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世界が引っくり返るとき



【ウクライナの戦争はどう終わるのか?】



昨年2月に始まったウクライナの戦争は、3月にもう停戦交渉が行われて、終わりそうになっていたのに、その後一年以上経っても、まだ一向に終わる気配がない。実は、昨年3月にトルコで行われた停戦交渉で、ウクライナの代表団がミンスク合意と同様な条件で停戦する文書を出していたことが、この頃表に出て、あの時点でウクライナ政権は停戦するつもりだったことがはっきりした。しかし、あのとき戦争継続になったのは、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの4国がそうと決めたからだったのだと、イスラエルの元首相がインタビューで暴露していた。戦争継続はウクライナ政権の意志ではなかったのだ。ウクライナ政権は、英米が据えた傀儡政権にすぎず、ゼレンスキーがイギリス諜報部のMI6から指令を受けているというのは、すでに知られた話だ。ロシア政府はもうそのことを知っているので、ウクライナ政権と交渉するのではなく、ワシントンと交渉しなければ意味がないと言っている。

ゼレンスキーは実は本人ではなく、ある時点で入れ換えられたという説もあるらしい。それについてはくわしく調べたわけではないけれど、戦争が始まった頃のゼレンスキーと、トルコでの停戦交渉のあとで戦争継続となったあとのゼレンスキーは、人格が変わったような感じはある。戦争が始まった頃のゼレンスキーは、NATOが介入しないことに焦って、明らかにおびえているように見えたけれど、そのあとの彼は、いつも険しい顔をして、何を犠牲にしても戦争を続けることにためらいがない様子だ。コカイン中毒で精神的におかしくなっているからなのかと思っていたけれど、あるいは別な人物に入れ換えられていたのかもしれない。

一体何のための戦争なのだろう?ロシアを軍事的、経済的に弱体化することが目的だと、アメリカのシンクタンク、ランド研究所の報告にははっきりと書いてあるのだそうだ。このシンクタンクは、アメリカの外交政策に提言を行ってきた機関で、アメリカの軍事産業や石油業界が出資している。戦後アメリカが行ってきた戦争は、すべてこのシンクタンクが提言しているのだそうで、つまり、石油と軍事産業のための戦争なのだ。ウクライナをけしかけて、ロシアと戦争させることになったのは、アメリカに支配されなくなってしまったプーチン政権のロシアを、再び思い通りに支配できるようにするために、政権を崩壊させようということらしい。しかしロシアは、そういうアメリカの企みはもう知っていて、そうはさせないように、しっかりと足元を固めてきていたのだ。

その結果、ロシアを弱体化させようという計画は、失敗に終わった。6月から始まったウクライナの反転攻勢では、西側諸国の最高の武器を注ぎ込んでいるのに、何の戦果も挙げないまま、片端から破壊されている状態だ。西側諸国が製造している武器は、高価なばかりで性能が悪く、ウクライナ軍の中でも評判が悪いという話が数日前に出ていた。ソ連時代の武器にさえ劣るというのだ。それは、軍事産業が目的で戦争をやっているのであれば、ある意味当然のなりゆきかもしれない。要は武器が消費されて、お金がまわりさえすればいいわけなので、性能などはどうでもいいし、ましてや耐久性などは必要ないということになる。

それで今、どのように戦争が終わるのかということについて、いろいろな推測が出ている。第二次世界大戦のとき、ウクライナはナチス・ドイツと協力して戦っていたのだけれど、ドイツが陥落したとなったとき、将校を全員殺して、イギリスについたのだそうだ。そのせいで、ウクライナはナチだったのにも関わらず、戦争犯罪を問われないできていて、ナチスが温存されていたということらしいのだけれど、今度の戦争も同じような終わり方をするのではないかと、元ロスコスの代表ドミトリー・ロゴジンは、最近のインタビューで言っていた。

この戦争は、ウクライナがどう決めるかというより、アメリカがどう決めるかで決まるわけなので、つまりはアメリカがどうするのかということだ。2021年の秋に、アメリカは突如アフガンから軍隊を撤退させ、それで長年続いていたアフガン戦争は終わりになった。あのあとウクライナで戦争が始まったわけなのだけれど、つまりアフガン撤退は、ウクライナで戦争が始まるのを見越して、軍隊をウクライナに集中させるためだったらしい。そのことから考えて、アメリカがウクライナから軍事援助を引き揚げて、それで戦争がなし崩しに終わりになる可能性もあると、ドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーは言っていた。アメリカはベトナム戦争のときも、そういうことをやっていた。国内で反戦運動が激しくなって、不満が高まってきたし、損失ばかりが増して、思ったような結果が出なかったからだ。ウクライナもアメリカにとっては、同じようなことになっている。もういくら軍備を費やしても、何の結果も出ない状態だ。そうなるとアメリカは、さっさと軍隊を引き揚げて、あとがどうなろうがかまわないのだ。

ところで、今年の1月にランド研究所が、ウクライナの戦争はもう損失の方が大きくなるだけなので、なるべく早く停戦するべきだという提言を出していたのだそうだ。それで、直に停戦交渉になるのではないかと言っていたのだけれど、どうもそういうことにはなっていかないようだ。ノルド・ストリームの爆破をウクライナのせいにして、それでヨーロッパに援助を引き揚げさせようというような計画だったらしいのだけれど、それがあまりにバカバカしい作り話なので、誰も本気にしなかったからなのかもしれない。あるいは、ウクライナの傀儡政権が腐敗のお金に中毒してしまって、戦争をやめられなくなっているからなのかもしれない。何故なのかわからないけれど、その間、ロシアの方は、中国やイランやサウジアラビアと協力関係を結んで、ますます安定した態勢になっているし、6月から始まった反転攻勢で、軍備ではNATO諸国が束になってかかっても何もできないということが判明してしまった。それに、ミンスク合意がロシアを騙すためのトリックにすぎなかったということがわかって、ロシアはもう西側の約束を信じなくなっている。東欧からの撤退にしろ、ミンスク合意にしろ、ブチャからの撤退にしろ、毎回停戦交渉に応じて軍隊を引き揚げたら、占領されてしまったということを繰り返しているのだから、ロシアももう騙されなくなっている。

ロゴジンがインタビューで言っていたのだけれど、ロシアは昨年2月の時点で、まさかNATO全体と戦うようなことになるとは予想していなかったのだそうだ。ロシアにだって諜報部というものがあるわけで、そんなことくらいわかっていそうなものだけれど、ロシアはそのようには考えておらず、だから用意もしていなかったのだとロゴジンは言っていた。それで、あわててドローンをイランから輸入することになっていたらしい。どうしてそれに気づかなかったのかと聞かれて、「ロシアの政治家は、西側の政治家とは違うんです。私たちがナイーブなのかもしれないけれど」と言っていた。ロシアでは、政治家たるものは誠実であるべきだと考えていて、実際にそういう人物が政治家になっている。だから、人を騙すような人間が政治家をやっているという発想がなかったということらしい。

それが、ロシアももう西側の政治家たちを信用しなくなっていて、だからもう交換条件で交渉するつもりもなくなっている。ロシアの条件は、2014年以来のミンスク合意の内容が履行されることと、ウクライナが非ナチ化すること、ウクライナ国内でのロシア民族の人権が保証されることだ。しかしその場合、今のウクライナ政権は存続不可能だということになる。

だから結局、アメリカがウクライナから軍事援助を撤退して、それでウクライナ政権が停戦するしかなくなるということになるのかもしれない。その場合、ロゴジンが言ったように、ウクライナが将校を全員殺して、反対側につくというような終わり方をする可能性はある。この場合つまり、送り込まれた傀儡政権を追い出して、ロシア側につくということだ。そもそもウクライナ国民の7割は、ミンスク合意を履行するというゼレンスキーの言葉を信じて支持したので、要は騙されたのだ。アメリカの援助がなくなったら、ウクライナ政府の政治家たちは逃亡し、残ったウクライナ人たちはロシア併合を望むということになるのかもしれない。その場合、ポーランドやルーマニアがウクライナ西部を分割することになり、ウクライナという国は消えてなくなるのかもしれない。

アフガンから撤退したあとに、ウクライナ戦争が始まったように、アメリカはウクライナから撤退したら、次には台湾で戦争を始めるつもりならしい。しかし、おそらくはこれもウクライナと同じことで、中国に勝てる見込みはないように見える。すでにBRICS側の経済ネットワークが強力になってしまったので、もはや経済制裁で経済を崩壊させることができなくなっているからだ。

アメリカは、日本と韓国に協力させようとしているけれど、それでも中国に勝てるとは思えない。おそらくは捨て駒にされることになるのだろう。ウクライナでスラブ人同士を戦わせたのと同様に、アジア人同士戦わせようという話なのだ。とにかくそうやって分断していたら、弱くなって、支配しやすくなるからだ。

しかし、これから南アフリカでBRICSサミットが開催され、BRICSの拡大と共通通貨について決定されることになるので、これで西側の一極支配に与さない勢力が、一気に大きくなることになる。世界に対するG7の影響力はこれで一気に落ち、米ドル離れが加速することになるだろう。そうなったとき、まだアメリカには中国と戦争する力が残っているのだろうか? ニジェールのクーデタも、まだ軍事介入にはなっていないけれど、西側一極支配の力が弱まっている状況で、アフリカ中で植民支配からの独立運動が起こる可能性もある。そうなったら、もはや西側諸国は、軍事力で支配することなどできなくなるのかもしれない。

それに、そうこうするうち、アメリカでは大統領選があり、トランプが再選されることになれば、米軍撤退して、戦争がなくなるということになるかもしれない。

これまで世界は、西側諸国の一極支配を保つために、絶えず戦争することになっていた。しかし今、世界が多極化することによって、戦争が必要のない時代に変わっていこうとしている。今は、あちこちで一触即発みたいな状態になっているけれど、多極化が加速することで、この状態もなし崩しになっていくのかもしれない。ちょうど先日も、ロシアでの軍事メッセで、反ファシズム国際会議が開かれ、30カ国以上が参加したそうだ。ロシアやBRICS諸国にとって、軍隊とは西側の一極支配がしかけてくるファシズム化から国の主権を守るためのものなのだ。そうしたネットワークがすでにできていて、力を増している。このことは、直に世界を根本から変えてしまう可能性がある。

※※※


第一次世界大戦は、ベルリンで反戦デモが起こって政権が倒されたことで終わったそうです。1918年11月9日のベルリンの画像だそうです。 これ以前にキールなどで兵士たちの反乱が起きていって、最後にベルリンのデモで戦争終結ということになったと。 今、西側のメディアでは報道されていませんが、ウクライナの部隊が全員でロシアに投降することが続いているそうです。


2023年8月22日

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【世界の多極化と立体化が起きている】



街でたまたまインド人と話すことになって、私が日本人だと知ると、「日本と中国は関係が悪くなってるだろ」と言われたので、「そんなの政治家が勝手にやってるだけで、国民同士は関係ないよ」と私は言った。この人が、どういう情報を見て言っていたのかはわからないけれど、どこかの領土がどちらのものかで争っているとかそういう話なのだろう。

戦争はいつも、防衛のためだとか民族の解放のためだとかいうことで始まるのだけれど、実際にそこで起こるのは要するに植民地支配であり、つまり搾取と人種差別だ。それが、第二次世界大戦以前には大っぴらに世界中で行われていて、その後も民主化のためという名前で、結局のところ同じことが行われている。

戦争が起こるとき、国民はいつも防衛だとか民族の解放だとか民主化だとかいう表向きの理由に騙されて、一緒にやらされるはめになる。だから、実際に戦争が始まったときに、戦地で起こっていることが、言われていたことと違っていることがわかってきて、しかも戦争に蕩尽するために国民の経済が貧困になっていったり、犠牲が増えてきたりということになると、人々は騙されたことに気づき始めるわけだ。

アメリカ国民は、戦後もっとも多くの戦争につきあわされていたわけだけれど、海外に送られたアメリカ兵たちは、「民族の解放のためにという話だったのに、やらされたのは市民を殺すことだった」とよくもらしていた。そうしたことが、ベトナム戦争でも行われていたし、イラクでも行われていた。そして今のウクライナでもだ。これについては、次期大統領候補のロバート・ケネディ・ジュニアも言っていた。バイデン政権は、ウクライナの人道援助のために軍隊を送ると言っていたのに、実際にやっていることは、ドンバスの市民を虐殺することだと。アメリカ政府はそのために巨額の税金を費やして、社会福祉も公共施設もひどい状態になっている。ウクライナにはいくらでも投資するのに、アメリカの国民のためにはお金を使わない。こうしたことは、ヨーロッパでも同じ状況だ。

第一次世界大戦は、ドイツ国民が戦争継続に抗議して政権を倒してしまったために終わったのだそうだ。戦争が4年も続いて、国の経済が貧困になり、人の犠牲も増えてくると、いったい何のための戦争なのかと人々は思い始めることになる。結局のところ、政治家たちの支配権の問題にすぎなくて、国民のためのものではなかったということがわかってしまうわけだ。それでドイツでは、兵士たちが命令に従うのを拒否して反乱を起こすということが、あちこちで起こり始め、それがついにはベルリンの抗議デモになり、それによって政権が倒されて、第一次世界大戦は終わることになった。

だから結局のところ、国際紛争は国民には関係がない。国民のためにやっていることではないのに、国民がやらされるはめになるというのが戦争なのだ。だから、国民がそのことに気づけば、戦争は終わることになる。

ベトナム戦争でも、同じことだった。ベトナム戦争は、共産勢力からベトナムの人々を守るためということでアメリカが介入して始まったわけだけれど、実のところは政治的な支配権をめぐる代理戦争だった。それで、次第にアメリカで反戦デモが激しくなっていき、徴兵拒否する人たちが続出した。そのためにアメリカはベトナムから撤退することになり、アメリカが撤退したら、戦争はあっという間に終わったのだ。

そうしたこともあり、その後はアメリカでは、徴兵ではなくて、職業軍人だけを海外の戦争に送ることになったらしい。徴兵だと戦争になったときに、国民の反対が強くなるからだ。それで、ベトナム戦争のあとも、アメリカはあいかわらず世界中で戦争を起こしてきた。それが今、ウクライナでは、ロシアを弱体化させるという目的を果たせないまま、アメリカも西側諸国も巨額の税金をウクライナの戦争に投資し続けている。国民が反戦デモを起こすと、ベトナム戦争のときと同じことになるので、西側諸国ではこの戦争では、最初から厳重なメディア統制を行ってきた。実は代理戦争にすぎないことを知られないように、現地の状況も表に出ないようにしてきたのだ。人道援助のボランティアで現地に行った人たちも、ウクライナ軍が市民を攻撃していたと暴露したら、メディアから締め出されて迫害されることになった。それで今や、西側諸国では、報道の自由も言論の自由もないようなことになっている。

世界でこの200年ほど戦争が絶えなかったのは、結局のところ一極支配を進めようとする勢力がいたからだった。表向きにはいろいろな理由で戦争が起こっていたけれど、それは一極支配を隠して、いかにも国民のためになることだと思わせていたからにすぎない。それで私たちは、どこの国とは敵対しているというので、たがいに憎み合ったり攻撃的になったりしてきたのだ。「敵なのか味方なのか?」という基準で、人の好き嫌いを決めたり、文学や音楽までどっちがいいとか悪いとか言ってきた。

たった一つの基準だけですべてを判断するのは、「視野が狭い」と言われるようなことなのだけれど、戦争というのは、そういう状態を人工的に作り出してしまうのだ。本当は広大に広がる世界を、たった一本の直線にしてしまう。その直線の上では、人々は他のことはすべて忘れて、相手を攻撃することだけに意識を向けるようになる。まさしくそれこそは、一極支配が作り出す状態なのだ。

ウクライナの戦争は、つまるところ代理戦争だったわけなのだけれど、東西の代理戦争という意味合いを越えて、一極支配と多極化との代理戦争になっていたようなところがある。実際、東西の冷戦は、ソ連崩壊と中国の自由経済化によって、1990年代にすでに終わっていた。それでも続いていったのは、そもそも共産勢力からの防衛という理由が、一極支配のための戦争の口実にすぎなかったからなのだ。そのため、かつて東ブロックとされた国々は、今度は一極支配に抵抗する勢力になり、多極化を進める勢力になっていった。

この一年ほど、まさにそうした多極化のプロセスが進んでいくのを、私たちは見ることになった。その中で、アラブやアフリカの、これまで敵対してきた国々が、次々と和解し、協力関係を築いていくのも見てきたし、一極支配を離れた国が、急速に豊かになっていくのも見た。世界が多極化すると、すべてはこれほどまでに流れるようにスムーズに動いていくものかと、驚くことも多かった。してみれば、これまで私たちは、一極支配の中で、たった一本の道だけにされた狭い世界に、無理やり自分を押し込めて生きてきたのだろう。世界が多極化したとき、その狭く押し込められた世界が大きく広がって、一本の直線だった世界が立体化したかのようだ。そして、これこそは私たち人間がそもそも生きる世界なのだということに気づき始めている。

政治家たちが他の国と争っていたって、私たち国民には関係がない。政治は一つのごく狭いものにすぎないし、経済だって一つの基準でしかない。そうした狭い基準だけで世界を見るのをやめると、大きな世界が見えてくる。土地が広がり、そこに生きている人々がいるのが見えてくる。そこでは、皆それぞれに幸せに生きようとしているだけなのだ。そんな風に世界が立体的に見えてくると、どこにいようが、私たちは地球の上で調和して生きていけるのがわかるんじゃないかと思う。

そして昨日、8月22日に南アフリカでBRICSサミットが始まって、一極支配に抵抗し、公正さが通る世界のために協同するということが、語られていた。独裁主義や全体主義と戦うということが、一極支配を進めようとする西側諸国の論理だったのだけれど、一極支配こそはまさに独裁主義であり全体主義だったのだ。BRICSサミットに世界中の注目が集まっているからなのか、昨日から急に世界が広がって立体化したかのような感覚がしている。地球全体の集合意識として、何かが大きく変わったのかもしれない。ちょうどマヤ暦で、転換のステージに当たる11回目の20日サイクルが始まった日でもあり、宇宙的なレベルでも、多極化と世界の立体化が起きているのを感じるようだ。

8月22日の雲。世界で何かが起こったのを示すかのよう。



2023年8月23日

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【プリゴジンは本当に死んだのか?】


昨日8月23日に、ロシアの傭兵部隊ワグネルの代表エフゲニー・プリゴジンが乗った飛行機が墜落したというので、SNSは大騒ぎになっていた。墜落した飛行機の搭乗リストにプリゴジンの名前があったというのだ。その飛行機はプリゴジンのもので、10人が乗っていて、モスクワからサンクトペテルブルクへ飛ぶ途中だった。それが、とつぜん空中で爆発して、墜落した。8人の遺体が発見されたのだけれど、本人確認が難しい状態で、遺伝子鑑定が必要だというような話だった。それなのに、その後しばらくして、プリゴジンが死んだという報告があったのだ。ワグネルの建物は、昨夜、部屋の明かりを十字架の形に点灯して、哀悼の意を示していた。

この反応はどうも早すぎるように、私には思える。プリゴジンが飛行機事故で死んだとなったら、これは大変なことだ。しかも、彼の最も信頼するチームと一緒にだというのだから、ワグネルはいったいどうなってしまうのかと思う。そんな状況では、ショックとパニックがしばらくは続くのが普通なのに、早々と建物に十字架を表すようなことが、できるものだろうか? 

それに、飛行機が墜落したからといって、全員が即死するとはかぎらない。救出作業が行われているとか、重傷者を運び出しているとか、そういう話がありそうなものなのに、そういうニュースもなく、いきなり誰が乗っていて全員死亡と言っているのは、どうも現実的でないような気がする。

飛行機が墜落しているところを撮影した動画が出ていたのだけれど、それがまた奇妙な映像だった。翼もなく、棒のようになったものが、空から落ちてくる。飛行機が墜落するのを目撃したという女性は、ロシアの空軍がウクライナのドローンを撃ち落としたのだろうと言っていたというのだけれど、その映像は確かにそのように見えた。いくら小型とは言え、旅客機のようには見えなかった。せいぜいドローンくらいの軽いもののように見えた。

それから、墜落した飛行機が燃えている映像が出てきた。そのまわりにいろいろな物と一緒に遺体が散らばっているのだけれど、飛行機が墜落したときには、乗客はこんな風に機体の外に放り出されるものなのだろうか? 遺体は焼けていて本人確認ができない状態だという話だったけれど、燃えている部分から離れた草地に転がっていて、焦げている風でもなかった。その映像には、救助作業をする人たちは映っていなかった。こんな場面を撮影している人は、人が生きているかどうか確認しようともしないで、どうして動画なんか撮っているのだろう?それもどうも奇妙に思える。

その画像を見て、これはどうもフェイクなんじゃないかと思い始めた。プリゴジンは、6月にもドンバスからモスクワへ向かっていって、反乱を起こしたと大騒ぎになっていたけれど、あれも実はワグネルがベラルーシに配置換えするのをごまかすための演技のようだった。だから今度も何かの目的で、飛行機事故を演出しているのかもしれない。

西側メディアは一斉に、プーチンがプリゴジンに復讐するためにやったのだと書き立てていた。それに対して、陰謀論系の人たちは、CIAが爆弾をしかけて暗殺したのだろうと言っていた。西側メディアは、プリゴジンがプーチン政権を倒すためにモスクワに行こうとしていたのだと報道していたから、プーチンがプリゴジンの飛行機を撃墜させて、政敵を片づけたというのだ。しかし、それだったらどうして、プリゴジンを一切お咎め無しでベラルーシに送ったりしたのかわからない。わざわざロシアの上空で飛行機を撃墜するような、面倒でしかも危険なことをする意味などないように思える。

それに、いったいどうして飛行機がとつぜん墜落したりしたのかの情報がまったく出てこないのだ。これが本当のことならば、爆発のし方からして何が原因だとか、どんな破片がとこで見つかったとか、乗客は何が原因で死亡したとか、そういう話がいろいろありそうなものだ。だけど、そういう話がちっとも出てこないままに、ただプリゴジンが死亡したということを確定した事実として報じているのが、どうも妙に思える。

飛行機事故というのは、偽装死によく使われる手でもある。偽装死の場合、遺体が確認できないような亡くなり方をしたことにするのが常套手段だからだ。特に有名な人の場合、交通事故で高速で激突したとか、自家用ジェットが墜落したとかいう設定で、死んだことにする。そのことからして、あるいはプリゴジンも彼のチームともども死んだことにして、どこかへ逃げたという可能性もかなりあるように思える。

翌日になって、プーチン大統領がプリゴジンの死について語っている動画が拡散されていた。それを見たとき、これは演技ではないのかという私の推測は、ほとんど確信に変わった。プーチンはほとんどの場合、真実を語っているけれど、彼が真実を語るとき、彼の言葉が肚から出ているのがわかる。だけど、プリゴジンの死について語るプーチンの言葉は、肚から出ていなかったのだ。これは演技をしている顔だと思った。

何かの国際会議の最中だったか、イタリアの元首相ベルルスコーニが亡くなったという知らせが入ってきて、プーチンが皆に黙祷を呼びかけてから、ベルルスコーニについて語ったことがあった。プーチンは、哀しみをそのままに顔に表したりはせず、始終落ち着いているけれど、彼がベルルスコーニの死に深い哀しみを感じているのはわかった。しかし、プリゴジンの死について語るプーチンは、あからさまに悲痛な表情を浮かべていたのだ。これは彼の本当の感情ではなく、悲しみの演技をしている顔だと思った。プーチンは、今度もまたプリゴジンと一緒に大芝居を打っているのに違いないと。

もしこれが大芝居なのだとしたら、やはり今度も、何かから人の意識を逸らすためなのだろう。この飛行機墜落事故が、BRICSサミットの二日目に起こったというのも、偶然ではないように思える。このBRICSサミットでは、一気に6カ国を新しく加えることが決定された。エジプト、エチオピア、イラン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、それにアルゼンチンが、2024年の1月1日から正式に加盟することになったのだ。これにより、BRICS加盟国は世界の人口の46%を占め、BIPでは37%、石油産出量では何と80%を占めることになるという。これは、世界的な地殻変動とも言える変化だ。

これにより、BRICSはG7を追い越すことになり、つまりは西側の一極支配は負けが決まったようなものなのだ。このことから世界の意識を逸して、ロシアの力が弱まったと思わせて、西側諸国がパニックを起こすのを避けようとしたのかもしれない。

前回の反乱騒ぎのときも、ロシアはちょうどバフムートを陥落させたところで、これでウクライナの負けは確実になったというような状況だった。そのときに、ロシアで内乱が起こったと見せかけて、ロシアが弱くなったと思わせていたのだ。勝ちが決まったというようなときに、弱くなったように見せるのが、今回も似ているようだ。

ところで、もしプリゴジンと飛行機に同乗していた彼のチームが生きているのだとしたら、いったいどこへ行ったのだろう? 飛行機が墜落したとき、もう一機ジェット機が飛んでいて、そのジェット機は向きを変えてモスクワの方へ飛んでいったという情報がある。本当かどうかはわからないのだけれど、もしそうだとしたら、このジェット機の方にプリゴジンたちが乗っていたのかもしれない。あるいは、このジェット機が無人のドローンを撃ち落として、プリゴジンが乗ったジェット機だということにしたのかもしれない。

もしこのすべてが大芝居なのだとしたら、プリゴジンは彼のチームともども隠れてどこかへ行く必要があったわけだ。だとしたら、彼らが行く先はどこなのだろう? それはアフリカなのじゃないかという気がする。ちょうどニジェールでフランスの傀儡政権を倒すクーデタが起こり、フランスと軍事衝突が起こりそうになっている。ニジェールの新政権は、ワグネルに仕事を依頼したという話だった。ここでプリゴジンがベラルーシからアフリカに行ったなどというと、西側メディアが一斉に騒ぎ出すだろう。それを避けるために、飛行機事故でワグネルの主要チームとともに死んだということにしたのかもしれない。それで、世界中の意識がロシアに集まっている間に、アフリカに飛んだということなのかもしれない。

ニジェールのクーデタで表に出た通り、アフリカでは西側の新植民地主義とロシアの多極化との間で、東西の冷戦状態が実は続いていたのだ。西側諸国は、アフリカを事実上植民地支配するために、援助という名目で軍隊を配備して支配している。ロシアはアフリカが植民地支配から解放されるべく、軍隊を養成し、西側が送ってくるテロリストと戦っている。西側の軍隊も、テロリストから国を守るためにということで戦っているのだけれど、彼らは軍隊を駐留させる口実にテロリストを必要としているので、実のところは戦うふりをしているだけなのだ。ところがワグネルはそのテロリストを本当に撃退してしまう。それで、アフリカではワグネルはとても人気がある。ニジェールのクーデタを支援するデモで、人々がロシアの国旗を掲げていたのも、そうしたことがあるからだ。

アフリカでの植民地支配が、西側諸国の一極支配にとって重要な源泉になっていたわけなのだ。それが今、アフリカで次々と植民地支配から自立していく動きが起こっている。ブルキナ・ファソとマリ、ニジェールのクーデタがそうだし、今回のエチオピアとエジプトのBRICS加盟がそうだ。このアフリカ二国の加盟が決まった同じ日に、プリゴジンと彼のチームが乗ったジェット機がアフリカに飛んだとなったらどうだろう? その熱さをごまかすために、プリゴジンの飛行機が墜落したことにしたのかもしれない。

2023年8月24日

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【直線世界から空間世界へ】


これまで私たちが生きてきた3−4次元から、5−6次元へ移行するのは、これまでは世界が直線のようなものでできていると思っていたら、実は空間的に広がっていたことがわかる、というようなことだ。私たちはこれまで、まるでたった一つの道を皆が進んでいかなくてはいけないかのように、あるいはたった一つの基準に皆が従わなくてはいけないかのように思って生きてきた。まるで世界が一本の直線の上にしかないようにだ。だから、これまで私たちはいつも、どっちが正しいとか、どっちが高いとかいう風に考えて、すべてのものを同じ基準で比較して、争ってきた。共産主義よりも資本主義の方がいいとか、封建制よりも民主主義の方がいいとか、どっちの方が経済が発展しているとか、あるいは3次元よりも5次元の方が高いとか、そういう風にだ。

ところで、5−6次元に意識がシフトすると、世界は実は一本の直線上にあるのではなく、空間的に広がっていることがわかる。空間が広がっていたら、どっちがいいとか悪いとか、低いとか高いとか比べることに意味がないことがわかってしまう。それは、蟻は地下に巣を作り、鷲は高い木の上に巣を作る、というようなものだ。どちらがいいも悪いもない。それぞれが自分の暮らし方に合っているところに自分の棲家を作っているというだけのことだ。もちろんそれぞれにいろいろな争いもあるけれど、すべてに当てはまる基準があるわけではない。いろいろなところでいろいろな尺度のいろんな争いがあって、それで全体としては調和している。世界はそんな風になっていることがわかる。

一極支配から多極化へ移行するとは、つまりはそうしたことだと思う。世界中のすべてのものを同じ基準で測って争うのをやめること。それぞれに向いた生き方をすればいい。世界が一本の直線上にあるように思っていると、それぞれに好きなやり方でやったりしたら、衝突ばかりするように思える。だから、一つの基準に皆を従わせようとする。だけど、世界が空間的に広がっていることがわかると、そんな必要などないことがわかる。世界には、十分な空間があるのだ。それぞれ好きにやっていても、ぶつかりはしない。ちゃんと調和するようになっている。

8月22日から24日まで南アフリカで行われたBRICSサミットで、新たに6カ国が加わることになったのだけれど、これは世界が決定的に多極化へ向かったことを意味している。もはや世界中をたった一つの基準に従わせて、どっちが劣っているとか進んでいるとか言うことができなくなったのだ。BRICSは、多極的な世界秩序を目指していて、それぞれの国がどうあるべきかについて干渉しない。それぞれがそれぞれに向いたあり方をする自由を守るために、BRICSは一極支配を押しつけてくる勢力と戦うということを言っている。つまり、世界を直線上に押し込めてしまう力とだ。

「それぞれが自分の現実を創造しながら生きている」ということは、よく言われるようなことだけれど、このことは3−4次元の意識で考えていると、本当のところは見えてこない。このことはよく、「すべてはその人が自分でやっているのだから、その人が不幸なのはその人のせいだ」とか、あるいは逆に「何をやってもいいのだ」みたいに思われてきた。これはまだ、直線上の世界で考えているから、そういうことになる。ところが、世界が空間的に広がっている5−6次元の意識で見ると、そんなことではなくて、それぞれがそれぞれの世界に生きていて、本当にそれで、たがいにぶつかり合わないということがわかるのだ。

たとえば、ある人が「世界は全体主義化していく。この流れは止まらない」と思って生きているとすると、この人は全体主義化していく世界の中に生きている。自分から全体主義的な流れに従っていって、自由に生きてみようとしないだろう。こういう人は、自由に生きることができると思っている人たちを、理想論で生きているナイーブな人たちだと思っているだろう。だから、全体主義の流れとは違う世界があるとしても視界に入っていないし、あったとしても入ってみようとはしないのだ。この人は、「世界は全体主義化していく」という世界に生きていて、その経験をしている。

しかし、そのことが、空間的に広がる世界の中で見えていると、世界を全体主義から救うには、この人を変える必要はないということがわかる。自分は自分で、自由に生きられる世界を作って生きればいいだけのことだからだ。

「地球の環境は破壊されていく。これを止めることはできない」と思って生きている人は、おそらくそう思い始めた時点で、大地との繋がりから切り離されているだろう。だから、自分から破壊された環境を自分のまわりに作り出してしまうようなことになっていると思う。どうせ破壊されていくんだから、何をしても大して変わりはないと思ってしまうし、それで毒になるもの害になるものを自分の生活の中で使って、自分の生活環境を破壊していたりすると思う。

一方、「世界はひどい状態だとしても、何とかなるはずだ」と思って生きている人は、希望などなさそうなところからでも、新しい可能性を見つけ出してしまうのだ。そうやって、これまで絶対に不可能だと思われていたことが、現実化してしまったりする。こういうことは、歴史上にも多く起こっているけれど、それは皆、この「でも何とかなるはずだ」と思って生きていた人たちが、なし遂げたことなのだ。

実際、ほんの一年前にだって、BRICSが世界を主導する勢力になってしまうなどということを、誰が予想しただろう? あの頃は、ロシアが世界中から経済制裁をかけられて、ロシアの言うことなど誰も聞かないように見えていた。これまで世界を支配してきた世界銀行に逆らえるわけがなく、米ドルに楯突いたりしたら、ろくなことにはならないと思えていた。ところが今や、世界中の多くの国がBRICSに加盟して米ドル取引から離れようとしているのに、首都を空爆されもしなければ、大統領を暗殺されもしないのだ。これは、ほんの一年前にだって、あり得ない不可能なことのように思えていた。

一方、西側諸国のメディアは、BRICSの拡大について報道しながらも、これは中国とロシアによる新たな一極支配だろうとか、内部分裂が起きて、大した力を持たないだろうとかコメントしている。つまり、これまでの一極支配の直線上の世界に、BRICSという新たな勢力が現れただけのように思っているのだ。こういう見解を信じて生きている人は、一極支配の世界に生き続けることになるのだと思う。BRICSもまた結局同じだし、西側世界の方がまだましなように思えるから、視点を変えようとはしないだろう。世界の半分近くがBRICSの方へ行ってしまっても、それで狭くなってしまった直線上の世界に、なおも生き続けようとするだろう。

しかし、世界が空間的に広がっているのがわかれば、こういう人たちにもちゃんと十分に生きる空間があることがわかる。それぞれが自分の信じるような世界を、自分のまわりに作り出して生きているだけのことなのだ。だから、たとえそういう人が自分のすぐ隣で生きていたとしても、自分は自分で自由な世界を作り出して生きていくことができるというのがわかるはずだ。ともかくも、そう考えることで、私たちはまわりの世界がどんな風であっても、まったくあり得そうにないところに新しい可能性を見つけてしまうだろう。


8月25日の夕方の空。まるで世界が空間的に広がったことを示しているような雲。


今回のBRICSサミットの閉幕。実に愛らしいクマさんたちですね。G7なんかの見せかけ感たっぷりの記念撮影とぜんぜん違うエネルギー放っています。


2023年8月25日

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【ウクライナは生物兵器戦争だったのか?】



昨年2月にウクライナでロシアが軍事オペレーションを始めてからすぐに、ロシア軍の特別部隊スペツナズがウクライナにある生物兵器を抑えに行っているという話が、諜報関係の筋から入ってきていた。ウクライナには、アメリカ国防総省が出資している生物研究所が30ヶ所以上もあって、そこで生物兵器を製造していたというのだ。この研究所は、表向きは感染症の予防のための研究をしているということだったけれど、しかし出資しているのは保健省ではなくて、国防総省だった。アメリカ国防総省は、世界中のあちこちで同様な生物研究所に投資していて、病原菌の採集や感染源になる動物の研究をしているということだった。

2020年に世界的なパンデミックを引き起こしたウィルスも、中国にある同様の生物研究所の近辺で始まったというので、もともと生物兵器として作られたものではないのかというような話が当初から出ていた。しかし、メディアの情報は恐怖を煽る目的で誇張されたようなものばかりだったので、生物兵器ではないかという話も、恐ろしく見せかけるために流布しているようにも思えた。ウィルスは感染力が強く、急激に悪化して呼吸困難に陥ると言われていたけれど、実際には、ほとんど誰もそうした症状を示してはいなかったし、しばらくして、例年のインフルエンザと大して変わりはないということがわかった。生物兵器として作ったのだとしたら、これは失敗作のようだ。だから、生物兵器だという話は、やはりデマだったのだろうと思っていた。

ところで、ロシア防衛省が、ウクライナにある30ヶ所のアメリカ国防総省の生物研究所を調査した結果、本当に生物兵器を開発していたという報告を、8月初めに公表したのだ。ロシア軍は、昨年3月にはウクライナの生物研究所を抑えていて、そこに残っていた病原菌のサンプルやデータを調査していた。武漢の生物研究所とウクライナの研究所とは、何と同じ人物が関わって研究を行っていたというのだ。グルジアにあるアメリカの生物研究所も繋がっていて、病原菌や血液のサンプルは、ウクライナ、グルジア、武漢をあちこちへとまわっていたらしい。

そこで行われていたのが、コウモリのコロナウィルスを人間に感染するようにする研究だったのだ。アメリカ国防総省が外国の生物研究所でやらせている研究は、病原菌の感染力を強くしたり、渡り鳥のように国境を越えて移動していく動物を感染源にする研究だった。それだけではなく、鳥インフルエンザや豚熱のように、家畜に被害を与える病原菌を、感染しやすくする研究も行われていた。こうした研究はすべて、表向きは感染を防ぐためにということで行われていたのだけれど、だったらどうしてそんな危険なものを作らなければならないのかわからない。しかも、それを国防総省の注文で行っているというのだから、これは生物兵器の開発に他ならないことは明らかだと思う。

実際、ペンタゴンが関わって感染症予防の研究を行うと、必ずパンデミックが起こると言われていた。ここ20年くらい急にパンデミックが頻繁に起こるようになったのは、実はそれと関係があったらしい。だとすれば、あれは自然の感染症などではなく、生物兵器を使った攻撃だったということになりそうだ。

ロシアや中国は、アメリカ国防総省が生物兵器をしかけてきているのを、すでに前から知っていたのだろう。2020年のパンデミックの時に、すぐに厳しい感染対策を講じていたのも、おそらくそのためだったのだ。国境封鎖して、ロックダウンしたのも、生物兵器をしかけられたからだ。しかし、しばらくすると中国もロシアもいち早く感染対策を解いていた。たとえ現実に人工ウィルスが撒かれたにしても、人間には免疫力というものがあって、短期間に抗体を作り出してしまうのだ。だから、感染力が強い病原菌ほど、短期間に集団免疫ができてしまう。ロシアと中国が厳しい感染対策を行って、それを短期間で解いたのは、そういうことだったんじゃないかと思う。

アメリカ国防総省が出資している生物研究所では、人々の遺伝子情報を集めていて、それによって、ある特定の遺伝を持っている人だけが害を受けるようなウィルスを開発していたそうだ。それで、コロナウィルスは、中国人が一番被害を受けるように作ってあったというのだ。そればかりか、遺伝子情報を使うと、特定の個人だけが害を受けるような病原菌さえ作ることができるという。そういう生物兵器を、アメリカ国防総省は、反米的な政策を取る大統領を暗殺するのに使っていると、ロシア防衛省は非難していた。

アメリカの諜報委員会のジェイソン・クロウは、北アメリカ安全保障会議で、アメリカ人は、遺伝子情報を取られないように気をつけたほうがいい、と警告していたそうだ。特定の人種、特定の個人を狙った生物兵器が作られる可能性があるからと。それは、アメリカ国防総省がすでにそうした技術を持っていたから、他の国でもやる可能性があると思ったからなのだろう。実際、軍備競争というものは、一方が始めたら他方も持たなければならないというようなものなのだから、この懸念は当然のことだと言える。

2022年にフランス大統領マクロンがモスクワに行って、プーチン大統領と会談したとき、マクロンがPCR検査を拒否したという話は有名だ。拒否した理由は、「遺伝子情報をロシアに渡したくない」からだった。つまり、そういう生物兵器が存在していることを、マクロンも知っていたのだ。大統領を暗殺するのに、遺伝子情報を使った生物兵器が使われているということもだ。あの頃、プーチンに面会する人は、PCR検査を要求されていたというのだけれど、それは生物兵器を使った暗殺が企てられていたからなのだろう。マクロンはPCR検査を拒否した結果、ジョークのつもりなのかと思うくらい長いテーブルをはさんでプーチンと会談していたけれど、そのような生物兵器が使われているとしたら、それも納得できる対応だ。

アメリカ国防総省が、中国とウクライナに多くの生物研究所を持っているのも、そこで中国人とロシア人の遺伝子情報を集めるためでもあったらしい。そこで、中国人とロシア人だけに害を起こす病原菌を作り、ばら撒いていたということになる。だとしたら、生物研究所というのも、軍事基地のようなものだと言える。そうした生物研究所が、ウクライナでも特にロシアに近く、ロシア系の人がたくさん住んでいるドンバスで数多く作られていたのだ。

昨年2月24日にロシア軍がウクライナへの侵攻を始めたとき、ウクライナ健康省から、ウクライナの生物研究所に、所有している病原菌を急遽すべて完全に破壊するようにとの指示が出ていたという情報が、当初から出ていた。その後WHOも病原菌のサンプルを破壊するようにと、ウクライナの生物研究所に指示を出していた。ということは、アメリカ国防総省は、ロシア軍が真っ先に生物研究所を抑えに来るつもりだということを知っていたのだ。危険な病原菌をたくさん所有していたから、それがロシア軍の手に渡ったら大変だと思ったからだ。

2020年のパンデミックで、世界中の保健機関がいかに腐敗した組織かを見てきたから、今さら驚きもしないけれど、それならばWHOもアメリカ国防総省と一緒に生物兵器攻撃に関わっていたということになる。世界中にあるアメリカの生物研究所で、生物兵器が作られていたことを知っていて、それを隠すことに協力していたのだ。WHOばかりではない。世界中の保健機関、特に感染防止に関わる医療機関の多くは、実はアメリカ国防総省の生物兵器部門とでも言えるようなものだったということになる。

ロシア軍が生物研究所を抑えたときには、すでに多くの病原菌サンプルや報告書などが焼却されたあとだった。しかし、それでも残っていたものがかなりあって、ウクライナの生物研究所には、数多くの危険な病原菌が培養されていたことが突き止められている。ペスト、炭疽菌、ブルセラ症、ジフテリア、赤痢、サルモネラ菌、レプトスピラ症、野兎病などが集められていたということだった。これらの病原菌は、人が感染したときに死ぬ確率が高い危険な病原菌だったり、家畜に感染したときに大きな被害があるものだったり、動物を感染源として広がっていく病原菌だったりだ。つまり、生物兵器として使えるようなものばかりを集めて培養していたのだ。

ロシア軍は、投降したウクライナ兵たちの血液を採取して検査してもいた。すると、多くのウクライナ兵から、普通あまりないような病原菌に対する抗体と抗生物質が多量に検出された。ということは、ウクライナ軍の兵士たちは、生物兵器の治験に使われていたのだ。また、ウクライナの生物研究所のある地方で、水疱瘡、ジフテリア、結核、麻疹、ポリオなどが異常に増えていたという報告もある。ポリオやジフテリアなどは、今日ではほとんど消え去っているのにだ。これは、人為ミスで漏れてしまったとかいうことではなく、地域の住人を使って感染実験を行っていたとも考えられるし、そもそもロシア人に対する生物兵器攻撃としてやっていたのかもしれない。

世界中には300以上ものアメリカの生物研究所があるというのだけれど、これは第三者の機関による監査をまったく受けていないのだそうだ。危険な病原菌を扱うような研究所は、安全性を確かめる公的な機関があってしかるべきだと思うけれど、実はそういうものがまったくない。中国政府は、アメリカ国防総省に対して、独立団体に生物研究所を監査させるように要請したというから、これは事実なのだと思う。

生物兵器というのは、毒性が強ければ味方もやられてしまうし、感染者がすぐ死んでしまうので感染が広がらず、意味がないと言われていた。コロナウィルスなどは、実際には普通のインフルエンザほどの毒性しかなかったから、生物兵器としては意味がないようだけど、しかしこれによって、経済に大打撃を与えることができてしまうのだ。これは、WHOなどの国際的な保健機関やメディアなどが危険なものとして恐怖を煽り立てたからこそ可能になったことではあるけれど、こうした国際的な保健機関はアメリカ国防総省と繋がっているし、メディア操作もアメリカ国防総省の手のうちだ。

すると、コロナウィルスはそもそも人を殺傷するという意味での生物兵器として開発されたわけではなく、パニックを起こして、経済の動きを止め、国を弱体化させるために計画されたものだったのかもしれない。実際、パンデミックが起こる前には、感染防止のためにということで、シミュレーションが行われるのだけれど、そこで演習しているのは、政府とメディアが連携して、どのようにパニックを演出するかといったようなことだ。コロナパンデミックが起こる数ヶ月前にも、イベント201という名前のシミュレーションが行われていた。そこには各国の保健大臣やマスコミが参加していたのだけれど、まったくそこで演習を行ったとおりに、コロナパンデミックは演出されていったのだ。

コロナウィルスのように感染力が強い病原菌は、すぐに広がって、集団免疫ができてしまい、それ以上は害をなさなくなってしまう。それで、いくつもの変異株を用意しておいて、次々と出して見せることになったらしい。しかし、いくら変異株といっても、やはり基本的な抗体ができていたら、病原菌は身体の深部に入っていくことができずに排除されてしまう。それで、変異株が出るたびに、症状はマイルドになっていって、インフルエンザどころか風邪の症状くらいのものになっていったけれど、それでも騒ぎは続いていった。

このパンデミックは、中国から始まって、インドのデルタ株、ブラジルのガンマ株、南アフリカのオミクロンと、BRICS諸国を次々と攻撃していった。死者の数が爆発的だとか、病院がいっぱいになっているとかいう報道が行われていたけれど、実際に現地にいた人たちは、まったくそんなことはなかったと言っていて、空っぽの病棟や普通に街を歩いている人たちの動画がSNSで拡散されていた。しかし、世界中で大騒ぎされてしまったために、事実上、経済封鎖されたのと同じことになっていた。

ドイツのコロナ調査委員会で証言していた南アフリカの医師チェティ博士は、どの変異株もマイルドだったけれど、変異株によって感染する人種が違っていたのが奇妙だったと言っていた。感染の波が来るたびに、アフリカ黒人ばかり、白人ばかり、インド人ばかり、と違う人種の人たちが感染しているというのだ。そこが、やはり何か人為的に作られたもののように思えると。それから、いったん回復して数日経ってから、一種のアレルギー反応で、呼吸困難を起こす人がときどきいると言っていた。それも、普通の自然の感染症には見られない現象だと。

ウクライナの生物研究所ローズモント・セネカは、現アメリカ大統領ジョー・バイデンの息子のハンターが創設したものだけれど、ここで作っていたコロナウィルスが世界中でパンデミックを起こすことになり、そのためアメリカ大統領選が郵便投票で行われることになったのだ。バイデンは、郵便投票で票を大量にごまかすことに成功し、選挙に勝った。郵便投票では本人確認がないし、投票期間が何日もあったからだ。それで、同じ人物に何百通もの偽造した投票用紙を投函させていた。このことは「2000のミュール(票の運び屋)」というドキュメンタリー映画で暴露されている。

アメリカではニューヨークで感染による被害がひどかったように報道されていたけれど、それによってパニックを起こし、トランプ政権に打撃を与えて、大統領選を郵便投票にさせるためにやっていたのだろう。ニューヨーク市内だけが、特別に死亡率が高かったそうなのだけれど、それは、ニューヨーク市の病院では、呼吸器系の入院患者全員に5日間レムデシヴィルを点滴していたからだった。この薬は、副作用として腎不全を起こすので、その結果、極度の肺水腫を起こして、呼吸困難で多くの人が亡くなった。それがアメリカの人々の恐怖を煽り、大統領選を郵便投票にさせることになったわけだ。

となると、2020年のパンデミック騒ぎから、アメリカ大統領選の乗っ取り、ウクライナでの戦争のすべてが、生物兵器によって世界を支配しようとする勢力と、それに抵抗する勢力の世界戦争だったということになるのかもしれない。先日、南アフリカで行われたBRICSサミットでは、情報の安全保障というようなことも話し合われたようだけれど、BRICS諸国は人工ウィルスと情報操作による攻撃をさんざん受けたあとで、ついに免疫ができたということなのかもしれない。


2023年8月28日

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【寄生する生き方と自生する生き方】



ロシアの防衛委員会のアレクセイ・シェヴゾフのインタビュー記事の中で、アフリカでの西側諸国の植民地支配を「寄生的」と言っていたのが、興味深かった。ニジェールのクーデタの報道を追っていて、つまりは、フランスがかつての植民地時代のままに、ニジェールの地下資源をタダ同然に採掘していたことが問題の中心にあったことが見えてきた。フランスはそのために、ニジェールに腐敗した傀儡政権を据えてきたのだ。それで今、軍隊が大統領を降ろして、暫定政権を取ることを宣言した。これはつまり、フランスの植民地支配からの独立運動と言えるものだ。

フランスは、何とかニジェールのクーデタを阻止しようとして、西アフリカ経済共同体に軍事介入させようとしているけれど、それは、フランスの経済がニジェールのウランに依存しているからなのだ。ニジェールからウランをタダ同然の値段で採掘できることを条件にして、経済を築いてきている。だから、いくら搾取するのが不当だといっても、何とかして搾取し続けようとする。これがまさに、寄生的なあり方なのだ。自立した生き方ができないから、他人に取りついて搾取し続けようとする。そのために、ありとある悪事を重ねることをも厭わない。

ヨーロッパでは、アフリカやアラブからの移民が増えて、それが大きな社会問題にもなっているのだけれど、これはそもそも経済のグローバル化から発していることで、経済のグローバル化とは、つまるところこの寄生的な経済のあり方なのだ。アフリカやアラブを搾取していなければなりたたないような経済をこしらえてしまった。そのため、アフリカやアラブが貧しくなることになり、アフリカやアラブの人々が経済難民としてヨーロッパに押し寄せてくることになる。ところで、経済のグローバル化で儲けているのは、グローバル大企業であって、一般市民ではない。だけど、移民が押し寄せてくることで、治安が悪くなったり、学校の教育レベルが下がったり、自国の民族文化が保てなくなったりして、被害をこうむっているのは、一般市民だ。

そしてそれを、民族差別はよくないからというようなことで、一般市民に受け入れさせているわけなのだ。もちろん、異文化を理解しようというのはいいことだし、アフリカやアラブからの移民に出ていけと一方的に罵倒を浴びせるようなことがいいことだとは思わない。しかし、問題がすり替えられている。問題なのは、民族の違いによる衝突というようなことではなく、搾取の構造なのだ。

民族の弾圧だとか、民族差別とかいう話になると、言語や宗教、民族文化の弾圧ということが言われるのだけれど、そういったことよりも重要なのは、実は、民族としての自立した生き方ができるかどうかということだ。つまるところ、民族文化とは、人種でも言語でもなく、その土地で自立した生き方をする技の集成だということができる。この自立した生き方ということが根幹にあるのであって、言語や習俗、宗教などは、それについてくる枝葉のようなものにすぎないとも言える。自立した生き方を壊したあとで、いくら言語や習俗を守っても、あまり意味はないのだ。そんなものを守ったからといって、民族文化を守っていることにも尊重していることにもならないと私は思う。

もともとどこの国でも、その土地で生活に必要なものをすべて作り出しながら生きていく文化があった。これが、自生するあり方であり、そうしたものこそが本当の民族文化と言うべきものだ。その土地の自然によって、食物をどう獲得するのか、どう加工し、どう保存して、どういう料理を作り出すのか、何から繊維を取って、衣類を作るのか、生活に使う道具は何から作って、どう使うのか、そうした技を人類は何百年何千年に渡って作り出し、伝承してきた。それは、芸術や民芸品としての価値という以前に、その土地で自立して生きていく生き方なのだ。

植民地支配であれ、経済のグローバル化であれ、それは自立した生活文化である民族文化を壊して、お金に依存する生き方に変えさせていくものだと言える。つまり、自生したあり方から寄生するあり方へ移行させてしまうものなのだ。そのため現代に生きる私たちは、ほとんどがお金がなければ生活していくすべを持たず、お金を得るためには魂も売ってしまうようなことにさえなっている。

ところで今、マリやブルキナ・ファソに続いてニジェールが植民地支配から独立する戦いを始めて、これがアフリカ中にも広がっていくような勢いになっている。ニジェールでクーデタが起きた一ヶ月後の8月30日には、今度は中央アフリカのガボンで、まったく同じようなクーデタが起きた。親子で50年以上もフランスの傀儡を勤めてきた大統領が選挙で再選されたのちに、この選挙は無効だとして、軍隊が暫定政権を取ることを宣言した。ガボンもまた、フランスの企業がウランの採掘をして大儲けしていた。アフリカのクーデタは、つまり、これまでずっと搾取され続けてきた資源を、自分たちの手に取り戻そうとする戦いなのだ。

7月末にサンクトペテルブルクで行われたロシア・アフリカ・サミットで、ウガンダ大統領が、「私たちは鉄鉱ではなくて、鉄鋼を売りたいのです。リチウムではなくてバッテリーを、カカオではなくてチョコレートを」と言っていた。アフリカは地下資源や農産物を安い値段で西側諸国に売り、西側諸国がそれを加工して、アフリカが得るお金の何倍も稼いでいる。それで、西側諸国にはコーヒーやチョコレートやバッテリーがあふれているけれど、その原料を供給しているアフリカは、今だに世界で最も貧しくて、食べるものにも欠いているような状況だ。それをウガンダ大統領は、「現代の奴隷制度」だと言っている。

西側諸国は、アフリカから搾取できなくなったら、経済が崩壊するというので、戦争でも何でも起こそうとしているわけなのだけれど、そもそもよその国のものをいつまでもタダ同然で受け取って、それを土台にして経済を築いているような構造こそは、寄生的なあり方なのだ。だから、何としてでも確保しようなどと考えるよりも、自生的な構造に切り換えることを考えるべきなんじゃないかと思う。

ほんの50年くらい前でも、自生的な生き方はまだ割と普通にあった。ちょっと田舎に行けば、どこでも家族が食べる米や野菜を作っていたし、どこの地方にも伝統の織物なんかがあって、糸紡ぎや機織りもやっていた。水も自分の家の井戸があったりして、生きていくために買わなければならないものは、基本的にあまりなかった。そうした自立的な生活が成り立ってこそ、人はその土地と有機的な繋がりを持って生きていき、そのことに誇りと満足感を持つことができる。そのような生き方をしていたら、他の国を搾取することにこだわる必要もないはずなのだ。

ロシアでは、ソ連崩壊後に西側資本に食い尽くされて経済がボロボロの状態になっていたとき、プーチン大統領が都市の人たちもダーチャを持てるようにして、そこでとにかく食料をある程度自給できるようにしたということだった。ダーチャというのは、最低600平米の庭がある別荘みたいなもので、街に住む人たちも、そこで週末を過ごして、野菜や果物を栽培することができる。食料を確保することにもなり、休暇を自然の中で過ごすことにもなる。だから、ダーチャさえあれば、たとえ街はインフレで貧困がひどくても、ともかく食べるものはあり、自然の中でのびのびとした時間を持つこともできる。ロシアでは、1990年代の最悪の経済崩壊の時代にも、実はダーチャで生き延びてきたところがあったのだそうだ。

ところでこのダーチャというもの、実はロシアにはピョートル大帝の時代からあって、ソ連時代の集団農業の時代にも、人々はダーチャだけは持っていたのだそうだ。600平米ほどの土地だから、さほど大きくはないけれど、家族が食べる野菜や果物くらいは自給できる大きさだ。とにかくそれさえあれば、経済がどうなろうと生きてはいける。そして、そうした土地を持つことは、ロシアではソ連の時代でさえ、誰もが持つべき権利のようなものとして認められていたということなのだ。これは、実に興味深い事実だ。

ロシアの人々を見ていて、西側諸国の人々とは違う、大地にしっかりと根を張った強さみたいなものを感じることが多いのだけれど、それもこのダーチャを持つことが基本的人権であるというような文化から来ていることなのかもしれない。第二次世界大戦後の世界は、次第に経済のグローバル化が進んでいって、人々は自生的な生き方というものを次々と捨てていってしまったのだけれど、今、アフリカが、これまで搾取されていたものを取り戻して、自立していこうとするとき、西側諸国もまた寄生的なあり方を捨てて、自生的な生き方を取り戻していく必要がある。

これは、共依存関係が解けるときに起きる、必然的なプロセスだとも言える。どちらが搾取していたにしろ、どちらも依存状態だったのだ。その依存関係を解消したときに、ともに自立的なあり方にシフトしていくことができる。そのときに、どの土地でも、大地は私たちが生きていくのに必要なものはすべて与えてくれているのだということを、私たちは思い出すことになるのだろう。まさに、そのように自立的なあり方になったときに、本当の意味での多極化が起こることになるのだと思う。それは、単に権力の中心が複数あるということではなくて、自立した国同士の対等なネットワークが作り出す、柔軟で強い協力関係の世界なのだと思う。


ロシアのダーチャ

2023年8月30日



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【SDGsの正体】


サステナブルというのは、持続可能と訳されているけれど、つまりは自然環境に負荷をかけない、バランスが取れる生き方をするということだ。そういうプロジェクトは70年代の頃からいろいろとあって、化石燃料を使わない地域のエネルギー供給システムだとか、農薬や化学肥料を使わない自然農業だとか、プラごみを出さない量り売りショップだとか、そういうものがいろいろな規模で行われてきた。国や地方自治体で洗剤や食品添加物を規制するとか、工業用水の排水を規制するとか、環境汚染を巡る市民運動から行われてきたこともたくさんある。

しかし、ここ数年で出てきたSDGsというのは、サステナブルを目指してはいるのだけれど、それまでのそうした環境改善のプロジェクトとはどうも毛色が違っている。サステナブルな開発の17の目的というのを挙げているのだけれど、そこには貧困や飢餓をなくすとか、機会均等だとか、ありとあるものが含められていて、目的がどうもあいまいになっているのも気になるし、このプロジェクトに資金を出しているのが、軍事産業とか化学産業とか石油産業とかの、環境汚染の原因になっているもので巨額の利益をあげてきたグローバル企業家だというのも、どうも変な感じがする。

ゴミを出さずに循環する暮らしをしようというグループとかにも、SDGsの人たちがいたりするのだけれど、そういう人たちは、だいたい製品開発のこととか、ビジネスの話ばかりに興味があって、他の人たちが廃物リサイクルのアイディアに夢中になっていても、ほとんど興味を示さなかったりする。同じくサステナブルを目指しているはずなのに、何だかまるで、まったく違う世界で生きている人たちのようなのだ。

ところでこの頃、C40都市気候リーダーシップグループというSDGsの国際機関が、2030年までに食肉と乳製品の消費も自家用車もゼロにする目標を立てているという話がSNSで拡散されていた。これは、世界中の96の都市が加盟して、サステナブルな街作りを目指すプロジェクトなのだけれど、その都市全体で、自家用車も持たず、肉食も乳製品も食べない生活に変えようというのだ。その他にも、新品の服は一年に3点までとか、1500キロ以内のフライトは3年に一回とか、細かく規定がある。

遺伝子組み換え作物や農薬を使った食品を規制するのじゃなくて、住民に肉も乳製品も食べるなというのだ。遠くから運ばれる安い衣類を輸入するのをやめて、地元の繊維産業を支援するとか、綿花栽培の農薬使用を規制するとかではなくて、住民に衣類を買うなというのだ。これは、SDGsなるものの正体を暴露してしまったかのようだ。環境破壊の原因になっているグローバル企業は制限しないで、消費者に責任を負わせようということなのだ。これは、サステナブルと言いつつも、似て非なるものだ。いや、似て非なるどころか、正反対だとさえ言える。

肉や乳製品は自然な食べ物ではないから、人間が食べる必要はないという説もあるし、食べない方が健康だという話もある。だから、食べない選択をするのもいいことだとは思うけれど、いろんな体質やいろんな食文化の人がいるのに、一様に食べるのをやめろというのは、人権侵害でさえある。肉も乳製品も食べないとなったら、タンパク質やカルシウムは、遺伝子技術を使って作った人工ミートだとか、工場で飼育される虫とかで摂れということなのだろう。これではさらに自然から離れてしまう。これで環境がよくなるとも思えないし、健康にいいとも思えない。こんなプロジェクトは、環境のことも、人の健康のことも何も考えてはいないようだ。要するに、サステナブルを口実にして、お金儲けをし、管理社会にしようという話なように思える。

このC40都市気候リーダーシップというのは、2005年からあって、ロンドンやパリなど世界中の大都市が加盟していて、東京もそれに入っている。ただ環境に負荷をかけない街作りを目指そうということなら、反対する理由もないし、それで多くの都市は加盟しているのかもしれない。だけど、2030年までに肉も乳製品も食べない生活に街全体でシフトしようという目標に、加盟している都市は納得するのだろうか? そもそもこんな目標は、いったいいつ、誰が決めたのだろう? 

こういう国際NGOは、加盟国が議論して評決するとか何とかの民主的なシステムがあるわけではない。つまるところ、組織に資金を出している人が一方的に決めるのだ。このC40都市という国際組織には、ブルームバーグやクリントン、ソロスなどの財団が資金を出している。だから、彼らがこの目標を決めたわけなのだ。加盟している都市が望んだからというのではない。

世界をいいところにするために、というような立派な目標を掲げて活動している国際NGOはたくさんあって、だいたいグローバル企業家が慈善事業という名目でやっている。各国政府や自治体にきれいに聞こえるプロジェクトを出して、いくらかの資金を提供するのだけれど、つまりは政府が公共事業として税金を使ってやらせるのだ。だけど、どの仕事をどこの会社に請け負わせるかは、政府ではなくてNGOが勝手に決める。それで、NGOに資金を出している財団が、自分が持っている会社に契約を与えることになる。つまりは、慈善事業のふりをして、政治家を買収して、税金を自分の会社に流しているということなのだ。

パンデミックのときには、このやり方でゲイツ財団が巨額の税金を流していたのを見ていたから、財団の慈善事業などというものが、どういう汚い金儲けをしているのかは、もうわかっている。それで、西側の国際NGOは、政治腐敗の温床のようになっているというのが現実だ。これもパンデミックで見てきたことだけれど、各国の政治家たちは、国民のためになるのかどうかも考えずに、国際機関に言われるままに、巨額の税金を出して、検査キットや不織布マスクや予防の薬などを買い込んでいたのだ。

だから、ロシアや中国は、こういう西側の国際NGOを規制している。ロシアは、ソ連崩壊後、西側NGOに政治を腐敗させられて、何もかも売り払われてしまった状態だった。経済が底辺まで落ち込んだあとで、プーチン大統領は、こういう西側の国際NGOを追い出すことで、ロシア経済を立て直したのだ。ところで、こういう風に西側のNGOを規制すると、自由経済を妨げる非民主的な国だとか独裁国家だとか、アメリカ政府が非難し始めることになる。それゆえに独裁国家呼ばわりされている国は少なくない。アメリカが独裁国家と呼ぶのは、つまりはアメリカ政府がNGOを使って政府を乗っ取れない国のことなのだ。それで独裁国家呼ばわりされて、経済制裁かけられたり空爆までされたりして、ボロボロにされてしまった国もある。しかし、ロシアと中国はともかくも西側NGOを規制することで、政治腐敗を一掃し、税金が国民のために使われるようになったので、経済が復興し、国は豊かになった。

C40都市に加盟している都市は、肉や乳製品の消費をゼロにしろということになったら、どうするつもりなのだろう? 北の方の寒い国では、冬場は新鮮な野菜がないので、干し肉や燻製肉でビタミンを摂る食文化がある。そうしたこともすべて無視して、環境のために肉を食べずに人工ミートを買えというわけなのだ。西側NGOにすでに腐敗させられている政治家たちは、それでも一緒になってやるのかもしれない。これもまた、私たちはパンデミックのときにすでに見てきた。政治家もメディアも一緒になって、いかに筋の通らないことであっても、国民に強要して、巨額の税金をグローバル企業に流していたのだ。あれと同様なことを、今度は環境破壊を脅しにしてやろうということらしい。

しかし、8月に南アフリカで行われたBRICSサミットで、来年から6カ国が新たに加わることになり、BRICSは今やG7を越える勢力になった。こうなった今、西側グローバリストはこれまでのように世界中を思い通りに牛耳るというわけにはいかなくなっているのじゃないかと思う。9月9日と10日には、ニューデリーでG20が開催されて、ロシアからはラブロフ外相がロシア代表団とともに参加することになっているけれど、ラブロフ外相は、今度のG20では、西側諸国が掲げるSDGsを批判すると言っていた。西側諸国は、エコロジーのテーマを政治的に利用している、というのだ。科学的に根拠のないことを押しつけて、経済的に弱い国を苦しめている、と。BRICSが拡大した今、G20ももう西側諸国の言うなりではない。

それでようやく、ロシアがSDGsについてどう考えているのかが、世界的にはっきりすることになる。ロシアもやはり世界経済フォーラムのグレートリセットのアジェンダに向かっているのだと言っている人もいるけれど、ロシアの環境保護のやり方は、SDGsのようなものとは正反対だと思う。ロシアでは、伝統的にダーチャというものがあって、都会の人々も自然の中で自宅用の野菜果物を栽培しているし、遺伝子組み換え作物も禁止されている。伝統的な生活を続けていけるようにもしているので、ロシアでは今でもトナカイとともに遊牧生活をしている人たちもいる。伝統文化を大事にして、それぞれの民族が伝統的な生活をしていけるようにするのが、もっとも自然環境のバランスが取れる生き方なのだ。ロシアは、超多民族国家で、まさにそうした多様性を実現している。

自然環境のバランスの取り方は、それぞれの地方、それぞれの文化で違っている。それぞれの民族は、長い歴史の中で、どのように食料を獲得し、どのように衣類を作り、どのように家を建てて、どのようにすべてが自然の中で循環していくようするかを培ってきたのだ。それを一切無視して、ただ肉食をやめたって、環境が整うわけもない。BRICSが掲げている多極化というのは、まさにそうしたことだ。すべての国、すべての民族に同じ基準を押しつけるのは、まったく無意味だし、それぞれの民族文化にあるバランスを壊してしまうことにしかならない。それぞれの民族が、何が自分たちにとって最適なのかを決めるようにするのが、つまるところ一番簡単で、一番バランスが取れるやり方なのだ。

シベリアでトナカイの遊牧をして暮らす人たち。これもロシア。


SDGのロゴ。見ているとゾワゾワ変なエネルギーを感じます。これは、何かサブリミナル操作が入れてある徴です。色の配置が落ち着かない感じ。濃い色を上に入れるのは、普通グラフィックデザインではやらないです。


逆にすると、エネルギー落ち着きます。だけど、色合いはやたらとダサいですね。どの色も、チャクラの色からずらしてあって、透明感もないのが、モヤモヤした感じです。チャクラのエネルギーを封じ込める効果になってると思います。


BRICSのロゴ。似てるけど、エネルギーがぜんぜん違います。濃い色が下に来ていて、ドシッと落ち着いてるし、色に透明感があって、オレンジ色が第2チャクラに共振する濃い目の色調で、繋がりに支えられる感覚があります。



2023年9月1日

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【サステナブルとグローバル】


SDGsの話を書いていたら、あれは地球環境が持続可能な開発なのではなくて、開発が持続可能なのだとコメントしてくれた人がいた。実際、SDGsがやっていることを見たら、まさにそうしたことのようだ。

SDGs は、Sustainable Developpment Goalsで、持続可能な開発のための目標ということになっているけれど、そもそも「持続可能 sustainable」と「開発 developpment」というのが、ベクトルが逆方向の概念だ。サステナブルといったら、なるべく元の状態に留まるようにすることを示しているけれど、開発というのは、元の状態を変えることを言う。「持続可能な開発 sustainable developpment」という言葉そのものに、強烈な違和感があるのだ。まったく逆のものが、無理やり一緒に共存させられているような感覚がある。

世界経済フォーラムのアジェンダには、よくその手の強烈な矛盾を抱えている表現がある。それがサブリミナルに入り込むパワフルな心理操作になっている。 SDGsのロゴも、色の配置で人を自然の状態から切り離して、操作にかかりやすい状態にするような心理操作が入れ込んであった。直感的に何だか気持ち悪いと感じるのは、だいたいそうだ。そういう感覚がするときは、どこかメッセージにごまかしがある。

どうやら SDGsというのは、地球環境を持続させるためのプロジェクトだと思わせておいて、実はグローバリストの経済成長を持続させるように作られているプロジェクトだということらしい。この奇妙なネーミングは、つまりそれを最初から意図してやっていたということになりそうだ。実際、SDGsがやっていることを見ていたら、それ以外のもののようには思えない。

自然環境を保持するには、なるべく近くで生活に必要なものをまかなうようにすればいい。もともと私たち人間は、地球のどこでもそのようにして生きてきたのだ。生活に必要なものは、すべてそこにある。自給自足的な生活をすることは、どこでも可能だ。自給自足でなくても、なるべくその地方でまかなうようにする地産地消でもいい。それが、一番簡単なサステナブルな生活スタイルを作るやり方だ。

ところが、経済成長とは、つねに新たな消費を作り出していくことにある。もともと地元にあるもので間に合っていた人たちに、遠くで生産される大量生産品を買わせようとするわけだ。だから、地元にあるものなどはよくないものだとか、害があるとか、ダサいとか貧乏くさいとか、ありとある暗示をかけて、工場で作られる大量生産品が必要だと思わせようとする。それで、それまで地元でできるもので満足していた人たちが、それを使うのをやめて、お金で買う大量生産品に依存するようになる。そうすると、お金を稼がなければならなくなり、自給自足的な生活をやめて、グローバルチェーンの雇い人になってサラリーをもらったりするようになる。それまでは生活に必要なものを得るのに、ほとんどエネルギーなど必要なかったのに、すべてが電力や輸送のための燃料がかかるようになる。すると、自然環境を保持する生活からは遠くなっていく。

だから、経済のグローバル化とは、そもそも自然環境を壊す方向にある。人々が自然と共生して生きていたら、グローバリストはお金が稼げないのだ。だから、どうにかして自然と共生した生活から引き離して、お金に依存する生活に切り換えさせようとする。それがまさに、「持続可能な開発」なのだ。すでに飽和状態になった経済の状態で、経済成長を持続させるために、人々をさらに自然との共生から引き離し、それによって自然環境をさらに破壊する方向を持続していこうとするのだ。

これは、3年前のパンデミックで起こったことと、どうも似ているようだ。感染症から人々を守ると称して、実際にはその反対のことが行われていた。しかも、感染症を恐れさせることによって、人々をますます不健康にし、感染症にかかりやすい状態にしてしまったのだ。何かを恐れさせることによって、依存状態を作り出し、消費を作り出す。このやり方で、すでに飽和状態になっている社会でも、莫大なお金を動かすことができるわけなのだ。

そして今度は、環境破壊を恐れさせて、消費を作り出そうとしているのが、SDGsだということらしい。二酸化炭素の排出を減らすためだといって、税金を投じて、森林を伐採して、太陽光パネルや風力タービンを建設している。石油を燃やす火力発電よりも二酸化炭素を出す量は少なくなるのかもしれないけれど、森林が吸収していた二酸化炭素は減らなくなるのだから、全体として二酸化炭素が増えるのか減るのかわからない。だけど、そもそもSDGsは、全体の二酸化炭素を減らすことなどを目的にしてはいなかったのだ。目的にしているのは、新たな消費を作り出し、グローバル企業に税金を流し続けることだ。だから、何かを建設したり、購入したりすることならやるけれど、森林を増やすようなことはやらないのだ。

オランダでは、窒素排出を減らすためにといって、家畜を殺していた。畜産業が成り立たなくなったら、農家は土地を売って、他のことでお金を稼ぐために、どこかの雇い人になることになる。お金に依存した生活になって、消費が増えることになる。結局、二酸化炭素が減るのか増えるのかわからない。ミサイルを戦場に送るのをやめれば、よっぽど確実に二酸化炭素が減るのに、そういうことはやらないのだ。その代わりに、家畜を殺している。本当に環境にいい影響があるかどうかなどは、どうでもいいらしい。二酸化炭素の排出量を減らさなければ、というのを、新たな消費を作り出す口実にしているだけなのだ。

こうしたまったく筋の通っていないことがまかり通っていくのも、パンデミックのときにさんざん見てきた。メディアやら政治やらに、ものすごいお金がばらまかれて、操作されているのだろう。SDGsというのは、まさにそうしたロビー活動をするためのプロジェクトなのかもしれない。人々を洗脳し、メディアを操作し、政治を腐敗させて、グローバル企業に巨額のお金を流すのを、黙って見ているようにさせている。そして多くの人たちが、いいお金がもらえるからとか、あるいはお金がもらえなくなったら困るからと、一緒にやっているわけなのだ。

パンデミックのときには、政治とメディアと医療機関の腐敗ぶりを目の前に見せつけられたけれど、それで私たちは、そうしたシステムから離脱して、自分の免疫システムの力を見直すことになったのだ。パンデミックのおかげで、医療システムがいかにすべてお金でまわっていたかも知ることができたし、多くの場合、本当には必要もないものを必要であるかのように思わせられてきたことも知った。それまで私たちは、多かれ少なかれ医療に依存させられてきたのだけれど、本当は私たちの免疫システムの方が、はるかに優れていたということを知ることになった。

だから今、SDGsに環境を破壊されそうになっているのも、また意味のあることなのかもしれない。私たちは、二酸化炭素の排出量とか、ある一部の数値だけで、自然環境というものが判定できるかのように思わせられているけれど、これもパンデミックのときにPCRの数値だけで病気かそうでないかが決まるかのように思わせられていたのと同じことのようだ。

人間に免疫力があるように、自然にもつねにバランスを保とうとする力が働いている。二酸化炭素の量が増えれば、二酸化炭素を分解して生きる生物が、繁殖するのだ。つまり、植物がよく育つようになる。人間の免疫システムが、つねにバランスを取るように動いているのと同様に、自然との共生もまた、つねに相互的なものだ。人間が住んでいるところには、生えてくるものが変わる。その人が生活に必要としているものが、ちゃんと生えてくることになっている。家のまわりには、必ず食べられる野草や薬になるものが生えてくるし、住んでいる人の体調に合わせてさえいるようだ。気候に合わせ、季節に合わせて、ちゃんとそのときそのときに必要なものが生えてきてくれる。

パンデミックのときに、医療に頼れないことを知ったように、自然環境についても、もう政府を頼りにできないということを、私たちは知るべきなのかもしれない。これまで私たちは、自然との共生から切り離されて、お金に依存する生活をさせられてきたのだけれど、人間が免疫システムを離れては生きていけないように、やはり自然との共生から離れては、生きていけないのだと思う。お金に依存していたら、都市に閉じ込められて、人工ミートをあてがわれることになるというところまで来て、私たち人間は、本当は自然の一部だということを思い出すのかもしれない。そうなったとき、実は私たちは、とてつもなく大きな力とともに生きていたことに気づくのかもしれない。自然との共生の世界は、これまで私たちが意識をそらされてきた領域だけれど、それを覗き込んだときに、ほとんど無限とも言えるような可能性が開かれている。その世界が開かれようとしているということなのかもしれない。

イラクサの種とハナビラタケ。庭に自生しているイラクサの種を採ったところ。網にこすりつけると、種だけ落ちる。イラクサの種もハナビラタケも、免疫力を高めるパワーフード。


2023年9月2日

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【千島列島に住んでいたのは誰なのか?】



第二次世界大戦は、1945年8月15日に終わったものと思っていたけれど、ロシアでも中国でも、第二次世界大戦の終戦記念日を9月3日としているのだそうだ。そのことを今年初めて知った。玉音放送があり、日本軍が無条件降伏したはずだったのだけれど、実は満州と樺太では、戦闘が続いていたのだ。

これについて、ソ連が日ソ中立条約を破って満州と樺太に侵攻してきたのだと、日本では言っている。しかしロシアは、満州の関東軍がソ連の国境警備隊や一般市民を攻撃していたので、軍国主義化した日本から人々を解放するための戦いを始めたのだと言っている。当時の関東軍については、この頃、東京で資料が発見されて、それによって、当時満州で戦争犯罪を行っていたことの証拠が出たということを、しばらく前にロシア外務省が報告していた。

樺太の歴史博物館では、9月2日から戦争の犠牲者を追悼する展覧会が開かれていて、そこではこの頃機密解除された資料が公開されているということだった。樺太にソ連軍が侵攻し始めると、一部の住民がソ連軍を歓迎していると日本軍は考えて、住民を虐殺していたのだそうだ。これはまるで、ウクライナのドンバス地方で起こっていたこととそっくりだ。

おそらく日本のメディアや政府は、こんな情報はロシアがプロパガンダのために作り出した嘘だと言うのだろう。ウクライナでも、実際にはウクライナ軍が、ロシア軍が撤退したあとの街にやってきて、住民を虐殺していた。このことは、ウクライナ軍の兵士たち自身が告白していたし、SNSに画像をシェアしたりさえもしていたけれど、西側のメディアや政府は、ウクライナ軍がドンバスの市民を虐殺しているなどという話は、ロシアの作り話だと言い続けてきた。日本を含めて、西側のメディアはパンデミックのことにしてもウクライナのことにしても、嘘ばかりを報道している。そして、ロシアが言うことはすべて戦争プロパガンダであり、嘘だと言ってきたのだ。そのことから考えると、第二次世界大戦のことについても、やはりロシアが言っていることの方が真実なのではないかという気がする。

第二次世界大戦当時の日本が、ナチス・ドイツとともに、ソ連を弱体化すべく戦わされていたことは事実だと思う。ナチスも、ドイツを軍国化してソ連と戦わせるために、イギリスの諜報部が工作員を送り込んで、ドイツを支配させたと言われている。第二次世界大戦は、イギリスやフランス、ドイツにとっては、アフリカやアジアでの植民地戦争でもあったけれど、ソ連はドイツに侵攻されたために、国土と国民を守るために、大変な犠牲を払って戦っていたのだ。第二次世界大戦でのソ連軍の戦死者は、800万人以上にも上る。ドイツでさえ500万人ほどなのにだ。市民の犠牲者はさらに多くて、1300万人以上だ。ドイツの市民の犠牲者は、戦死者よりも少なくて、200万人ほどだ。これはつまり、ソ連に侵攻してきた軍隊が、いかに残虐に市民を扱っていたかを示している。

だからこそソ連は、ベルリンまで攻略して、ナチス・ドイツを降伏させなければならなかったのだ。プーチン政権のロシアは、ソ連軍はヨーロッパをナチから解放したのだと言っている。そして極東では、軍国主義化した日本を降伏させるべく、戦ったのだと言っている。日本のメディアなどは、ソ連が領土を増やそうとして、侵攻してきたと言っているけれど、この犠牲の大きさを見れば、当時のソ連がそんな支配欲で動いていたとはとても思えない。この犠牲を根絶するために、死にものぐるいで戦っていたのだと考えた方が、ずっと筋が通るように思うのだ。

事実、ベルリンが陥落して、ドイツが降伏したあとも、日本は戦争をやめなかった。1945年7月26日にポツダム宣言が出されて、ドイツはそれに調印したけれど、日本は受け入れなかった。アメリカが広島と長崎に原爆を投下し、8月9日にソ連が参戦し、8月14日になってようやくポツダム宣言を受け入れて、終戦宣言があった。しかし、それでもまだ戦争は終わらなかったのだ。9月2日になってようやく日本はポツダム宣言に調印し、正式に降伏した。

このときに日本は、南樺太と千島列島の領土を失うことになった。それで、ソ連が終戦間際になって侵攻してきて、領土を奪ってしまったのだと日本のメディアは言っているようだけれど、そもそも南樺太は、1905年の日露戦争のときに、ロシア帝国から日本が奪ったものだ。ソ連にしてみれば、それを取り返しただけだということになる。

樺太にもともと住んでいたのは、ニブフ人というシベリア系の民族で、千島列島に住んでいたのは、アイヌ人などだった。彼らにしてみれば、ロシアになるか日本になるかは、どうでもいいようなものだったのだと思う。どちらにも帰属意識があるわけでもない。どちらがフェアに扱ってくれるかとかそういう問題でしかなかったんじゃないかと思う。千島列島に日本人がやってきたのは、明治になってからのことだ。北海道のアイヌ人たちも、日本文化を強制されたり、差別されたりしていたわけなので、つまりは明治政府による植民地支配と言えるようなものだ。

どの土地がどの国の領土だとか言う前に、一体そこに住んでいる住民に聞いたのだろうか? アイヌ人は、日本政府にはさんざん弾圧されてきたのだから、多民族を尊重してくれるロシアの方をあるいは選ぶかもしれない。ロシアには今でも、遊牧生活をしている人たちがいるけれど、北海道にはもともとの伝統的な生活をしているアイヌ人たちはもういないのだ。

ともかく当時日本の領土だった南樺太では、一部の住民はソ連軍を歓迎していたというのだ。この「一部の住民」というのが、どういう人たちだったのかは興味深いところだ。ニブフ人などのシベリア系の原住民の他に、朝鮮半島の人たちも、樺太には多く住んでいたらしい。北海道でのアイヌ人の扱われ方を見れば、彼らが日本の領土であることを喜ばなかったのは、ありそうなことだと思う。

日本が北方領土と言っている4つの島には、もともとアイヌ人が住んでいて、明治になってから、日本人が植民してきた。それで、1945年の9月2日に日本が降伏して、この島に住んでいた日本人たちは、引き揚げてくることになった。しかし、沖縄の人たちは、そのままアメリカ人になっていたのだから、古来からの住民ならば、どこの国の領土になろうが、土地に住み続けていく。日本が降伏したからと引き揚げてきたのは、もともとの住民ではなく、植民者だったからなのだろう。

ところで、北方領土が問題になるのは、もともとどこの国のものだったかということよりも、戦後の冷戦によって、軍事拠点として重要になるからなのだ。日本は日米安全保障条約によって、米軍基地がある。だから、ロシアも日本との国境に軍隊を配備しなければならないことになる。千島4島を日本に返還するにしても、米軍基地ができて、核ミサイルを配備するというようなことになるのなら、ロシアは当然返還したくはない。それで、プーチン政権は、まずは2島だけ返還してもいいと日本に言ったというのだけれど、このことは日本ではほとんど報道されなかったらしい。日本政府は、4島一緒でなければというような理由で、この申し出を断ったそうだ。これはアメリカからの差し金のようにも思えるけれど、要するにロシアを敵国とする理由を手放したくないのだと思う。日本がロシアと仲良くなったりしたら、アメリカは基地を配備する理由がなくなってしまうからだ。

戦争屋のグローバリストたちは、つねに世界を分断させておこうとする。だけど、彼らの画策が滅びれば、もはや隣の国を警戒して、軍隊を置いたり、国境線のことでカリカリする必要もなくなるのだ。プーチン政権が北方領土を返還しようと言ってきたのも、それで日本と平和的な関係が築けるのならば、たがいの利益になると思ったからなのだと思う。プーチン大統領は、就任して間もない頃、ドイツに対しても、協力関係を提案していたけれど、やはりアメリカのグローバリストに支配されているドイツは、冷ややかに対応した。ドイツや日本がロシアと協力関係を築いてしまったら、アメリカは基地を置く理由がなくなるし、技術力でももはやアメリカのグローバリストに太刀打ちができなくなるからだ。

第二次世界大戦の終戦記念日が、玉音放送のあった8月15日ではなくて、ポツダム宣言に調印した9月2日だと考えると、何だか本当に戦争が終わったような気がする。アメリカの基地が全国にあり、アメリカに影で支配されている日本では、本当の意味ではまだ戦争は終わっていなかったのかもしれない。ロシアや中国とともに、9月3日を第二次世界大戦が終わった記念日として祝うことができたら、本当に戦争が終わって、平和な世界が来るんじゃないかと思っている。

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樺太のニブフ人(ギリヤーク人)


2023年9月3日



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【本物のプリンセス】



2022年の2月にロシア軍がウクライナの内戦に介入してから、ドイツ人ジャーナリストのアリーナ・リップは、戦闘が行われているドンバスの現地から、動画レポートを送って、SNSで知られるようになっていた。西側諸国は、すぐに情報統制を始めて、ロシアの報道が入ってこないようにした。西側諸国でパンデミックの頃から視聴者が増えていたRTなどは、検閲がないテレグラムでさえもアカウントを消されたりした。主流メディアでは、ロシアが一方的に侵略してきて、市民に残虐行為を行っていると報道し続けていた。ドンバスは、2014年からずっとウクライナ軍に攻撃され続けていて、ボロボロになった集合住宅がたくさんあったのに、それがすべてロシア軍が破壊したと報道していたのだ。

その中で、アリーナ・リップは、ドンバスから、人々がロシア国旗を掲げてロシア軍を歓迎している画像や、ドンバスの人々が、攻撃したのはウクライナ軍だと言っている画像、ロシア軍が侵攻する前からボロボロに破壊されていた建物などを見せていた。30前の若いきれいな女の子が、危険な戦闘地域からレポートしている。彼女は、父親がロシア人、母親がドイツ人で、ロシアの血が半分入っている。ロシアについて事実と違うことが言われて、信じられているのを見て、彼女の血がこうせずにはいられないのだと言っていた。

SNSを通して現地の真実を伝えるジャーナリストたちは、西側諸国ではメチャメチャに叩かれる。アリーナ・リップも、銀行口座を止められてしまい、ドイツ語圏からの寄付金が受け取れなくなってしまった。その上、ドイツのメディアでは、ロシアの情報工作員だと言われて、誹謗中傷あることないことを書かれまくっていた。アリーナ・リップは、そういう記事をまたテレグラムにアップして、またこんなことを書かれたといって、冗談にしていた。

その彼女が、ドイツのテレビ局のインタビューを受けたのだ。どうせ侮辱的な質問をされて、悪く受け取れるような部分だけを切り取って報道されるのは、わかっていた。同じくロシアに住んでいて、ドンバスの真実を報道し続けているドイツ人ジャーナリストのトーマス・レーパーは、「俺だったら、質問の答えのすべてを報道するという条件でなければ、インタビューなんて応じないけれど、アリーナの勇気はあっぱれだ」と言っていた。彼女は、メディアがどんな風にインタビューを歪曲するのかを見せたいのだと言っていたそうだ。それで、そのインタビューがテレビで放映される一日前に、テレグラムから、カットしていないインタビューの動画をシェアしていた。

トーマス・レーパーは、そのインタビューの動画を見て、インタビュアーの質問があまりにひどいものなので、とても全部見ていられなかったと書いていた。17分ほど見て、それ以上は見られなかったと。こういうインタビューはパンデミックの頃に何回か見たけれど、まるで極悪犯罪者の審問みたいなやつだ。去年まで駐日ロシア大使を勤めていたガルージン大使が、ブチャの虐殺事件について日本のテレビのインタビューを受けた動画も見たけれど、あれもそんな風だった。インタビューなんていうものじゃない。詰問という以上に精神的拷問だ。

アリーナ・リップは、そんなインタビューを何時間にもわたって受け、質問に堂々と答えていたようなのだけれど、昨日、テレビで放映されたのは、その長いインタビューを切り刻んで編集して、元の意味とはまったく違うようにしたのを5分ほど流しただけだったそうだ。その放送があった翌日の今日、その放送への答えとして、彼女は短いメッセージ動画をテレグラムにアップしていた。自然の中のきれいな川の流れに足をひたしているショートパンツ姿のアリーナ・リップが、「あの番組を見て、私が言えることは、ここロシアは美しいっていうことよ」と言っていた。一分もないその動画で、彼女はただ、ロシアの自然の美しさだけを語っていた。しかし、彼女がひどく傷ついているのは、はっきりとわかった。これまでもメディアにひどいことを書かれたことは何度もあったけれど、彼女はいつも冗談にして面白がっていた。だけど今回は、もう冗談にすることもできないくらい、打ちのめされているのがわかった。しかし彼女は堂々として、ロシアの自然の美しさについて語っている。ここにいられることが幸せだと。

その動画には短い文章がついていて、「真実はいつも光を浴びるし、愛と光を勝ち得るのよ。あなたたちが平和とともにありますように。あなたたちのプリンセス」と書いていた。「プリンセス」と言ったのは、ドイツのテレビ番組のタイトルが「偽情報のプリンセス」というものだったからだ。番組の放映がある前には、アリーナはそれについて、「見て、私、プリンセスにしてもらったわ!」と笑い事にしていた。それでその番組のあとで、「あなたたちのプリンセス」と書いていたのだけれど、打ちのめされながらも堂々として、ロシアの自然の美しさを語っているアリーナ・リップは、本物のプリンセスのオーラを放っていた。

とことん打ちのめされて、なおも希望を失わないで毅然としている人は、本物の高貴さのオーラを放つのだ。ありったけの希望をすべて手放して、もうどこにも希望がないはずなのに、それでも真実が光を浴びることを信じ続けている。その信念は、何の根拠もないがゆえに、人間の高貴さそのものの力を持つ。

最初からわかっていたことなのに、どうしてそんなインタビューなんか受けたのかと、何人もの人もがコメントしていた。だけどそれゆえに、彼女の勇気の前に頭を下げるしかない。そんな経験をするために、彼女はこんな試練に身をさらすことになったのだろうか? 真実のために身を犠牲にするような体験を通して、人は本物の高貴さを得るものなのかもしれない。


アリーナさんの動画アカウント。アリーナさんのドンバスシリーズとともに、ドイツのテレビ局の番組三部作もシェアしてありますが、とても見れたものではないです。アリーナさんが、ロシア政府の工作員だとして、ロシアの政治家と一緒にいる写真が出たり、インタビューで「私はロシアのプロパガンダ工作員だと言われているけど」と言ったところだけ切り取ってたり、メディア専門家と称する人が、「ドイツでロシアのプロパガンダを信じている人たちは、ほとんど全員がアリーナ・リップのテレグラムチャンネルを毎日見ています」とか言っているところとかが繋いであります。

これこそプロパガンダなんですけど、自分がやってることを相手がやってるみたいに言うのが、プロパガンダの常套手段みたいですね。あまりに汚くて、卒倒しそうです。いくらお金もらってるのか知らないけど、一体どういう神経でやってるのかと思います。

2023年9月7日



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【大英帝国とロシアの戦い】



パンデミックのときから、シティ・オブ・ロンドンが世界征服の計画を持っているというようなことが、言われていた。フュルミヒ弁護士たちの大陪審のシミュレーションに、イギリスの元諜報部員のアレックス・トムソン博士が出てきて、そういうことを話していた。シティ・オブ・ロンドンのごく少数の血族が、大英帝国時代と同様に世界を征服しようとして、お金と心理操作とで人々を操ろうとしているのだと。

パンデミックのときに、メディアによる心理操作が行われていることが、初めて大きく表に出てきたのだけれど、トムソン博士によれば、シティ・オブ・ロンドンのグローバル・エリートたちが、心理操作による世界征服を考えていたのは、今に始まったことではなく、19世紀の頃からなのだそうだ。19世紀始めのナポレオン戦争から、戦争が特権階級である騎士たちによるものではなく、徴兵制になった。だから、国民をいかに戦争に駆り立てるかが、重要になったのだろう。

ヒトラーは、イギリスのタビストック心理研究所で心理操作を受けて、ドイツを軍国主義化するべく送り込まれたのだという話がある。これがどこまで根拠のある話なのかはわからないのだけれど、しかし今、ウクライナがまさに同じ心理操作でファシズム化されていて、そこにイギリス諜報部が関わっていることから考えるに、やはりナチスもイギリスで作られたのだろうという気はする。第二次世界大戦では、イギリスはドイツと敵対して戦っていたのだから、どうしてわざわざドイツを軍国主義化したりするのかと思うけれど、イギリスのグローバル・エリートの狙いは、ドイツにソ連を攻撃させることだったらしい。

それでドイツでは、ロシア人は残虐だという話が、あることないこと報道されていた。パンデミックのときにも見てきたけれど、あるものが恐ろしいという報道を繰り返し聞かされていると、それが筋が通っていようがいまいが、人は感情的に条件づけられてしまい、犠牲を払ってでも戦わなければならないように思い込んでしまうのだ。近代の戦争では、つねにメディア操作によって恐怖の印象が作り出され、戦争に駆り立てられていく。ある意味、情報操作の手段さえ持っていれば、どんな戦争でも自在に起こすことができてしまうようだ。

表向きは英米はナチス・ドイツに敵対していたけれど、実はアメリカの企業を通して、ドイツに軍事援助をしていたということを、最近ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーの記事で知った。ドイツは経済封鎖されていたはずなのに、ロックフェラーはあいかわらず石油を送り続け、フォードやコダックは、トラックや武器を送っていた。IBMは、何とユダヤ人狩りのためのデータ処理の仕事を請け負っていたそうだ。

ヒトラーが、イギリスの諜報部によって送り込まれた工作員だという説と、英米が裏でドイツを援助していたという事実は、きれいに一致するようだ。表向きは、英米はソ連と連合を組みながら、裏ではドイツを援助して、ソ連を攻撃させていた。それでドイツがソ連を降伏させることに成功したら、ドイツへの援助を断ち切って、英米が乗っ取るというようなことを考えていたのだろう。ところが、この計画は計算通りには行かなかったのだ。

数ヶ月前に、ロシアで第二次世界大戦のときの映像資料が機密解除されて、公開されたということなのだけれど、この資料というのは、連合国側の国々が、実は影でドイツ軍とともに戦っていたということを示すものだった。イタリア、ハンガリー、ルーマニア、それに日本がドイツの側で戦っていたのだけれど、実はそれだけではなく、表向きはソ連と連合してドイツに敵対して戦っているはずのフランス、オランダ、デンマーク、ノルウェーなどの国々からも、傭兵という形でナチス軍に援軍が行っていた。しかも、それぞれ部隊を作ってドイツ軍とともに戦っていたというのだ。この資料をロシアはそれまで、外交関係に支障をきたしたくないという理由から、機密扱いにしていた。

これは、今ウクライナで起きているロシアとの戦争の状況と、あまりにもよく似ている。表向きはウクライナだけがロシアと敵対して戦争しているけれど、裏ではNATO諸国のすべてが参戦しているようなものなのだ。大々的な資金援助や武器援助だけではなく、傭兵という形で、実はNATO諸国の軍隊が送り込まれている。ウクライナ軍とともに戦っている傭兵たちの多くは、NATO軍を退官して、個人的な傭兵としてウクライナに行っているというのだ。グローバリストのお金なのか、国の税金なのかはわからないけれど、そのために、どこからか巨額な資金が出ている。

第二次世界大戦には、ナチス・ドイツは、フランスやオランダ、ポーランドやウクライナを占領していったから、つまりはこれらの国はドイツの一部として一緒に戦っていたということになるのだけれど、ベルリンが陥落して、ドイツが降伏したとなったら、これらの国はナチスの犠牲者だったということになって、戦争犯罪を問われなかった。ナチス・ドイツの政権であるフランスのヴィシー政権の時代には、ナチス政権に抵抗して戦う人たちがレジスタンスと呼ばれていたけれど、この時代にはレジスタンスは実は少数派だった。大多数のフランス国民は、ナチスと一緒になってソ連に敵対して戦っていたのだ。ナチスの理想に心酔していた人たちさえ、少なくはなかったそうだ。

サンクトペテルブルクでも、ナチス・ドイツによる包囲戦が2年半にもわたって行われ、64万人もの市民が犠牲になった。それだけの犠牲を出しながらも、ソ連は戦い続けて、ナチス・ドイツに占領されていた土地を解放し、ついにはベルリンを陥落させ、ナチス政権を降伏させるにいたったのだ。これは、シティ・オブ・ロンドンにとっては大きな誤算だったのだろう。それというのも、ベルリン陥落のあとで、当時のイギリス首相ウィンストン・チャーチルは、ソ連に対して戦争をしかける計画を立てていたというのだ。これは、アンシンカブル作戦(operation unthinkable 想像を絶する作戦 )といって、1945年5月22日とあるから、つまりはベルリン陥落の2週間後だ。それまで一緒に連合国としてナチス・ドイツと戦っていたはずなのに、ドイツが負けたとたんに、今度はソ連を攻撃しようというのだから、やはりもともとの目的はソ連を崩壊させることだったのだろう。そのために、アメリカだけでなく、何とドイツとまで同盟を組んで、ソ連を攻撃しようとしていた。それで、日本はソ連の側につかせる計画だったそうだ。

どの国がどちらの側について戦うなんていうことを、どうしてこんなに簡単に変えてしまえるのだろう? このことは、シティ・オブ・ロンドンにとって、戦争とは資金を投じてどうにでもすることができるようなものだということを示しているように思える。どの国がどちらにつくのかということも、政府を買収するとか、資金を投じてプロパガンダを拡散するとか、軍備にお金を出すとかいうことで操作できるようなものなのかもしれない。そのために、チャーチルはソ連が脅威だというプロパガンダをばらまき始めたのだ。その頃には、連合国にとっては、ソ連は戦友国であって、脅威だというような意識はまったくなかったらしい。それで結局、この計画は実施されなかったのだけれど、その代わり終戦の翌年には、チャーチルは東西冷戦を宣言して、ソ連との軍備競争が始まり、NATO軍が作られ、米軍が世界中に駐留するということになったのだ。そして、ソ連が脅威だというプロパガンダは、冷戦態勢を保つ口実として、絶えず語られることになった。

スターリンが残虐な独裁者だという話も、実はその頃から作られていった話のようなのだ。スターリンが意図的にウクライナ人を餓死させたと言われているホロドモールという事件も、実は1980年代になってアメリカのNEDから出てきた話だった。それまでは、ホロドモールという言葉さえ存在していなかったというのだ。ただ大飢饉の年が2年続いたために、多くの餓死者が出たということで、意図的にウクライナ人を狙ったわけではなかったし、被害が出たのはウクライナだけではなかった。失策ではあったかもしれないけれど、意図的な虐殺といったものではなかったのだ。アメリカのNEDというのは、もともとアメリカ中央情報局(CIA)が行っていたプロパガンダ戦略を引き継いだ組織で、アメリカが敵対させたい国が脅威だというプロパガンダを作り出すための組織だと言える。意図的にある民族を虐殺するような国だと人々に思わせることができれば、その国を戦争に駆り立てていくことができるからだ。

スターリンとチャーチルの目を、内なる子供の目で見てみれば、明らかにチャーチルの方が大悪党だということは、かなりはっきりとわかる。それに対してスターリンは、善人ではないかもしれないけれど、悪党のようにも思えない。世界中から攻撃を受けながら、何とか国を保とうとして、戦っていたのだろうという気がする。実際、今のロシアでも、スターリンについては評価が分かれているそうだ。非難すべき点もたくさんあるけれど、しかし彼が西側からの攻撃に耐えられるような国を作ったということは、否定できないと。飢饉で農村に多くの犠牲者が出たのも、スターリンが工業化を急いでいたために、都市への食料供給を優先していたからだったのだそうだ。だけど、その急速な工業化がなかったならば、ソ連はナチス・ドイツの攻撃で持ちこたえていたかどうかわからないというのが、多くのロシア人の見解だそうだ。

ロシア帝国が倒されてから、第二次世界大戦、冷戦、そして今のウクライナの戦争と、その背景にあったのは、ロシアを解体することで、世界征服を成し遂げようとするシティ・オブ・ロンドンの支配欲だったようだ。それが今、ついに最終的に崩壊しようとしているようだ。西側メディアのプロパガンダを信じていない世界中の人たちが、ロシアを応援しているのは、ロシアが世界統一支配を妨げる最後の砦だからだ。連合国と同盟国でもなく、NATOとロシアでもなく、世界統一支配へ向かってプロパガンダ戦を繰り広げるシティ・オブ・ロンドンと、多極的な調和を望む人々の間の、100年にわたる戦いだったのだ。

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9月7日の富士山。撮影は中島心也真也さん。


2023年9月8日



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【静かに世界が引っくり返った】



ニューデリーで開催されているG20の共同声明が、初日の9月9日に早々と出されていた。今回のG20では、参加諸国の見解が大きく違うので、共同声明が出ない初めてのG20になるのではないかと言われていたのにだ。

今回のG20については、西側メディアはやけに静かだった。3月にやはりニューデリーで行われたG20では、ドイツ外相がロシア外相ラブロフに、ウクライナでの戦争をやめなさいとヤブから棒に非難したのを、西側メディアはまるで英雄行為みたいに大々的に報道したりしていた。だけど今回のG20については、西側メディアはほとんど何も報道していないようだ。ただ、ロシア大統領のプーチンが出席しないのは、逮捕を恐れているからだろうとか、いたるところにインドのモディ首相の写真が大きく出ているのは、G20を政治的に利用しているんじゃないかとか、そんな細かいことしか書いていなかった。

アメリカ大統領のバイデンは、ロシアのラブロフ外相とも会わず、中国の代表とも言葉を交わさないままに、2日目のイベントには出席しないで、ベトナムへ移動したそうだ。共同声明にウクライナの戦争についてロシアを非難する文言がなかったことを批判しているメディアもあったけれど、アメリカもロシアも、共同声明については、ウクライナの戦争のことでモスクワを叩くのをやめたのはよかったと評価していたということだった。

ものごとは、どちらの側から見るかで、まったく正反対になるのだということを、このG20は明確に見せてしまったかのようだ。モディ首相の写真にしても、議長役を務める彼に信頼を置いている国々にとっては、首相自らが歓迎の意を表しているというように受け取れたことだろう。しかし、モディ首相の主導によって、G20を思い通りにするのを妨げられるのではないかと恐れている国にとっては、いたるところに貼られているモディ首相の大きな写真は、独裁者に圧倒されるような脅威を感じたかもしれない。

初日に共同声明が出たものの、この話し合いは、G20で最も困難なものだったそうだ。西側諸国は、ウクライナの戦争のことで、ロシアを一方的に非難する文言を入れようとしたけれど、約半数の参加国は、これに反対した。それで、「国連憲章に基づいて、領土の統合と国の主権を守るべく、平和的な解決を目指す」というようなニュートラルな表現になった。

これまた、どちらの側から見るかで、まったく正反対になる文言だ。しかしここで、西側諸国が好んで使う「規則に基づいてrule based」ではなくて、国連憲章と国際法に基づいて、と明言してあるのは、もはや西側諸国が自分勝手な解釈を世界に押しつけることはできなくなった、ということを示しているようだ。

西側諸国から見ると、ロシアがウクライナに侵略して、クリミア半島やドンバスを占領したのだから、ロシアが領土の統合と国の主権を侵している、ということになる。しかし、クリミア半島もドンバスも、ウクライナ政府に軍事攻撃を受けたために、住民投票でロシア併合を決めたのだ。そのことを考えるならば、人権を侵しているのはウクライナ政府であり、ロシアは国連憲章で定めている民族自決の原則に基づいて、クリミア半島とドンバスを併合しただけだということになる。

昨年の国連総会でも、ロシアが一方的に侵攻しているという見解を、西側諸国が世界中に押しつけて、ロシアを非難する決議を出した。世界中のほとんどの国々は、この決議に賛成したのだけれど、実際に西側諸国が主張するロシアへの経済制裁を行ったのは、日本と西側諸国だけだった。実のところ、多くの国々は、ロシアが一方的に侵攻しているとは思っていなかったけれど、アメリカの提案に楯突いたりしたら、どんな嫌がらせを受けるかわからないというので、賛成票を投じたということだったらしいのだ。実際、アメリカは、ロシアに対して経済制裁を行わないからという理由で、その国に対して経済制裁をかけると脅したりしているのだから。

これまでは、G7が決めたことに世界中が従うようにするための組織といったようなものが、G20だったのだと思う。どこの国が戦争に責任があるのか、何が民主的で何が人権の侵害なのか、すべては西側諸国が自分たちに都合のいいように決めて、その見解を世界中に押しつけてきたのだ。ドンバスの住民投票は民主的に行われなかったから無効だと西側諸国が言ったら、他の国は黙って受け入れなければならず、イラクの空爆は防衛のためだから正当だと言えば、それも受け入れなければならなかった。民主主義だとか、国の主権だとか人権だとか、どれも誰も否定しないような概念だけれど、それをどう解釈するかは、西側諸国がその度ごとに都合のいいように決めてきたのだ。

まるで、西側諸国だけが民主主義が何であるかを語る資格があり、他の国々は民主主義のことなどわからない未開の国々だとでも思っているかのようだ。実際、そのように思ってきたのだろうし、それで他の国々が西側の見解に抗議するようになると、脅しや暴力を使って、黙らせてきたわけだ。これは、民主主義なんていうものではなく、ヤクザが使う手だ。

ところでそれが、もう通らなくなっていることを、今回のG20は世界にはっきりと示してしまったようだ。前回のニューデリーでのG20から半年が経つけれど、その間に世界は大きく変わっていた。あのあと、中国首席の習近平がモスクワを訪問して、プーチン大統領との歴史的な会談があった。これまで敵対してきたアラブ諸国が次々と和解していき、サンクトペテルブルクの国際経済フォーラムが、ダヴォスの世界経済フォーラムを追い越す規模になり、BRICSは8月のサミットで6カ国が加わることになり、G7よりも大きな経済ネットワークになった。

その間ロシアは、これまで表に出すことができないでいた情報を次々と公表していき、西側メディアが抑えている国々以外のところでは、西側諸国が語る民主主義や自由経済なるものが、形を変えた植民地支配の口実にすぎないことが、共通認識になっていった。BRICSが信頼できる国際経済ネットワークになっていった結果、もはや西側諸国の経済制裁を恐れる必要もなくなった。7月末に起こったニジェールのクーデタも、西側諸国は経済制裁や軍事介入で脅しているけれど、ニジェールの暫定政権は意に介している風ではない。あれから一ヶ月以上経って、最後通牒の期限もとっくに切れているけれど、軍事介入は実現していないし、西側諸国の傀儡政権を倒す軍事クーデターは、今やアフリカ全体に広がっていく勢いだ。

今回のG20の共同声明は、西側諸国がこれまで表に掲げて他の国々を騙していた理想を、二枚舌を使わせないように抑えたあげく、守る約束をさせてしまったといったようなものに、私には思える。民族の平等も、自由と人権、民族自決の原則も、これまで西側諸国が謳ってきておきながら、自分たちは実際には守っていなかった。それを、これからはちゃんと守ってくださいと突きつけてしまったのが、今回の共同声明だったように思える。西側諸国としては、自分が押しつけていた理想なのだから、文句は言えなかったわけだ。

ロシアが一方的に破棄したといって西側諸国が非難していた穀物合意のことも、今回の共同声明では、「ロシアとウクライナの穀物や肥料の輸出ができるようにする」としてあって、ロシアを非難する内容ではなかった。実際に穀物供給を受けていたアフリカの国々は、穀物合意が有効だった間も、ウクライナからの穀物はほとんど来ていなかったことをちゃんと知っているし、それよりもロシアから穀物輸送が経済制裁で妨げられて困っていたのだ。

西側が謳っている「持続可能な発展」も、共同声明に入っていたけれど、西側諸国はこれを世界中の国々に風力タービンや太陽光パネルや電動自動車を大量に売りつける口実にしようとしている一方で、BRICS諸国は文字通りに自然環境を保持する方向へ持っていってしまうのかもしれない。ロシアのラブロフ外相は、G20が始まる前に、西側が言う「持続可能な発展の目標」は、科学的な根拠もないものだから、経済的に弱い国々を不利にしないように抗議するということを言っていたのだ。

今回のG20は一つの大きな転換であり、これからグループ内の変革が起こっていくということを、ラブロフ外相は記者会見で言っていた。表向きは、共同声明の言葉が微妙に変わったのにすぎないけれど、もはや西側諸国はその言葉をその都度その都度で勝手に解釈して、他の国々に押しつけることができなくなったのだ。そうなってみて初めて、今までの国際会議や国際協定が、実のところはいかに差別的な植民地主義的なものであったかが、見えてくるようだ。それはまるで、年下の兄弟をいいように言いくるめて、いつもゲームに勝つようにしてきた兄姉が、いつか子供ではなくなった妹弟を対等に扱わなければならなくなる時が来るのと、何だか似ているようだ。

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G20で議長を務めるモディ首相


アフリカ共同体の代表を歓迎するモディ首相

モディさんのYouTubeアカウントの動画です。G20の2日目、各国の代表者が、ガンディの記念碑に花輪を捧げるセレモニーに参加しました。ガンディといったら、植民地支配と戦ってインドを独立させた人物。それに西側の首脳たちも敬意を表させられているというのが、今回のG20の締めくくりだというのが、何だか象徴的です。

ここは聖地として裸足で歩くのが礼儀だそうですが、西側の政治家の何人かは、靴下か白いスリッパみたいなものを履いています。

アメリカ大統領はその後ベトナムへ行き、その後の会議では、次の主催国であるブラジルに議長のハンマーが渡され、各国の代表とモディさんが別れの握手をしています。


2023年9月10日



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【クールなメディアをホットにする手法】



先日の公開セミナーで、メディアによる心理操作の話になったときに、マクルーハンの話が出た。セミナーでは、内なる子供の野性的な感性を信頼することで、メディアの虚偽を見破るのを皆で練習していたのだけれど、子供のような素直な目で画像をじっと見たら、メディアのたいていの嘘は見破ることができる。しかし、それでも多くの人々がメディアの嘘を信じてしまうのは、同じことを何百回、何千回と繰り返し聞かされるからなのだ。素直な子供の目で見たら、この人が悪人のわけはないとわかるのに、「独裁者XX」とかいろんなメディアで何百回も聞かされているうちに、ほとんどの人はそうなのだと思ってしまう。何をしたというので独裁者というのか、わかっていないことも多い。とにかく皆がそう言っているのだから、そうなのに違いないと思ってしまうわけなのだ。

これは、オペレーション・モッキンバードといって、アメリカ中央情報局(CIA)が公に軍事戦略として行っているメディア操作だ。モッキングバードというのは、何でも真似をするのでマネシツグミと言われている鳥の名前で、何百回も同じことを聞かされていると、聞いたままのことをそのまま繰り返し始めるようになる心理現象のことを言っている。アメリカ情報局は、意図的にメディアを操作することで、人々が同じ言葉をいたるところで何回も聞くように仕向けている。テレビでもラジオでも、新聞でも雑誌でも映画でも、何度も同じ言葉を聞いていると、潜在意識までその言葉が入り込んでしまって、それ以外のことは考えられなくなる。つまり、人を思考停止状態にして、植えつけられた概念を信じ込むように、意図的に仕向けているわけなのだ。

だから、画像を素直な子供の目で見たら、どう見たって大悪党としか思えない政治家を、多くの人々は英雄的な人物だと思い込んでしまう。そして、どう見たっていい人にしか見えない政治家を、残虐な独裁者だと思い込んでしまうのだ。こういう思考になってしまっている人を、考え直させようとしたりすると、ヒステリックな反応しか返ってこなかったりする。そう思うのがまともな正常な人間で、そう思わないのは、頭のおかしい反社会的な人間だとか、思い込まされているからだ。だから、おかしな人間に引きずり込まれたら大変だという心理が働くのだと思う。まさにそのために、「陰謀論者」とか「XXのプロパガンダ」とかいう一種の差別用語が作ってあって、そのように思われたら、人生の終わりだみたいに思うように仕向けられている。

ところで、マクルーハンというのは、1960年代に初めてテレビが出てきた頃に、メディアについて語っていた学者で、メディアにはホットなメディアとクールなメディアがあるということを言っていた。ホットなメディアというのは、ラジオとか電話みたいに音だけのメディアで、感情的に呼びかけて、人を扇情的に煽り立てる強い力を持つので、「熱い」メディアだと言っている。その反対に、テレビみたいに映像が出るメディアは、ラジオみたいに聴覚だけに集中するのではなくて、全体が見えてしまうので、多角的な情報が入ってくる。そうすると、人をある一つの方向に持っていくことは難しくなる。だから、熱くはないクールなメディアだというのだ。

マクルーハンは、ファシズムはラジオだけの時代だったから可能だったのだと言っていた。テレビの時代になると、メディアが熱い力を持たないので、もう大勢の人々をファシズムに持っていくことはできなくなるだろうと。しかし実際には、当時よりもさらに進んだ多角的なメディアが存在している今、世界中の人々に同じことを信じさせてしまうようなことが現実になっている。

メディア操作を軍事戦略として研究していたアメリカ情報局としては、マクルーハンのこのメディア論は、まさに乗り越えるべき問題といったものだったのかもしれない。今、主流メディアに出てくる映像が、意図的に強い感情を掻き立てるように作られていることを考えるならば、それは、マクルーハンが言う「クールなメディア」をいかに熱いものにするかということを、究極まで追究しているかのようだ。反射的に恐怖心を掻き立てたり、同情を掻き立てたりするように作られている。敵対視させたい人物の画像を操作して、変なあやしげな人物のように見せたりもしている。暴力的な場面や、血の色や、泣き叫ぶ人の姿などが、繰り返し視界に入るように作っている。そのようにして、彼らは「クールなメディア」も人々をパワフルにファシズム的な方向へ導いてしまうようにしてしまったのだ。

しかしそれでも、やはり映像は多角的なメディアであるがゆえに、透かすように真実を見て取ってしまうことがまたできる。クールなメディアをホットなものにするための技巧が凝らされているということを知ってしまった人たちは、ニュース報道の映像を解析して、フェイクを見破るのを趣味にし始めた。そこは、やはりマクルーハンが言った通りだったと言える。巧妙に作られた映像でも、伝えようとする物語を破壊してしまうような何かが、どこかに映り込んでしまうのだ。パンデミックのときのイタリアの病院の隔離病棟として報道されていた映像で、カメラが端まで動いていったときに、端の方に防護服も何も着けていない警備員が座っていたのが、映り込んでしまっていたりした。瀕死の病人のはずの人物が、きれいに髪をセットして厚化粧していたこともあるし、抗議活動する人々をゴボウ抜きにして逮捕しているロシアの警察官が、キリル文字ではなくアルファベットでロゴが入った制服を着ているのが映っていたこともあった。

そうしたものが、まさにマクルーハンが言った、テレビがクールなメディアであるゆえんなのだ。ある一定の方向に感情を掻き立てようとしても、その熱情を冷ましてしまう要素が何かしら入り込んでいる。そこで、人は現実に還って、熱くなっていた感情がスッと冷めるのだ。戦闘が行われているところでも、そのまわりをサンダルをはいたおじさんが犬を散歩させていたりする。現実というのは、実にさまざまな要素が同居していて、皆が同じ一つの方向へ一斉に向かっていくものではないのだ。だから、「熱い」メディアを作ろうと思ったら、まわりのいろいろなものが映り込まないようにけっこう苦労するんじゃないかと思う。

映像そのものは、いくら「熱く」作られていたとしても、やっぱりクールに現実を見せてしまうようなところがある。それで、報道番組は、モデレーターが「独裁者XX」とか「XXのプロパガンダ」とかそういう扇情的な言葉を繰り返し言って映像に重ねたりするのだと思う。視聴者に映像だけを冷静に見せないようにするために、感情的な言葉を重ねたり、いくつもの映像が一瞬ごとに移り変わっていくように作っていたりする。

だから、ある種の感情を掻き立てるように作られた映像が出てきたら、音声を消して、映像だけをゆっくり冷静になって見てみるといいのかもしれない。すると、「熱い」メディアも、またクールなメディアに戻って、冷静な思考ができるようになるのかもしれない。感情を掻き立てられて、頭が熱くなっている状態だと、真実を見抜く内なる子供の感性が目覚めない。どう感じるべきなのかを頭が決めるのではなくて、素直にありのままを見る気持ちになれたとき、私たちの中に誰でもある内なる子供の目は、どんな映像からでも、真実を見て取ることができるのだと思う。

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熊野のおながみの森の磐座。ルートチャクラのポイント。


2023年9月13日



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【2つのGDP】



BRICSに新たに6カ国が加わることで、GDPがG7を越えることになる、とロシア側のメディアでは報道されていたのだけれど、西側のメディアでは、6カ国が加わっても、まだまだG7の方がよほど経済的に強いという見解のようだった。ところで、GDPの計算法はいろいろあって、世界ランキングとかも、出そうと思ったらどんな結果も出せてしまうというようなものなのだということを、ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーが言っていた。彼は、もともと金融関係の仕事をしていたのだそうで、金融のことについては、ちょっとした金融アナリストよりも深く知っていたりする。

利益の総額をドル建てで計算した場合、物価が高い国の方が、GDPは当然高くなる。物価が高い国では、普通の人がもらう収入も高くなるので、一見豊かな国のように思える。だけど、3倍の給料をもらえたとしても、家賃も光熱費も3倍だとしたら、結局豊かさは変わらないことになる。その上、子供の学費とか医療費とかがものすごくかかるということになると、豊かさは逆に低くなったりする。

それがまさに、いわゆる西側の経済先進国に今起こっている状況なのだ。収入はずっと多いけれど、社会保障がどんどん後退していっていて、物価も上がっているので、生活は逆に貧しくなっている。西側諸国に行けば、高収入が得られると思ってやってきた経済難民たちも、来てみたら、実は家も買えないことがわかる。

国際通貨基金が発表したGDPでは、アメリカが群を抜いて一位で、ロシアはその10分の1にもならない額で、11位になっている。このランキングでは、アメリカ、中国、日本、ドイツ、インドの順になっている。しかし、購買力を計算したGDPでは、この順番が大きく変わる。中国が群を抜いて一位で、その次がアメリカ、インド、日本、ドイツの順になっている。このGDPでは、ロシアは6位だ。それがこの頃、ドイツを抜いて5位になったということだった。

ロシアでは、収入はずっと少ないけれど、生活費が安いのだ。光熱費が安いし、家賃も安い。若い夫婦でも、家を買えたりする。学校や医療も無料だったりするし、交通費などもずっと安い。それを計算すると、ロシアの方がドイツよりも月々一万円くらい余裕があるということを、トーマス・レーパーは前に書いていたことがある。それが今、購買力を計算したGDPでも、正式にドイツを抜いたということだった。

利益の総額を計算したGDPなら、高くしようと思ったら、物価を上げればいいということになる。物価を3倍に上げて、給料も三倍に上げれば、GDPは一気に3倍になるわけだ。裏付けのある通貨では、もちろんそんなことはできない。だけど、米ドルみたいに裏付けのない通貨ならば、紙幣を3倍刷ればいいだけのことだ。それで実際、米ドルはどんどんお金を刷っていて、あるいは単に口座の数字で作っていて、お金の総額はどんどん増えていっている。

パンデミックが起こる数ヶ月前の2019年秋に、目立たない形で金融危機が起こっていたということを言っていたアナリストがいた。その後すぐに、イベント201というパンデミックのシミュレーションが行われ、数カ月後には、まったくそのシミュレーションのままに、パンデミックが演出されていった。だから、あの演出されたパンデミックは、金融危機と関係があるようだと。おそらくは、金融危機を隠すために、パンデミックを演出したのだろうと言っていた。そして、パンデミックが始まった2020年からは、米ドルの総額は、うなぎ上りに上がっていっているという。

政府がどんどん借金をして、パンデミック対策に当てているからなのだ。ロックダウンの補償や検査キットや薬剤やらをものすごく買い込んでいた。しかも、薬剤の値段も検査キットの値段も、すべて吊り上げてあった。値段が上げてあっても、政府が借金をして無料で提供するのだから、問題なく売れていった。値段を上げたものがどんどん消費されていくのだから、GDPもどんどん上がることになる。

こんなことをやっていたら、米ドルの価値が暴落するはずなのだけれど、これが下がらないのは、薬剤だとか何とかをやはり吊り上げた値段で大量に外国に売っているからなのだろう。どうしてそんなものを外国の政府が買うのかと言ったら、政府がアメリカの傀儡みたいになっているからなのだ。オーストリア政府も、全国民の8倍とかの量の薬剤アンプルを買い込んでいた。もちろん、いくら宣伝したからってそんなに使わないのだから、いずれ期限が切れて、廃棄されることになる。目的は米ドルを使うことなので、そんなことはどうでもいいのだ。それで、ものすごい額の税金が、勝手にそんなことに使われていった。

パンデミックが収まったら、今度はウクライナ支援のためにと、西側諸国はまたものすごい額の税金で、武器を買い始めた。アメリカは、何倍にも値段を吊り上げたミサイルや戦車や戦闘機を売りつけていた。アメリカのGDP一位というのは、実はそのようにして、作られていたものだったわけだ。

ウクライナでも、西側から送られてくる武器が転売されて、キエフの政治家たちが私腹を肥やしているという話があったけれど、そんなことはどうでもいいらしい。要は武器がどんどん消費されて、米ドルがまわればいいということなのだろう。ウクライナ軍が武器庫をまるまる置き去りにして撤退したりしていたこともあって、ロシア軍が持っていったりもしていたけれど、それもどうでもよかったのかもしれない。

そんなことをしているうちに、アメリカの街はどんどんボロボロになっていき、ロシアの街はどんどんきれいになっていったようなのだ。SNSに地下鉄を比較した動画がさかんにシェアされていたけれど、アメリカはそうやって無駄な消費に税金を使い続けた結果、公共施設や福祉にお金がまわらなくなり、街がボロボロになり、スラム化していったわけだ。その一方で、ロシアは西側諸国に経済封鎖されたおかげで、国内需要が伸びて、ますます福祉や公共施設にお金がまわるようになったのかもしれない。

米ドルの価値を保とうとしたら、果てしなくお金の量を増やして、果てしなく消費させていくしかないということになる。それでパンデミックがあり、ウクライナがあった。これが収まったら、今度はまた別なパンデミックを起こすのか、あるいは新しい戦争を起こすのかだ。この状態を終わりにするために、世界経済フォーラムは金融リセットを計画しているということなのだろう。つまり、どんどんお金を増やしていった挙句、そのすべてを帳消しにして、誰も何も所有しない状態にしてしまおうというわけだ。

しかし、これが可能になるには、世界中のほとんどの国が、米ドルのお金ゲームを共にしていなければならないことになる。それで、パンデミックのときには、世界保健機関を使って、世界中にアメリカの薬剤や検査キットを消費させようとしたり、ウクライナの戦争では、世界中にウクライナ支援をさせようとしていたのだろう。このところ、西側諸国がBRICS諸国を国際会議や停戦交渉に招待して、ウクライナ支援をさせようとしていたけれど、目的はウクライナ支援というよりは、米ドルを使わせることにあったのかもしれない。ところが、BRICS諸国は、それを拒否し続けた。そして、先日のG20では、そもそもウクライナ支援を議題にすることさえ拒否して、共同声明にはまったく盛り込まれなかった。ロシアが西側に経済制裁をかけられて、アフリカアジアとの流通ネットワークを作り上げてしまったときに、世界経済フォーラムの金融リセットの計画はこれで不可能になったといろいろな人が言っていたけれど、それがここまで目に見える形になったということなのだと思う。

BRICS諸国は、国際通貨基金のGDPランキングでは、西側諸国のずっと下になるわけで、だから未開の地だというような印象を持たされているのだけれど、それは単に米ドルの価値を人工的に上げてあるからにすぎないわけだ。この間のG20の報道でも、ニューデリーのスラム街を隠すために、人々が強制移動させられたというようなことが西側メディアで大きく取り上げられていたけれど、スラム街ならばアメリカの都市にもたくさんある。そしてそれは、大きくなってさえいる。

米ドルの価値を高くしておくことによって、西側諸国の製品を持っていることが豊かさであるというような幻想を作り出し、それによって、世界中を米ドルのお金ゲームに巻き込もうとしていたのだ。そして今、パンデミックやウクライナで、国に無理やりアメリカのものを買わせるということをして、巨額の腐敗のお金に多くの人々が狂わされている。そういうお金に支配されてしまうというのも、金額が高ければ豊かだというような思い込みが作られているからなのだと思う。いくらでも刷れるお金をどんどん与えて、お金を動かしている。そういうお金をもらった人たちのために、値段を法外に吊り上げた高級マンションだとか、高級クラブとかが用意されていて、そういうものを消費することで、自分が大金持ちになれたと思い込むようにされているだけのことだ。

結局のところ、こうしたお金ゲームを一緒にやる人たちがどれだけいるかで、人を人とも思わない人たちが世界をどれだけ支配できるかが決まるのだと思う。腐敗しきった状況が目の前に突きつけられるような年月をすごしてきて、一体こんなことがいつまで続くのかと思うけれど、それもまた、私たちがお金の額に惑わされずに、本当の豊かさというものを見分ける目を養うためだったのかもしれない。とにかく今、米ドルから離れていく国や企業が増えているのは、人々が見せかけの豊かさに惑わされなくなってきているからなのだろう。どこへ行っても同じアメリカ製品を持つよりも、独自のものを作り出すことの方が、はるかに豊かなのだということに、世界が気づき始めているということなのだと思う。

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ロシアのバイカル湖岸にある自然公園。野生の熊やトナカイ、アザラシなど300種以上の野生動物が棲息している。


同じ自然公園。バイカルアザラシ


2023年9月15日



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【韓国と北朝鮮】



9月13日まで、ウラジオストックで極東経済フォーラムが開かれていて、そのときに北朝鮮の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)が、ボストチヌイ宇宙基地にプーチン大統領に会いに来ていたというので、あれこれの憶測が飛び交っていた。プーチン大統領と金正恩は、そこで5時間ほども内密の会談を行ったというのだけれど、その内容は公開されていない。

西側メディアは、ロシアが北朝鮮に軍事協力を求めていて、武器を送ってもらうつもりなのだろうとか、北朝鮮に軍隊を送らせるつもりなのだろうとか言って、脅威を煽っていた。プーチン大統領は、金正恩と話した内容について、くわしいことは言わなかったけれど、軍隊を送らせるという話は、まったくあり得ないと言っていた。そんなことを非難する前に、ウクライナ軍にいったいどれだけの国の軍隊が加わっているのかを数えてみるべきだとも言っていた。

やはり極東経済フォーラムに来ていたロシア外務省報道官のマリア・ザハロワは、インタビューでそのことについて聞かれて、アメリカが南北朝鮮を対立させようとしてきたのだと言っていた。アメリカの介入がなければ、南北朝鮮はとっくの昔に合意していただろうと。そして、それは台湾と中国でも同じことだと言っていた。

その後も、金正恩はロシアに残って、軍事基地を見学したり、防衛大臣のジョイグに会ったりしていた。金正恩のロシア訪問は、ロシアは北朝鮮を孤立させようとする西側のやり方に従わないということを、西側諸国にはっきりと示すものだと、アナリストのアンジェロ・ジュリアーノは言っていた。西側諸国は、思い通りにならない国を孤立させようとする。ロシアを孤立させようとしていたし、リビアやイラクに対してもやっていた。だけど、そういうやり方はもうできなくなる。ある国を孤立させようとすれば、逆に西側諸国が孤立していくことになるだろうと。

金正恩が2011年に父親の後を継いで最高指導者になったときは、何だか危険な人物だという印象があったのだけれど、先日ボストチヌイ宇宙基地でプーチン大統領と会っている金正恩は、そんな悪い人間には見えなかった。そう言えば、トランプ大統領が平壌に来たときの金正恩も、陽気で気さくな男の子といった風だったし、韓国の文大統領と一緒に板門店の国境を歩いて越えていたときも、うれしそうに手を繋いで何度も行ったり来たりしていて、かわいらしい印象さえ与えた。その様子を見て、南北の緊張が解けたことで、解放されるものがあったのかとか思っていたのだけれど、画像を見比べてみると、どうも就任当初の頃の金正恩とは、別な人のようだ。

金正恩には何人も影武者がいるという話もあり、本人がもう入れ換えられているという話もある。しかし、トランプと会った金正恩も、文大統領と国境を越えた金正恩も、この間プーチン大統領と会った金正恩も、同じ人物なように思える。普通はダブルだと、まるで魂がない空っぽのような感じがあって、それが人間ではない存在のように思えて、空恐ろしい感覚があるのだけれど、この金正恩は、そういう感じがないのだ。就任当初の頃の金正恩は、危険な人物だという感じのオーラを出していたけれど、今の金正恩には、そういうところがない。魂が空っぽのダブルのようでもない。役を演じている人なのだろうという感じはするけれど、しかし、ロボットか人形みたいな感じではなくて、前の金正恩よりも人間らしく見えるくらいだ。

もし別人に入れ換えられているのだとしたら、誰がどういう目的で入れ換えたのか知らないけれど、悪い目的ではなかったのだろうという気がする。本物の金正恩が実際に危険な人物だったとしたら、別な人物に入れ換えることで、国民を解放して、国際関係を平和にすることにもなったのかもしれない。もしもそういう目的で別な人物に入れ換えたのだとしたら、ダブルでもこんな風に人間らしくなるのだろう。西側諸国の政治家は、ほとんどがダブルに入れ換わっているようだけれど、彼らは、生身の人間だったらとてもできないような恐ろしいことを、平然としてやっている。そういうダブルは、魂が空っぽで、まるでロボットみたいに見える。

韓国の大統領が文在寅(ムン・ジェイン)だったときは、北朝鮮と友好関係を結ぼうとしていて、だから金正恩と板門店で会談して、手を繋いで国境を越えたりしていた。アメリカ大統領もトランプだったときには、平壌に金正恩を訪ねたりしていた。しかし、アメリカのグローバリストたちは、南北朝鮮を敵対させておきたいのだと思う。それによって、韓国や日本に米軍基地を配備して、軍事同盟を結ばせることができるからだ。アメリカのグローバリストは、ウクライナの戦争が終わったら、今度は台湾と中国の間に戦争を起こさせて、武器を消費させるつもりなので、日本と韓国を軍事的に協力させようとしている。だから、北朝鮮と韓国が友好的になったりしては困るのだと思う。

文大統領は、国民にとても人気があったというのだけれど、2022年の選挙では、反対政党の尹錫悦(ユン・ソンニョル)が当選した。これも、あるいはアメリカの介入があったのかもしれない。就任して数カ月後には、支持率が激減したというのだけれど、それは、もともとその程度の支持率だったということなのかもしれない。この人はまったくアメリカの思うままに動いているようだ。アメリカの諜報部が韓国政府の通信を盗聴しているという情報が表に出てきても、抗議もしなければ、調査させようともしなかった。尹大統領が就任してから、南北朝鮮の緊張は急激に高まって、北朝鮮が飛ばすミサイルの数が倍増したらしい。

ところで、この尹大統領も、写真を見ると、ゾワゾワするような恐ろしさを感じるのだけれど、就任する前の写真と比べると、どうも別な人のようだ。前の写真では、人間らしい顔つきをしているけれど、大統領に就任してからは、肌が妙に白っぽくつるつるしていて、生身の肌の感じがない。やはりどうも魂が抜けたダブルのような感じなのだ。

日本の今の首相も、前の写真と比べたら、やはり別人のようだし、アメリカの大統領も、就任する前から別人になっていたようだ。その三人でキャンプ・デイビッドで会って、軍事協力について決めていたのだ。この三人を入れ換えて、裏で糸を操っているのは、同じ人たちなのだろうから、まったく最初から打ち合わせてあるお芝居なわけだ。そういう最初から仕組まれたお芝居で、世界が動かされているというのが、今の西側諸国の状況なのだ。

ロシア外務省報道官のマリア・ザハロワは、今回の極東経済フォーラムについて、「アメリカが生み出す終わりのない危機から抜け出す方法として、BRICSの拡大、脱ドル化、自国通貨での決済への移行などが議題に上がった」ということを言っていたそうだ。結局、南北朝鮮の敵対関係にしても、アメリカが意図的に作り出しているということなのだ。韓国にしても日本にしても、そのためにアメリカに支配されているということを、ロシアはよく理解している。そして、金融で支配されてしまっているから、脱ドル化を進めていく以外にないということなのだ。だから、そのために、この支配から出ていこうとする国々が、協力関係を結んでいくしかない。金正恩とプーチン大統領との会談も、そうしたことの一つだったのだと。

北朝鮮は、ロシアと国境を接している隣の国だし、経済制裁で孤立させられて苦しんでいるから、協力していこうということなのだ。アメリカは、そうやって孤立させることで、世界中の国に脅しをかけて支配してきたのだから、互いに協力関係を結んでいくことで、それを乗り越えていくしかない。

西側諸国の政治が、魂の抜けた人形のお芝居で、国民の意と関係なく決まっていくような状況になっているのに対して、その外の世界には、生身の人間がたがいに人間らしく協力していく政治がまた存在しているのだ。ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めた頃から、世界は西側の支配から解放され始めて、仕組まれたお芝居ではない政治というものの姿が見え始めた感がある。だからこそ、これまでの政治が、魂の抜けた人形のお芝居のようなものだったことも、ようやく見えてきたわけなのだ。ということは、こんなものに世界中の人々がもう騙されなくなる日も、そろそろ近づいてきているということなんじゃないかと思う。

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2018年に板門店の境界線を越える金正恩と文在寅


2021年の尹氏の写真。今の人とは別人のように見える。これは、人間らしい顔で、肌の感じも、今のテラテラした感じと違う。


キャンプデイビッドの三国首脳会談の尹大統領、バイデン大統領、岸田首相。どの顔もお面みたいです。


2023年9月16日


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【ヘゲモニーの終焉】



一年くらい前に、ドイツ人ジャーナリストのトーマス・レーパーが、今の世界の状況は、少数の暴力グループに支配されている学校のようなものだということを言っていた。ごく少数のグループではあるのだけれど、暴力をふるわれたり恐喝されたりするので、他の大多数の生徒たちは、黙って従っているしかない状態だ。だけど、誰か一人でも、暴力グループに対抗できる人物が現れると、それまで黙って見ていた人たちも、一人二人と一緒に暴力グループに抵抗するようになる。そうやって少しずつ抵抗する人たちが増えていくと、あるとき、暴力グループの方が孤立しているような状態になって、もう手出しができなくなる。そうした変化が起こり始めているのだと。

昨年2月にウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、その変化が起こり始めていたのだ。ロシアは経済制裁をかけられて、ヨーロッパにエネルギーや食糧が輸出できなくなり、インドや中国、アラブやアフリカに輸出するために、ルーブルや中国元での取引をしようとしていた。そこで、サウジアラビアが初めて米ドルではなく、中国元での石油取引を行ったのだ。これはまさに、世界の暴力グループにたった一人で抵抗しているロシアに、味方する国が現れた瞬間といった風だった。それまでは、石油取引は米ドルが独占してきた。それ以外の通貨で取引するなんていうことをしたら、アメリカにどんな目に遭わされるかわからない。大統領を暗殺されるか、首都を空爆されるか、人工地震を起こされるか、あるいは原発事故を起こされないともかぎらない。ところが、サウジアラビアはそのどれにも遭わなかったのだ。この事実を世界中が見たことこそが、決定的な変化だった。それから世界中の国々は、少しずつロシアへの支持を表明するようになり、西側諸国に反発するようになっていった。

それは、集団的な人間関係の中で機能している、免疫システムのようなものなのだと思う。生命体や生態系と同様に、社会関係も、つねにバランスを保っていくような力が働いていて、バランスが欠けている状態ができると、自然とバランスを取り戻していくようになっているのだと思う。ある病原菌が繁殖して、身体組織を支配しているとき、その病原菌を喰う抗体ができる。それが徐々に殖えていって、病原菌に支配されていた組織が解放されていく。そのうち身体の細胞にも抵抗力ができて、病原菌に支配されないようになる。それと同じことが、社会関係でも起こるし、国際関係でもやはり起こるのだと思う。

9月9日から10日にニューデリーで開催されたG20では、もはや西側諸国は一方的な見解を世界中に押しつけることができなくなっていることが、はっきりと示されてしまった。半年前に行われた前回のG20では、まだ西側諸国は共同声明にウクライナの戦争についてロシアを非難し、ウクライナ支援を呼びかける文を入れさせることができていた。そのときももう、西側諸国の代表は、空港でもろくな歓迎を受けておらず、最初から煙たがられていたけれど、それでもロシア代表のラブロフ外相に面と向かって、ウクライナの侵攻をやめなさい、と批判したりしていた。G20は経済協力についてのフォーラムで、世界の食糧供給の安定について話していたところだったのに、まったく的外れにそんな発言をしたので、ラブロフ外相にいなされて、会場の人々は笑っていた。それでも西側メディアは、その発言を英雄的な行為みたいに大きく報道していて、ラブロフ外相の方が笑いものになっていたみたいに書いていた。事態はそれとは逆で、西側諸国の方が相手にされていなかったのにだ。しかしそれでも、G20諸国は、西側諸国の主張通りに、ロシアを批判する声明を出したのだ。

だけど今回のG20では、参加国の約半数が反対して、西側諸国はロシアを一方的に非難する声明を出すことに失敗した。その代わり、ウクライナの戦争については、国の主権と領土の統合、人権が守られるべきだというニュートラルな表現の声明が出された。

これについては、西側メディアは、ロシアがクリミア半島やドンバスの領土をウクライナに返すべきだという風に解釈していたけれど、G20の参加国の半数は、そうとは考えていなかった。むしろ、ウクライナ政府がドンバスに対する人権侵害な攻撃をやめるべきであり、住民投票で住民自身が決めた通りに、ロシアに併合されるべきだと考えていたのだ。そして何よりも、G20は西側諸国の地政学的な見解を議論する場ではなく、経済協力について議論する場なのだと。そしてこのことが、共同声明にもはっきりと書かれていた。

前回のG20では、的外れなテーマであるにしても、西側諸国が政治的なことで中国やロシアを批判して、それを西側メディアが大きく報道していたのだ。ところが、今回のG20では、それさえもなかった。中国についても、いつもならウイグル弾圧だとか台湾への挑発だとかを非難するのに、アメリカ大統領は、習近平について、ただ彼もニューデリーに来てくれればよかったのに、と言っただけだったそうだ。

G20は、経済フォーラムであるにもかかわらず、これまでは西側が一方的な見解を表明するような場になっていて、世界中の国々は何を言われるかと戦々恐々としていたわけなのだ。それが3月のG20では、もう煙たがられるような雰囲気になっていて、今回のG20では、もう西側諸国も何も言えないような状況だった。もはやG20は、西側諸国がどこの国を仲間外れにするべきかを指示して、他の国々を思い通りに従わせるような場ではなくなったのだ。

ところで、ニューデリーでG20が行われたその数日後、キューバのハバナでG77が開かれていた。G77は国連の組織で、いわゆる発展途上国と中国だけのグループなのだけれど、参加国は134カ国、世界人口の80%以上を占めるという。ところで、このG77では、何と一方的な経済制裁は直ちにやめるべきだという決議がなされていたのだ。西側メディアでは、技術発展の格差を是正するべきだという決議がなされたというようなことしか報道していなかったようだけれど、実際の決議はそんな当たり障りのないことではなかった。

国際金融システムが発展途上国に不利なようにできているということが議題になり、均等な機会を与えるような形に改革するべきだということが決議されていたのだ。そして、一方的な経済制裁は、発展途上国の経済を破壊し、人権を侵害しさえするものだから、即刻停止するべきだということが、盛り込まれていた。

金融システムの不公平と一方的な経済制裁こそは、まさに西側諸国が世界中の国々をいいように支配するための武器だったのだ。昨年の国連総会でも、3月のG20でも、多くの国々が西側諸国が言うままに、ロシアを非難する決議に賛成したけれど、それは、アメリカに逆らって、経済制裁をかけられたら大変だという思いがあったからだ。特に、食糧やエネルギーの供給を外国からの輸入に頼っている国では、経済封鎖されたら、とたんに国民が飢えることになる。アメリカの言うなりにならなかったら、どんなことを非難されて、どんな制裁を加えられるかわからない。そうやってこれまでは、G7が決めたことに世界中が従うようにされてきたわけだった。これがまさに、少数の暴力グループに支配されている学校と同じ状況だったわけだ。

そうやって、イランもシリアもリビアも北朝鮮もキューバも、アメリカのグローバリストに従わない国は、一方的に独裁国家だと言われて、経済制裁をかけられ、そのために大きな社会問題を抱えることにことになっていた。経済が貧困になれば、治安も悪くなり、社会は不安定になる。その上、テロ組織や工作員を送り込まれて、紛争が起こされたりもする。そしてそれを、西側メディアは独裁政権に国民が抵抗していると報道していたのだ。

9月のG20のあとで、ロシアのラブロフ外相は、これは国際関係の転換点だと言っていた。これからG20内部にも変革が起こっていくし、IMFとWTOをフェアなシステムにする必要がある、と。BRICSは、IMFやWTOに代わる国際取引のシステムを作ろうとしているけれど、しかしロシアの本当の目的は、IMFを捨てて新しいものに乗り換えることではなくて、既存の国際機関を本当にあるべき姿に戻すことらしい。

そして、先日のG77では、発展途上国に不利にならない、公正な国際金融システムを作るべきだという決議がなされたのだ。これは、これまで西側諸国が不公平なシステムを世界に押しつけて、世界を支配してきたのが、もう通らなくなってきているということを示している。国連だって、西側グローバリストが思うように動かせるようなシステムになっているのは、参加国が同等な権利を持っていないからなのだ。世界保健機関のような国連機関にいたっては、参加国が発言したり、決議したりするような民主的なシステムさえもない。西側グローバリストが資金を出して据えた人々が、一方的に決めて、一方的に参加国を従わせているだけなのだ。

金融システムにかぎらず、国際機関のすべては、民主的なシステムに改革する必要がある。それこそは、これまで西側グローバリストの覇権主義を許してきた土壌なのだ。どうやらその改革が、これから一つ一つ起こっていく段階に来ているらしい。G77で、すでに世界の人工の80%に当たる国々が、公正な金融システムに変えるべきだと言っているのだ。世界を牛耳ってきた暴力グループも、今や世界の少数派になって孤立している状態なのが、はっきりとしてしまったようだ。


ハバナで行われたG77


2023年9月17日

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【勝利が決定的になる?】


9月9日にニューデリーでG20の共同声明が出て、G20ももう西側グローバリストの言うなりにならないことがはっきりした。西側メディアはそれについてはほとんど何も報道せず、実に静かだったのだけれど、しかし世界はすでに臨界点を越えたのだ。もう西側グローバリストが世界を支配することは、完全に不可能になった。

その3日後に、マヤ暦でイーク(白い風)の13日が始まって、空気が急にザワザワし始めたのを感じていた。イークの13日のときには、何かしら決定的な引っくり返りが起こることがよくある。あと一ヶ月ほどして、新しいマヤの年が始まる前に、それまでの世界が引っくり返るようなことがよく起こるのだ。新しい年に新しい世界が始まっていくために、古いものが洗い流されていくかのようにだ。そういうときは、いったい何が起こるのかと、不穏な感じがする。そういうザワザワなのだ。何が引っくり返ってもおかしくないというような。

どういう変化なのかはわからないけれど、「勝利が決定的になる」という言葉が何度も意識に降りてくる。このイークの13日の間には、何かしらそういう変化が起こるというのだ。マヤ暦の13日サイクルの初日にこういうメッセージが降りてくるときは、不思議とその通りになることもよくある。

まわりの状況を見れば、そんな風にはまったく思えないし、むしろ世界はもう終わりなんじゃないかと思うくらいの絶望感さえある。どうして人間はこんなに騙されやすいのか、どうしてこんなに盲目なのかと思う。こんな様子では、グローバルエリートたちがいかに弱くなっても、大多数の人々は容易に操作されて、一緒に世界を滅亡へと導いていってしまうのじゃないかという気がする。まさにそういう感覚が、イークの13日のときのザワザワ感なのだけれど、おそらくは、この危機感に導かれて、そうでなければ超えていけないような壁を超えていくことになるのだろう。

13日に北朝鮮の金正恩がとうとつにロシアにやってきて、プーチン大統領と会談したこともだ。それは、ある一つの壁を突き抜けていくような感じのできごとだった。そして16日には、プラハで10万人も集まるような大きなデモがあったらしい。ウクライナの内戦にロシアが軍事介入始めてから、EUはアメリカの言うなりに、自国の国民を犠牲にしてウクライナを支援させられている状況なのだけれど、こんなことが続いていたら、いつかは国民が政府を吊し上げ始めるのは目に見えている。どうもそれが起こり始めたようなのだ。デモの参加者は、政府はウクライナのためでもアメリカのためでもEUのためでもなく、チェコの国民のために政治をするべきだ、と主張していた。チェコのニュースエージェントは1万人だと書いたらしいけれど、デモの主催者は10万人だと言っていた。実際、大通りいっぱいにデモの人たちが歩いている様子は、10万人くらいはいるように見えた。

そして、15日から始まったベルリンのオクトーバーフェストでは、「めざせモスクワ」の曲がかかって、人々が踊り狂っていたそうだ。ベルリンでは、ロシアに敵対させようとするグローバリストの勢力とそれに抵抗する人々とが激しい衝突を繰り返していたのだけれど、ロシア弾圧の空気にもう本当に飽き飽きしていた人が大勢いたのだということを、そのできごとは感じさせた。

ずっとウクライナを軍事支援し続けていたポーランドも、ウクライナの安い穀物を受け入れるのを拒否してから、ウクライナ政府と決裂しているらしい。いくらグローバリストの言うなりでも、自国の農業を犠牲にしてまで、言うなりにはならないということなのだ。どこかで限界が来る。そうなったら、グローバリストの支配力が薄い国から、ボロボロと離脱していくことになる。

アメリカの軍事を決定していると言われているシンクタンク、ランド研究所が今年1月に、ウクライナの戦争はもう損失になるばかりだから、なるべく早期に停戦させるべきだという提言をしていたそうだ。それで、秋くらいには停戦になるだろうと言われていたのだけれど、それがどうもそのように動いてはいないようだ。停戦にもっていくには、アメリカがウクライナ支援を断ち切ればいいだけのことなのだけれど、アメリカは軍事援助をし続けている。それを見ると、どうも予定が変更されたように思える。

ロシア在住のドイツ人ジャーナリスト、トーマス・レーパーは、これは、ロシアがもう前の条件では停戦交渉に応じないからではないかと書いていた。ランド研究所が提案していた停戦案は、ドンバスの独立を認めて、ウクライナ軍をドンバスから撤退させ、ウクライナは中立国になるというものだった。それは、ロシアが最初から要求していた条件だった。ところで、ロシアはこの条件で停戦に応じて、あとで裏切られるということを、すでに何度も繰り返していたのだ。

最初は2014年のクリミア紛争のときで、あのときミンスク合意が交わされて、ロシア軍が撤退したのに、ウクライナ軍はドンバスへの軍事攻撃をやめなかった。そのあとNATOがやってきてウクライナ軍を養成し、いよいよドンバスでロシアを挑発し始めたのだ。そしてロシアが軍事介入を始めて、一ヶ月ほどでトルコで停戦交渉が行われたときは、ウクライナはドンバスの独立を認めて、ドンバスから軍を撤退させ、中立国に戻ることを受け入れた。ところが、その協定に従って、ロシアが軍隊をキエフ近辺から撤退させると、そのあとにやってきたウクライナ軍が住民をロシアの協力者として粛清し、それをロシア軍が虐殺したと言って、停戦を一方的に破棄したのだ。のちにそれが、ウクライナ政府ではなく、英米独仏の四カ国が決めてやらせたことだったということが判明して、ロシア政府はもうウクライナ政府と交渉しても意味がない、と言った。ウクライナ政府ではなく、ワシントンと交渉しなければ何の意味もない、と。

ウクライナ政府が今出している停戦案というのは、ドンバスもクリミア半島もウクライナに返させて、ロシアが復興のための費用を負担するという、ロシアに無条件降伏しろというような都合のよすぎる提案だ。そもそもこんなものを出してくることからしても、ウクライナ政府には停戦交渉する気がまったくないということを示している。西側諸国は、ウクライナは停戦交渉に応じるべきだと言っているけれど、ウクライナをNATOに加盟させる代わりに、ウクライナと安全保障条約を結ぶと言っている。しかしそれでは、やはりロシア国境にNATO軍が駐留しているようなことになる。その条件ではロシアは停戦交渉に応じないだろう。

ロシア政府は、ウクライナに安定した平和が保たれるような条件を作るべきだと言っている。つまり、南北朝鮮みたいに、国境線を凍結させて停戦するのではなくて、NATO軍が完全に撤退して、ウクライナが中立国になるべきだということだ。実際、そうでなければ、2014年以来そうだったように、西側グローバリストはウクライナに軍備を再び整えさせて、また攻撃させてくるだろう。昨年秋頃に、ミンスク合意に関わった当時のドイツ首相とフランス大統領が、あれはウクライナを再軍備するための時間稼ぎにすぎなかったと白状してから、ロシアはもうその手には乗らなくなったということなのだ。

ところで、昨年ロシアが軍事介入を始める前の2021年12月に、ロシア政府はアメリカとNATO諸国に対して、相互安全保障条約を提案していた。それは、ヨーロッパ全体からアメリカもロシアも核兵器を撤退させ、東欧圏からNATOを撤退させるというものだった。つまり、ソ連崩壊後も、事実上ずっと続いていたアメリカとロシアの冷戦状態を本当に終わりにして、ヨーロッパを冷戦から解放するということだ。

ソ連が崩壊して、東西ドイツが統合したとき、冷戦は終わったはずだった。そのときに、ロシアは東欧から軍隊を撤退して、NATOは東欧には拡大しないということを取り決めていたのだ。それで、ロシアはすべての軍隊を東欧から引き揚げたのだけれど、アメリカは約束を破って、東欧諸国を次々とNATOに加えていったのだ。それが2014年以降、ウクライナにまでNATOが駐留し、しかもロシア系住民を攻撃して、挑発し続けていた。だから、2021年12月の相互安全保障条約の提案は、ロシア政府にとっては最後通牒だったのだ。ところが、それをNATO諸国は無視して、ドンバスでの攻撃を強化しさえした。だからこの戦争は、事実上NATOがしかけたものだと言ってもいい。

そして今、ロシア政府は、ワシントンとでなければ停戦交渉しても意味がないと言っている。それはつまり、2021年12月の相互安全保障条約と同等のものをNATOと結ぶことを、ロシア政府は目指しているということになのだ。実際、そうでなければ、ウクライナが平和になることはないし、ヨーロッパまで戦争が広がる危険が、今後も続くことになるわけだから。

ちょうど19日から、ニューヨークで国連総会が開かれていて、ロシア外務大臣もウクライナ大統領も、ニューヨークに集まっている。今年4月に行われた前回のニューヨークでの国連安全保障会議では、ロシアのラブロフ外相が議長を務めて、西側諸国以外の国々から支持を集めていた。そのために、西側メディアは「ジュダイマスターの暗黒の外交術」と書き立てて、「ジュダイは光の側なんだけど、どうやらフロイドの言う心理的な言い間違いが起こったようですね」とロシア外務省報道官のマリア・ザハロワに突っ込まれていた。しかし、あれから世界はすでに大きく変わった。BRICSは拡大して、G7の影響力を追い越したし、ニューデリーで行われたG20でも、ハバナで行われたG77でも、もはや西側諸国には影響力がないことがはっきりした。今回の国連総会では、BRICSが国連安全保障会議の改革を要求しているそうだ。くわしい内容はまだわからないのだけれど、おそらくはこの間のG20の共同声明でもあったように、国連憲章を遵守するようにということなのだろう。そうなると、今回の国連総会では、何かしら決定的な決議がありそうな気がする。

だとすると、イークの13日が終わる24日までには、本当に「勝利が決定的になる」というようなことが起こるのかもしれない。ウクライナが停戦になるよりも、ずっと世界が決定的に平和になるようなことがあるのかもしれない。

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プラハのデモ。メディアでは「数千人が抗議した」と報道していた。


ジンギスカンの「めざせモスクワ」、2008年のモスクワ公演のライブです。盛り上がり方がハンパないのが、泣けます。ジンギスカンはドイツのバンドで、ドイツ語で歌ってるんですが、ドイツとロシアがこんな風に一緒に盛り上がれていた時があったんですね。もともとドイツとロシアは仲がいい国だったんですが、それが去年からロシア弾圧のプロパガンダに巻き込まれて、ロシア文学もロシア音楽もロシア料理も排除されているありさまで、悲しいかぎりです。

こちらは、ロシアヴァージョン。2012年の大晦日パーティーだそうです。ロシアの人たちがロシア語で歌っていて、本当のロシアの踊りやって盛り上がってます。

ジンギスカンはドイツのグループで、踊りもニセモノのロシアの踊りみたいなやつなんですが、これは本当のロシア人のロシアの踊り。足さばきが、これはちょっと本当のロシア人じゃなきゃ真似できないっていうやつです。ロシア軍の楽団が、制服でバラライカ弾いて歌ってます。

ドイツ人が作ったご当地ソングみたいなやつが、当地でこれほどウケるっていうのも、何かロシアのものにこだわらない幅広さみたいなものを感じます。

2023年9月20日


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【虚像が崩れるとき】


2020年に奇妙なパンデミックが始まってから、あまりに真実が隠されて、通らなくなっていることに、絶望的な思いを感じながら、それでも真実は必ず表に出るはずだと信じてきたようなところがある。それが、去年の春、ロシアがウクライナの内戦に軍事介入を始めた頃から、国際的な場面で少しずつ真実が表に現れ始めた。最初は勇気ある少数の人々だけだったけれど、だんだんと大きくなっていった。そして数日前に、ニューヨークで国連総会が始まってからは、それがもう雪崩のようになっているかのようだ。

4月末にニューヨークで行われた国連安保理では、ロシアのラブロフ外相が議長を務めたのだけれど、そのときは、モスクワのアメリカ大使館が、ロシアのジャーナリストたちのヴィザを出発に間に合わなくなるまで出さないという嫌がらせをして、ラブロフ外相は報道陣なしでニューヨークへ乗り込んでいった。当時まだ多くの人々がウクライナの戦争はロシアの一方的な侵略戦争だと言っていた頃に、ラブロフ外相は、堂々とウクライナの戦争の本当の原因について語り、西側諸国の国連憲章を無視したやり方に責任があると批判した。それは、一人で敵地に乗り込んでいく光の戦士を思わせるものがあり、それが西側メディアに「ジュダイマスターの暗黒の外交術」と奇妙な言い間違いをさせることになったりもした。

それから5ヶ月経った9月19日に、またニューヨークで国連安保理が始まり、今度はアメリカ外務省は、ラブロフ外相に40キロ以内の限定ヴィザを発行したそうだ。しかし、この5ヶ月に世界の状況は大きく変わっていた。最も注目されていたウクライナ大統領も、もうほとんどスピーチを聞こうとする人はいなかった。会場があまりに空っぽなので、ウクライナのテレビ局は、別なスピーチのときの、会場がいっぱいになっている場面を撮影して、それを編集して貼りつけ、世界の注目を浴びていたかのような画像をこしらえたくらいだった。ところが、その画像の中にゼレンスキー本人が座っていたのが映り込んでしまっていたので、数時間後にはもうその画像がSNSで世界中で拡散されていた。それで、実際にはほとんど誰も聞いていなかったのが、表に出てしまった。

ウクライナ大統領も、一時期は、あちこちの国の議会に登場していて、やらせなのかもしれないけれど、熱烈な拍手を浴びていた。それなのに、もうほとんど誰にも注目されていない。アメリカ下院の議会でスピーチしたいと申し入れたけれど、下院議長のケヴィン・マッカーシーに拒否されたそうだ。去年までは下院議長は、戦争推進派の民主党のナンシー・ペロシだったからよかったけれど、昨年の中間選挙で共和党に変わっていたのだ。それで、アメリカ議会も、バイデン政権の思うままというわけにはいかなくなっている。マッカーシー議長は、ゼレンスキーに議会でスピーチさせる代わりに、二人だけで会談することを提案したそうだ。その内容は公表されていないけれど、共和党の路線からして、アメリカはもうあまりウクライナに支援をしたくないという話ではないかと言われていた。会談を終えて出てきたゼレンスキーは、面白くもないような表情をしていて、だいたいそのような内容だったのだろうということを思わせた。

今年1月に出たランド研究所の報告では、もうウクライナには勝ち目はないから、ドンバスを手放させて、なるべく早く停戦させるべきだと提言していた。アメリカの軍事に関しては、ほぼランド研究所の提言通りに動いているので、だから今年の秋頃には停戦になるだろうと言われていた。だけど、どうもそれとは違う事情が出てきたものらしい。ミンスク合意が、ウクライナの軍隊を強化するための時間稼ぎにすぎず、履行するつもりがまったくなかったことが判明してしまったために、ロシアはもうアメリカが入らなければ停戦交渉しても意味がないと言い出していた。どうせまた再軍備のための時間稼ぎの停戦にすぎないのなら、そんなものに応じるつもりはない。2021年12月にロシアが西側諸国に提案したような、ヨーロッパ全体を含めた安全保障条約を結ぶのでなければ、意味がないからだ。それでアメリカも、ウクライナを見捨てて、自分はエレガントに戦争から手を引くということが、できなくなってしまったのかもしれない。

その一方で、アフリカでも中南米でもアジアでも、もはや西側諸国よりもロシアの言うことを信じるようになっていった。BRICSへの加盟を希望する国が爆発的に増え、G20やG77でも、植民地主義的な西側諸国のやり方を批判する声明を出し、国連憲章に従って、どの国も平等に人権や国の主権が守られるべきだということを言っていた。つまるところ、ウクライナの戦争でロシアが軍事介入せざるを得ない状況に追い詰められたのも、世界中で戦争がやまないのも、西側諸国がその時その時で都合がいいように、国連憲章の解釈を変えているからなのだ。だから、国連や安全保障理事会が、国連憲章を公正に適用するようになれば、それだけでほとんどの戦争は起こらなくなることになる。

21日の安保理では、ラブロフ外相がスピーチして、ウクライナの戦争について、何が本当の原因なのか、西側諸国がどこで国連憲章に違反したのかを、世界中にはっきりと示してしまった。これは、西側メディアではおそらくほとんど報道しないだろうけれど、西側以外の国では、熱心に受け取られたはずだ。もはや西側諸国が自国のメディアをいくら制限して、真実が現れないようにしていても、外の世界では、皆が知っているという状況だ。西側諸国も、もうだんだん隠し切れなくなってきている。

そのせいなのか、どうもここのところ、内部で内輪もめが起き始めているようだ。そろそろ負けが見えてきたので、誰かのせいにして、自分は罪を逃れようということなのかもしれない。ゼレンスキーもこの頃、防衛省の役人を腐敗で追及して解雇したり、彼のパトロンであるオリガルヒを逮捕させたりしていた。そして20日には、ウクライナ軍の英語向けスポークスマンを務めていた、アメリカ人のサラ・アシュトン・シリロというトランスジェンダーの女性が、職務停止になった。この人は、数ヶ月前に就任してから、ロシア人は人間ではないとか、ロシアを支持するジャーナリストを殺せとか、かわいらしいしぐさをして微笑みながら、過激なことを言っていた。それで、ちょうど5日前に、ロシア外務省報道官のマリア・ザハロワが、そのことを批判するポストを出していたところだった。

これはあからさまに人種差別だし、報道人を殺せなど、言論弾圧だし、戦争犯罪でもある。しかしウクライナ側は、政府も議会も学校も、そうしたものの言い方が普通になっていたので、シリロが特別だったわけでもない。ところが、ニューヨークで国連安保理が始まって、ウクライナがもう注目を浴びていないのが見えてきたからか、急にシリロを批判し始めたのだ。ウクライナ軍が許可したのではないことを、この人が勝手に言ったということで。しかしこれも、この人に罪を押しつけて、責任逃れしようとしているようにも思える。

すると、アメリカ人ジャーナリストのシーモア・ハーシュは、アメリカ中央情報局の内部で分裂が起きているという暴露記事を書いていた。一部の諜報部員が、政権の方針に反対して、要求された情報を出すのを拒否したそうだ。また、ウクライナ軍の中でも分裂が起きていて、出撃の命令が出たら、反乱が起こるかもしれないような状態になっていると言っていた。実際、もうウクライナがクリミア半島やドンバスを一部でも取り戻す可能性はまずないし、無駄に死ぬだけなのがわかっているからだ。

ロスコスモスの元代表のドミトリー・ロゴジンは、インタビューで、ウクライナ軍の第二次世界大戦のときの奇妙な行動について語っていた。ウクライナはナチス・ドイツに侵略されて、ナチス・ドイツに協力して戦っていたのだけれど、ベルリンが陥落したとき、ウクライナのナチの将校を処刑して、イギリス側についたのだそうだ。しかし、その首領格だったステパン・バンデラなどは、戦後も普通に生きていたというから、要するに誰かに罪を押しつけて、自分はやらされただけだみたいに言って、逃れるつもりだったのだろう。実際その手で、ウクライナのナチは、戦争犯罪を問われることもなかったそうだ。ロゴジンは、今度の戦争も、同じような感じで終わると思う、と言っていた。

どうも、ロゴジンが予言したことが、今起こり始めているような気がする。ミヒャエル・エンデの「モモ」で、時間泥棒たちが、いよいよ追い詰められたとなったときに、自分だけ生き残ろうとして、殴り合いのケンカをし始める場面があるけれど、あれを連想する。時間泥棒たちは、互いに殴り合って自滅してしまうのだけれど、西側の金融グローバリストに操られて、お金で動かされていた人たちは、あの時間泥棒と同じようなものなのだろう。結局のところ、他の人たちから搾取して生きている人たちだから、自分の身が危なくなったら、自分だけ助かろうということしか頭になくなるのだ。そして、そのために自滅することになるのかもしれない。

何年も、実に巧妙にしかけられた嘘の世界に翻弄されてきて、この虚構を破ることはとうていできないようにさえ思えていたけれど、内側は少しずつ侵食されていっていて、もはや表の皮一枚が残っているばかりだったのかもしれない。それが今、ワラワラと崩れてきたら、その向こうに見えてくる真実の世界は、あまりにしっかりとした手応えを持っていて、どうしてこんなものを今まで忘れていられたのか、そのことの方が不思議に思えるような気さえする。

ウクライナのニュースの画像。ゼレンスキーのスピーチのときに、ゼレンスキー自身が聴衆の中に座っている。



2023年9月21日



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【カナダのウクライナ人】



昨年2月にウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、ウクライナはいつも国際会議の中心だった。ウクライナ大統領が支援を求めるスピーチは、世界中でスタンディング・オベーションを受けることになっていた。ところが、9月19日から始まっているニューヨークでの国連総会では、ウクライナ大統領の演説はまったく注目されず、アメリカ議会でのスピーチも拒否されているような状況だった。

それが22日の金曜日に、カナダの議会にウクライナ大統領が来ていて、トルドー首相の隣でスタンディング・オベーションを受けている場面が、メディアで報道されていた。ところで、スタンディング・オベーションを受けていたのは、ウクライナ大統領というよりは、カナダに住んでいるウクライナ人のヤロスラフ・フンカという98歳の男性だったらしい。この人は、第二次世界大戦のときに、ウクライナ軍の兵士として、ソ連と戦った英雄だということだった。

ところで、この人がいたウクライナの部隊というのは、第14SS部隊ガリチアという、ナチに志願したウクライナ人の部隊だった。西側メディアでは、「第二次世界大戦でロシアと戦った最初のウクライナの部隊」と言っていて、それがナチのSSだったということは言っていなかった。しかし、西側以外のメディアやSNSでは、カナダの議会がナチにスタンディング・オベーションをしたということが、世界中で拡散されていた。

「ソ連の侵略からウクライナを解放するために戦った」という風に紹介されたわけなのだけれど、だいたい戦争というのは、表向きは「解放するために」とか「人々を守るために」とかいうことで起こることになっている。本当は裏に別な理由があって起こされるのだけれど、そんなことはもちろん国際社会でも国内でも表に出しはしない。解放のためだと言われて志願しても、戦地に出されてみたら、実状はそんなものではぜんぜんなかったということがわかったりする。政府もメディアもプロパガンダしか言っていなかったことを本当に知っているのは、実際に戦地に出された人たちだけなのだ。

「ウクライナを解放するために」ということで戦っていたSS部隊がしていたことは、ウクライナのユダヤ人を捕らえて殺したり強制収容所に送ることだった。ソ連軍が戦っていたのは、そのナチからウクライナを解放するためだったわけだ。それで、ウクライナの部隊がソ連と戦うということになったのだ。それが、「ソ連の侵略からウクライナを解放するために戦った」という、戦時中のプロパガンダそのものの話になったわけだ。

戦争が終わって80年も経つと、当時20歳だった人は、100歳になっているから、もうほとんど生き残ってはいない。当時まだ子供で、意味もわからないままに戦争プロパガンダを植えつけられて育った人たちも、もう90歳くらいにはなっている。実際の戦地で何が行われていたかを実際に経験してわかっている人はもういなくなるわけで、そうなると、当時あらゆるメディアで報道されていた表向きの話が、またまことしやかに語られ始めるのだ。そうやって、戦争の歴史を書き換えて、過去に起こったことをまた繰り返させようとする人たちがいる。

ウクライナ側は、ロシアが一方的に侵略してきたと言って、だからウクライナの人々を守るために、戦わなければならないと言っていた。それで、西側諸国からもボランティアでウクライナの戦地に行った人たちがいる。ところが行ってみると、ロシア軍ではなくて、ウクライナ軍がドンバスの市街を爆撃していたのだ。ウクライナ兵たちが、まるでゲームみたいにドンバスの市民を殺していたりもした。それを目撃したフランス人の人道ボランティア、アドリアン・ボケは、実状を動画メッセージで公表していたら、ウクライナのテロに遭って、大ケガを負わされた。

表向きと違う戦いをしている国は、事実が表に出ないように、あらゆる言論弾圧を行うのだ。だから、実際に戦地に行ってみないと、なかなか本当のことがわからないということになる。見てきたことを語っても、信用されなかったりもする。敵側についたと思われて、とんでもない目に遭わされることもある。それで、本当のことは、なかなか表には出ないようになっている。

私たち、1945年以降に生まれた世代は、「戦争を知らない子供たち」と言われていた。親の世代が戦争を経験していたから、「平和な時代に生まれたお前たちは幸せだ」と何かにつけて言われて、戦争体験を聞かされて育った。戦後の高度成長期に子供時代をすごすのも、それなりに過酷なことでもあったのに、それを幸せだと言われるのは、理不尽なことでもあったけれど、とにかく大人たちはほとんど皆戦争を経験している人たちだったのだ。

だから、近所のおじさんやおじいさん、親戚や学校の先生にも、戦争に行った人たちはいくらでもいた。あまり教養のないおじさんたちは、何のための戦争かもわからないままに行かされて、言われるままに人を殺してきた体験を、何の罪の意識もなく、話したりしていた。大陸の現地人の家を襲って食糧を調達したとか、従軍慰安婦の順番待ちの長い行列に並んだとか、そういうどぎつい話も、酒が入ると普通にしていた。戦地ではそれが当たり前だったから、それが悪いことだという意識もないようだった。戦争とはそういうものだったのだ。戦争だったから、そういうことをした。ただそれだけのことだという風だった。

あの頃には、従軍慰安婦はなかったとか言われることがあっても、それが嘘なのはすぐにわかった。実際に見てきた人たちがいくらでもいたからだ。彼女たちと話して、どこからどうやって来たのかを当人から聞いた人もたくさんいる。皆、こういう仕事だとは知らされずに来たと言っていたそうだ。騙されたと。それでも戦後、そういう闇の部分を隠さなければならないというので、補償も受けられずに口をふさがれることになった人がたくさんいる。

あの戦争も、表向きの理由は、アジアの人々を欧米の支配から解放するためにというようなことだったのだけれど、実際に戦地に行った人たちは、中国の住民を守ってなどいなかったことを、よく知っている。イギリス軍を攻撃して追い散らしてはいたけれど、その代わりに日本が植民地支配しようとしていたのだ。それで、中国の軍隊が日本軍と戦っていた。

戦争をしかける方は、「解放のために」という表向きの理由を作るために、あれは独裁政権だからとか、そういう話をこしらえるのだ。そして、こういう残虐な弾圧をしているとかいうデマをこしらえることで、正当化する。戦争プロパガンダというのは、だいたいそういう風にできている。だから、現地に行ってみないと、真相がなかなかわからないことも多いけれど、しかし現地に行ってみた人なら、はっきりと知っている。そうしたものだと思う。

先日カナダの議会で、ウクライナ大統領とともにスタンディング・オベーションを受けていた元ナチの親衛隊の98歳のウクライナ人は、ナチス・ドイツのポーランド侵攻で第二次世界大戦が始まった1939年のとき、14歳だったことになる。ということは、この人は、ナチのプロパガンダを聞いて育った人なのだろう。ユダヤ人とロシア人が敵だと言われて、その人たちを殺すことが人類の解放になると植えつけられていた世代の人だ。ドイツが陥落して第二次世界大戦が終わったとき、ウクライナのSSの人たちは、ロシア正教ではなくカトリック教徒だからとかいう理由でソ連に引き渡される代わりに、カナダに行ったそうだ。ナチス・ドイツの上部の人たちの多くは、南米に逃亡したけれど、ウクライナのナチの多くはカナダに行った。そこで戦争犯罪を問われることもなく、生きてきたのだ。今、ウクライナのプロパガンダ要員として、カナダのウクライナ人が世界中に送られているという話があったけれど、カナダにウクライナ人がたくさんいるのは、そういうこともあったらしい。

あれから78年経って、ウクライナは再びナチ化して、SSガリチアのシンボルを掲げ、当時のウクライナ・ナチの指導者を崇拝するアゾフ連帯が、再び英雄扱いされている。それで、当時のウクライナのSSが、カナダの議会でスタンディング・オベーションを受けていたのだ。この人は、78年も経って、当時のことを一度も後悔しなかったのだろうか? 10代の頃に洗脳されたヒトラー・ユーゲントの世代の人たちは、どんなに時代が変わっても、一生洗脳が抜けない人が多い。だから、この人もそうだとしても、不思議はない。全員がスタンディング・オベーションしたわけではないのだろうけれど、数十人は拍手喝采したらしい。ナチだとは知らなかったのかもしれないし、党でやらされたのかもしれない。

今ウクライナには、西側諸国から軍隊が送り込まれているのだけれど、西側諸国の人たちの多くは、ドンバスの戦場で現実に何が起こっているのかを知らされないままに来ているのだと思う。ロシア軍がドンバスを侵略して市民を攻撃しているとか、ウクライナが勝っているとか言われて、それを信じて来ているのだ。カナダの議員たちがウクライナの元SSに拍手喝采していた翌日、ザポリージャ付近で、レオパード戦車をロシア軍が破壊したところ、乗っていたのはドイツ軍の部隊だったということがあった。一人だけが重傷を負いながらも生きていて、自分たちは傭兵ではなくドイツ軍の部隊だと言っていた。妻と子供に会いたいと言い、ここに来たことを後悔している、と言って亡くなったそうだ。

ドイツの最強の戦車といわれるレオパード戦車も、ロシア軍は難なく破壊してしまう。レオパードに乗ったら確実に死ぬというので、レオパード戦車に乗りたがるウクライナ兵はもういない。それで、ドイツ軍の部隊が送られたということなのかもしれないけれど、彼らはそんなことは聞かされてはいなかったのだろう。

また同じ23日には、セバストポリで黒海艦隊本部が爆撃されたと報道されていたけれど、ストームシャドウ・ミサイル8機が撃ち込まれて、そのうち5機が撃ち落とされ、3機だけが命中したそうだ。建物は炎上して煙が出ていたけれど、兵士一名が行方不明になっただけで、他に犠牲は出ていないらしい。この攻撃には、アメリカ軍が関わっていたらしく、アメリカの偵察機があたりを飛び交っていたそうだ。ロシア軍は、これで報復の権利ができたというので、ミサイルが発射された空軍基地を破壊した。セバストポリよりも、そちらの被害の方がはるかに大きかったそうだ。この攻撃に送られた米軍の人たちも、こういうことになるのは知らされていなかったのかもしれない。

カナダ議会でスタンディング・オベーションしたということは、カナダはウクライナに軍隊を送る用意があるということなのだろうか? 表向きの話だけ聞かされて、現地に行ってみて初めて真実がわかっても、そのときにはもう遅いかもしれない。世界はもう大きく変わっていき、隠されていた真実が表に出てきているのだから、それに気づいて、自分の身を守ろうとする人が増えるだけでも、世の中は平和になっていくんじゃないかと思っている。



ヤロスラフ・フンカがナチだとは知らないで議会の議長が招待し、トルドーもゼレンスキーもそのことは知らなかったと言っていたんですが、フンカの孫娘が、おじいさんがトルドーとゼレンスキーに事前に会っていたことをSNSに書いていて、それが嘘だったことがバレたそうです。もちろんナチだと知ってたこともです。


カナダ議会の外で抗議する人々

2023年9月25日

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【多極化の勝利宣言】


国連総会での9月22日のロシア外相ラブロフの半時間ほどのスピーチの全文を読み終わって、これは西側諸国に対する宣戦布告というよりも、勝利宣言だなと思った。

西側主流メディアは、ラブロフ外相が、ウクライナの問題が戦争に発展したのは西側諸国のせいだと批判したとか、西側諸国は嘘の帝国だと言ったとか、そんなことしか書かなかったようだ。どういう理由で何を批判したのかが書いていないので、まるでロシアが不当に批判しただけだみたいに聞こえる。もちろん、西側メディアは人々にそういう印象を与えようとして、そういう書き方をしている。だけど今や、世界の大多数の国々は、西側諸国が思わせたいようには思っていない。すでに世界で多数派になった人々が、西側諸国が事実「嘘の帝国」だということを知っているのだ。

これまでは、西側諸国がロシアが一方的に侵略戦争をしているといって非難していて、その見解に世界中のほとんどの国は異議を唱えることができなかった。異議を唱えたりしたら、独裁国家に協力する国だみたいに言われて、どんな目に遭わされるかわからないからだ。経済制裁をかけられて貧困に落されるかもしれないし、クーデタを起こされるかもしれない。あるいは首都を爆撃されたり、人工地震を起こされるかもしれない。こうしたことは、アメリカのやり方に従わなかった国が、実際にやられてきたことだ。

ところがラブロフ外相は、今回の国連総会では、戦後起こった戦争の原因は、西側諸国の国連憲章を無視したやり方であり、NATOの攻撃的なあり方にあるということを、まったく反論の余地がないほどの明晰さで、世界に示してしまった。これに対して、西側メディアは、くわしい内容を書かないということしかできないようだ。世界の過半数がすでに真実を知っているのだから、これまでのように、あることないことを並べることももうできなくなっているのかもしれない。

国連は、第二次世界大戦後、軍事攻撃による国際紛争を防ぐために作られた。軍事的に強い国の方が植民地支配するというあり方をやめて、どの国も主権や人々の人権が守られるということを決めたのが、国連憲章だ。防衛のための軍隊を持ったり軍事同盟を作るにしても、他の国の安全を侵害しないということが原則だ。当然のことながら、他の国を脅かすような軍隊を配備すれば、それこそは紛争を誘発する原因だからだ。ところが、こうした原則を守ることを、他の国には要求するのに、NATO諸国は自分では守っていないというのが事実だ。そして、まさにそれこそが、戦後起きた戦争の原因になっている。「嘘の帝国」というのは、ロシア大統領プーチンがよく西側諸国を形容するのに使っていた言葉なのだけれど、それが国際安全保障の一番の問題だとラブロフ外相は言うのだ。

実際ロシアは、何度もこの西側諸国の嘘に騙されてきた。第二次世界大戦で連合国としてナチス・ドイツと戦っていたのに、戦争が終わったら、すぐにオペレーション・アンシンカブル(operation unthinkable)という計画で、イギリスが他の国と共同してソ連を攻撃しようとしていた。さらには、ドロップショット作戦operation dropshotといって、ソ連に大量の核兵器を落とす計画まであった。実際そのために、ソ連は自らも核兵器を開発しなければならないことになったのだ。そして、冷戦が終わったときには、NATOを東欧に拡大しないという約束で、ソ連はすべての軍隊を東欧から引き揚げたのに、NATOは約束を守らず、東欧に拡大し続けた。

それがNATOのいつものやり方なのだ。約束しておいて、他の国に守らせておいて、自分は守らない。ミンスク合意にしてもそうだし、トルコでの停戦交渉にしても、穀物合意にしてもだ。ロシアが協定を守って軍隊を引き揚げると、NATOが後ろについているウクライナは、約束を守らず、攻撃を続ける。そしてロシアは、2021年12月に、ウクライナを緩衝地帯として中立国にし、ヨーロッパ全域からウラル山脈まで核兵器を持たないという安全保障協定を提案したのに、西側諸国はこれを無視した。平和的な解決を一切無視するのが、西側諸国のやり方なのだ。それには、NATOの後ろにはアメリカの軍事産業がついているということがある。

ロシアが脅威だからというのが、NATOが敵対する理由なのだけれど、それがそもそも国連憲章に違反している。他の国を脅かすような形で防衛すれば、戦争へと挑発するようなものだからだ。しかし、NATOは他の国がそれをやれば、すぐに軍事介入するのに、自分は世界中のあちこちでそうしたことをやっている。アメリカは自分では核兵器を手放そうとしないのに、他の国が核兵器を保有しようとすると、軍事攻撃する理由になると思っている。そうしてリビアもイラクも国が完全に破壊してしまうまで爆撃された。それなのに、何の責任も問われていないのだ。国連で制裁の提案もないし、国際刑事裁判所で起訴されてもいない。

そもそも国連は、国際紛争を平和的に解決するためにあるのに、NATOが軍事攻撃を正当化するために使っているようなことになっている。どこの国が脅威だから非難するとか、経済制裁をかけるとか、軍事協力するとか、そんなことばかりで、紛争の原因を理解して調停するとか話し合うとか、そういうことが行われていない。これまでは、それが当たり前だと思っていたけれど、BRICSが国際的に影響力を持ち始めると、これが変わってきた。これまで敵対してきた国が、BRICSの仲介で次々と和解し始めたからだ。そして、サウジアラビアとイランが中国の仲介で和解し、シリアがアラブ連盟と和解し、トルコとシリアも国交回復しようとしている。最近、紛争が起こったアゼルバイジャンとアルメニアでも、ロシア軍が仲裁に入って、流血騒ぎは収まっている。

国連のような国際組織は、そもそもこうしたことのためにあるはずなのに、それが今までほとんどまったく機能していなかったのだ。NATOだって、安全保障のための軍隊ならば、軍事衝突を避けるために間に入るべきだ。しかしその代わりに、NATOはアメリカが脅威だと信じる国を爆撃して、何年にも渡るような戦争に発展させてきた。その結果、アメリカはやりたい放題に他の国を攻撃し、どこの国も何も言えないという状況が作り出されてきた。

ラブロフ外相は、西側諸国を「世界の優位に立とうとしている少数派」と呼び、世界の多数派は、主権と平等な扱いを求めている、と言っている。少数支配がいずれ崩壊し、民主的な多極的な関係に移行するのは、歴史のつねなのに、それを西側諸国はあらゆる手段を使って、遅らせようとしていると。しかし、いくら押し留めようとしても、歴史の流れを変えることはできないのかもしれない。西側諸国がロシアを悪党呼ばわりして、ありたけの武器を投入して攻撃しようとしている一方で、アフリカ共同体やアラブ連盟、BRICSや上海協力機構などの国際組織は、「ルネサンスを迎えている」とラブロフ外相は言う。世界の多数派は、すべての国が対等に主権が守られる世界秩序を求めており、ロシアはこうした国々とともに、国連の民主化を進めていこうとしている。そして、BRICSは西側諸国を締め出すつもりはないけれど、西側諸国が他の国の主権を尊重せず、国連憲章を守ろうとしないのであれば、それなりの対応をしなければならないと言っている。

ベネズエラやキューバ、シリアにかけられた経済制裁も、国の主権と人権を脅かすもので、国際法違反なのだから、即刻停止するべきだし、コーランを燃やすとかヨーロッパ以外はジャングルだという発言のような、他の宗教や文化を尊重しない行為は慎むべきだとラブロフ外相は言っていた。南北朝鮮やセルビアとコソボ、イスラエルとパレスチナの緊張を掻き立てるようなこともやめて、平和的な国際関係を作り出すことに努めるべきだとも。こうしたことも、何十年も解決しないような難しい問題であるかのように思われてきたけれど、実のところは、西側諸国とNATOが絶えず緊張を掻き立てるようなことをしていたからにすぎなかったのだ。

そしてラブロフ外相は、世界の多数派である国々とともに、こうした問題を解決していくつもりだし、西側諸国が協力するつもりがないのならば、西側諸国抜きでやっていくしかない、と言っているのだ。9月始めにニューデリーで開かれたG20でも、そのあとハバナで開かれたG77でも、もはやそれが世界の半数以上の国々が進もうしている方向だということははっきりしている。ニジェールで起こったクーデターでは、フランスがアフリカを植民地支配するために据えていた傀儡政権が倒されたけれど、もはや西側諸国は軍事攻撃で従わせることはできず、ニジェールに駐留していたフランス軍も、今年いっぱいで撤退することになったらしい。それはもはや、アフリカ諸国が西側諸国の言うなりにはならなくなっていることを示している。

だから、このラブロフ外相のスピーチは、西側諸国への批判であるというよりも、勝利宣言とでも言うべきものだ。西側諸国がこれからやり方を改めようが改めまいが、ロシアは世界の多数派とともに、多極的な調和を実現すべく国際組織の民主化を進めていくということなのだ。そのせいなのか、EU外相のジョゼップ・ボレルは、これまでは「ヨーロッパの外はジャングルだ」とか暴言を吐いていたのに、「アジア、アフリカ、中南米の国々は、西側諸国よりも頼りになるオルタナティブを探している」し、「世界はもうこれまでのようなゲームの規則に従って動きはしなくなっている」と言っていたそうだ。もはや西側諸国も、自分勝手なやり方を押しつけることはできなくなり、規則を守らなければ外されてしまうということを、自覚しなければならなくなったようだ。

ニューヨークで開かれた国連総会でスピーチするロシア外相ラブロフ

2023年9月25日

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【闇の歴史に光が当たる】



ウクライナ大統領がカナダ議会を訪れたときに、元ナチのSSのヤロスラフ・フンカが招待されて、スタンディング・オベーションを受けたことで、これまで隠されてきた闇の歴史に光が当たったようだ。ヤロスラフ・フンカは、「ウクライナの解放のためにソ連と戦った」ということで紹介されたのだけれど、第二次世界大戦のときにソ連と戦っていたのは、ナチ以外のものではなかった。そしてヤロスラフ・フンカは、SS部隊ガリツィアという部隊にいた人で、つまりナチの親衛隊だった。その人が、ウクライナ大統領が来るというので議会に招待されて、英雄として賞賛され、ゼレンスキーのことを「この人こそは、私たちが最後まで戦っていた理想を継承する人だ」と言ったというのだ。つまり、ゼレンスキー政権をナチの再来として、歓迎したということだ。

このニュースが拡散されて、ロシアやユダヤ人会、ポーランドやスロヴァキアなどが次々とカナダ議会に抗議するという事態になって、カナダ首相のトルドーは、ようやく渋々ながら公式に謝罪した。トルドーもゼレンスキーも、ヤロスラフ・フンカがナチだったということは知らされていなかったとして、招待した議会の議長がすべての責任を負って辞任した。しかし、ウクライナでソ連と戦っていたのが、ウクライナのナチ部隊だったということを、トルドーやゼレンスキーが知らなかったわけがない。第二次世界大戦後、ウクライナのナチの多くはカナダが引き受けて、戦争犯罪を問われることもなく、暮らしていたということは、カナダでは公然の秘密のようなものだったらしいのだ。

もしトルドーがそれを知らなくて、今回のことで初めて知ったのならば、カナダのナチのことを調査して、戦争犯罪の責任を問うべきだし、ゼレンスキーがナチを継承する人物なのかどうかについても、立場表明があるべきところだ。ところがトルドーは、ただ議長にすべての責任を押しつけて、自分は知らなかったと言い、それから「ロシアのプロパガンダと戦うことが大事だ」と言って、片づけた。まるで、「ロシアのプロパガンダ」と言えば、すべての批判を逃れることができるかのようにだ。

昨年2月に、ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、ウクライナのアゾフ連帯のことが、世界中で知られるようになった。アゾフ連帯の人たちが、ナチのシンボルを身体中に入れ墨している画像が無数に拡散されていた。それは、ロシア軍の捕虜になって取り調べを受けていたときに撮影されたものだったり、彼らがたがいに写真を撮って、SNSでシェアしているものだったりした。彼らは自分でナチを自称していて、隠すべきことだと思っている風ではなかった。それどころか当然のこと、あるいは自慢するべきことだと思っているかのように、ナチの入れ墨を写真に撮ってシェアしていたのだ。

ところで、このアゾフ連帯が、ネオナチではなくて、本当のナチなのだということが、当初から言われていた。第二次世界大戦が終わって、ナチは消滅したはずだったのだけれど、実はそうではなかったのだ。ドイツでは、ナチは戦争犯罪を問われて、裁かれた。そして、戦後ドイツではナチが禁止されて、ナチを賞賛するような言動も、ナチのシンボルを使うことも刑罰の対象になった。かくして戦後の世界は、ナチからの解放で始まったはずだった。ところが、そうではなかったことが、ウクライナの戦争で次々と表に出ていった。

アゾフ連帯は、第二次世界大戦のときのウクライナのナチの指導者であるステパン・バンデラを崇拝していて、SS部隊のシンボルを使っている。だから、これはネオナチではなくて、当時のナチの復活なのだ。ドイツのナチは裁かれたけれど、ウクライナのナチは戦争犯罪を問われることはなかった。そして、ウクライナのSS隊員は、ソ連ではなくカナダが引き受けることになり、そのまま普通に暮らしていたそうだ。そうしたウクライナのナチがカナダにはたくさんいた。その生き残りの一人が、今回議会に呼ばれて、ゼレンスキーを「私たちが戦っていた理想の継承者」と褒め称えたのだ。ゼレンスキー政権は、まさしくそうしたものだ。

ドイツのナチは、実はイギリスの諜報部が組織したものだという話も、真偽の定かでない情報として入ってきていたけれど、このカナダ議会での事件は、このことを確かなこととして裏づけてしまったようなところがある。連合国側でナチと戦っていたはずのカナダが、ナチをかくまって逃していたのだ。イギリスがナチを組織したのなら、どうしてイギリスはそのナチと戦っていたのかと思うけれど、実はそれも表向きのことにすぎなかったのかもしれない。ドイツをナチ化してソ連と戦わせておいて、両方が弱ったところで、イギリスがまるまる征服するつもりだったという説もある。イギリス首相のチャーチルは、戦後すぐにオペレーション・アンシンカブルという作戦で、ソ連を攻撃しようとしていた。それは、イギリスが思ったようにソ連が弱らないで、ベルリンを陥落させてしまい、戦勝国になってしまったからなのだろう。ソ連が勝つことは、イギリスが望んだことではなかったのだ。ソ連を破壊させるためにこそ、イギリスはナチを組織したということを、このことは示しているようだ。

ドイツのナチも、ニュルンベルク裁判で断罪されたのはごくわずかで、多くは南米に逃れたり、アメリカに行ったりしたそうだ。ナチが使っていた洗脳のための心理技術やミサイルなどの軍事技術、人体実験を行っていた生物化学兵器などの技術は、それでそっくりアメリカが引き受けたらしい。表向きの理由は、ナチが使ったら大変だからというような話だったけれど、実のところは、イギリスがやらせていたものを、アメリカが回収したということのようだ。ナチはドイツで滅ぼされたのではなく、アメリカやカナダに移動したのだ。2020年に奇妙なパンデミックが始まってから、そのことがいよいよはっきりしてきた。アメリカ中央情報局が引き継いでいたナチのテクニックが、すべて駆使されているような事態になっていたからだ。2020年の8月にベルリンに何百万人という人が集まった抗議デモでは、80年前にドイツで起こったことと、まったく同じことが起こっている、と言っていた。

西側諸国の政府は、全体主義そのものの感染対策を強行し始めて、それを批判する人たちのことを、ヨーロッパではナチと言っていた。言論弾圧したり、行動を規制したり、人体実験を強要したりと、政府がやっていることこそはナチそのものなのだけれど、それに抗議する人たちをナチと呼んでいたのだ。これはまるで鏡像の投影じゃないのかと思うけれど、自分の鏡像を相手に投げつけることこそが、正体を隠すためのプロパガンダの技なのかもしれない。

ところで、パンデミックのときには反対派をナチだナチだと言っていたのに、ウクライナの戦争が始まったら、今度はウクライナがナチだというのはロシアのプロパガンダだと言い始めた。そして、アゾフもステパン・バンデラもナチではないと言い始めた。また、ドイツのナチはヨーロッパをソ連から守るために戦っていたとも言い始めた。ナチという言葉を、その都度、都合のいいように使っているうちに、ナチをよく言っていいのか悪く言っていいのか、もうわからなくなってしまったのかもしれない。ドイツの議会では、野党の議員が、ウクライナ支援を強行する外務大臣をウクライナのナチと一緒にして、「バンデラ・ベルボック」と言ったら、バンデラはナチではないということになっていたのを忘れて、議長が「ナチと一緒にするなんて、誹謗中傷だ」と非難していた。それで今度は、カナダの議会でウクライナの元ナチを招待したと抗議されたら、ウクライナの部隊はナチではないということになっていたのに、「知らなかった」と言って、議長に責任を負わせたのだ。抗議が来たので、それに合わせて対応しただけといった風だ。

ところで、カナダの議会がウクライナの元ナチに拍手したことで抗議したのは、ロシアとユダヤ人だけではなく、ポーランドもスロヴァキアもだった。ウクライナのSSは、ウクライナのユダヤ人を虐殺しただけではなく、ポーランドやスロヴァキアでも、虐殺を行っていたというのだ。そのことも、カナダ議会のことが騒ぎになったから、表に出てきたことだった。

9月29日と30日は、1941年にキエフのバービヤールというところで、ユダヤ人虐殺が行われた日なのだそうだ。当時ナチスの占領下にあったキエフで、ナチとウクライナ民族主義者たちが市内のユダヤ人を全員機関銃で撃ち殺したのだそうで、2日間で犠牲になったのは3万7千人以上だという。ちょうどそんな記念日の直前に、カナダ議会でウクライナの元ナチがスタンディング・オベーションを受けることになったのも、宇宙の必然的な流れで、その闇の歴史を洗いざらい表に出すべく起こっているようにも思える。

ところで、どうしてカナダがウクライナのナチを引き受けることになったのだろう? それでカナダのことを調べていたら、第二次世界大戦のときカナダはイギリスやアメリカとともに連合国側で戦っていたのだけれど、そもそもカナダはコモンウェルス・レルムCommonwealth realm というイギリス王家を君主とする連邦の一つだということがわかった。表向きは独立国だけれど、要はイギリスの属国のようなものだったのだ。オーストラリアやニュージーランド、バハマやジャマイカなどもそうだ。つまり、インドやアフリカなどのように、イギリス植民地から独立した国以外は、今でもイギリス王家の支配下だということなのだ。

パンデミックのときにいろいろな情報が出てきていたときに、カナダのジャーナリストが、トルドーが就任のときに、イギリス女王に忠誠を誓っている動画を見せていたことを思い出した。カナダの首相は、カナダ国民と憲法に忠誠を誓うのではなくて、イギリス女王に忠誠を誓うのだ。それが単に表向きのことだけではないのは、パンデミックのときによくわかった。カナダもオーストラリアもニュージーランドも、まったくシティ・オブ・ロンドンからの指令のままに動いている様子だったからだ。カナダ首相のトルドーもニュージーランド首相のアーダンも、世界経済フォーラムのヤンググローバルリーダー出身で、つまりはシティ・オブ・ロンドンのマリオネットだ。イギリスのコモンウェルス・レルムは、世界経済フォーラムが養成するマリオネットと選挙操作によって、事実上、属国支配を続けている。

ウクライナの元ナチがカナダの議会に出てきたことで、そういったこれまでずっと隠されてきた支配構造が、すべて透けて見えるように見えてきてしまったのだ。これは、同じときにニューヨークで開催されていた国連総会で、もう参加国の多数派がウクライナを支援しないような状況になっていたからこそ、騒がれることにもなったのだと思う。このことは、この支配構造がいよいよ崩壊しようとしていることを、示しているように思える。

青が現在のコモンウェルス・レルム。赤がかつてのイギリス植民地。


2023年9月29日

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【ナチを作ったのは誰なのか?】



第二次世界大戦は、ロシアにとってはナチとの戦いだった。そのことが忘れられているのは、危険な傾向だと、ロシア政府は繰り返し言っている。イギリスやフランス、ドイツやアメリカにとって、第二次世界大戦は植民地争いだった。アフリカやアラブ、アジアの植民地で、領土争いが繰り広げられていた。しかしロシアは、アフリカにもアラブにもアジアにも、植民地というものを持っていない。ヨーロッパ諸国が植民地争いをしている中で、そんなものを持とうともしていなかった。ロシアはすでに広大な領土を持つ大国だったから、国外に領土を広げる必要はなかったのだ。

しかし私たちは、ソ連もまた他のヨーロッパの国々のように、領土争いで戦っていたのだと思っていることが多い。スターリンは独裁者で、当時のロシア人たちは、共産主義の理想に洗脳されて、東欧へ攻めてきて、残虐な行為を行っていたのだというようなイメージを持っている。だから、ロシアの政治家たちが、ソ連はナチス・ドイツと戦うために、とてつもない犠牲を払ったのだと言っているのを聞くと、何だか不思議な思いがするのだ。私たちが普通に聞いている歴史と、彼らが語っている歴史が、まるきり違うもののように思える。

ロシアでは、第二次世界大戦とは言わず、大祖国戦争と言う。ロシアは、ナチが攻めてきたから、国を守るために戦っていたので、それ以外の野心があったわけではなかった。祖国を守るための戦争だから、大祖国戦争だ。ロシアにとっては、第二次世界大戦はそれ以外のものではなかった。その戦勝記念日が毎年5月9日にあって、ロシアのあらゆる都市で、人々がその戦争で戦った家族の写真を掲げてパレードする。その行事を「不滅の連帯」と呼んでいる。それは、戦勝記念という言葉から連想するようなものとは、まったく違うものだ。

普通、戦勝記念と言ったら、戦車が出て、制服を着た軍隊が行進して、軍楽隊の音楽とか、政治家のスピーチとか、敬礼とかそういう感じのものを考える。そういうパレードもあるけれど、しかし何よりも「不滅の連帯」のパレードが、ロシアの戦勝記念日の中で最も大きな重要なものらしい。モスクワでもサンクトペテルブルクでも、大通りを埋め尽くす人々が、延々と写真を掲げて歩いていく。何百万人の人が参加しているのかわからない。そこには、軍国主義的なものも敵対意識みたいなものもまったく感じられない。犠牲者意識のようなものでもない。愛国心というようなものでさえなく、愛郷心としか言いようのないものだ。粛々とした平和の祈りと、それを守り抜いた人々への感謝と誇り。そうとしか言いようのないような雰囲気がある。

その映像を見ていると、普通に聞いているような独裁的な国だとか残虐な民族だとかいうイメージとは、まるで結びつかない。ただただナチの暴虐から人々を守り、平和な国を取り戻すために、命を賭けて戦った人たちの子孫なのだろうという風にしか思えない。

西側メディアでは、ロシアの戦勝記念のニュースでは、この不滅の連帯の映像はほとんど見せていないようだ。戦車のパレードだとか、軍隊の行進だとかが出てきて、プーチン大統領が権力に利用しているというようなことを言っている。それだけ見たら、やっぱりロシアは独裁者スターリンの国だとか思うのかもしれない。そのような印象を与えようとして、不自然な歩き方をする軍隊の行進みたいなものばかり見せるのだ。だけど、不滅の連帯の映像はほとんど出さない。あの映像は、ロシアにとって第二次世界大戦に勝つということが、権力や支配欲のようなものとはまったく関係のない何かだったことを、否応もなく示してしまうからなのだと思う。

ウクライナの内戦にロシアが軍事介入を始めてから、西側メディアがまったく事実とは正反対の報道をするということがよくわかった。ロシア軍が市街を爆撃したり、市民を虐殺しているとメディアでは報道し続けていたけれど、実際にドンバスの市民を攻撃していたのはウクライナ軍だった。それを見ていたから、第二次世界大戦のことでも、まったく逆のことを報道していたとしても不思議はない。アメリカ中央情報局は、仮想敵国を恐ろしい国であるような印象を与えるための印象操作も戦略として行っていて、そのためのいくつかのNGOが、ロシアや中国が民族を弾圧しているというようなデマを意図的に流していたりもする。

ソ連がポーランドに侵攻したから第二次世界大戦が始まったとか、ウクライナやポーランドで虐殺を行っていたとか、そういうことが言われていたけれど、それも調べてみたら、違う話だった。ウクライナやポーランドでの虐殺というのは、ソ連軍ではなくて、ナチの占領下でナチ化したウクライナ人のSS部隊が行ったことだった。そして、ポーランド侵攻というのは、ポーランドと軍事同盟を結んでいたイギリスとフランスが、ナチス・ドイツが侵攻していくのを一向に妨げようとしないでいたからだった。このまま放っておいたら、ナチと国境を接することになってしまう。それで、やむを得ずポーランドを占領したということだった。どうも今回のドンバスの話と似たような話だ。

第二次世界大戦がどのように始まったのかについても、隠されていたことがたくさんあった。外交上の理由から、ロシアは第二次世界大戦についての多くの資料を機密扱いにしてきた。しかし今、次の大戦を防ぐために、真実を公開するべきだという考えから、機密解除して、資料を公開し始めている。そうした資料から、プーチン大統領が2020年に第二次世界大戦について記事を書いていた。それは、第二次世界大戦がどのように起こったのかについて、本当に起こったことを明かしている記事なのだけれど、その内容は驚くべきものだ。

内容は驚くべきものなのだけれど、しかしそれを知ることで、あの戦勝記念日の粛々とした行列の理由が完全に理解できる。その内容は、あの行列の伝える歴史の重さと、まったく一致するのだ。この人たちの祖先が、一体どれだけのことを経験したのか、一体どれだけのことを成し遂げたのか、そのことがよくわかる。それがわかってこそ、あの誇り高く、愛に満ちた粛々とした行列の意味を、本当に理解できるように思うのだ。

ナチスは、ドイツにソ連を攻撃させるために、イギリスが手を回して作ったというような話は、これまでにもあった。洗脳法を研究していたタビストック心理研究所が関わっているという話もあった。ロシアが持っている資料からプーチン大統領が書いた論文は、そうしたことを裏づけるようなものだった。まず、第一次世界大戦後のヴェルサイユ条約が、ドイツ経済を破壊し、国境についてあとあとまで摩擦が生じるようにできていて、まるで次の大戦を用意するための時限爆弾のようなものだった。イギリスとフランスが、ドイツを追い詰めて軍国主義化させるためにやったと言ってもいいようなものだったのだ。しかもその上、イギリス、フランス、アメリカが、ドイツの軍事産業に莫大な投資をしていた。ナチス・ドイツは、当時、世界で最高の軍事技術を持っていたというのは、実のところ、そういうことがあったらしい。

それから1938年に、ミュンヘンの国際会談で、チェコ・スロヴァキアが分割されて消滅するという奇妙なできごとがあった。イギリス、フランス、イタリア、ドイツの4ヶ国で話し合って、勝手に分割してしまったのだ。チェコ・スロヴァキアは、ドイツとポーランドとハンガリーの領土になった。チェコは、イギリスとフランスと同盟を結んでいたというのだけれど、チェコの主権を守ろうとはしなかったのだ。ドイツをなだめるためにというようなことだったらしいのだけれど、ソ連を攻撃させる下心があったのなら、むしろドイツを東へ行かせるためだったと考えられる。実際、ドイツはその翌年、さらにポーランドへ侵攻していった。そして、また奇妙なことが起こった。ポーランドもイギリスとフランスと軍事同盟を結んでいたのに、ほとんど介入しないでドイツが侵攻するままにしていたのだ。

軍事同盟を結ぶのも、イギリスやフランスにとっては、騙して破るための策略であるかのようだ。ウクライナのことでも、ミンスク合意でロシア軍を撤退させておいて、ウクライナを軍備増強させていた。あれと同じなのだ。第二次世界大戦の前から、イギリスやフランスは同じ手を使っていたので、ロシアにとっては、新しいことでもなかったのかもしれない。

チェコ・スロヴァキアの分割やポーランド侵攻の頃にも、イギリスとフランスはドイツといろんな秘密会談や密約を交わしていたらしい。ソ連の諜報部もそうした情報を得ていて、それを機密解除したわけだ。

ナチス・ドイツがポーランドに侵攻してきたので、当時ポーランドだったウクライナ西部まで占領してしまわないうちに、ソ連が占領することになったのだ。国境までナチスに来られては安全が保てないというのもあったし、ナチスの占領の目的が、スラブ人を排除してドイツ人のための土地を増やすというようなことだったから、ウクライナ西部の人たちをナチから守るという意味もあった。ソ連は支配欲に取り憑かれて、領土が欲しくて侵攻したわけではなかったのだ。英米仏が後ろについて、ソ連が侵攻してくるまで、ドイツに挑発させていたようなものだった。

ポーランド侵攻のあとで、ソ連はドイツとの戦争を避けるために、独ソ不可侵条約を結んだ。しかしこれがまた裏切られることになる。英米仏が後ろについているナチス・ドイツは、ソ連領内に侵攻しないつもりなどなかったのだ。バルバロッサ作戦という侵攻計画を進めていて、1941年に当時ソ連領になっていたウクライナ西部に侵攻してきた。独ソ不可侵条約を結んでいたので、ソ連はぎりぎりまで戦いを避けようとしていた。そのため不利な形勢になり、モスクワの手前まで侵攻されてしまうことになった。

ナチス・ドイツの方が、英米仏の支援で最強の軍備を持っていた一方で、戦争を避けようとしてきたソ連は大した準備などしていなかったのだ。住民を東部に避難させ、産業を東部に移転させて、軍備を十分に供給できるまでに時間がかかった。バルバロッサ作戦に応戦する形で開戦してから半年ほどの間に、不可能を可能にするような勢いで産業の移転を成し遂げ、モスクワの手前まで来ていたナチス軍を押し戻すことができた。

ソ連は多民族国家なので、戦争になればすぐに分裂が起きて、崩壊するだろうとドイツは踏んでいたらしい。ところが、分裂しなかったのだ。最初の戦闘となったブレストの砦では、30以上の異なる民族の人たちが、最後まで協力して戦っていたそうだ。

何故、分裂しなかったのだろう? ロシアは多民族国家なのに、民族差別がないと言われている。ロシア帝国の頃から、それぞれの民族にそれぞれの生活スタイルで生きるようにさせるという伝統があり、だからこそあれだけの大国をまとめることができていたのだという。それは、ソ連の時代にも基本的には変わらなかったのだろう。だからこそ、戦争になっても、民族がたがいに分裂して争うという事態にはならず、協力して国を守るということになったのだと思う。

ポーランド侵攻でウクライナを領土に加えたあとに、ラトビア、リトアニア、エストニアを併合したというのだけれど、これは占領したのではなく、それぞれの政権と話し合って合意した上での併合だった。それぞれのあり方で生きていけるのなら、大国の一部になることで、いろいろな利点もある。どの民族にも公正であれば、軍事侵攻する必要などなく、領土は自ずと増えていくことになる。そのようにして多民族国家になっていった国ならば、ナチに侵略されたとなったら、どの民族も協力して、国を守ろうと必死で戦うのにちがいない。ナチは、民族差別を根底としていて、他民族を排除し、あるいは下級民として支配するために侵攻してくるのだから、ロシアの伝統的に多極的なあり方とは真逆のものなのだ。

ソ連は共産国だから、全体主義で自由などなくて、という風に思われているのだけれど、この戦い方を見ていると、どうもそうとばかりも言えないように思える。政府のために強制されて戦っていた人の戦い方ではないように思えるのだ。スターリンの時代には、いろいろ弾圧もあったはずなのだけれど、それでも皆で共に生きているのだという共生感覚のようなものあったのかもしれない。とにかく、ソ連は参戦国の中で飛び抜けて大きな犠牲を払いながらも、決して降伏しないで国を守り抜いたのだ。何百万人もが志願して戦い、市街戦では市民も戦ったそうだ。だからこそ、今でも人々は5月9日に家族の写真を持って何時間も街を練り歩くのだ。

まさにロシアのこの多極的な多民族社会のあり方こそが、イギリスにとって何としてでも倒したいものだったのかもしれない。大英帝国は、まさにその反対を世界中でやってきた。アメリカでもカナダでもオーストラリアでもニュージーランドでも、イギリスは原住民を虐殺して、植民していったのだ。アングロサクソン人を最上級とする階級社会を作り、英語だけが公用語で、イギリスの生活スタイルで生活するのが上級であるということになっている。ナチス・ドイツは、ポーランドやウクライナの人々を虐殺してドイツ人に植民させようとしたけれど、これはもともとドイツのやり方ではない。ヨーロッパはそれまでも国境はずいぶん変わってきたけれど、そこに住む人々を排除したり、文化を強制したりはしていなかった。これは、大英帝国が植民地でやってきたやり方だ。

イギリス人たちが船で世界中を侵略し始めて、大帝国を築いていった頃から、数百年にわたって、世界はピラミッド型階級社会による一極支配の構造を拡大していったのだ。だからこそ、多極的な構造を持つロシアを何とかしてつぶそうとしていたのだろうけれど、その試みは失敗したようだ。その理由は、まさに第二次世界大戦で、最高の軍備を整えながらもソ連を降伏させることができなかったのと同じなのだと思う。多極的な構造で成り立っている社会では、強制されなくても、皆が協力して戦い、守り抜こうとするし、侵略しなくても他の国が加わろうとするからなのだ。


https://youtu.be/9_0lMxsDw-E?si=Vn4KyJaju9oorDNh

2015年モスクワの不滅の連帯の動画。航空画像で、どれだけ規模の行列なのかがよくわかります。

プーチンが2020年に書いた記事、日本語訳ここで読めます。


2023年10月3日


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