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#042 【放射線治療終了後26日目】チープなドラッグに酔いしれる日々

2019年6月10日

東京は梅雨入りしたそうだ。朝から雨で気持ちも籠りがちだが、当分出勤する必要もないだけまだマシと言ったところか。

口内炎自体はすっかり綺麗になったのだけれど、喉の奥の炎症だけが意外としつこく残っていて、いまだに食べ物が当たると痛い。前回気になっていた舌の付け根の炎症はかなり楽になって、もう舌を右の奥まで伸ばしても大丈夫。これだけで食事のストレスが随分と軽減された気がする。

しかし味覚だけは思うように戻らず、先週からほとんど進捗なし。亜鉛も昆布水もさほど劇的な改善効果は見られず、しかしそれらのおかげで現状をキープできているのかもしれないとも思えばまだマシなのかもしれない。
でも戻らないのは戻らないなりに、食べられるものはだいぶ増えたようにも思う。というか、正直このイカれた味覚に俺自身の感覚が少しずつ順応してきているような気がする。世の中の食い物というのはおしなべて苦く、不味い物なのだと、その前提を受け入れればなんでも食えないことはない。水は低いところに向かって流れるとはいうが、人間の感覚も然り。虚しいし、悔しいし、食の楽しみを失った人生というのはかくも侘しいものなのかと思うのだけれど、それでも生きるためには食い続けなければいけない。ほんの少しずつでも回復はしているはずなんだと自分を奮い立たせて、俺は今日も苦い飯を頬張り、嚥下し続ける。

体重は今朝の時点で64.3kg。毎日微妙な増減を繰り返してはいるが、大まかな数字は変わらずに63〜65kgを行ったり来たりでなかなか増えない。しかし最低でも標準体重の68kgまでは戻していかないと今後の回復に影響を与えかねないと医者にも言われている。ドカ食いしたくなる味覚状況でもないし、酒もほとんど飲んでないし、そもそも飲みたいとも思わないし、太る要素が全くない生活を送っているだけにあと4kg増やすというのはなかなかハードルが高い。体重が増えないことを悩む日がまさか自分の人生で訪れるとは想像もしなかったが、どうすればいいんだろうかねこれって。

唯一手放しで嬉しいことといえばジョギングを再開したことだ。数週間前から2〜3日おきに走るようになって、初めは1km走り続けるのもやっとの状態だったのだけれど、先日はついに10kmまで継続して走ることができるようになった。
まだまだフルマラソン復活は遠い夢のような話だけれど、自分の体力の回復を如実に実感できるのが何よりも嬉しい。そして何より、脳内物質か何かの影響なのか、運動中から運動後にかけては自分の思考がめちゃめちゃポジティブで前向きになるのだ。病は気から、というけれど、まさに走っている間は病に打ち克つ気力がとめどなく溢れてくる感が半端ない。なんという安上がりなドラッグだろうか。

しかし流石にまだ10kmも走ると翌日はかなり疲労感が残っているのだけれど、もっと体力が戻ればかつてのように毎日でも走れるようになるに違いない。走れる日が待ち遠しいのだけれど、あいにく東京は梅雨入りしたそうで、朝から雨で気持ちも籠りがちだ。まじかよ、早く梅雨なんて空けてくんねえかな!


美味しい食べ物とか、子供達へのおみやげとか、少しでもハッピーな気持ちで治療を受ける足しにできれば嬉しいです。