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人間椅子「地獄への招待状」英訳歌詞のメモ

ヘヴィメタルバンド「人間椅子」の楽曲の一つである「地獄への招待状」の歌詞を英語に訳してTwitter上でツイートしたのですが、Twitterだとすぐに流れてしまううえにセンテンスそれぞれがバラバラになってしまうので、ここにまとめてメモしておこうと思います。「この訳よりこっちの方がいいんじゃね?」という提案などありましたがお気軽にどうぞ。

もとの歌詞↓

「地獄への招待状」
まんず地獄はいいどごだ
まんまなんぼでもかへでける
湯さ浸かればまっかっか
ばばその辺さ垂れ流し

あずましじゃ
おもしれじゃ
あんだも来てみろ

まんず閻魔はいい奴だ
えふりこぎはお呼びでない
首チョンパに鬼ごっこ
めんけあまっこオッペケぺー

あずましじゃ
おもしれじゃ
あんだも来てみろ

まんず鬼たちいい人だ
ぶった斬りして笑ってる
なんぼはらわだ取られでも
死んでいるから死なねんだ

あずましじゃ
おもしれじゃ
あんだも来てみろ

英訳してみた↓

"Invitation To Hell"
Hell is a really good place
All you can eat here
I can take a bath as long as my skin turns red
and I can take a shit around there

What a comfortable place!
What a fun place!
Why don't you come and join us?

Yama is the really nice guy
Show-off ass? Get out!
Beheaded & play tag with ogres
Even cute girls are here

What a comfortable place!
What a fun place!
Why don't you come and join us?

Ogres are the really cool dudes
They are chopping up sinners with smile
No matter how much they gouge out my innards
I'm already dead and I'll not die

What a comfortable place!
What a fun place!
Why don't you come and join us?

…とまあこんな感じ。
以下は翻訳するうえで気になった点&気にした点です。

そもそも、人間椅子の楽曲の歌詞の他言語への翻訳はムチャクチャ難易度が高いです。というのも、歌詞のモチーフが国内外の文学や哲学、宗教(仏教)、スピリチュアルであるものが多く、それらに対する知識が必須で、そのうえで適切な英語表現を見つけなければならないからです。しかしそれ以上に難しいのが「津軽弁」の読み解き。メンバーのうちギタリストの和嶋慎治さんとベーシストの鈴木研一さんが青森県弘前市出身であることから、全編津軽弁の歌詞の楽曲も複数存在します。これは地方出身者なら理解できると思うのですが、方言の持つニュアンスをそのまま標準語に置き換えるのはなかなかに難しいものです。「方言ではこんな意味だけど、これをそのまま標準語には訳せない」という単語や言い回しってありますよね?果たして現在の日本に、国内外の文学、哲学、宗教、スピリチュアルに造詣が深く、津軽弁のニュアンスを理解し、全てを分かったうえで翻訳できる人材がいるのでしょうか?こうなったら弘前市出身の文系科目の偏差値70以上のメタラーを篩にかけるしかない!

・地獄への招待状→Invitation to hell
まずいきなりタイトルですが、一神教であるアブラハムの宗教では地獄は1種類なので「hell」でいいかもしれませんが、東アジアの宗教観だと地獄はにもいろいろな種類があるので「hells」でもいいんじゃないかという気がします。

・まんず地獄はいいどごだ→Hell is a really good place
標準語訳は「まったく地獄は本当にいいところだ」。「まんず」を標準語に訳す場合、ただ「とても」ではなくさらに強調を含んでいると思ったので「very good」よりも「really good」としたのですが東北出身者の方如何でしょう?  

・まんまなんぼでもかへでける→All you can eat here
標準語訳は「飯をいくらでも食べさせてくれる」。そこから、「食い放題」→「All you can eat」と解釈しました。あとなるべく短い方がいいかなと。

・湯さ(に)浸かればまっかっか ばば(糞)その辺さ(に)垂れ流し→
I can take a bath as long as my skin turns red
and I can take a shit around there
I canでまとめてみた。

・あずましじゃ→What a comfortable place!
おもしれじゃ→What a fun place!
あんだも来てみろ→Why don't you come and join us?
「あずましい」は「快適」という意味ですよね青森県出身の方?私は秋田県横手市出身ですが、「あずましい」という単語は秋田県南ではまったく使用しないため意味はググって調べました。

・まんず閻魔はいい奴だ→Yama is the really nice guy
「閻魔」はオリジナルのサンスクリット語の発音では「Yama」。仏教用語は仏教関連の英語の文献をあたり、それと突き合わせて真似した方が確実かも。

・えふりこぎはお呼びでない→Show-off ass? Get out!
標準語訳は「見栄っ張りはお呼びでない」。これについては特に東北出身者で英語力のある方のご意見を伺いたいです。「えふりこぎ」は東北弁で見栄っ張りの意味ですが、ただの見栄っ張りではなく「自慢げ」「生意気」「外見だけを取り繕う」「世間体ばかり気にする」などの意味も含まれます。これらに該当する英単語で思い当たるのは「Show-off」で、かつ、アホを強調するため本来は尻を意味するスラングではあるものの、人を「アホ」や「マヌケ」というニュアンスで罵倒する際にも使用される「ass」を付けてみたのですがどうでしょう?あと「お呼びでない」に該当する適切な英訳が思いつかなかったのでとりあえずGet out!としたのですがイマイチしっくり来ない…。クレイジーキャッツのコントの英訳とかどこかに落ちてないだろうか?

・首チョンパに鬼ごっこ→Beheaded & play tag with ogres
これはそのまんま。地獄で鬼ごっこなら鬼と一緒にやるだろうなと「with ogres」を付けてみました。

・めんけあまっこオッペケぺー→Even cute girls are here
これもどう訳すか悩みました。オッペケぺーの適切な英訳案があったら教えて下さい。っつーかこれは正確に訳すの無理w!「めんけあまっこ」は「かわいい女の子」。「めんこい」がさらに訛ってる例ですね。当初、地獄に落とされるような女→「bitch」も一瞬頭をよぎったのですが、人間椅子の歌詞にはメタル楽曲にありがちな汚いスラングを使わない方がいいかと思い止めました。後から思いつきましたが、「Hot girls gone wild in bottom of hell」とアメリカ西海岸の80年代ヘアメタル風の世界観に訳しても面白いかもしれません。

・まんず鬼たちいい人だ→Ogres are the really cool dudes
閻魔よりさらに砕けた感じにしてみました。

・ぶった斬りして笑ってる→They are chopping up sinners with smile
chopping up=切り刻む。笑いながら地獄の罪人を切り刻む的な。

・なんぼ臓物取られても
死んでいるから死なねんだ→
No matter how much they gouge out my innards
I'm already dead and I'll not die
楽し気な雰囲気の楽曲なので「I can't die」ではなく、これからも死ぬことはないという意味も込めて「I'll not die」にしましたがどうでしょう?

なお、この「地獄への招待状」は2016年リリースのベストアルバム「人間椅子 / 現世は夢~25周年記念ベストアルバム~」に新曲として収録されています。


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