秩序」の典型的な例だ。ルールなるものが、その都度でコロコロ変わるのだ。

クラスター弾は、これまでもNATOがいろいろなところで使ってきて問題になっているけれど、しかし、自分の国でクラスター弾を使った国は、ウクライナが初めてだろう。その事実を見ただけでも、ウクライナ政府がウクライナの国民のための政府ではないことははっきりとわかる。ウクライナ政府は、2014年のマイダン革命で、アメリカから送り込まれた工作員たちがクーデターを起こして乗っ取った政府なのだ。それ以来、ウクライナ政府はウクライナという国を利用して、ありとある金儲けをしている。

6月にウクライナ軍が反転攻勢を始めてから、ウクライナ軍の戦死者の数がものすごいことになっている。毎日のように一千人近いウクライナ兵が死亡している。ウクライナのための政府だったら、こんな事態になって、まだ領土にこだわって戦争を続けるなど、あり得ない。そもそもその領土というのも、住民が望んでウクライナからすでに独立しているのに、だ。

それでこの頃、ウクライナの各地から、男たちが拉致されるように徴兵されている動画がSNSに流れてくる。街を歩いている人を捕まえて、力づくで車に乗せて前線へ送り込んでいるというのだ。このような徴兵は、半年以上も前から行われていた。一時期は10代の男の子たちがそうやって動員されていたというのだけれど、この頃は年上の男性たちが狙われているらしい。

そんな風にして、無理やり連れてきて、ろくな訓練もなしに前線に送っているのだから、戦死者の数がすごいことになるのも無理はない。あるウクライナ兵は、訓練といってフランスに一ヶ月送られたけれど、そこではただロシア人を殺せという洗脳教育みたいなことをやっただけで、射撃の練習さえ2回しかやらなかったと言っていた。負傷者が出たときの応急処置の仕方さえ習っていない。それで、前線に出されてみたら、地雷がしかけてあるところを進撃しろと言われたので、見殺しにされると気がついて、ロシア軍に投降したと言っていた。

今に始まったことではないけれど、この頃ウクライナ政府がやっていることが、もうあまりに狂っている。西側のメディアは、これまではすべてロシアがやっているように言ってきたけれど、この頃ではもうどうでもよくなったのか、クリミア橋の爆撃もクラスター弾も、堂々とウクライナ軍がやったと言うようになった。市民虐殺もジェノサイドも国際法違反も、もう今さら隠す気もないのか、どうせもう人々も思考が麻痺してしまっているから、矛盾に気づきもしないと思っているのか、何なのだろう?

ナチス・ドイツは、ユダヤ人を差別して虐殺したけれど、ウクライナ政府はロシア人を差別して虐殺している。第二次世界大戦のときは、ナチス・ドイツだけがやっていたけれど、今はウクライナだけではなく、西側諸国でロシア人が差別されて、財産没収されたり、銀行口座を閉められたりしている。もはやナチスよりもひどい。ナチスだって自分の国に爆弾落としたりしなかったけれど、ウクライナはそれをやっているのだ。

もともとほとんど同じ民族なのに、ロシアのものはすべていけないというので、ウクライナではロシア正教まで禁止になった。それもすでにロシア正教ではなくウクライナ正教と名前を変えていたのだけれど、キエフの修道院が接収されて、聖職者たちは逮捕された。ウクライナでは、野党はもう前から禁止されているし、反政府発言も禁止されていて、見つかったら刑務所送りだ。しかも、ゼレンスキーは、戦争が終わるまで選挙はやらないと言っているらしい。これも、ナチスドイツでヒトラーがやっていたことだ。ウクライナはすでにナチス以上の独裁政権になっている。

崩壊のステージに入ると、こんな風になるものなのかもしれない。もはや適当なところでやめて、調和を取り戻そうなどという方向には進まないで、とことん崩れるまで、自滅的な方向へと突き進むのだ。そうやって、古い世界が自滅へと加速度的に向かっていく間に、古い支配構造にもう飽き飽きしている人たちが、やはり加速度的に古い世界から離脱していっている。

ロシアはウクライナへの軍事介入を始めたときから、着々と世界中の国々と繋がって、新しいネットワークを作っていっている。これまで西側のグローバル金融資本家は、危機を利用して世界を支配していた。それがつまり、市民革命以降の世界に戦争が絶えなかった理由なのだ。これは実のところ、民族間の闘争でもなければ、民主化のための戦いでもない。戦争が起これば金融が変動するので、それを利用して、お金儲けをしていただけなのだ。しかし今、そのやり方に飽き飽きした国々が提携して、もはやそんな金儲けができないシステムに変えていっている。そしてそのネットワークは、世界的な規模で大きくなっている。

それまで西側のシステムは、民主主義に基づいているからフェアで信頼できるということになっていた。だからこそ、世界中を支配することになったわけなのだけれど、これが実は民主的でもなければフェアでもないということが、はっきりしてしまったのだ。西側諸国はロシアのドルやユーロの資産を凍結して、奪い取ってしまった。それを見て、西側以外の世界中の国々は、ドルやユーロから一刻も早く離脱しようとしている。国連機関も、メディアも司法も、もうあまりに矛盾だらけなので、西側以外の国では信頼されていない。ロシアの国際経済フォーラムは、ダヴォスの世界経済フォーラムをすでに追い越したし、世界の大多数の国は、G7よりもBRICSサミットに注目している。

そうした中で、ロスチャイルド家の跡取りのアレキサンダー・ロスチャイルドが、ロシアのいたずら電話チーム、ヴォヴァン&レクサスに引っかかって、ゼレンスキーと話していると思って話した会話が録音され公開されてしまったのは、西側支配がいよいよ崩壊している徴のようにも思える。ロスチャイルド家といったら、フランス革命の頃から、戦争を起こしては金融で大儲けして、政府をお金で操っていた一族だ。その跡取りのアレキサンダー・ロスチャイルドは、表にはほとんど出てこない人だというのだけれど、それがゼレンスキーと秘密の話をしていると思って、いわば秘密の話を表に出してしまったのだ。ロスチャイルド家は、ウクライナ紛争が始まったときにも、ウクライナの債権を買い叩いて、大儲けしていた。それで今度は、ウクライナの復興で大儲けしようとして、復興に資金を出す用意があるという話をしていたのを、録音されてしまった。

パンデミックで、西側の「慈善家」たちがどのようにして大儲けしたのかを、私たちは見てきたから、ロスチャイルド家がウクライナの復興に援助するとはどういう意味なのかは、もうわかる。復興援助といっていくらかのお金を出し、その10倍ものお金を各国の政府から集めて、自分が資金を出している企業に法外な金額で請け負わせるのだ。そうやって税金から巨額のお金を流し込むのが、あの「慈善家」たちのやり方だ。

ロスチャイルド家の跡取りが、ゼレンスキー相手にそんな商売をしようとしているのを、秘密の電話の録音で公開されてしまったのは、この世界をこれまで支配してきた闇の力も、白日の元にさらされて力を失うことの象徴のように思える。ヴォヴァン&レクサスはそれだけではなく、アメリカで影の力を支配していると言われているヘンリー・キッシンジャーも、この頃引っかけてしまった。相手がゼレンスキーだと思って、クリミアを征服しようとするのは現実的ではないし、戦闘が激化することになるだけだと言っていたそうだ。

どちらの会話も、もはやNATO諸国はロシアに勝ち目はないということを示しているようだ。しかし、彼らはそれでもやり方を変えることはできず、破滅に向かって進んでいくしかないらしい。ここのところ毎日、西側諸国とウクライナの狂気じみたふるまいがSNSに流れてくる。それはまるで、もう堕ちるところまで堕ちて、悪魔主義者としての己の真実の姿を表にさらけ出してしまったかのようだ。

もうすでに雪崩のように崩壊し始めているのなら、何もしなくても、そのまま放っておいたら、自分から滅びていってしまうのかもしれない。ロシアはキエフを攻略して、戦争を終わりにしようとはせず、悪魔主義者たちが力尽きるまで、防衛に徹しているようだ。相手がすでに自滅の道を進んでいるのであれば、それが一番効果的な方法なのかもしれない。今この状態で、世界を何とかしようとしていたら、まったく絶望的に思えるくらいの狂いようなのだけれど、何とかしようとなどしないで、ただ嵐がすぎるのを待つように、持ちこたえていればいいということなのかもしれない。


ロシアのいたずら電話チーム、ヴォヴァン&レクサス(左)といたずら電話に引っかかったアレキサンダー・ロスチャイルド(アレクサンドル・ド・ロシルト)

***

ヴォヴァン&レクサスのアレクサンダー・ロスチャイルドとのいたずら電話の会話。英語版こちらで聞けます。フランスの石油業者が、スマホからアレクサンダー・ロスチャイルドに電話して、繋いでいます。

ゼレンスキーのふりをして、「ロシアへの経済制裁で、損害がありましたか?」「ところで、ロックフェラーとの関係はどうなんですか?」「世界政府は本当にあるんですか?」と突っ込んでいます。最後の方の質問では、ちょっと本物のゼレンスキーなのか疑い始めた様子で、ヴォヴァン&レクサスの方からうまいこと電話を終わりにしています。

アレクサンダー・ロスチャイルドの返答によると、ロスチャイルド家はロックフェラーとは競争相手であって、関係はないそうで、また世界政府というのは誇張で、G7以上のものではないということです。

https://rumble.com/v315hpu-full-prank-with-alexandre-de-rothschild.html?fbclid=IwAR2m3hVO9rfysdhkONBKCNhs0xcH-kIOrWDDjp_NK9hG-P2CxD5b_hk67Fg

2023年7月23日

****

【穀物戦争】



7月17日に期限が切れる穀物合意を、ロシアが延長しなかったというので、西側諸国は一斉にロシアを非難しているらしい。ロシアが穀物合意を延長しないと、ウクライナの穀物が届かないので、アフリカの貧しい人々が飢えるというのだ。いつものことではあるけれど、これもよく情報を見てみたら、まるきり逆の話だった。西側諸国は、アフリカの人々が飢えることなど、まったくどうでもよかったのだ。穀物合意は、それとはぜんぜん別な目的があった。

穀物合意というのは、ウクライナが穀物をオデッサの港から、ロシアの領海である黒海を通って輸出するのを、人道援助のためだからということで、航路を通る船の安全をロシアが保障するという合意だった。ウクライナの穀物は、アフリカの最貧国に送られるので、貧しい国の人々を飢餓から救うためだという話だった。それで黒海の航路が、人道回廊のようなものとして特別に扱われるということになったのだ。

ところで、この合意には、ロシアの穀物と肥料をアフリカに送るのを妨げている経済制裁を西側諸国が解除するということも取り決められていた。ロシアの銀行が経済制裁の対象となっていたために、ロシアの穀物を買うのに支払いができない状態だった。しかも、ロシアの穀物を積んだ船は、ヨーロッパの港で止められてしまい、アフリカへ行くことができなくなっていた。プーチン大統領は、銀行封鎖のために支払いができないのなら、最貧国に無料で提供すると言ったのだけれど、貨物船に保険がかけられないので、やはりアフリカに航行することができなかった。ロシア政府は、ロシアの穀物がアフリカに届くように、穀物合意で決めた通りに経済制裁を解除して欲しいと再三にわたって要求してきたけれど、それは一度も守られなかった。

ロシアはそれでも、一年間も穀物合意を延長し続け、ウクライナの貨物船が黒海を通るのを許可してきたのだ。一年経ったところで、ロシアはこれ以上、西側諸国が誠意を見せるのを待つのをやめ、合意を更新しなかった。それで、7月20日以降、オデッサから黒海を通る船は、戦争に関わる輸送とみなして攻撃する権利がロシアにはある、と宣言した。

ウクライナの穀倉地帯などというから、ウクライナの穀物が世界の食料生産を担っているように聞こえるけれど、実はロシアの方がアフリカに送っている穀物の量はずっと多かった。アフリカの農業は、ロシアの肥料にも頼っていたから、肥料が届かないとなると、食糧危機が起こる危険があるとも言われていた。ところが、西側諸国にとっては、そんなことはどうでもよかったのだ。穀物合意がアフリカの飢餓を救うためだなどというのは、まったくのごまかしにすぎなかったのが、このことでもよくわかる。

ともかくも、一年間ロシアはウクライナの穀物を積んだ船が、オデッサから黒海を通っていくのを、許可していた。ところで、この船はほとんどがアフリカなどへは行かず、東ヨーロッパの市場へ行っていたというのだ。東欧諸国は、ウクライナの安い穀物を大量に引き受けさせられたために、穀物の値段が下がって、国内の農家が大損害を受けた。それで、各国で農家の抗議活動が起こっていたくらいだった。

それでも、ウクライナの農家の人々を支援するためだからというようなことで、市場に引き受けさせられていたわけなのだ。ところで、このウクライナの農地というのも、実はすでにほとんどがアメリカのグローバル企業に買い取られていた。働いているのはウクライナの農家だけれども、土地も穀物も、カーギルやデュポン、モンサントなどアメリカのコンツェルンの所有だったのだ。ウクライナから輸出された穀物のうち、アフリカの最貧国に送られたのは、ほんのもうしわけほどの3%以下にすぎず、それ以外はほとんどがヨーロッパで売られていた。

ロシアは経済制裁をかけられ続けたままで、それでも2022年には、1150万トンの穀物をアフリカに送ったそうだ。ウクライナからアフリカに送られた穀物は、これに対してわずかに100万トン以下にすぎず、それ以外はすべてヨーロッパなど食糧難の問題のない豊かな国に売られたり、そこで加工されて、さらに付加価値をつけて売られていたことがわかった。

この事実を見るならば、穀物合意というのが、そもそもアフリカの飢餓を救うためでもなければ、ウクライナの農民を助けるものでもなかったことがわかる。アメリカのグローバル企業が、利益を上げるためにすぎなかったのだ。

ところで、この穀物合意には、まだ裏があった。穀物合意が交わされてから、オデッサの港では、武器庫が大々的に拡充されていたというのだ。穀物を運ぶためということで黒海の航路を確保しておいて、実は武器をウクライナに運んでいたということがわかってきた。

7月20日から黒海の人道回廊が無効になったあとで、ロシア軍がオデッサの軍事施設を爆撃しているという情報が入ってきていた。クリミア橋の爆撃に対する報復ということだったのだけれど、オデッサには戦闘用のドローンの工場などがあって、そうした施設が空爆されているというのだ。となると、穀物合意が延長されなかったということには、実はまったく別な意味があったことが見えてくる。西側が一斉にロシアを非難していたのは、ウクライナの穀物のためなどではなかったのかもしれない。オデッサから武器やその他の軍事物資を密かに送り込んでいたからだったのかもしれない。

人道援助のためにという口実は、最もドス黒い悪事を隠すためによく使われる。震災で孤児になった子供たちを助けるためにと、子供たちを連れて行った慈善事業の組織が、そのまま子供たちを人身売買に売り払っていたということがあった。戦闘地域の負傷者の救助といって、ケガ人を運び出して臓器を売っていたというおぞましい話もある。ソ連崩壊後に西側資本に腐敗させられ、経済崩壊していたウクライナは、幼児売買や臓器売買のセンターのようになっていたし、今やウクライナは、どんな悪事でもいくらでもできるような無法地帯になっているらしい。それを考えれば、一体何がすべてオデッサを通って送られていたかわからない。

穀物合意の期限が切れたことで、ロシアはオデッサの港を攻撃することが可能になったわけなのだ。一年間も、穀物の輸送のためだからということで、ロシアは領海を通って武器がオデッサに送られていくのを、知っていながら見ていたのだろうか? これでもう海路で武器が送れないということになると、ウクライナの状況は大きく変わるのかもしれない。

ロシアが穀物合意を延長しなかったことで、西側諸国は、ロシアが食糧難を使って脅しているとか、アフリカの飢餓に責任があるとか、ヨーロッパでの食料品の値上がりに責任があるとか、ありとあることでロシアを非難しているのだけれど、この非難のすべてが、実は西側グローバリストたち自身が、故意にやっていたことだったわけだ。3年半前に始まったパンデミックのときからずっとそうだったけれど、非難している当の人物が、実は非難しているまさにそのことをやっているというのは、常套手段のようだ。

攻撃は最大の防御というから、罪もない他人に自分がやったことの罪の押しつけて、非難轟々浴びせ続けるのが、罪を隠すのに一番効果的なのかもしれない。そのときに一番標的になるのは、自分の罪を暴く可能性がある人物だ。こういうことは、自分が見えなくなって、記憶や現実認識がおかしくなっている人が、本当にそう思い込んでしまうこともある。しかし、それは精神錯乱と言えるような状態だ。西側の政府やメディアが一斉に何かを非難しているとき、自分たちの罪を隠すためにわざとやっているのか、あるいは罪の意識のために認識がおかしくなっているのか、一体どっちなのかと思う。いずれにしても、ヒステリックに非難を浴びせている人がいたら、その当人がまさにその通りのことをやっている張本人かもしれないということは、まず疑った方がいいのかもしれない。


ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーの記事「穀物合意はどうなるのか?」。ドイツ語ですが。

https://www.anti-spiegel.ru/2023/was-wird-aus-dem-getreideabkommen/?fbclid=IwAR1D65kVTqkJZZtzpcf5HWOlCcN35ejv7IvSuhj6g-C6vlBOfUHBLkUXBIw

2023年7月24日


***

【BRICSの条件】



フランス大統領のマクロンは、8月に南アフリカで行われるBRICSサミットに参加を希望していたけれど、結局、招待されないことになったそうだ。BRICSサミットには、アフリカのすべての国が招待されていて、全部で70カ国に招待状が送られたらしい。しかし、フランスも西側諸国のどの国も招待されなかった。

BRICSは、どの国とも交流する用意があると言っている。別に西側諸国に対立するブロックを作ろうとしているわけではない。ただ、BRICSは国際法を基にしてフェアな国際関係を築こうとしているので、国際法を破っている国は参加して欲しくない、ということだった。

フランスや西側諸国がどんな国際法を破っているのかというと、一方的な経済制裁だ。このことはほとんど知られていないけれど、国際法では一方的な経済制裁は禁じられている。ある国の政府が、自分の思ったようにしないからと言って、経済制裁をかけるのは、内政干渉とも言える。それに、それで貧困になって苦しむのは庶民なのだ。これは、戦争で民間人を攻撃するのと同じことだ。国際法では、戦争が起きた場合にも、戦闘で民間人を巻き添えにすることは禁じている。民間のインフラを破壊することも、民間人が苦しむような経済制裁をかけることも禁じている。

ところが西側諸国では、経済制裁は平和的な紛争解決の手段であると考えられていて、国際法違反であることなど、誰も言いはしない。それで、経済制裁の問題が問われることもないのだ。

実際、西側諸国は経済制裁によって、世界を思うように支配してきた。経済制裁をかけられたら、経済が崩壊して、貧困になる。貧困になれば、社会が不安定になり、治安も悪くなる。そこでまた、西側の国際NGOが、民主化のためだとか援助だとか言って、反政府派に資金を出したりするのだ。そうやってクーデターを起こされて、政権交替させられて、西側に都合のいい政治家が据えられたりする。これを西側は、民主化運動と呼んでいる。

つまり、経済制裁は、西側グローバリストが他の国々を支配するための道具なのだ。こうした経済制裁にさんざん悩まされてきた国々が、BRICSを創設して、国際法に従ってフェアな国際関係を作ろうとしてきた。だから、BRICSに参加する条件は、他の国々に対してフェアな扱いをするかどうかということなのだ。

西側諸国は、これに対して、いつも民主化を基準にしてきた。民主化している国が、サミットなどに参加できる国だ。西側諸国が独裁国だと判断した国は、仲間外れにされ、経済制裁をかけられたりもする。しかし、この民主化というのには、国際法は含まれていないわけなのだ。西側諸国が民主化と言っているのは、西側の資本に市場を開いていることだとか、国際NGOが国のプロジェクトに関わる自由があるとか、グローバル化に積極的であるとかいうことを言っている。そういう国は、西側資本が入り込んで、政府を腐敗させ、公共事業や地下資源などを買い占めてしまうことができる。西側諸国が民主化と称してやってきたことは、まさにそれだった。それにより、他の国を事実上、植民地のようにしてしまうのだ。地下資源や工場や農地などを買い取ってしまい、政府もお金でどうにでもなるようにしてしまう。これは、つまりは植民地化と同じことだ。

第二次世界大戦後に、民族自決権が認められて、植民地が解放され、独立国になることになった。しかしその後、その独立国を民主化と経済の自由競争が必要だと言って、お金で買い占めて、事実上植民地化してしまったのだ。このときに、経済制裁が武器として使われたわけだった。

どうしてマクロンはBRICSサミットに参加したかったのだろう? フランスはかつては世界中に多くの植民地を持つ大帝国だった。第二次世界大戦後に植民地のほとんどが独立することになったのだけれど、フランスは相変わらず支配力をふるっていた。フランスは、アフリカやアラブの国々を、つまるところ植民地のように扱っていたわけなのだ。

しかし、BRICSの国々がアフリカと取引するようになって、状況が少しずつ変わっていった。BRICSの国々は、アフリカを植民地としてではなく、独立国として対等に扱って支援していたので、アフリカの国々が自立する力をつけてきた上に、植民地扱いするフランスから離れていくようになったのだ。マクロンは今年、アフリカの国々を訪問して、気持ちが離れていくアフリカの国々を繋ぎ止めようとしたようなのだけれど、結局フランスの支配力が失われたことを確かめてきたようなものだったらしい。

それで、BRICSサミットに参加することで、アフリカへの支配力を取り戻せると思ったのだろうか? この頃、BRICSの国際的影響力が無視できないとなったからか、BRICSが西側の会議に招待されるようになったようだ。しかし、それもBRICSの国々を何とか西側諸国の要求に従わせようという試みでしかないようだ。BRICS諸国にロシアに対する経済制裁を共にするように要求して、拒否されたりしていた。

これまでは、西側諸国が、民主化とか自由経済とかで他の国々を判断して、従わせていたのに、今やBRICS諸国が、国際法を守るフェアな国かどうかで西側諸国を判断するようになったのだ。植民地の感覚で、他の国々が思い通りになると思っている国、一極支配の概念から離れられない国は、BRICSの会議には招待されない。他の国の内政に干渉せず、対等に扱う国、他の国や組織に操作されたりしていなくて自立している国、たがいに主権を尊重できる国だけが、BRICSの会議に参加することができる。

それが、マクロンが参加を拒否されたことで、はっきりと表に出てしまったようだ。ロシア外相のラブロフが、「一極支配の世界は終わり、多極化の世界が生まれた」と宣言してから、一年以上が経つけれど、世界の多極化がもうここまで進んだということを、このことは示しているようだ。


赤がBRICS諸国。オレンジは加盟を希望している国。


2023年7月25日


***

【多極化世界はすでに生まれている】



7月26日のマヤの新年のときから、まるで世界が生まれ変わったかのような感覚がしていた。今までは、それぞれに必死に戦ってきたのだけれど、それももう必要なくなって、それぞれが自由に生きていける空間ができたかのような、世界がとつぜん大きく開けたかのような気がした。

ちょうどその日に、翌日から開かれるロシア・アフリカ・サミットに出席する代表団が、続々とサンクトペテルブルクに到着していたのは、シンクロという以上のものがあるように思えた。次々と到着する代表団を迎える人々との交流の様子を見ているだけで、歴史が変わるようなできごとが始まっているという気がした。

それは、ニュースでよく見るような、正装して握手を交わす人々の姿にすぎなかったのだけれど、これまでのどの国際会議とも違う雰囲気が感じられたのだ。多極化。つまりはこの言葉に尽きるのだけれど、ここにやってくるアフリカの人々は、どの国も対等に扱われ、尊重されているのだということを、理屈でなく雰囲気で感じた。どういう国で、どういう人が政権を取っているのか、もともとどこの国の植民地だったのか、とかいったこととは関係なく、誰もが人間として尊重され、対等に扱われているということをだ。それを見て、それまでの国際会議では、アフリカの国々は対等に扱われていなかったのだということに、初めて気がついた。

そのあとの2日間、プーチン大統領がいろいろな国の大統領と会談する様子や、会議でスピーチする様子、朝食やディナーでのミーティングの様子がロシアのニュースサイトで流れ続けていた。それを見ていて、アフリカの国々とロシアの間には、深い信頼関係があるのを、はっきりと感じることができた。

西側の国から、このサミットをボイコットしろという圧力がずいぶんかかっていたそうだ。「しかしアフリカは、そんな脅しには揺るがされません。アフリカは多極化の道を選んだのです」と洒落たアフリカの帽子をかぶったナイジェリアの企業家がインタビューで答えていた。ナイジェリアといったら、ちょうどサミットが始まる頃に、軍事クーデターが起こって、大統領官邸が占拠され、大統領が軟禁された国だ。このクーデターとロシア・アフリカ・サミットと何らかの関係があるのかないのかはまだわからないのだけれど、まったくの偶然でもないような気がする。しかしともかく、クーデターが起こっている国からも、このサミットに参加している人たちがいたのだ。

世界が多極化への道を進むのかそうでないのかは、アフリカにかかっているということを、ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーが書いていた。実際、ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めたとき、アメリカは世界中の国に経済制裁を呼びかけ、ロシアを経済的に孤立させようとしたけれど、この呼びかけに応じたのは、NATO諸国とアメリカ側についているオーストラリアやニュージーランド、日本などの国にすぎなかった。アフリカやアラブ、中国、インドなどの国は、これまで通りロシアと貿易を続けていたのだ。そのため、ロシアを弱体化させて乗っ取るつもりだったアメリカの計画は破綻し、結局のところ、経済制裁を行った国々が、経済的に壊滅的な損害をこうむっただけだった。そして、その背景には、アフリカとロシアの間にある深い協力関係と信頼関係があったのだ。そのことを、このサミットははっきりと見せてくれた。

南アフリカからの代表者として参加していたネルソン・マンデラの孫は、ロシアはアパルトヘイトに対する抗議活動も支援してくれていた、と言っていた。西側諸国は自分たちのやり方を押しつけてくるだけだけれど、ロシアはアフリカのあり方を尊重し、理解しようとしてくれたのだと。アフリカの問題には、西側が解決法を押しつけてくるべきではなく、アフリカにはアフリカの答えがあるのだ、それが重要なことだと語っていた。

アフリカは、19世紀までイギリスとフランスが植民地争いをしていて、大英帝国とフランス帝国が、援助とか近代化とかきれいなことを言いながら、実のところ土地と労働力とを搾取していた。その後、アフリカは表向きには独立国になったけれど、イギリスやフランス、アメリカなどの西側諸国は、アフリカをいかに自国の経済のために利用するかということしか考えていなかったと言っていい。事実、アフリカは独立国になったあとでも、世界で最も貧しい国々であり続けていた。それは、西側諸国が形を変えて、あいかわらず植民地支配を続けてきたからに他ならなかった。

ところでロシアは、アフリカがそうした植民地支配から自立できるように、支援し続けてきたのだ。プーチン大統領は、就任当初から、多極化が最も確実な安全保障だということを言っていた。事実、第二次世界大戦後に起こったほとんどすべての戦争は、アメリカとイギリスのグローバル金融資本家たちが、形を変えた植民地支配のために起こしていたものだった。そうしたことを、私たちはここ数年で知るようになったわけだけれど、冷戦という形で西側諸国に敵国扱いされてきたロシアは、そうした背景をずっと見てきていたのだろう。

ソ連崩壊後、エリツィンの時代には、ロシアは西側諸国に腐敗させられて、何もかも売り飛ばされ、経済が破綻してボロボロの状態だった。プーチン政権は、腐敗を一掃することで、その状態からロシアの経済を建て直したのだ。西側諸国は、ロシアを再び腐敗させようとして、ロシアのまわりの国々でカラー革命を起こして、反ロシア派の政権に入れ換えて、NATOに加盟させたり、紛争を起こしたり、言いがかりをつけて経済制裁を加えたりしていた。プーチン政権にとって、ロシア経済を腐敗から守る戦いは、国としての主権を守る戦いと同じだったのだ。つまるところ、軍事的な攻撃などなしに、腐敗という形で、経済も政治も乗っ取られてしまうわけで、それをロシアはソ連崩壊後の10年間でさんざん経験してきた。

だからプーチン政権にとって、同じように西側資本に支配されている国々が自立できるように支援することは、ロシアの主権を守るために重要なことでもあり、また、同じ目に遭っている同胞を助けたいという思いでもあったのだと思う。サンクトペテルブルクのロシア・アフリカ・サミットの代表者たちと語っているプーチン大統領を見ると、相手を同胞として見ているというのが、とてもよくわかる。そこには、西側の政治家たちがこういうときに浮かべる外交的な笑みや表向きのきれいな言葉などはなく、まったく現実的で正直な協力関係だ。折しもロシアが穀物合意から降りたところだったので、そのことについても語っていたけれど、穀物合意でウクライナがアフリカに送った穀物は、わずか3%にすぎなかったということを言ったあとで、ロシアはウクライナからの輸入をカバーできるくらいにアフリカへの穀物輸出を増やすし、その多くを飢餓に貧している国に無料で提供するとも言った。そして、プーチン大統領は、言ったことは実行する。そのことをアフリカの国々は知っている。そこにすでに長年培われてきた信頼関係があるのが感じられる。

そうした信頼関係があったからこそ、アフリカ諸国は、ロシアに経済制裁をかけるようにという西側諸国からの圧力に抵抗して、ロシアとの関係を保ち続けもしたのだ。そして、まさにそのことによって、ロシアを弱体化しようという西側諸国のもくろみは挫折し、ロシアは世界の多極化へのカギを握ることになった。

昨年春に、ロシア外相ラブロフが、「一極支配は崩壊し、多極化の時代が来た」と宣言してから一年以上が経った今、アフリカ諸国はもはやアメリカの顔色をうかがうことなく、堂々と「アフリカは多極化の道を選んだ」と言っている。ロシアの軍事介入が始まった頃は、サウジアラビアがアメリカの要請に従わずに石油産出量を下げ、しかも石油を中国元で売ると言っただけで、世界中の多くの人々は、もうこんなことをしても暗殺されたりしないのかと驚いていた。石油の米ドル取引は、アメリカのグローバル資本家の重要な資金源だったし、それはいかなる手段を使っても死守されていたからだ。それから徐々に、アフリカや中南米の国々が、ウクライナの戦争のことで堂々とロシアを支持し、アメリカを批判するようになっていき、世界全体の中で西側諸国の方が孤立するようになっていった。

これまで西側諸国に植民地支配と同じ扱いを受けてきた国々は、ロシアとともに多極化の道を進むことを選んだのだ。それは、すでに多くの国がBRICSへの加盟を希望していることでもわかるし、サンクトペテルブルクのロシア・アフリカ・サミットにアフリカのほとんどの国が参加し、多くの国から首相や大統領自らが来ていたことでもはっきりわかる。西側諸国が招待した国際会議では、これほど多くの国が首脳レベルの代表者を送ったことはなかったのだ。サミットの2日の間、さまざまなレベルでの経済交流が行われ、何千という契約が交わされたはずだ。それがすべて、米ドルを介さない取引だということを考えただけでも、このサミットが世界全体の構造にどういう変化を起こしたかがわかる。

ロシアのニュースサイトでは、アフリカの参加者たちのインタビューがいくつも出ていたのだけれど、プーチンのTシャツを着て会場に現れて人気者になっていたというギニアの駐ロシア大使が「このTシャツはどんなお金積まれたって売りませんよ!」と言っていたり、アフリカのカラフルな服装をした人が、アフリカの太鼓を叩きながら、ロシアのヒット曲「すべてよくなるさ」を歌ってみせたりしていた。そういうのを見ていて、貧しくて遅れた国というアフリカのイメージが、実は作られたものにすぎなかったというのが、リアルに感じられた。

アフリカの人たちというのは、実に陽気でパワフルだし、表現力にあふれた個性的な人たちで、しかもオープンな人間関係を即座に作ってしまうような人たちなのだと思った。アフリカの人たちが、西側諸国が押しつける基準に従うのをやめて、自由に表現するようになったら、それだけで実に多様なすばらしいパワーにあふれた世界ができるのだろう。そしてそれこそは、多極化の世界なのだ。ただ、たがいのあり方を尊重して、誠実に協力し合おうとするだけで、すばらしく多様な、調和のある関係性ができてしまうのだということを、このことは示しているようだ。


ロシア・アフリカ・サミットにこのTシャツで現れて、すっかり人気者になっていたギニアの駐ロシアの外交官。


2023年7月29日


***

【スポーツの政治化と新しいオリンピック】



7月26日にマヤ暦の新年が明けてから、何だか世界が切り換わったという感覚がしている。世界がというより、次元が切り換わったかのようだ。とつぜん世界が、別の次元で動き出したかのように思えている。

マヤの新年が明けた翌日、サンクトペテルブルクでロシア・アフリカ・サミットが開催されていたのもそれを象徴するようだったのだけれど、その同じ日に、ミラノで行われていたフェンシングのワールドカップで、ウクライナの選手がロシアの選手に試合の後で握手するのを拒否して失格になるというできごとがあったのも、時代の変化を感じさせるできごとだったような気がする。

スポーツ競技では、勝敗がついたあとで、両方の選手が握手して、負けた方は勝った選手に「おめでとう」と言うのが礼儀だ。しかも、フェンシングでは、それは単に礼儀作法ではなくて、規則になっている。勝敗がついただけではまだ試合は終わったとは認められず、最後に握手をして、初めて試合が終わったとみなされるのだそうだ。

ところがその日、ウクライナの選手とロシアの選手が試合をすることになり、ウクライナの選手が勝ったのだけれど、そのあとでロシアの選手が握手するために近づいていくと、ウクライナの選手は、剣を突きつけて、握手を拒み、会場を去ってしまった。握手をするまでは試合は終わりにならないので、ロシアの選手はその場で一時間待っていた。国際フェンシング協会は、規則に従って、握手を拒否したウクライナの選手を失格にした。

ところがその後で、国際オリンピック委員会から圧力がかかったようなのだ。委員長のトーマス・バッハが、失格になったウクライナ選手のオリンピック出場を保証すると発表し、ウクライナ選手の握手拒否を特例として認めるべきだと言った。するとそのあとで、ウクライナ選手を失格にした国際フェンシング協会が、失格の決定を取り下げた。そしてそれだけではなく、試合後の握手を義務づけている規則をやめて、離れたまま剣を突き合わせて挨拶するのでもいいというように規則を変えると発表した。

西側メディアは、この事件について、一斉にウクライナ選手の肩をもっていた。それどころか、単に規則通りに行動しただけなのに、ロシアの選手がまるで悪質な挑発でもしたかのような報道の仕方をしていた。握手をするために手を差し出したのが、相手を侮辱する行為か何かみたいに言って、会場を去らずに待っていたのを、抗議のためにその場に居座ったみたいに報道していた。

スポーツは、国境も民族も関係なく、人と人として競い合い、交流することで、友愛と平和を作るものだという精神が、ともかくもこれまでずっと守られていた。だからこそ、勝っても負けても試合の後には握手して、たがいに健闘を称え合うものだとされていた。フェンシングで、これを規則として決めていたのは、剣を交わすような競技だからこそ、こうした作法が大事に守られていたからなのだと思う。ところが、ウクライナ選手の失格騒ぎをめぐって、国際フェンシング協会は、その伝統をついに捨ててしまったのだ。

ロシアの軍事介入が始まってから、国際スポーツ大会で、ロシアとベラルーシの選手が出場拒否になったりしていた。ベトナム戦争のときもイラク戦争のときも、アメリカの選手が出場拒否されることなどなかったのに、ロシアとなるとまるきり対応が違うのだ。これまでスポーツには国境はないとか政治とは関係がないとか言っていたのも、実はそのときどきの都合で変わるようなものだったらしい。

しかしとにかく、国際フェンシング協会では、ロシアとベラルーシの選手でも、国を代表するのではなく、中立の立場の個人として出場するのならばいいということで出場を許可した。ロシア代表として参加できないのならと、参加を拒否した選手もいるけれど、とにかくこの選手は出場したのだ。ウクライナ選手の方も、ロシア選手が出るのならばと出場を拒否する選手もいたけれど、とにかく出場し、しかもロシア選手と競技をした。そこまでは、両方の選手は政治よりもスポーツを優先したということになる。しかし、試合が終わったところで、最後にロシア選手と握手することについては、ウクライナ側からの圧力が大きかったのかもしれない。どこかから握手しないようにと指示でもあったのか、あるいは反政府主義者と思われるのを恐れたからなのか、あるいは本当にロシア選手に敵対意識を持っていたのか、何なのかはわからない。

実際ウクライナでは、ロシアに味方するような発言をしただけで、反逆者とみなされるようなことになっている。ロシア軍が撤退した地域では、そこの住民は、ロシア軍がいるときに普通に生活していたというだけで、ロシアの協力者とみなされて、処刑されたりしていたのだ。ウクライナでは、ロシア人だというだけで、憎むべきだと公に言われている。そうした状況の中で、ともかくもロシア選手と競技したものの、最後の握手をする代わりに、剣を突きつけたというのも、予想された反応だったと言うべきなのかもしれない。

つまるところ、スポーツは政治と切り離すべきなのに、それが利用されている状況なのだ。若い選手たちにいろんな圧力をかけた上、メディアの報道でもロシアをおとしめる宣伝に使っている。もうこうなると、スポーツも政治的な争いと変わりがなくなって、純粋に楽しめるようなものではなくなってしまう。

来年にはパリでオリンピックが行われるけれど、そのときにはもうフェンシングの試合のあとには、握手する規則はなくなるのだ。近年、オリンピックもどんどん政治的になっている。開会式や閉会式の演出も、あからさまに心理操作術を使っているような、気色悪いものになっているし、純粋にフェアに競技しているのではなくて、裏でお金や権力が動いている。その上、今度はトランスジェンダーの男性も女子選手として出場が認められるのだ。オリンピックを見る人も年々減ってきているようだけれど、これはもう最後の一撃じゃないかという気が私にはする。

ところで、来年6月には、BRICSのオリンピックのようなスポーツ大会が、カザンで開催されるそうだ。ちょうどその記事が、フェンシングのワールドカップで握手拒否事件があった日にテレグラムに出ていた。そこには、「間違いなく、ここ数年で飛び抜けて面白く、正直で、しかも見ごたえのある競技になるだろう。トランスジェンダーも、慢性的に頭がおかしいヨーロッパ人も、アメリカに都合のいい不正な審判も病的なロシア恐怖症もなくて、つまり一言で言うならば、汚いものが何もないんだから」と書いてあった。

先日サンクトペテルブルクで開かれたロシア・アフリカ・サミットの様子からしても、BRICS諸国が本当の意味でたがいに尊重し合い、フェアに振る舞っているのはよくわかる。国際的なスポーツ大会といったら、不正や買収や脅しやら何でもありなのが当たり前みたいになっているけれど、このBRICSのスポーツ大会では、そんなのではない、公正で純粋なスポーツ競技が見られるのかもしれない。

メダル争いばかりのオリンピックにもう飽き飽きしている選手たちは、オリンピックよりもBRICSの大会に出場したがるかもしれない。今、BRICSに加盟を希望している国は、50カ国以上だというのだけれど、この先まだ増えていくだろうし、そうなったら、BRICSの大会がオリンピックに取って代わることになるかもしれない。トランスジェンダーを許可し続けたら、女子選手にはもう勝つチャンスはなくなるだろうし、女子スポーツ選手たちは、もうBRICSの大会に避難するしかなくなるのかもしれない。

スポーツにしてもハリウッド映画にしても、お金と政治が支配するようになると、どれも同じようなつまらないものになってしまう。お金と権力のにおいしかしないというようなものになってしまう。BRICSを中心とした多極化の世界ができてくると、そういうどれもこれも似たりよったりみたいなものではなくて、本当にそれぞれの個性が出るようなものに、自然になっていくのだと思う。つまるところ多極化とは、同じ一つの基準にはめ込むのではなく、それぞれのあり方を尊重するだけだからだ。それは最も自然で、ストレスのかからないあり方なので、自ずとそれぞれの個性が輝き始めることになる。マヤの新年を迎えてから、世界はその方向へ急速に向かっていっているように思える。

フェンシングのワールドカップで、握手する代わりに剣を突きつけるウクライナ選手。


2023年7月30日

***

【アフリカ独立宣言】



サンクトペテルブルクでロシア・アフリカ・サミットが開催されたその日、ニジェールでクーデターが起こって、大統領が軟禁される事態になっていた。ニジェールは、サミットに参加しなかった数少ない国の一つだったのだけれど、このクーデターによって参加が妨害されたわけではなくて、この大統領は、もともとサミットに参加する意図はなかったらしい。しかし、ナイジェリアの企業家はサンクトペテルブルクに来ていて、西側からものすごい妨害が来ていたけれど、アフリカは多極化の道を選んだのだ、とインタビューに答えて言っていた。

このクーデターが、どういう状況で起こったものなのかもはっきりしないうちに、西側諸国はクーデターを非難して、「ただちに大統領を解放するべきだ」と言っていた。サンクトペテルブルクのサミットでも、そのことについて議論されていたらしい。西側諸国が一斉に大統領を擁護しているのに対して、ロシアだけは判断を保留していて、「今、議論が行われている」とだけ言っていた。その反応を見ただけで、軟禁されたニジェール大統領というのが、実は西側諸国が据えた傀儡か、いずれにしても腐敗した人物なのだろうということは、何となく予想がつく。

西側諸国は、大統領が民主的に選挙で選ばれたのだから、それを軍隊がくつがえすとは、民主主義に反すると非難していた。確かに軍事クーデターは民主的な手段だとは言い難いけれど、しかし、「民主的に行われた選挙」なるものが、今日ではアフリカならずアメリカやヨーロッパでも、お金でどうにでも操作されているような状況で、「民主的に選ばれた大統領」というのが本当に正当な表現なのかどうかはわからない。そもそも現フランス大統領のマクロンやアメリカ大統領のバイデンは、「民主的な選挙で選ばれた大統領」なのだろうか?

2年前にミャンマーでクーデターが起こって、大統領のアウン・サンスー・チーが逮捕されたときも、西側諸国は一斉にクーデターを非難していたけれど、実はサンスー・チーは西側の利益に従って動く政治的工作員とでも言うべき存在だったらしい。大統領選挙で大規模な不正が行われて、サンスー・チーが選ばれたあとに、このクーデターが起こって、選挙で選ばれたばかりの大統領が降ろされた。選挙が外国から操作されていたら、これは要するに体のいい政権の乗っ取りなのだ。この場合、軍隊は憲法を遵守して国民のために国を守るために、その政権を停止して、公正な選挙が行われるべく監視する義務がある。つまり、これは「民主的な選挙で選ばれた大統領」を降ろした不当なクーデターではなく、憲法に基づいた民主的な軍事介入だったのだ。

ニジェールのクーデターに、そういう法的な根拠があったのかどうかはわからない。しかし、クーデターのあとで、ニジェールの人々がフランス大使館前の広場に集まって、「フランスは出ていけ!」と叫びながら、ロシアの国旗を掲げていた動画が、SNSで拡散されていた。そのことからして、軟禁されたニジェール大統領というのは、フランスの利益で動いていた人物だったらしいということが見て取れる。ニジェールはもともとフランスの植民地だった国で、独立国になったあとも、フランスが駐留し、フランスはニジェールの地下資源を植民地並みの安い値段で手に入れていた。つまり、独立国になったとは言え、事実上はフランスの植民地であり続けたのだ。その状態を保つために、フランスの思い通りに動く人物を大統領に据えていたということだったらしい。

西側諸国は、このような植民地状態を保つために、クーデターを起こしたり、反政府軍を組織したりもしている。本当に国民が選んだ大統領が、国民の利益を守って、植民地状態を変えようとしたりしたら、反政府デモが組織され、政府が入れ換えられることになる。この場合は、「独裁的な政府を覆した国民の民主化運動」だと西側諸国は言うのだ。2014年にウクライナで起こった暴力的な政権交代も、西側諸国にまさにそのように持ち上げられていた。実際には、武装したテロリストグループが入り込んで、暴力的に議会を占拠してしまうという政権乗っ取りだったのにだ。そしてまた、このテロリストグループは、アメリカ国務省が資金を出して組織していたものだった。

シリアでもリビアでもイランでも、地下資源を国有化して、国民の利益のために使おうとすると、西側諸国から独裁国家扱いされて、攻撃されることになる。そのために、反政府グループという名のテロリストグループが組織されて、政府軍と衝突するように仕向けられる。政府軍がテロ対策に出動したら、NATOが出動して、独裁政権から民主主義を守るためと称して軍事攻撃し、政権を入れ換えてしまう。そんな風にして、アフリカの国々は、植民地支配され続けてきた。

ロシア・アフリカ・サミットの最後のスピーチで、プーチン大統領が、多極的な世界秩序を守るためには、軍事的に戦う力もまた必要だというようなことを言っていた。アフリカの多くの国が、事実上、軍事力で植民地支配されている状況では、そこから解放されるためには、軍事的に戦う用意もなければならないというのが現実なのだ。プリゴジンの傭兵部隊ワグネルが、アフリカで軍隊を養成しているのを、西側諸国は、ロシアがアフリカを支配しようとしているみたいに言っているけれど、ロシアはアフリカの国の軍隊を養成することで、西側諸国が送り込んでくるテロに対応できるようにしていたのだ。

アフリカはもともと地下資源も農地も豊かなのにもかかわらず、世界で最も貧しい地域になっているのは、西側諸国が植民地支配して、搾取し続けていたからにほかならない。ロシアは、アフリカ諸国がこの状態から自立していけるようにと、長年の間、支援し続けてきた。サンクトペテルブルクのサミットに、西側からの激しい妨害をも乗り越えて、ほとんどの国が参加したのは、その信頼関係があったからこそなのだ。このサミットの終わりには、共同決議が全会一致で採択されたのだけれど、それは、国連憲章に基づいた国の主権や民族自決の原則を守って、内政干渉やテロ、経済制裁などに対して、共同で戦うといった主旨の、かなり長い詳細な内容のものだった。これはつまり、西側の新植民地主義からの独立宣言とでも言うべきものだ。サミットに集まったアフリカの参加者たちが、不思議な熱さを放っていたのを思い出して、まさにこのために、この人たちはあらゆる妨害を乗り越えてでも、サンクトペテルブルクまでやってきたのだということを理解した。そして、だからこそ、このサミットはありとある妨害を受け、それにもかかわらず空前の大成功を収めたということもだ。

そのことを考えるならば、このサミットに政府代表を送っていなかったニジェールで、まさにその日にクーデターが起きて、現職の大統領が降ろされるという事態になったのも、偶然ではなかったのだろう。ニジェールの人々も、他のアフリカ諸国とともに、多極化の道を選ぶのだということを、示そうとしていたように思える。

西側メディアは、ロシア・アフリカ・サミットが、大失敗に終わったかのような印象を与えようとして、発言の意味を引っくり返したり、ありとある虚偽を報道していた。しかし、あまりにも見事な成功だったので、失敗の印象を与えるような材料がなかなか見つからなかったのか、せいぜい「アフリカが穀物合意が再開されるよう要請した」というのを、アフリカがロシアを非難しているかのように書いていたくらいだった。アフリカは確かに穀物合意の再開を望んでいた。しかし、再開されないのは、西側諸国がロシアの穀物と肥料に対する経済制裁を解除しないせいだというのをアフリカ諸国はちゃんと理解していた。だから、「穀物合意が再開されるよう要請した」というのは、西側諸国に対する批判として言っていたのだ。そしてまた、「穀物合意が再開されないのは、西側諸国に責任があると、ロシア政府は主張している」とまるでロシア政府が嘘をついているかのように聞こえる言い方をしていた。

しかし、メディアがいくら嘘をついても、アフリカはもう多極化の道を選び、どんな妨害にもめげないで、どんどんネットワークを作り上げていっている。プーチン大統領は、アフリカは直に食料を輸出するようになるだろうと言っていたけれど、それはまったく現実的な予測だと思う。プーチン政権のロシアが、西側資本の政治介入を一掃しただけで、数年のうちに経済を立て直して、西側諸国を追い越す経済発展を遂げてしまったのも、西側諸国のグローバリズムという新植民地主義が、世界の貧困を作り出しているのに他ならないからなのだ。この搾取がなくなれば、最も貧しい国々であるアフリカも、たちまちのうちに豊かなところになるはずだ。

第二次世界大戦から80年ほどが経って、ようやく今、世界は植民地支配から本当に独立しようとしているようだ。

ニジェールのフランス大使館前でのデモ。ロシア国旗を掲げている(フランス国旗ではない)。

ニジェールのデモの様子

2023年7月31日

***

【アフリカは何故貧しかったのか?】



ウクライナへのロシアの軍事介入が始まってから、次々といろいろな事実が表に出ていっている。とりわけ、これまで世界中の戦争は、本当の理由を隠して行われていた、ということがだ。ウクライナの戦争の現状とその報道がどれだけ違うのかを見ていくうちに、これまでの世界の深い闇が次々と見えていった。

メディアが事実とは真逆の虚構の物語を作り出しているということを、私たちはパンデミックのときに初めてありありと目の前に見せつけられたのだけれど、そのあとで、ウクライナの戦争の現状についても、それとまったく同じことが起きていることがわかった。今度も、パンデミックの報道とまったく同じことだった。本当のことを語っているジャーナリストや学者たちは、プロパガンダを語っているとして魔女狩りに遭い、テレビや新聞などの主流メディアは、まことしやかに嘘を語る役者の映像ばかりになった。パンデミックのときには、「陰謀論」と呼んでいたものが、「ロシアのプロパガンダ」に変わって、ウィルスの脅威がロシアの脅威に変わっただけだった。

現実に身のまわりで起こっていることと、テレビの中の現実とがまるきり違っていても、多くの人々はテレビの現実の方を信じてしまうのだ。ましてや、遠くの国で起こっている戦争の報道など、どれだけ嘘を信じさせられているのかわからない。パンデミックでもウクライナの戦争でも、まったく同じように攻撃的な言葉や差別的な論調が繰り返し語られて、それを毎日見ている人たちは、筋が通っていないのにもかかわらず、メディアが言っていることを鵜呑みにするようになっていく。それを見ていて、私たちは、これは今に始まったことではないことに気がつくことができた。これまで世界のあちこちで起こっていた戦争も、あれやこれやの感染病も、実はほとんどすべてが、同様に虚像を見せられていただけだったということにだ。

そして今、ちょうどサンクトペテルブルクのロシア・アフリカ・サミットが始まるタイミングで、西アフリカのニジェールで、軍事クーデターが起こったのだ。これもまた、同じことだった。西側諸国のメディアと政府は、まだくわしい情報が入ってくる前に、ウィルスやロシアと同じように、クーデターを非難し始めた。その時点でもう、事実と真逆のことが報道され始めるのだろうということは予想がつく。そして、メディアとは違うところから入ってくる情報を追いかけていくと、これまでアフリカで日常茶飯事のように起こっていたクーデターやテロや内乱のすべてが何だったのかが、見えてきた。

これまでアフリカは、貧しくて遅れている国々だという印象があったけれど、あれは作られたものにすぎなかったのだ。いつも民族間の争いがあり、クーデターがあり、独裁者が現れて、国が混乱しているから、アフリカの人々は、平和的に民主的に行動することなどできない野蛮な民族なのだと思われている。実際、アフリカはいつも争いが絶えず、社会は混乱して、経済的にも貧しく、教育レベルも低い。しかしそのすべては、実のところは西側諸国が作り出していた状況だったのだ。それは、アフリカが今でも植民地支配されていたからに他ならなかった。

そうしたことを、ニジェールのクーデターは表に出してしまったのだ。クーデターがどのような理由で起こったのかについての情報がまだそれほど入ってこないうちに、フランス大使館の前でロシア国旗を掲げて、フランスは出ていけ、と叫んでいるデモの人々の動画が拡散されていた。それから昨日になって、クーデターでできた新政権が、ウランと金をフランスに輸出するのを禁止したという情報が入ってきた。それから、フランスが軍事介入するかもしれないという話があり、隣国であるブルキナファソとマリが、軍事介入があったら、宣戦布告とみなすと宣言したという情報が入ってきた。

どうやらウランが問題らしいのだ。フランスは原子力発電にエネルギー供給を頼っているので、ウランが来なくなると困る。いや、そもそもフランスは、ニジェールからタダ同然のウランが入ってくるからこそ、原子力発電にこだわっていたのだ。ニジェールはフランスにとって、重要なウランの供給源で、そのためにフランスはニジェールのウラン採掘を援助してきた。ところが、これがPSA(Production Sharing Agreement)という契約に基づくもので、採掘施設を建設する資金を出す代わりに、採掘された地下資源のほとんどをフランスが受け取るといったものだった。つまり、植民地時代と何ら変わらないシステムになっていたのだ。

しかも、ニジェールは貧しい国で、国民の80%は電気がないという。ニジェールのウランがフランスの電力を賄っているというのに、ニジェールには電力がないのだ。一体何のための援助なんだかわからない。結局、ニジェールは地下資源をタダ同然で掘らせて、安い賃金で働かされているということになる。そんな状況なので、国民が不満になり、治安が悪くなったり暴動が起きたりしても、不思議はない。それで、暴動やクーデターが起きたときのために、軍隊を駐留させていて、それを民主主義を守るためだと言っているわけなのだ。

ところで、ニジェールの人たちがロシア国旗を掲げていたのは、サンクトペテルブルクのサミットに参加したかったという意思表示なのかと思っていたけれど、それどころではなかった。ロシアはすでにソ連の時代から、アフリカが自立できるように支援していたというのだ。西側諸国は、第二次世界大戦のときまでアフリカで地下資源やコーヒーを求めて植民地争いをしていたけれど、その後もあいかわらず地下資源やコーヒーやカカオを搾取することしか考えていなかった。ところがソ連は、搾取するためではなくて、アフリカが自立できるように支援していたというのだ。地下資源採掘施設などを作っても、完成したらそれはその国のものになり、採掘した資源もその国のものになる。西側諸国の開発援助が、つまるところアフリカを依存状態にして、搾取し続けるためのものだったのに対して、ソ連がやっていたのは、本当にアフリカが自立できるようにするための援助だった。

サンクトペテルブルクのサミットに来ていたネルソン・マンデラの孫は、ソ連はアパルトヘイトの抗議活動も支援してくれていたと誇らしげに語っていた。サミットにほとんどのアフリカの国が参加していて、まるで新植民地主義からの独立宣言と言えるような決議文を全会一致で採択していたことでも、アフリカがロシアを新植民地主義との戦いの同士とみなしていることがわかる。そして、ニジェールのクーデターのあとで、人々がフランス大使館の前でロシア国旗を掲げてデモを行っていたのを見れば、ロシアがアフリカを搾取せず、自立のために支援していたというのが本当のことなのだということ
は、はっきりとわかる。

ところで、アフリカをあいかわらず植民地支配していたい西側諸国としては、ロシアの援助でアフリカが自立したら困るわけなのだ。アフリカは、西側が支援しなければ、食べていくこともできないような状態だからこそ、不平等条約を押しつけたりすることができる。独自の生産手段を持ったり、軍隊を持ったりするようになると、不平等条約を突っぱねて追い出されてしまうようなことにもなりかねない。

だから、ここでも西側諸国とロシアは敵対していたのだということが見えてくる。あるいは、まさにそのために、西側諸国はロシアを弱体化させようとありとある手を使っていたのかとも思えてくる。ロシアに自由にさせていたら、世界中の国々を自立させてしまい、もうこれまでのように地下資源や農産物を搾取することができなくなる。それで、ロシアはアフリカを支配して、独裁国家にしているとか、地下資源を奪っているとか、そういう嘘をメディアでばら撒いて、ロシアのこの動きを妨害しようとしていたのだ。

隣国であるブルキナファソとマリは、やはりクーデターが起きて、政権が入れ換わった国なのだという。ブルキナファソは昨年9月についにフランス軍を国から追い出すことに成功したそうだ。ブルキナファソの暫定政権の大統領は、サンクトペテルブルクのサミットに来て、「私たちは、8年前から残虐な植民地主義と戦い続けている」と語っていた。そしてプーチン大統領を「同士」と呼び、お礼を述べていた。それに対してプーチン大統領は、「アフリカの独立のための戦い、アパルトヘイトに対する戦いは、全人類にとって重要なことです」と答えていた。

ブルキナファソもマリも内乱が絶えない国で、それはいろいろな民族が対立しているからだみたいに報道されているけれど、事実は西側諸国の植民地支配との独立戦争だったのだ。西側諸国は、植民地支配のためとは公には言えないから、秩序を守るための支援だと言っている。それで、民族間の衝突だとか、宗教の違いのせいだとか、あるいは支配欲に駆られた独裁者だとかの話をこしらえているのだ。メディアが語る物語を本気にしていたら、アフリカとは、わけのわからないことで争いばかりしている、血の気が多い野蛮な国だというような印象しか持たない。わけがわからないから、さっさとNATOが出てきて民主国家にしてしまえばいいのにということになる。

ところで、マリとブルキナファソの植民地支配からの解放の戦いを、西側諸国が軍隊で鎮圧しようとしていたのは、実のところはニジェールのウランを守るためだったのだと、ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーは言っていた。マリとブルキナファソで植民地支配をくつがえすクーデターが起きて、それがニジェールに広がったら、新しくできた政権はウランの採掘権を取り上げてしまうだろう。それを恐れて、マリとブルキナファソを何とかして支配下にしておこうとしたというのだ。

しかし結局、ブルキナファソもマリもクーデタが成功して、ブルキナファソは駐留していたフランス軍をついに追い出してしまった。そして今、西側諸国が恐れていた事態が起こったのだ。ニジェールでもクーデタが成功し、フランスがウランと金を持ち出すのを止めてしまったのだから。

「ニジェールはドミノ倒しの最後の一枚だった」と、テレグラムのある記事に書いてあった。そのときは、どういう意味で言っているのかわからなかったのだけれど、マリとブルキナファソで続いていた戦いのことが見えてくると、すべてはつまりニジェールのウランをめぐる争いだったのだということがわかる。ロシアや中国の援助によって、徐々に自立する力を得ていたアフリカは、ついにニジェールのウラン鉱を植民地支配から解放するところまで来てしまったのだ。その意味で、ニジェールはまさにドミノ倒しの最後の一枚だった。

ところで、ニジェールのクーデタに、経済制裁や軍事介入をつきつけて、真っ先に圧力をかけてきたのは、アフリカ連合(AU)と西アフリカ経済共同体(ECOWAS)だった。ちょうどサンクトペテルブルクのサミットの決議で、内政干渉や経済制裁を拒否すると宣言していたので、これはどういうことなのかと思っていたら、このアフリカ連合と西アフリカ経済共同体というのは、西側諸国がいわばアフリカを植民地支配するために利用している組織だということがわかってきた。

アフリカ連合は、もともとはリビアのガダフィ大統領が呼びかけて創設したもので、当初は新植民地主義や腐敗と戦い、アフリカの自立を目指すためのものだったらしい。ガダフィ大統領は、リビアの油田を西側諸国から取り戻し、その利益を国民に還元したので、リビアは豊かになった。ところが、アメリカが軍事介入して、ガダフィを殺害し、政権を崩壊させてしまったのだ。これも、表向きはリビアを独裁政権から解放して民主化するためというような話だったけれど、こうした背景を見れば、本当の目的は別なところにあったことがわかる。アフリカがリビアの主導で、西側諸国の植民地支配から自立していくのを止めるためだったのだ。

その後、アフリカ連合は新植民地主義と戦うためのものではなくなって、それとは正反対のもの、つまりアフリカを民主化するためと称して、独立運動を弾圧する組織になったものらしい。そして西アフリカ経済共同体というのは、その下部組織のようなもので、西側諸国と提携して経済制裁や軍事介入で西アフリカ諸国を管理している組織のようだ。だから、西アフリカ経済共同体(ECOWAS)がニジェールのクーデタに軍事介入するとしたら、その後ろには西側諸国がついていることになる。それに対してマリとブルキナファソの暫定政権は、いかなる軍事介入も宣戦布告とみなす、と宣言した。つまりともに戦う用意があるということだ。

リビアのときには、新植民地主義からの解放の試みはとことんたたき潰されてしまったわけだけれど、マリとブルキナファソの例を見ても、もはやアフリカは負けてはいないということがわかる。これまでアフリカが搾取されて貧しくされていたことで、ヨーロッパは異常な難民の流入に苦しめられていた。結局のところ、一極支配のツケはどこの国でも庶民が背負うことになる。ブルキナファソの新大統領にプーチン大統領が言ったように、アフリカの独立のための戦いは、全人類にとって無関係ではない。それは、世界が一極支配から解放されていくための戦いなのだ。

サンクトペテルブルクのロシア・アフリカ・サミットで発言するブルキナファソの暫定大統領イブラヒム・トラオレ


ブルキナ・ファソの暫定大統領トラオレのインタビュー

https://twitter.com/Tamama0306/status/1686208612237197312?s=20&fbclid=IwAR1Y-B-TP1fi-lT7ele218zowsQkEzdZyAWyoFH0-DQ7EwVWsBKCBD9csls



2023年8月2日


【満州国とウクライナ】



ウクライナへのロシアの軍事介入が始まってからのこの一年半、主流メディアの報道が反ロシアの戦争プロパガンダと化していく一方で、戦争の真実を伝える情報を追いかけていった結果、近代の戦争がどのようにして作られていくのかということを、私たちは裏の裏まで知ることになった。

戦争というのは、表向きの理由とはまったく関係なく、裏で準備されていく。そして、偽旗とか挑発とかで、相手が攻撃してきたと称して、始まっていく。戦争をしかけているのは、多くの場合、戦争をしている当の国ではなくて、他の国の金融資本家だ。彼らが、攻撃したい国の隣の国をそそのかして、戦争させるのだ。そそのかしてというよりは、乗っ取って、だ。それが今のウクライナに起こったことだったし、第二次世界大戦に至るまでの日本やドイツに起こったことだった。

パンデミックがあり、ウクライナがあり、それによって私たちは、情報操作によって、人をどうにでも動かしてしまうことができるのを、目の当たりにしてきた。学歴や教養も関係がなく、筋が通っているかどうかにも関係がなく、国民性みたいなものにも関係がない。ただ、メディアを使って繰り返し虚偽の情報を与え、印象操作することによって、多くの人々は暗示にかかったように操られてしまうのだ。それを見てきたからこそ、私たちは80年前にドイツと日本に起こったことが何だったのかを、本当に理解することができる。

第二次世界大戦のときに、どうして日本がソ連と戦争することになったのかを、知らない人が多いのだけれど、それは情報がわかりにくくされているからなのだと思う。北方領土のことがいつも話題になるから、ソ連が北方領土か樺太へでも侵攻してきたのだろうと私も思っていた。ところが、日本とソ連との戦いは、実は北方領土ではなく、満州国をめぐる戦いだったということを、つい数日前に知った。それで、すべての謎が解けたように思った。

今ウクライナに起こっていることと、まったく同じ構図がそこにはある。西側のグローバル金融資本家たちは、ロシアを何とかして切り崩そうとして、まわりの国に戦争をしかけさせるのだ。それがもう19世紀の頃から続いている。当時、イギリスやフランスの大帝国は、世界中を植民地支配しようとして軍隊を強化していた。アジア、アフリカのほとんどを植民地化したあとで、残っていたのはロシアと中国だった。イギリスやフランスは、国自体は小さいけれど、軍事力によって、国外に広大な領土を持っていた。それで大帝国になっていたのだけれど、ロシアと中国は本当の大国だ。広大な領土を持ち、さまざまな民族を抱える本物の大国だった。その大国を切り崩すために、まわりの国を乗っ取って、戦争をしかけさせようとしたのだ。戦争によって経済が破壊されれば、金融資本家たちはそこにつけいって、お金でその国を支配してしまうことができる。それで、いわば漁夫の利を得るために、ドイツと日本とを乗っ取って、ロシア、中国と戦争させることに成功したわけだった。

日本は、イギリスとアメリカの軍艦がやってきて、開国を迫り、つまり植民地支配しようとしたわけなのだけれど、それでできた大日本帝国というのは、イギリスとアメリカの傀儡政権のようなものだったわけだ。明治以降、日本は富国強兵と言って、軍国主義化していった。そして最初に起こったのが、日清戦争と日露戦争だったのだ。それを見れば、イギリスとアメリカが大日本帝国を作らせたのは、中国とロシアという二つの大国に戦争させるためだったということがわかる。日清戦争も日露戦争も、中国とロシアの間の土地をめぐる戦いだったのだ。その後も戦争は続き、第二次世界大戦までには、日本は朝鮮半島と満州国を支配することになっていた。

ウクライナの戦争のことで、「ロシアみたいな大国相手に戦争するなんて、頭がおかしくなければできるわけがないんだ」と言っている動画を見た。そんなことは自殺行為だから、まともな人間ならやらないというのだ。だから、大国相手に戦争させるには、ナチ化するしかない。ナチなら頭がおかしいからできる。それでウクライナはナチ化されたのだと言っていた。

まさしく同じことが、第二次世界大戦前の日本とドイツに起こったわけだ。ナチというのは、ドイツで人々を全体主義化するために使われた国家社会主義のことだけれど、人々を全体主義に従わせるために掲げる理想は、何でもいいのだ。本当に人々のための理想郷を目指しているようなことを言って、そのためにはすべてを犠牲にするべきだと思わせることができればいい。それで、ドイツでは国家社会主義が掲げられ、日本では大東亜共栄圏が掲げられることになった。ウクライナでは、ゼレンスキーは何とドンバスの停戦を公約して、大統領選に勝ったのだ。要するに、そのときの人々が切実に求めているものであればいい。理想として掲げていることと、実際にやっていることが正反対であってもかまわないのだ。それで人々の支持を集めたら、実際にやるのは、全体主義であり、排他的な植民地主義以外のものではない。

だから、言っていることとやっていることはまったく違うのだけれど、それでも多くの人は、理想を実現するために、あの悪者を排除しなければならない、と思い込まされると、異常な残虐性さえも発揮するようになってしまう。このことは、パンデミックのときにも見てきたからわかる。いいことをしていると思い込んでいるからこそ、残虐にもなれてしまい、そしてそのことに気づいてもいないという状況に、人を容易にしてしまうことができる。恐怖を与え続けて、落ち着いて考える暇も与えないようにしていると、繰り返されるプロパガンダを人は容易に信じてしまうのだ。

とにかく日本は、日清戦争と日露戦争に勝ち、さらには満州事変という偽旗作戦による戦争で勝って、満州国を作った。表向きは民族自決の原則に基づく独立国家だけれど、事実上は日本の植民地だ。この満州国は、西はモンゴル、北はソ連に接しており、南は北京の近くまで続いている広大な国だ。それにより、日本は中国とロシアという二つの大国の間に割って入って、二つの国を弱める役をやらされることになったわけだ。

この満州国を支配していたのが、関東軍という日本の軍隊なのだけれど、この関東軍は生物化学兵器の人体実験をしていたことで国際的に知られている。これもまた、ウクライナと同じなのだ。もちろん、日本もウクライナも自分で生物化学兵器を開発しようとしたわけではない。ウクライナにある生物研究所は、すべてアメリカのものだ。グローバル金融資本家たちが、どこか遠くの国、しかもロシアの隣の国で、やらせていたわけなのだ。

石油の独占で財を成したアメリカのロックフェラー財団は、20世紀の始めから、石油で作る製薬業を始めて、化学製薬による医学を作り、それまでの医学を排除してしまった。それで第一次世界大戦のときには、感染予防の薬だとして、公に大規模な人体実験を行ったのだ。その薬によって、多くの人が亡くなったけれど、それはスペイン風邪のせいだとされた。あれは実のところ、生物化学兵器にほかならなかった。

そのことを考えるならば、満州で関東軍が行っていた人体実験というのも、おそらくはロックフェラー財団が投資していた生物化学兵器のためなのだろう。それはもちろん、彼らが切り崩したいと思っている中国とロシアで使うためだ。満州国とは、まさにそうしたことのために、日本をけしかけて作らせた国だったようだ。ソ連崩壊後に、ウクライナがロシアと敵対するように持って行かれたのと、状況はよく似ている。

第二次世界大戦のとき、ソ連は日ソ不可侵条約に基づいて日本に対して軍事攻撃をしなかったのだけれど、この条約の期限が切れた1945年8月9日、終戦も間近になってから、日本に宣戦布告した。それで日本は満州国を失って、満州は中国の一部になった。これも、何だってそんなときになってと思うけれど、実はそれまで満州からモンゴルやソ連に対してずいぶんと紛争がしかけられていたようなのだ。それだけではなく、生物兵器を開発したりもしていたわけで、その背景は、まさに一年半前に、ウクライナに軍事介入することになった経緯と似ている。さんざん挑発されたから、軍隊を出したということのようだ。

私が満州国のことを調べてみる気になったのも、数日前にロシア外務省報道官のマリア・ザハロワが、ソ連の対日参戦記念日を前に、日本政府は極右主義者たちにロシア大使館前で抗議なんかさせていないで、1930年から40年までに日本が行った戦争犯罪を思い出し、分析して、二度と起こらないように考えるべきだ、と言っていたからだった。今年に入ってから、マリア・ザハロワの西側諸国に対するデクラスは、ますます鋭くなっているようなのだけれど、これは日本人としては真摯に受け留めるべきものだと思った。

つまるところ、当時の日本も今のウクライナと同様に、騙されて利用されていたわけなのだけれど、そのことを知った上で、同じことが繰り返されないようにするにはどうしたらいいのかを考えるべきだ。アフリカだって、これまでさんざん騙されて利用されてきたからこそ、今、本当に自立していく道を歩もうとしているのだ。この200年ほど、人類はありとある残虐を経験してきたけれど、その経験があるからこそ、今進んでいける道があるのだと思う。

満州国があった当時の地図


2023年8月6日

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?