加藤力

コピーライター・ライター・企画編集。株式会社チカラカンパニー主宰。大手企業のブランディ…

加藤力

コピーライター・ライター・企画編集。株式会社チカラカンパニー主宰。大手企業のブランディングのためのコピーや商品プロモーションのためのコピー、メジャーメディアの記事執筆、オウンドメディアの企画編集など。職業ライターの自立を支援するライティング塾のスタートに向けて爆進中。

最近の記事

死は、生を輝かせるのか

死は生を輝かせる。数多の先達がそう言っています。死を意識することで、生きることの意味と使命に思いをめぐらし、その懊悩の積み重ねが自ら歩むべく道を照らしていく。そんなところでしょうか。 僕の両親は、二人とも認知症になりました。先に発症したのは母で、父は長年の介護に疲れ、後を追うように認知症になり、折からの心臓病を悪化させながら瞬く間に母を追い抜いて、死の淵に辿りつきました。 死の淵に立たされた父。その傍らで、記憶を失い続ける日常に疲れた母。彼女もまた死の淵に歩み寄ろうとして

    • ライターやクリエイターとして、長く活躍するためのマインドセットとは

      ライターは何歳まで成長できるのか 人間は何歳まで成長するのだろう。そんな不安混じりの疑問が頭をもたげてくる時があります。日本人の寿命が伸びて、働く期間も伸長している中、多くの人が抱えている不安だと思います。 とくにクリエイティブ関連の職種は、若い時分に全盛期を迎え、一般職より早めに終息していくと思われています。僕も30代の頃は40代が限界か、40代の頃は50代は無理だろ、と思っていました。でも、実際に50代になってみると、全然関係ありませんでした。むしろ、50代が最も成長

      • ライティング塾で提供したいこと〈戦略②〉

        前回に続き、戦略のお話し。異分野の掛け合わせで強みを先鋭化させる。それをいくつかもつことが選ばれる職業ライターとしての土台をつくるという趣旨でした。最後に、もう一つ重要な観点として、強みを先鋭化させても専門家にはならないこと。という話で締めくくりました。 これは、どういうことなのでしょう。強みをつくるというと、専門性を極めるというイメージがあるかと思います。医療ライター、美容ライター、フードライターなど、ニッチな専門性は自分の特徴を際立たせ、世の中に発見してもらいやすくなり

        • 認知症レッドと認知症ブラック

          うちは両親共に認知症になってしまったんだが、それぞれの症状は真逆である。母親は記憶を失うことに戸惑いを感じつつも、明るく今を生きている。父親は自らの不遇を呪い、世の中に黒い呪詛を撒き散らしながら過去を生きている。 それぞれ認知症レッド、認知症ブラックと俺は密かに呼んでいる。認知症レッドである母は、デイサービスに行くのが楽しみだ。ヘルパーさんの言によると、仲良し3人組でいつもおしゃべりに夢中で、毎回同じ話で爆笑しているんだそう。 ところが3人共に認知症なので、今日楽しく爆笑

        死は、生を輝かせるのか

          ライティング塾で提供したいこと〈戦略①〉

          戦略の基本は、まず強みを見出すこと ライティング塾で何を伝えたいのか。この塾を通して参加者はどんな価値を得られるのか。説明会を前に、本塾の提供価値について連載したいと思います。まずは、戦略です。戦略なんていうと大げさに聞こえてしまうかもしれませんが、ごく簡単にいうと強みをいかに見出すかということです。 強みを見出すとは、単に自分の得意な分野に特化するということではありません。もちろん得意分野を軸にすることは重要ですが、市場ニーズを見据えて誰のために書くのかを明確にする必要が

          ライティング塾で提供したいこと〈戦略①〉

          職業ライター養成塾をはじめます。

          個性や得意分野に合わせて仕事も発注。 駆け出しライターのための職業ライター養成塾を開催します。これまで不定期で行ってきたライター塾で得た知見と、30年以上にわたり職業ライターとして広告、メディア記事執筆、Webライティング、PR記事など幅広い領域で活動を継続してきた経験を併せ、プロフェッショナルライター育成に特化したコンテンツを開発。売れるための極意を余すことなくお伝えします。 本塾は、単に書き方のノウハウを伝授するものではありません。職業ライターとしてのあり方、考え方、取

          職業ライター養成塾をはじめます。

          空想企画室①スーパーマーケット

          こんな商品・サービスがあったら面白いんじゃないか。こんな世の中に、もうすぐなるんじゃなかろうか。そんな空想をもとに綴るショートストーリーです。 ● 市川良介さん78歳、通称リョウさん。5年前に奥さんを癌で亡くし、神奈川県のとある田舎町で一人暮らし。二人の息子はとっくに独立して関西地方に住んでいる。盆と暮れに孫と会えるのが最大の楽しみである。 そんなリョウさんの日常の楽しみが地元のスーパーに買い物に行くことである。今日も足取り軽く、いつものスーパーへ。入り口付近に掲げられ

          空想企画室①スーパーマーケット

          競輪場の蕎麦じいちゃん

          15年ほど前、友人が競輪選手をやっていたこともあり、ちょくちょく競輪場に足を運んでいた時期がある。あの殺伐として雰囲気は、ちょっと他では味わえない独特の趣がある。このレースを外したら終わりだ。そんな切羽詰まったおっちゃんたちが噛み締めた血の轍が、空気中の微粒子に重たい鉛をぶら下げている。 今思えばあの雰囲気に浸るために、足を運んでいたような気がする。その空気をつくっていたおっちゃんたちの動向に、俺はレースよりも熱い視線を泳がせていた。 とある年の冬。都内西にある某競輪場に

          競輪場の蕎麦じいちゃん

          エロ可愛い保母さんとヅラ父さん

          息子1号が幼稚園に通っているときの話しである。 その幼稚園には、とても可愛い保母さんがいた。強い意志に愛くるしい笑顔をまとい、ちょっとエロさをまぶした、ざっくり言うとエロかわいい感じ。父兄参観ともなれば、他の教室にお父さんはまばらなのに、その保母さんの教室にはお父さんがぎっしりなんである。 息子1号が年長のとき、件の保母さんが担任になった。そして迎えた父兄参観日。予想通り、息子の教室にはお父さんがあふれていた。教室には加齢臭が充満し、少々枯れた熱視線が縦横無尽に飛び交ってい

          エロ可愛い保母さんとヅラ父さん

          成長を促す自分への質問とは

          失敗やうまくいかなかったことを他者のせいにしてはいけない。他者の責任にしてしまうと、自分の改善点が見えなくなる。どんなに理不尽な出来事でも、自分にできることはあったはずだ。 その時、最も大事なことは自分を責めないことだと思う。自分を傷つけて落ち込んでも、物事は1mmも改善しない。 自分を責めないようにするコツは、「なぜ、できないのか」という「なぜ」を起点とした自分への質問をやめることだ。人間が行うコミュニケーションの中で最も多いのは、自分との対話だ。日常的にどんな質問を自

          成長を促す自分への質問とは

          風は、森の深呼吸である

          森の中の一軒家に、もう25年も住んでいる。 長く森の中に住んでいるからか、 森を抜ける風の、季節による変化にとても敏感になってきた。 春は、花々の香りをのせてしなやかに通り抜け、 やがて新緑の薫りをふくみ、風が颯爽とひらめく。 木々の葉が生い茂る夏は、葉を揺らすざわめきを伴い 落葉とともに、風がまっすぐになっていく。 そして、冬枯れの木々の間を吹きすさぶ自由な風。 森はさまざまな生き物の母体であるから、 そこを通り抜ける風は、森の深呼吸なのではないだろうか。

          風は、森の深呼吸である

          息子とアイスと交番の思い出

          子どもが生まれると、父親という視点がひとつ増える。今まで見えていなかったことが見えるようになり、それは新しい発見や貴重な体験につながる。例えば、ベビーカーを押していると、街はけっこうデコボコなのだなということに初めて気がつく。今まで目にとまらなかったオムツなどの情報も入って来るようになる。 そんな体験が面白くて、息子1号が生まれた頃は、よく連れて歩いた。20数年前のことだから、若いお父さんが幼子を連れて歩くことなどほぼ見られない時代。慣れた手つきでミルクをシャカシャカと水道

          息子とアイスと交番の思い出

          微笑みの国のビックマザー

          タイの女性と結婚した友人がいる。そいつは、大学を卒業するとチャリンコで世界一周を敢行した冒険王。10年ぶりに帰国すると、傍らにタイ人の妻がいたってわけ。 二人は利根川のほとりの廃屋をタダ同然で借り受け暮らし始めた。広大な庭に鶏を放し飼いし、野菜を栽培した。僕らが遊びに行くと、鶏をしめてうまいタイ料理をごちそうしてくれた。しめたての鳥はうまいねえと食ってると、崩れ落ちた床下から昨日密入国したばかりのタイ人が出てきたり、かなりサプライズな家なんである。 子供は娘が3人。上の子

          微笑みの国のビックマザー

          妊婦さんのため息

          電車で坐ると高い確率で寝てしまう。あの揺れを自分のベッドで再現できないものかといつも思う。それはさておき、先日小田急線での出来事である。 いつものように微睡みから醒め、ふと、視線を上げると目の前に妊婦さんが立っていた。大きなお腹を抱えて苦しそうだ。こりゃいかんと、席をゆずるべく、あわてて立ち上がった。 妊婦さんは「いいんです、いいんです」と遠慮する。遠慮しないでください、どうぞ。やさしく勧めているつもりなのだが、何せ強面な俺。警戒しているのかもしれぬ。そこで、顔面ストレッ

          妊婦さんのため息

          有楽町で獣を喰らう

          友人の競輪選手と有楽町で酒を喰らう。ガード下の小路を幾重にも曲がった果てにあるその焼き鳥屋は、いまにも崩れ落ちそうな廃屋風情。徹夜明けでハイテンションの俺と小田原競輪最終日で一着を勝ちとったばかりの友人は揚々と席につく。 しかし、供された焼き鳥を食って声を失う。そこはかとなく漂う獣の臭い。ひょっとしてこれは鳥とは違う生き物ではないか。つづいてレバーもどきの肉を食う。鳥ではない、と互いに断言。やはり獣か? ビールに飽きたので熱燗を発注。店のおやじは受注するやいなやカウンター

          有楽町で獣を喰らう

          フルフェイスな女

          友人のF子は、美人で頭もよく、人に対する気配りも細やか。広告代理店の制作推進として完璧な仕事をこなす。社内外のクリエーターたちからの信頼もあつい、いわゆる才媛である。 そんな彼女の唯一ともいえる欠点が超のつくおっちょこちょい。笑えるエピソードがしばしランチタイムの話題をひとり占めする。 彼女は、都下のとあるベッドタウンに住んでいる。最寄りの駅まで徒歩で20分ほどかかるので、原チャリで駅への道をひた走る。 その日は、大工をやっている兄貴が彼女の原チャリをのっていってしまっ

          フルフェイスな女