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スモールトーク|暮らすように旅してみるニューヨーク編

「身の周りを好きなもの、心地よいもので固めたい」と思っていた時期があった(学生時代に読んだ黒川伊保子さんの本の影響だと思う)。
それから10年以上経った今思うのは、好きなものや心地よいものだけで固めたら、自分の想定内ですべてのことが完結してしまい、人生面白くないのではないかということだ。
人生は想定外があるから面白いと思うのは、年齢は重ねても、まだ気が若いからなのだろうか。

ところでニューヨークでは、レジ待ち、信号待ち、エレベーター内など、しばしば気軽に世間話をしてくる。「今日は寒いね」「その持ち物いいね」みたいな、たわいもない話や雑談を“スモールトーク”と言う。

もちろん、わたしにも英語が話せるものだという前提で話しかけてくる。人種なんて無視されるのがニューヨークのいいところでもある。

ある日、各駅停車の電車に座って発車待ちをしていたら、隣におじいさんが乗ってきた。勢いよく「ナイキ」がどうたらと話しかけられたがちゃんと聞き取れず、わたしのスニーカーはニューバランスだしなぁなどと思っているうちに、さっさとホームに戻って行った。
ちょうど電車のドアが閉まり発車したので、聞き返す手間が省けてちょうどよかった、おじいさん乗る電車間違えたのかな?と思っていたら、各駅停車だったはずの電車が、特急に変わっていた。

あ〜!おじいさんは、「ナイキ」じゃなくて、「Now (this train) express(特急になったよ)」と言ってたのかもしれない。
それ、スモールトークじゃなくて、めちゃビッグトーク!

あとで聞いたところによると、ニューヨークは勝手に各駅停車が特急に変わることがあるらしい。表示の確認が大切とのこと。
結局電車はスピードを上げ、20分先の駅ハーレムに着いたので、降りて引き返した。
聴力の衰えを感じつつ、人生は想定外が面白いのだと言い聞かせて。



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