招かれざる客。
カラスは毎日、プランターのトマトを目がけてやってくる。

結局何の対策もしないままなのだが、そうしているうちに、彼らはスキルアップまでしてしまった。
静かにやってきて、一発で狙ったトマトをくわえてちぎる。
そしてそのまま、安全な屋根の上まで持ち帰るのだ。
「おいしいな、これ」と鳴いてしまっても、人間に「こらっ」と言われない高みで、食事を満喫するようになった。

＊ ＊ ＊

ところで、今日は風がものすごく強い。
トマトは何度もプランターごと倒れてしまい、青い実がたくさん落ちた。

多少の重しをしても、やはり倒れる。
そのたびに実が落ちる。
表題の写真は、今日落ちてしまったもののうち、4分の1ぐらいの量だ。
とうとう枝が折れてしまったものも。

なんとかせねば、と、重いプランターを引きずるようにして移動させた。
倒れずに済みそうな、壁とフェンスの隙間にひとつ。
あとふたつは、風が当たらない玄関前に。
(おかげで住人がかなり出入りしづらくなっている)

なかなか大変な移動だったが、これで大丈夫、とホッとひと息。
リビングの窓の目の前にあったプランターがなくなり、「なんだか広々としたな」と思っていたそのときだった。

一羽のカラスがやってきた。
きょろきょろと首を動かしている。

「あれ？トマトは？」

というセリフが聞こえた気がした。

そして彼は(彼女、かもしれない)、飛び立つこともせず、とぼとぼと歩いて去っていった。
あれは明らかにがっかりしていた。

ふふっ、と笑ってしまった。

プランターは、明日にでも元の位置に戻す予定だ。
カラスはまたやってくるだろうか。
もしかしたら二羽、三羽と連れ立って来るかもしれない。
「ちゃんとあるじゃないのー！」
「いや、昨日はなかったんだって！」
「夢でも見てたんじゃないの、食いしんぼうさん！」
なんて会話が繰り広げられたりして。

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