コミュニケーションの受け皿を作る

僕が運営するお店のすぐ隣に、大人気のコーヒー屋さんがある。

街の中心にあるわけでもなく、オープンしてからまだ1年も経っていないというのに、県外や韓国などからはるばる観光客が訪れるほど。

どうしてそこまで人が押し寄せているかというと、インスタによるところが大きい。

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このコーヒー屋さんは店主さんが一人で運営している小さな自家焙煎の個人店。コーヒーにこだわりのある、本格派のお店である。

インスタを見て訪れるのは20代前半の若い人が多く、彼らは皆、”インスタ映え”のする、とあるメニューを注文する。純粋に”コーヒー”を楽しみに来店するのとは少し違う。

店主さん曰く、このメニューは「インスタがどれだけ影響するのか試してみたかった」と、あえて狙ったようだ。

店主さんの戦略は大当たりとなり、瞬く間にインスタで人気となった。

これだけでも凄いのだが、僕はこの店主さんの凄さは別のところにあると思っている。

それは、きちんと、”コミュニケーションの受け皿”を作っているところだ。

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上記のコーヒー屋さんが証明しているように、今の今でも”インスタ映え”は流行る。

福岡には数え切れないほどのコーヒー店があるが、おしゃれなお店は、どこも列をなしている。

今ではインスタは重要な集客ツールであり、インスタ映えを狙う戦略は悪くないと思うし、かくいう僕自身も、自店の宣伝にインスタをフル活用している。

しかし、今”インスタ映え”として人が集まっているお店を見ていると、「これはいつまで続くのだろう?」と言う懸念が拭えない。

インスタを見て訪れる人たちは、”インスタにアップすること”が目的であることが多いので、端的にリピーターにはなりにくい。

例えば、一企業が、”インスタ映え”のするお店を創り、短期間で稼ぐだけ稼ぎ、落ち着いたら撤退......というような戦略もあるのだと思う。

しかしそれは企業のやり方であって個人店のやり方ではない。

個人店がインスタに偏ってしまうと、固定客がつかず、他の新しい”インスタ映え”が現れるとお客様はすぐにそっちに流れてしまうのではないか。

そうなると折角の素晴らしいお店も、消費されるだけ消費されてしまい、少し時代が変わるとお役御免となる可能性が高くなる。

僕は個人店にとっては、インスタも重要な集客ツールであると思いつつ、やはり一番大切なのは”どれだけファンを作るか”だと思う。

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個人店は、資金力が企業のように潤沢でないため、細部の細部までブランドを作りこむことは現実的に難しい。
そんな個人店がファンを獲得するためには”コミュニケーション”が必須だと思う。

前述の、僕のお店の隣のコーヒー屋さんは、インスタをフルに活用しつつも、コミュニケーションをとる努力を全く怠らない。

インスタを見て全国から人が押し寄せているにも関わらず、彼ら一人一人に対して丁寧に接客し、一声かけることを忘れない。
また営業後にはインスタでエゴサーチし、自店に関わる投稿ほぼ全てに”いいね”や”コメント”を残し、インスタ上でもコミュニケーションをとっている。

小さな店内にはカウンター席があり、近くにお住いの方がカウンターに座ると、皆たちまち彼の魅力にやられ常連客となる。
さらにカウンター席は決して広くはないので、隣の席に座ると、知らない人同士でもすぐに打ち解けてしまう。
”こだわりのコーヒー”のお店なだけあって、インスタはあまり関係のない、純粋なコーヒー好きが集まることも多く、そうなるとカウンター越しにコーヒー談義が始まる。

また、月に1〜2回程度お店でイベントを開催し、常連客も新規客もワイワイと楽しめる機会がある。

このカウンターやイベントが、ただ単にお店のファンを作るだけでなく、ファンとファンをつなぐ、”コミュニケーションの受け皿”とでもいうべき機能を果たしていると僕は思う。
ファン同士がつながれば、お店を起点としたコミュニティが生まれ、ファンがファンを呼ぶという好循環が生まれる。

こちらの店主さんは、このお店のある地域にもともと所縁のある方らしく、近隣にお知り合いも多い。そもそもお店の目的が、コミュニケーションの受け皿を作ることのようだ。

一見すると”インスタで大人気”なコーヒー屋さんであるが、コミュニケーションを通じてファンを作ることを怠らず、さらにはファン同士もつないでしまい、本来のカフェとしての機能をきちんと果たしている。

こんなお店は決して一過性では終わらないのだろうなと、本当に勉強になる。

インスタは”入り口”としては優秀だが、”出口”をきちんと用意してあげないと、お店を消費されるだけで終わってしまう。

僕もきちんとコミュニケーションをとることを怠ってはいけないなと、隣の人気店を見て気が引き締まる。



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コミュニケーションの受け皿を作る

寺元 力

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寺元 力

街の新しいお弁当屋さん“park”代表。九州大学卒業してから飲食の世界へきました。過去にはパリで修行したり。ここではお店の運営についてや経営のこと、あと育児のことなんかを書いていきます。1989年3月4日大阪生まれ。一児の父。

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