周子essay

【3月課題】 楽器とは

先日、facebookで興味深いディスカッションが起きていました。テーマは「オマージュ or 盗作」。テクノ業界のお話です。

発端はイタリア人音楽プロデューサーのDonato Dozzy(ドナト・ドジー)の投稿で、彼が共同経営するレーベルから発売した楽曲がサンプリングされ、他アーティストに無断使用されているというもの。じっさいは該当アーティストが公式に否定し、証拠もなくパブリックで糾弾したことに対しドナトが謝罪したんですけどね。

[W]hat the line that separates “musical inspiration” from “plagiarism”?
「インスピレーション」と「盗作」の境目はどこ?
What sampling means nowadays? is it about taking a pre existing source and elevate it to a new musical form or it's about taking other artists material, as it is, and use it as a foundation of a new production?
「サンプリング」が今日意味するものとは?既存のソースを拡張してあたらしい音楽のフォームを作り上げること、それとも、他アーティストのマテリアルを新しいトラック作りの基礎として使用すること?

①「Malandra(by Crossing Avenue)」オリジナル
「Hanami(by Beat Movement)」パクリ疑惑

②「FDW Dozzy's 2011 remix(original by Mike Parker)」オリジナル
「Unsaid IX(by Judas)」パクリ疑惑

私がこの議論を面白いと思うのは、二つのトピックが混同されていること。

・元トラックをサンプリングして(無断)使用しているのか
・元トラックと盗作疑惑のあるトラックが、どれくらい似通っているのか

これらは同一問題ではありません。じっさい「超似てるけどサンプリング使用はしてない」「全く似てないけど使用している」のどっちも成立します。コメ欄でも以下のような意見が交わされていました。

「モジュラーシステムやアナログシンセを使用している以上、サンプリングはできないし!(※注・実際はできるものもあるらしい)」
「同じドラムキットを使っていれば出来あがる音が似てるのは必然だろ!」
「いやいや、そうじゃなくてもフォームがこれだけ似てれば盗作だ!」

(facebook記事に直リンクできなかったので、コメント等を読みたい方は、下記のRA記事から飛んでください。)

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さて「楽器とは何か?」という問い。

わたしにはこの分野で活躍する知人が多くいるのですが、外部者の私からみると「どれもテクノじゃん!」ってよくひっそりと思います。キックがありループがありBPMもある程度の数値という統一フォーマットありき。車作りも鍋作りもベーグル作りもきっと同じですね。

そして音楽は、どのデバイスを用いて制作されたのか、また、どのジャンルというか文脈にあるかによって多くのことが規定されるんだなって。たとえば私たちが「ヴァイオリニスト」と言った場合、「西洋記譜を学びクラシックのレパートリーを弾きこなせる(バッハはマスト!)、ヴァイオリンを所有する人々、だけどコード記号を読めるとは限らない」という複数のコードが含まれる。でもそれはテクノ業界の人にすれば常識ではない、おそらく。

ざっくりした話なので例外がいっぱいあるでしょう。いずれにせよ分野横断が鍵となるこの時代。飛び越えること、文脈から出ること、常識がある区域から外れること。そのなかで「楽器をどのような視点で捉えるか」ということが、もしかしたら、「何を使うか(どのような物を楽器として使用するか)」という問いよりも大切なのかもしれません。

(抽象的な話のまま終わってしまいました)

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下記のわたなべエッセイで書かれていたハヤ・チェルノヴィンとのやり取りで思い出したのですが、彼女は私にとってもまた大切なことばをくれた人でした。長くて暗い書けない時期のブレークスルーのきっかけとなったものです(やっぱり大学院から5年くらいは皆辛いよね)。

ちなみにハヤは空港でもホテルでも電車でも飛行機でもどこでも曲をかけるんだって。いつも真似できないと思うけど、これは現代の作曲家にとって必須な能力になりつつある気がして、ぜっさん訓練中。なお今はロンドンの空港で飛行機待ちをしながらこれを書いてみています。


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