マガジンのカバー画像

さっきょく塾エッセイ

13
さっきょく塾思考論シリーズの、講義記事(https://note.mu/yukikocomposer/m/mfc1f745c26bc)に対するレスポンス・エッセイを無料でお読みい… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

【12月課題 long ver.】ノイズとは

以下は課題エッセイのロングver.です。「#みんなはこう考えた」エッセイの長さは自由ですし、書く内容に困ってしまった方は、記事内で紹介された一曲あるいはテーマに関連ある他作品の感想や分析という形でも問題ありません。(そもそも私も今回、質問に真正面からは取り組んでないですしね。) 「美しい」「美しくない」は主観の問題であって、作り手としてその判断基準を論じることがさほど重要だとは思いません。(わたしの場合はなので、それが何より大切という人もいると思います。)代わりに、他の作曲

結局一人なのか。

【2月のさっきょく塾課題】 ひとりで作曲しますか?それとも誰かと共同で作りますか?に対するレスポンス。 *** もしかすると音楽は一人で作ることはできないのかもしれません。演奏家がいて聞き手がいるという構造から考えると、常に音楽は共同で作られている、とも言えるかもしれません。 このレスポンスの冒頭では、今まで行った幾つかのコラボレーション作品について書いていきたいと思います。 これまで何人かのアーティストとコラボレーションをしてきました。これらの共同作業は私の表現の

【2月課題】 コラボレーション

わたしは「この人と何をやったら一番楽しいかな」というところから作曲を始めるのが好きです。よく誤解されるんですが、そこには、上手いとか下手とかは(ほぼ)関係ない。オープンマインドな人であれば、噛み合う地点が絶対あるのです。 *** 以前も載せたのですが、このパーカッションの曲は、impulsアカデミーの一週間ワークショップの一貫でした。ペアになったのは二十代前半の学生(スペイン男子二名とポーランド男子の計三名)でプロとやるのとはまた全然違います。 いろいろ試した結果、スト

楽器とは何か。

自分で設定しておいて何ですが、なかなか難しい質問…。 いつも答えを全く考えずに先に質問を設定するので、凄く悩みながら書いています。よし、少し遠回りになるけれど、書き進めよう(実のところ答えは二の次で、これをきっかけに思考し続けることが大事)。 いつだったか、作曲家のハヤ・チェルノヴィンに言われてそれ以来心に留めている言葉があります。作曲家が思い描くその一つ一つの「音楽」は、本人が把握しているより実際は広大だと。自分が書こうとする音楽を彼方先まで見通せているんじゃなくて、そ

【3月課題】 楽器とは

先日、facebookで興味深いディスカッションが起きていました。テーマは「オマージュ or 盗作」。テクノ業界のお話です。 発端はイタリア人音楽プロデューサーのDonato Dozzy(ドナト・ドジー)の投稿で、彼が共同経営するレーベルから発売した楽曲がサンプリングされ、他アーティストに無断使用されているというもの。じっさいは該当アーティストが公式に否定し、証拠もなくパブリックで糾弾したことに対しドナトが謝罪したんですけどね。 [W]hat the line that

楽譜とはなにか。

この質問を考えたのは、去年の年末だったかな。あれから一つ新しい曲を書き上げました。楽譜とはなにか、の問いに対して、少し実例を出しつつ、答えていきたいと思います。以下基本的なステイトメントです。 いつもやりたいことに応じて記譜法を一から考えるようにしている。そういった意味では、新しいアイディアに対しては、新しい記譜法を発明しなければいけないのかもしれない。いままで五線であったり、スペースノーテーション、文字譜、写真入り、イラスト入り、様々な方法でチャレンジしてきたが、まだまだ

【4月課題】 楽譜とは

ノーテーション回の反応を見ていると「五線譜以外の記譜を用いるカルチャー」は条件が揃うことは稀なのかもしれないと思いました。作曲家が興味があっても演奏する人がいないと実行は難しいですものね、自分たちでパフォーマンスを行うなどの場合を除いては。じっさい今回はわたなべさんが明るくない分野ということでこういう形の講義記事になったんです。(行き違いというか私の勘違いも大きかったのだけれど) さて楽譜とは何か?禅問答のようですが、もしかすると「作曲家の所属カルチャーを示すもの」とも言い

日本人であること

五月のさっきょく塾 思考論<間ってなあに?日本の感覚を現代音楽でつかう?> 面白く読みました。特にリザ・リムが対峙する文化との距離感に共感しました。そして自分にとって、日本を感じる瞬間がどこにあるか、考えてみました。 「日本人だから〇〇だね」「女だから〇〇だ」という言われ方はどうも好きではありません。 これって、「予想されたこと」対して「その通り」に対応することだと思うんです。 うちの4歳娘にこう問いかけます。 「歯を磨きなさい」 そうすると大抵は、 「やだー」

【5月課題】 日本人であることは重要か否か?

さいきん久々にみっちりと作曲をしています。ここ数年は論文優先だったのでずいぶん久しぶり。楽譜書くの楽しいけど難しい、、、(´Д` ) ***さて今回主に取り上げた三人の作曲家(リザ・リム、スティーブ・タカスギ、ハヤ・チェルノヴィン)。よく見てみると多くの共通点があるもよう: ・現代音楽界ではマイノリティとされる文化背景を持ち(非西欧諸国出身、あるいはそれらをルーツとする) ・複数の国での中〜長期の生活経験があり ・複数の言語を話す或いは知識があり ・旅を日常としていて ・

【6月課題】 作品において、場所とは?

あなたの作品において、場所とは? 「自分の音楽」と「場所」についての考え、もしくはコンサートホールで演奏すること・しないこと、特定の場を想定して作品を書くことなど。 小出さんも書かれていたように、わたしも曲を書き始める前にたいてい演奏家が決まっています。でも演奏される「場所(箱)」については知らないことがほとんどで、あまり気に留めない。 考えてみるとわたしの優先順位は (1) 演奏家 (2) 文脈にあります。そして興味があるのは、その場の緊張感とか空間の在り方をいかにコン

場所とは。

舞台裏が好きです。コンサートホールはどうも明るすぎる。特に日本の由緒あるコンサートホールは緊張する。敷居が高い。 演劇の舞台は、あの匂いが大好きです。とてもわくわくします。 *** 今回の思考論で少し触れた「Loch(穴)」という作品。アイディアの発端は「身体をどう見せるか」ということでした。コンサートホールだとある程度の距離が出来てしまう。もっと間近で演奏家を見つめたい、違う距離感で身体を見せる曲を書きたいと思っていました。ビデオを使ったアイディアにしようと思ったのは

【7月課題】 身体と作曲

あなたの音楽は何優位ですか?音?時間?身体性?それとも別の何か?あなたの音楽を読み解く○○を教えて下さい。 そもそも身体性って何なのでしょうね。英語でPhysicalityという場合、特に音楽の文脈では「Physical Presence(身体の在り方)」の意として受け止めることが多いです、わたしは。日本語でも同じなのだろうか。 以前、偶然見つけたピアニストSaiki Michikoさんのドクター論文「The Vocalizing Pianist: Embodying G

結局何を求めてるのか?

わたしたちは、音楽に何を求めてるのか。何かを伝えたいのか、伝えたくないのか。何をどう聞かせたいのか、聞かせたくないのか。 この前、森紀明さんのインタビューをしました。 そのとき、森くんが、こう言ってたんですね。 良い音楽に出会った時に「なんで、これは良いんだろう」ってよく考えるんだけど、大抵わかんないんですよね、理由が。わからないんだけど「この音楽が良かった」感覚って、その場にいる多くの人に共有されている時ってありますよね。あれが何なのかってよく考えるんです。 自分の