岸本千佳

アッドスパイスの代表で、不動産プランナー、ときどき執筆。『もし京都が東京だったらマップ…

岸本千佳

アッドスパイスの代表で、不動産プランナー、ときどき執筆。『もし京都が東京だったらマップ』(イースト新書Q)、『不動産プランナー流建築リノベーション』(学芸出版社)を出版。http://addspice.jp

最近の記事

木賃アパートは民藝

今秋、第40回住まいのリフォームコンクールと第7回日本エコハウス大賞という、グッドデザイン賞の派手さはないけどなかなか獲れない賞に、ダブルで最優秀賞を獲ることができた。 受賞したプロジェクトは、tedeという木造賃貸アパートの改修。最後の1人となった木賃アパートを、1階を仕事場と共用ラウンジ、2階を気の利いた単身住居へと変えた。 特に、エコハウスの方は、木造の改修、しかも賃貸で1位は相当の快挙だそうで、我々はエコハウス業界に全く知られていないため、グランプリで呼ばれた時はオ

    • 争わない、怒らない、信じない、諦めない

      最近になって気づいたが、私は人と争うのが苦手だ。 不動産業者をライバルと思ったこともないのだが、地方だと客も業者も少ないので、取られたみたいに思う人が多くて驚く。 争うのが嫌なので、あまり同業者に荒らされない場所で頑張ってきた。それを見つけられたことが救いだ。同業者よりも、出版業や士業変形の方が、よっぽどシンパシーを感じたりする。 世は、他人がしてることでうまく行ってるものを真似る方が楽。と思う人が大半だと言うが、私からみたら、そんなみんながやってることの中で自分が抜きん出

      • 手づくり市以上お店未満のシェアキッチンアトリエ

        前の記事でも少し触れましたが、ただいま京都の五条大宮に、菓子・パンの製造・販売に特化した「シェアキッチンアトリエ」を計画中です。シェアキッチン!というよりは、シェアキッチンアトリエなのです。共同で使うけど、曜日貸しなので、週イチのこの時間だけは自分のアトリエを持つような。 10年小商い仲介をして見えた実態 京都で、お店を持つ人を10年ほどお手伝いしてきて、見えるものはありました。 キラキラさせながらオーナーさんに思いの丈を語る人。物件がピンとは来てるけど悩んでたら、その間

        • 街の資源を絶やさないために(京都/クリエイターの場合)

          時流を読んだ企画をウリにしてるけど、これってすごく難しい。 東京の時は、5年前後の投資回収だったからある程度予測できたけど、関西(首都圏以外)はその倍くらいの投資回収になるので、10年それ以上のスパンで予想して、企画せねばならない。10年というのは、政治・経済の動きも大きく変わり、人の嗜好も変わる。三浦展さんから学び、だいぶ時流予測の訓練をしてきたと思うけど、それでも難しい。 あるプロジェクトでは、色のついていないエリアの雰囲気や芸大移転の計画、建物の特性から、シェアアトリ

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          ジェンダーバランス問題、それ以前の話

          先日も、国交省の公務員アーバニストスクールの講師25人が全員男性だと言うのに批判が相次いだと、ネットで盛り上がっていました。 ジェンダーバランスの観点から、女性がゼロということが問題だと。業界が男性が多いから仕方ないとも。どちらも一理だと思います。 今後こういう抗議の声が大きくなり、行政が批判を恐れて、これまで以上に委員選定にジェンダーバランスだけを優先してしまう。これが一番、私が恐れていることです。今回の件でも、純粋に講師に適任な人を順に声をかけていったらこうなった。であ

          ジェンダーバランス問題、それ以前の話

          アッドスパイスにアッドスパイスしてくれる人探してます

          昔から、「○○までに起業する!」という感覚がどうも理解できずにいます。自分は気づけば、独立して8年半も経ってしまいましたが。 たまたま、最初の会社に社員一号として入社し、役員ら3人と机を並べてから、10人強まで増えるチームを経験し、独立が身近な存在だっただけでした。頑張って転職活動した時期もありましたが、その時入りたい会社が無かった。仕事も前職からさほど変わってはいないし、独立が地続きだったんだなと、今振り返ると思います。 周りの友人も、こんな感じの独立者が多いです。独立が

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          自分に集中できる聖域が、都市にあってもいい

          ワイガヤコミュなシェアオフィスへの違和感 ワイワイ・ガヤガヤしたコミュティ推しのシェアオフィスじゃなくて、もっと自分の為の働く環境があってもいいんじゃないか。何なら、仕事じゃなくて、勉強や趣味に使ってもいいじゃないか。小さい空間こそ。 コロナ禍以前から、ずっとどこかでそう思っていた。 何か話さないといけないようなパリピ的な環境が苦手だからというのもあるが、それはきっと私に限らないだろう。コワーキングスペースもドロップインで何度か利用したことがあるが、結局作業的なもの以外は

          自分に集中できる聖域が、都市にあってもいい

          ライフスタイルから考える不動産メディア「shokuju」をはじめます

          新たなプロジェクトを始めます。店舗・事務所・アトリエ等と住居を兼ねて使える物件が見つかる不動産メディア「shokuju」です。 コロナ禍前からあたためていたのですが、前回の記事にも多くの反響をいただき、これからより必要とされるであろうと、6/1(月)にお披露目することにいたしました。 店舗向きやアトリエ向き、家族で暮らせる物件など多様に揃えています。物件の紹介にとどまらず、職住一体の実践者のインタビューやお役立ちコラムといった読みものもあります。物件を探していない人でも

          ライフスタイルから考える不動産メディア「shokuju」をはじめます

          アフターコロナの住まい予想図

          今春、新型コロナの影響で、日本も世界も、状況が一変しました。 私の暮らす京都でも、様変わり。あれだけ宿泊施設が増え、街がインバウンド仕様に変わっていったのに、観光客はぱったり。3月末の大学生のクラスター感染にはじまり、緊急事態宣言の後、店舗という店舗が休業。 緊急事態宣言が段階的に解除され、終息の兆しが見えだした感はあります。一方で、事態が劇的に好転することはないと諦め、緩やかに生活や事業がはじまっていくのではないかと思われます。これまで確実に見なかった風景が、ものすごいス

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          新聞折り込みチラシというメディア

          今朝の京都新聞に、折込チラシを入れました。 お恥ずかしながら、独立して5年ではじめて自ら行った営業活動。独立以降、テレビ書籍テレビ書籍、とたまたま続いていて、気づけば売り込み下手な温室育ちでしたw なぜ今さらかというと、良い建物が潰されまくってる最今、仕事したいってより使命感みたいな感情がはたらいてるんです。なので、今のような感度の高いオーナーさんだけでなく、普通に困ってる人にもきちんと届けたい。届けないといけない。 それには、京都人に絶大な信頼を誇る京都新聞やなと(とやっ

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          ひとりで持ち運べる屋台ができるまで

          ひとりで運んで、ひとりで組み立てられるひとり屋台。ある仕事がきっかけで、「京都にオシャレなひとり屋台があったら、ある人の人生が少し前に進められるかもしれない」。そうふと思いつき、制作した。 ポップアップや什器が得意な工務店アトリエロウエさんの、10歳年下のオシャメンと、あれやこれやと相談しながら一緒に作ったのが、この「コウリコ」だ。効率よく小売を楽しんでほしい、との想いを名前にこめた。 (完成した屋台「コウリコ」) 自分のものさしを育む、京都の市文化 京都では古くから、

          ひとりで持ち運べる屋台ができるまで

          出版は、フラットにドライにコツコツと

          専業でもないのに、高スパン(2.5年)で2冊の本を出す機会に恵まれたからか、飲み会なんかの場で、「どうやって出版にこぎつけたの?」と聞かれることが増えた。 みんな、そんなに本出したいんやなぁ~。しゃべれるなら、別に出す必要ないのに(私はしゃべれないからその代わりに書いている)。印税なんてしれてるのに。 と、喉まで出ているがそれは封印し、せっかく聞いてもらっているのでいつも伝えれるありったけを話す。が、その話で終始してしまう時間がもったいないので(それならもっと他のことを話

          出版は、フラットにドライにコツコツと

          これから必要な力は”一歩先を想像すること”なのかもしれない

          カバーイラスト、何を書いてるか分かりますか? タイトルは「猫背の猫」でした。 作り手の想いを想像するって難しいものですね。 さて、これから必要な力は”一歩先を想像すること”なのかもしれない。 今日、朝45分散歩していてふと思ったことです。 仕事がデキル/デキナイという表現は、私はあまり好きではないのですが、 この仕事がデキルというのって、すごくアイディアマンとかというより、 大きなミスをやらかさず概ねいい感じに業務遂行してる人が多いかと思います。 それって、「これを先伸ば

          これから必要な力は”一歩先を想像すること”なのかもしれない

          京都駅は京都最後の未開拓地

          京都駅は京都最後の未開拓地だと思ってる。 最近、2日に1回くらい人にこう説明している。 京都という街に戻って3年半になるが、やはり京都は特殊条件が多い。まず土地の歴史の分だけ人間関係が複雑だ。悪いわけではないけれど、実際仕事をするにはかなり難しい土地だと思う。 そして、新しきも古きも文化の層が厚い。 帰ってきて7ヶ月間は、もう既にあらゆることがやりつくされていて、今さら私ごときが何かこの都市に対してできることあるんだろうか。とずっと思っていた。 特にここ数年は、観光バブルが

          京都駅は京都最後の未開拓地

          U29もうひとつの物語

          私が初めて出演したテレビ番組「人生デザインU29」(NHK Eテレ)が、3月末日で終了した。 (あまり世の中に知られていない)頑張る29歳以下の若者を追ったドキュメンタリー番組で、毎週30分間を一人に充てられる。 私が出演したのは、2015年1月、29歳。京都に帰ってきてまだ一年足らずというときで、決して仕事が軌道に乗っているわけでもなかった。 それでも、聡明なディレクターが見つけてくれて、運よく出演できた。 30分番組に出ただけでなく、出演者のうち10名が呼ばれ

          U29もうひとつの物語

          私にとっての書くこと

          小学校の読書感想文では、代表に選ばれるプレッシャーで、本を読んでもうまく書けなかったら何冊も本を読み直す、というなんともストイック&小生意気な少女だった。 ただ、それには理由があって、私は人に話して説明することが非常に苦手だったのだ(今もだけど)。 小学生以降も、理路整然と話せないので、プレゼン的な説明が本当に苦痛で、 その代わりに、自然と書くという必殺技を覚えたのだと思う。 だから、書くという行為は、私にとっては古くから付き合ってきた友達のようなもの。 日記も、どの時

          私にとっての書くこと