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親ガチャでSMを引く❶



「もうやめて!!お母さん逃げてー!!」
「もう一回行ってみろ!!どの口がそんなこと言いやがるんだ!んあぁ?!」
「キャー、離してーー!痛い、痛い!!」
「やめろ!!このくそおやじ!!」
「もうやめてよー!お願いだからぁー!!」

文字にすると、さながらコントのようなこの状況は何でしょう?

正解は、「子供時代のあたしん家の日常」

思えば中々の家庭環境に育ちました。ドメスティックなバイオレンスの嵐が吹き荒れるマイホーム。
父親はギャンブラーで、母親はヒステリックレディで、兄は優しくて、あたしはバカ。
なんとも厳しい4人家族です。


物心付いた頃から両親の喧嘩に翻弄されていました。
瞬間湯沸かし器のような父と、口が達者な母。
喧嘩の火種は家庭内のそこかしこに掃いて捨てるほど転がっていました。
父のギャンブルに伴う経済的な問題を筆頭に、ありとあらゆる事柄が喧嘩の原因となりました。


母は今でいうワンオペ育児の極みを味わう子育て地獄と、飲む打つ買うの三拍子揃ったダメ亭主地獄を生きる、悲しい女選手権連続優勝記録を更新し続ける昭和の限界婦人でしたが、大変に気の強い頑固者でもありました。
ダメ亭主に、常に正論で立ち向かい論破しようと挑みかかる。口で勝てない父は最終的に手を出してしまう、というような図式。はっきり言って相性の悪さはピカイチでした。

母のファイトスタイルは、相手を精神的に追い詰めてキレさせるというヒールレスラーのようでもありましたので、この母のあおりスキルの高さが災いして、ちいさな火種が大火となってしまうという具合。小さな火にガンガン薪をくべて、ふぅふぅと吹子を吹くタイプのお嫁。
黙って耐え忍ぶ昭和婦人ではなく、反論していくタイプのNEO昭和婦人でありました。


そして父は、後に「家一軒分は博打に使った」とのたまい、家族を氷河期並みに凍り付かせた筋金入りの素人ギャンブラーでした。
賢明な皆様のことですから薄々お気付きかとは思いますが、ここで改めて申し上げておきます。
そうなんです、彼には博才が全く無いのです。誠に恐ろしい話です。
それにも関わらず、彼は幼い頃から博打に親しんでいた為か、どんな遊びにもおぜぜをベットしちゃう性質の持ち主でした。
麻雀、将棋、花札、トランプ、サイコロ、すごろく。彼にとっては全てが博打。いかなる時、いかなる相手でもそれは揺るぎませんでした。
そう、たとえそれが子供相手であったとしても。
そんな彼のメインギャンブルはオートレースと競艇(今で言うボートレース)、競馬でした。いわゆる公営ギャンブルです。
中でもオートレース場には良く連れて行かれました。
まぁ、この場合私は半分人質のような物で、休日にこどもの面倒をみていると言う言い訳の為に連れて行かれていたと推測します。
耳をつん裂くエンジンの爆音のなか、半分赤色半分青色の泥棒削り色鉛筆を耳にかけ、新聞片手にあれこれ言いながら予想していた彼の姿が脳裏に焼き付いています。パーソナル昭和ノスタルジーです。
そして、私はというと、ジュースやイカ焼きなどを与えられ、それを食べることを、この場合の楽しみとしていました。

ちなみに、父は、母以外にはキレたり暴言をはいたりしませんでした。もちろん子供に手を上げたことは1度もありませんでした。なんなら優しかったんです。これも背筋が凍るような恐ろしい話ですね。


12レースが終わり、案の定、懐に北風が吹き抜ける我が父は、私を連れて酒場へ向かいます。懐具合よって行くお店が違うので行く先々でその日の成果がバレるというコント。
でも、ごく稀にお寿司屋さんで飲むなんて言う時もありました。そんな時、私はウキウキでした。まぁ、滅多に無いのですが。

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続きはまた後日書きますね


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